世界最先端のハイテク都市、深圳市の魅力とは?

    1. 中国経済・社会

    米国に次ぐ経済大国となった中国ですが、その中国の経済を引っ張り積極的にイノベーションに取り組んでいるのが深圳市です。

    深圳市は企業だけでなく、旅行者にとっても魅力的な都市!今回は先進的な都市深圳について紹介します。

    世界最先端のハイテク都市、深圳市の魅力とは?

    深圳は世界有数のIT産業都市となっており、次のように呼ばれています。

    shēn zhèn bèi yù wéi zhōng guó guī gǔ

    深圳被誉为中国硅谷。

    深圳は中国のシリコンバレーと呼ばれています。

    深圳市にはBATHを含む国内を代表する企業が次々と拠点を置いており、新しい技術の試験導入が盛んに行われています。

    そのため深圳市に行けば、ありとあらゆる最新鋭のテクノロジー接することができるのです。そしてその多くは、日本では目にしたり触れたりすることができないものも多く含まれています。

    BATHについては下記の記事をご覧ください。

    まずは深圳という場所が、どのようにして発展してきたのかについて簡単に紹介します。

    中国本土の4大都市の1つ

    深圳市は北京市・上海市・広州市と共に、中国本土の4大都市と称される「北上広深」の一つ。中国屈指の世界都市であり、中国本土では北京市・上海市・広州市に次ぐ4位です。

    2020年以降も人口は増え続けており、20~30代が人口の65パーセントを占め、65歳以上の高齢者は全人口の2パーセントしかいません。中国でも高齢化が進んでいますが、深圳は若い人を中心とする非常に活気のある都市です。

    そんな深圳ですが、もともとは小さな農村地域に過ぎませんでした。それがGDPが3兆元を超える、世界的な影響力を持つ国際化した大都市にまで発展したのです。

    ここまで大きな変化を遂げるには、大きな転機がありました。それは「経済特区」として認定されたことです。

    夕暮れ時の上海の中国のスカイライン。

    深圳経済特区とは

    「経済特区」とは、その国の法律や規制とは別に、特定の地域において経済活動を行う際の特典や優遇措置を提供する制度のことを指します。

    分かりやすいメリットとしては税金の減免です。利益を追求する企業にとっては、税は安ければ安いほどメリットがあります。深圳で商業活動を営むと納める税が他の場所より安くなりますから、企業にとっては「会社を深圳に移したい」と思うようになります。

    中国における「経済特区」とは、 1979年から外国資本や技術の導入を目的に設けられた特別の地域を指します。

    1979年より5ヵ所(広東省深圳・珠海・汕頭・福建省厦門・海南省)、2017年に河北省が経済特区として指定されています。

    経済特区が設けられるようになった経緯

    深圳は1979年に鄧小平(dèng xiǎo píng)の改革開放政策で経済特区となりました。当時の深圳の人口は3万人に過ぎませんでしたが1,500万人に急成長、莫大な外国投資を誘致し工場を建設した結果、多くの出稼ぎ労働者が深圳市に集まり製造業が急速に発展しました。

    1980年代に何もない土地から始まったのは、電子機器の部品作りでした。香港に近いという強みを発揮し、当時から先端的な電子機器の下請けや、それらをまねた工房が林立するようになります。当時はこれらの工房の品質は玉石混交で、規模も小さいものでした。

    中国語ではこのような手作業が多く、規模が小さい・品質管理不在・品質保証もできかねる・流行りものだけを作り何かあるとすぐ生まれ変わるところを「作坊」(zuò fāng)といいます。作坊という言葉は、本来であればおもちゃや洋服の生産する工房のことです。

    深圳あるあるの話があるのですが、深圳では初対面の人はいつも「どこ出身?」と互いに挨拶するのです。この挨拶の仕方は、深圳の骨身に刻まれた移民文化を反映しているといえるでしょう。

    深圳市は、

    shí jiān jiù shì jīn qián, xiào lǜ jiù shì shēng mìng

    時間就是金銭、効率就是生命。

    時は金なり、効率は生命なり。

    というスローガンを掲げて発展に努めてきました。それから時を経て、深圳の変化はまさにそのスローガンを体現したものとなっています。

    まさにスピードを重視した経営や効率性を重視して製品やサービスを作り上げ、成果を出し、そこからビジネスを広げイノベーション「创新」(chuàng xīn)を作りだしていくという考え方がよく表されています。

    世界から注目されるグレーター・ベイ・エリア(GBA)

    グレーター・ベイ・エリアは中国語で粤港澳大湾区(yuè gǎng’ào dà wān qū)といいます。広東省南部・香港・マカオをGBA圏域として一体的な発展を図る構想です。GBAの人口は7000万人、域内総生産(GDP)は1.5兆ドルで、これは韓国のGDPに相当します。

    GBAは世界の湾岸地域としてニューヨーク・サンフランシスコ・東京を強く意識しており、東京湾岸地域はGDP1.8兆ドルとなっていますが、いずれGBAに追い越されるという見方が強く見られます。

    街並みが描かれたタブレットを持つ中国のビジネスマン。

    深圳市の徹底したスマート化

    深圳では、非常に積極的にスマート化が実施されています。

    中国語で人工知能による制御、つまりAIのことを智能(zhì néng)/智慧(zhì huì)といいます。スマート◯◯ といいたいときは、智能/智慧の後に名刺をつければ表現できます。

    zhì néng shǒu jī

    智能手机

    スマートフォン

    zhì néng dà lóu

    智能大楼

    スマートビル

    zhì néng fān yì

    智能翻译

    スマート翻訳

    中国国内、特に深圳ではありとあらゆるものがスマート制御されています。そんな深圳市が取り組んでいるのは、公園のスマート化です。深圳市はいち早く全域に5Gネットワークを構築したため、その技術を用いて公園のスマート化を図っています。

    wǔ G zhì huì gōng yuán

    5G智慧公园

    5Gスマートパーク

    深圳市内の30以上の公園・緑道に5Gスマートアプリケーションと製品を試験導入しており、その数は合計130個以上です。

    スマート無人販売車両

    wǔ G wú rén shòu mài chē

    5G无人售卖车

    スマート無人販売車両

    スマート無人販売車両は、2021年の春節期間中に深圳湾公園と蓮花山公園に導入されました。来園者に飲料やコーヒー・軽食の自動販売を行っています。日本人にとってもなじみが深い、ケンタッキーフライドチキンの無人販売車両もあります。

    気になる注文方法ですが、車両の前方で手を振ると無人販売車は停止し、客は本体の透明な窓からメニューを選びます。本体のQRコードを読み取ってスマホで注文、支払いが終わると自動的にドアが開いて商品を取り出すことができます。

    5G無人運転ツアーバス

    wǔ G wú rén jià shǐ yóu lǎn chē

    5G无人驾驶游览车

    5G無人運転ツアーバス

    福田区の蓮花山公園で、観光スポットを紹介する放送システムを搭載したスマート無人運転ツアーバスが導入されます。気になる安全性についてですが、観光客の安全を確保するために、ツアーバスには作業員が常駐しています。

    注目に値するのは、チャイナユニコム社の5Gネットワークを通じて、レベル4の自動運転を実現した無人ツアー車両が導入されているということです。公園で自動運転を体験することができます。

    スマートロッカー

    wǔ G zhì huì cún chú guì

    5G智慧存储柜

    5Gスマートロッカー

    複数の公園にスマートロッカーが設置されています。どこがスマートなのかいうと、なんと深圳市の市民は顔をスキャンするだけでロッカーに私物を預けることができるのです。

    これには事前の顔認証登録が必要となりますので、残念ですが旅行者の利用はできません。このスマートロッカーに代表されるように中国は各地で顔認証システムを導入しています。

    スマート健身歩道

    wǔ G zhì huì pǎo dào

    5G智慧跑道

    5Gスマート健康歩道

    ランニングやジョギングは続けるのが困難ですが、5Gスマート健身歩道は、ランナーを応援したり励ましたりすることができる機能を持っています。

    健康的なランニング指導や、スポーツデータを科学的に分析した結果を得ることができます。また過去30日間の来園者の動きを記録するとともに、ソーシャル機能も備えています。

    公園を走るランナーのランキングを表示し、一般の来園者や全国のランナーがランニングデータをインタラクティブに共有することができるので、モチベーション維持する助けになります。

    スマートトイレ

    zhì néng gōng cè

    智能公厕

    スマートトイレ

    公園に限った話ではありませんが、深圳市ではトイレのスマート化に積極的に取り組んでいます。中国のトイレ環境が良くない事は多くの日本人に知られている事実ですが、国を挙げてトイレ革命の取り組み、多くの場所で改善が見られています。

    スマートトイレには、LEDテレビや冷蔵庫・電子レンジ・トイレットペーパーの盗難を防ぐための顔認証システムなどが備わっています。深圳市の新しい公衆トイレの多くは、実用的なデザインと近代的な設備で話題となっています。

    中国のトイレ事情については、こちらの記事もご覧ください。

    説明:中国城市の街道を走る辣色の公交車で、周囲は高層ビルです。

    世界初路線バスの完全な電動化を実現

    xīn néng yuán qì chē

    新能源汽车

    電気自動車(EV)

    深圳市は公共の路線バスの完全な電動化を実現した、世界最初の都市でもあります。深圳市が保有するバスは16,000台あり、これがすべて電気自動車に切り替わったことで騒音が大幅に減少しました。

    さらに二酸化炭素の排出量が約48%減となったほか、多くの汚染物質の排出が削減されました。

    中国の電気自動車のメーカーといえばBYD「比亚迪」(bǐ yǎ dí)が有名です。BYDも深圳に拠点を置いており、日本のトヨタの約2倍の50万人のスタッフ有しています。

    このBYDの本社は非常に巨大で、BYD関連のビルを行き来するにも鉄道に乗る必要があるほどです。BYDはこのスカイレールすら自社で製造しています。

    BYDについてはこちらの記事をご覧ください。

    ネットシティの建設

    テクノロジー分野において最先端を行く深圳ですが、さらに大きく変わろうとしています。

    テンセントは、深圳大鏟湾にネットシティ「网络城市」(wǎng luò chéng shì)と呼ばれる新都市を建設する計画を発表しています。面積は200万平方メートル(東京ドーム40個分)で、完成予定は2027年です。

    一般的に都市設計を行うときは、道路から始めます。道路が都市の骨格となり、建築物が肉となり、都市ができあがるわけですが、このような機能的な都市は暮らしづらくなってしまうことが少なくありません。

    仕事や生活をするためには、車を利用するか長い距離を歩かなければならなくなります。景観も無機的で、住民が威圧感を感じてしまうことになり、結果として都市としての魅力が減少してしまいます。

    ネットシティでは、自動車や鉄道はすべて地上と地下に収納し、上層は歩道と自転車だけで構成されます。人の動きは緻密にシミュレートされ、住居、オフィス、商業施設間の歩行距離が最小になるように配置されます。

    建築物は1階建てから30階建てまでを意図的に配置することで、有機的な景観を作り出すことも可能です。

    まとめると、日常生活は徒歩だけで済むようになり、ネットシティの外に出る場合には地上や地下に下りて、自動車や地下鉄を利用することになります。

    深圳市では、テクノロジーの追求に満足することなく、こうした画期的な都市計画に継続的に取り組んでいます。中国への旅行を計画されている方であれば、深圳市へ立ち寄るプランを立ててみても良いかもしれません。人類の最先端のテクノロジーに触れることができます。

    深圳の治安は?

    深圳は中国のなかでも治安の良い地域です。ただ、スリや置き引き・客引きなど、観光客を狙った犯罪は少なからず発生しているので、日本と同じような安全意識だとトラブルに合う可能性もあるので注意しましょう。

    最先端の取り組みをテスト施行している深圳は、スマートシティ実現のため街中に監視カメラが設置されています。犯罪行為をしたとしてもすぐにカメラに証拠が残るので、全体的に街の治安は良くなっていっています。

    中国全体にいえることですが、最近犯罪もハイテク化されています。インターネットやアプリなどを利用した犯罪手口が増加しています。中国でもマッチングアプリなどを利用した犯罪は非常に多いため、こうした出会い系アプリには注意が必要です。

    まとめ

    今回は中国の深圳市について紹介しました。深圳市は世界の最先端を行くハイテクノロジーシティです。中国へ行く予定がある方は、この深圳市も候補地に入れてみてください。

    深圳市の進取の気質・前へ進む力・若者たちの活気、そしてそのテクノロジーに触れることで大きな刺激を受けることができるでしょう。

    ※2023年12月の情報です

    関連リンク

    イテク都市深圳で考えたこと-現地で感じた我が国への示唆・参考のポイントこの記事では、深圳市のハイテク都市としての発展と、その中で感じた日本への示唆や参考点について考察しています。深圳市が世界的なハイテクの中心地としてどのように発展してきたか、またその過程での驚きや刺激について述べられています。

    世界の街角で見た文化・歴史(第15回:深センの驚異的な発展ぶりに触れて)この記事では、深圳市の経済特区としての地の利を活かしたハイテク企業の本社所在地としての役割に焦点を当てています。深圳市がどのようにして世界第4位の港湾コンテナ取扱量を達成し、中国の多くのハイテク企業の本社所在地となったかについて詳しく解説しています。

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