日本市場参入!急成長を遂げる中国のEV企業BYDとは?

    1. 中国経済・社会

    皆さんは中国が世界一の自動車大国となったことをご存知でしょうか。実は中国の自動車輸出が急増しています。2022年にドイツを抜いて世界第二位となり、2023年はついに日本を抜いて世界最大の自動車輸出国となりました。

    急成長を遂げる中国のEV企業BYDとは

    中国の自動車輸出が急増する理由

    こうした急成長の背景にあるのは、EV(電気自動車)の開発です。中国では早くからEVの生産に取り組んできました。

    環境問題や燃料問題を考えて各国がEVの生産に取り組んでいますが、2022年に世界で生産されたEVの台数がついに1,000万台を超え、1,020万台にまで達しました。

    その中でも中国メーカーの伸びが凄まじく、2022年のEV生産台数1位に輝いたのはBYDで、なんと2021年とくらべて211%の成長率を見せています。

    BYDについて、皆さん耳にしたことはありますか?日本ではまだあまり目にすることがありませんが、中国では知らない人はいないほどの巨大メーカーです。EVといえばアメリカのテスラが有名ですが、中国のBYDがテスラを抜いて世界1位になったのです。

    「ふーん、BYDってすごいんだね〜」くらいに思うだけかもしれませんが、このBYDの電気自動車は今後日本人の生活に大きく関係してきますので、車に興味がない方でもぜひ最後まで記事に目を通して見ることをお勧めします。

    BYDについて知っておくメリット

    結論からいえば、今後日本においてBYDの電気自動車が増えることになるでしょう。この点については後ほど取り上げます。その時に、BYDについてある程度知っておくならば必ずプラスになるはずです。

    中国の方と会話をする時にも話題を広げることができます。特に男性であれば、車の話題はとても盛り上がります。もちろん、女性であっても知っておいて損はありません。BYDについて知っておくと「この人中国のことわかっているな」と思われることでしょう。

    旅行や留学などで中国に行く予定のある方にとっても、BYDについて知っておけば現地に行ったときの体験がより豊かなものとなります。

    ここからは中国語の言い方に慣れるため、BYDのことを中国の読み方比亚迪(bǐ yǎ dí)と表記していきます。この記事を読むときには中国語で発音を確認するようにし、自然と口から出てくるようにしましょう。

    中国のBYD

    比亚迪の主な特色

    2023年の時点で比亚迪は日本に進出、9月には「ドルフィン」という名のコンパクトカーが売られるようになりました。この車の名前のドルフィンは、中国語では海豚(hǎi tún)と呼ばれています。この海豚という中国語は、日本語に訳すとイルカという意味です。

    EV車は高いイメージがありますが、このドルフィンは200万円台で購入することができます。また、日本人にとって魅力的なのはコンパクトカーであるという点です。

    中国人と日本人の車に対するニーズの違い

    中国と日本では車に対するニーズが異なります。簡単にいうと、中国人が好きな車は大きい車です。

    zhōng guó rén xǐ huān dà xíng qì chē

    中国人喜欢大型汽车

    中国人は大きな車が好きです

    なぜ中国人は大きな車を好むのでしょうか?中国の検索エンジン百度で検索した結果、このように述べられていました。

    dà chē bǐ qǐ xiǎo chē gèng jiā dà qì

    1、大车比起小车更加大气

    小さな車よりも大きな車の方が堂々としている。

    dà chē kāi chū qù yǒu miàn zi

    2、大车开出去有面子

    大きい車はメンツが保てる。

    xiǎn dé zhěng gè rén de dàng cì dōu bèi wǎng shàng tái le yī gè tái jiē

    3、显得整个人的档次都被往上抬了一个台阶

    その人全体の品格がワンランクアップしたような感じを与えることができる。

    非常に興味深いのが、機能性よりも人に与える印象が重視されているということです。よく巷で耳にするこんな言葉があります。

    zhòng guó rén ài miàn zi

    中国人爱面子

    中国人はメンツを重んじる。

    中国文化では、他の人からどのように思われるかということが非常に重視されています。このメンツを重んじる考え方が、車の好みにも大きく影響しています。実際に日本車を中国に輸出する場合、車体を長くするなどの加工を加えた上で市場に出したりしています。

    中国には日本でいうところの軽自動車は存在しません。中国人は日本の軽自動車のことをK-Carと呼んでいます。

    日本人はコンパクトカーを好む

    日本人はコンパクトカーを好む傾向にあります。百度の中でもなぜ日本人はコンパクトカーを好むのか、疑問に思う声が載せられていました。ではなぜ日本人は小さい車を好むのでしょうか?

    大きな要因として、日本は人口密度が高く道が狭いことが挙げられます。道幅が充分でない場合は、小回りが利く車の方が便利です。コンパクトカーの方が駐車場を見つけやすいことも理由の1つとして挙げられます。対して中国は国土面積が非常に広く、狭い道で難儀することはあまりありません。

    日本では所得が多い有名人などでも、コンパクトカーを好む人もいます。こうした背景もあり、日本では小さい車に乗ったとしても、メンツを保てないということはありません。日本と中国では、自家用車に対する考え方が全く異なるということを覚えておきましょう。

    百度の中でもこんなコメントが載せられていました。

    rì běn rén duì yú chē de gài niàn hé wǒ men shì bù yī yàng de

    日本人对于车的概念和我们是不一样的

    日本人の車に対する考え方は私たちとは異なる。

    中国人に対してのみ車を売ることを考えれば、コンパクトカーを生産することにメリットのさほどありません。比亚迪は、明らかに日本市場を考慮に入れた上でコンパクト化を生産しています。

    比亚迪のシェア率

    拡大を続ける比亚迪のシェア率

    2023年に比亚迪はコンパクトカーのドルフィンの他にも、セダンのSEAL、SUVのATTO3、三種類を一気に日本市場に投入しています。これは比亚迪が本気で日本市場に参入していることを意味しています。

    比亚迪は中国国内においても自動車販売数が1位になりました。2008年以降、中国国内ではドイツのフォルクスワーゲンがナンバーワンだったのですが、ついにその立場が入れ替わりました。比亚迪は中国国内を制圧し、そのシェアを世界に広げ始めています。

    こんなにも勢いにある企業ですが、日本側にはほとんど情報が入ってきていません。背景としては、日本には電気自動車の利用がそれほど一般的になっていないという理由が挙げられるでしょう。日本ではガソリン車もしくはハイブリッド車の利用が一般的です。

    ただ、EUは2035年までにガソリン車の販売を禁止すると宣言しEV車への移行を推し進め、世界はクリーンエネルギーにシフトチェンジし始めています。

    その一方日本は2023年上半期月のEV(普通乗用車)の販売台数は2万2857台となっており、販売台数に対してわずか1.67%となっています。日本において、EVへの移行がいかに緩やかであるかがよくわかるデータです。

    比亚迪はクリーンカーの新たな市場といわれているコロンビア・ブラジル・タイ・イスラエルといった国で、自動車のシェアNo.1となっています。さらに、インド・オーストラリア・ニュージーランドなどの国においてもシェアトップ5に入っています。

    【自動車に関する中国語表現】

    yóu chē

    油车

    ガソリン車

    中国語で油は「」の意味だけではなく「ガソリン」の意味を指す場合があります。

    yóu diàn hùn hé dòng lì qì chē

    油电混合动力汽车

    ハイブリッド車

    」は電気の意味です。ガソリンと電気の動力が混ざり合った車、つまりハイブリット車を表します。

    xīn néng yuán qì chē

    新能源汽车

    電気自動車(EV)

    この3つの単語を覚えておきましょう。中国人と車の会話をするときには必ずと言っていいほど用いる言葉です。

    国際モーターショーで注目の的となる比亚迪

    2023年にドイツで行われた国際モーターショーで、1番大きいスペースを確保したのは比亚迪です。

    ドイツといえば車の国です。そのドイツで行われたモーターショーで1番大きなスペースを確保したわけですから、比亚迪がいかに世界で注目されているかがよくわかります。そしてその結果、非常に高い評価を得たのです。

    比亚迪が高い評価を得る理由

    なぜ比亚迪はそれほど高く評価されているのでしょうか?

    bǐ yǎ dí qì chē dì xìng jià bǐ gāo

    比亚迪汽车的性价比高

    比亚迪の自動車はコストパフォーマンスが高い

    性价比という言葉を中国では非常によく用います。値段に対して質が良い商品に対して性价比高といいます。

    比亚迪の自動車は、なぜここまでコストパフォーマンスが高いのでしょうか?その秘訣は電池です。

    diàn chí

    电池

    電池/バッテリー

    比亚迪の電池は非常に性能が良く、なんとライバル会社であるテスラに電池を供給するほどの性能を有しています。

    BYCのドルフィン

    比亚迪の成り立ち

    電池メーカーから自動車メーカーへ

    なぜ比亚迪の電池の技術はそこまで高いのでしょうか?それは比亚迪という企業の歴史と関係があります。

    まずは王伝福(wáng chuán fú)という北京の技術者が、1995年に電池会社を創業したことに始まります。この時代、日本の電池産業は非常に進んでいました。王伝福は日本に行って電池技術を学びます。

    その後、日本の技術を中国に持ち帰った王伝福は、その技術に改良を加え日本よりも安価で同程度のクオリティーの電池を作ることに成功します。それと同時期に世界で携帯電話が普及するようになり、王伝福にとってはまさに追い風でした。

    その後、自動車会社を買収し、自動車製造の技術を伸ばしていきます。一時期は日本の三菱自動車からエンジンを買って搭載することもあったようです。

    ハイテク化を目指す中国は、2010年にEVシフトを組み始めます。国を挙げてEV自動車を応援することにしたわけです。

    この時点で、比亚迪はすでに電池の技術と自動車の技術の両方を手にしていました。国の方針にマッチした技術を有した比亚迪はまず経済特区である深セン市のバスとタクシーのEV化を実現します。

    その後、王伝福は「電池革命」と呼ばれる発明を生み出します。これまでは電池に必要とされていたレアメタルに依存しない、リン酸鉄リチウムイオン電池とブレードバッテリーの発明です。この独自の発明により、比亚迪はテスラのような大企業に対しても、電池を供給するほどの技術を有するようになったのです。

    2022年に比亚迪はガソリン車完全撤退を宣言し、比亚迪は一気にEV生産台数1位の座を手に入れます。

    比亚迪の企業規模

    比亚迪の本社は、中国の経済特区深圳市にあります。この深セン市という場所には大企業が集まっています。

    BATHと呼ばれる中国の巨大企業分の本社も全てこの深圳市にあります。BATHについては下記の記事を参考にしてください。

    比亚迪の社員の数は、あの「世界のトヨタ」の従業員の倍の50万人です。この比亚迪の本社は非常に巨大で、比亚迪関連のビルを行き来するにも列車に乗る必要があるほどです。比亚迪はこのスカイレールですら自社で製造しています。比亚迪は深セン市の郊外に1つの街を作り上げたわけです。

    比亚迪の挑戦!日本で普及するか?

    比亚迪が日本で普及するための最も大きなハードルとなるのが充電インフラです。充電する場所を確保しなければなりません。

    この点に関して比亚迪は圧倒的な自信を持っています。なぜなら中国も10年前は国内に充電する場所はほとんどありませんでしたが、2023年現在で中国には至るところに充電する場所が整っているからです。

    比亚迪は2025年までに100店舗ディーラーを作ると宣言しています。これは全都道府県はカバーすることを意味します。これにより顧客が店舗において、比亚迪の車を自分の目で確認することができるようになります。

    これに対し日本の自動車企業はEVに関しては出遅れており、トヨタは2026年までに10モデルのEVを投入すると宣言しています。計画通りに2026年にトヨタが10モデルのEVを投入するときには、すでに比亚迪のディーラーが100店舗設置されていることになります。

    まとめ

    今回は中国で驚異的な成長を遂げる比亚迪について紹介しました。車に興味がない方にとっては少し退屈だったかもしれませんが、自動車は私たちの生活にとってなくてはならないものです。

    そして、中国のトップEV企業である比亚迪は、現在日本市場におけるシェア拡大しようとしており、すでに参入してきています。2026年の時点で日本の街中でどれほど比亚迪を見かけることになるか、目を離すことができません。

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