日本人はほとんどの中国のホテルに泊れない

  1. 中国経済・社会

お金さえ払えば、どこのホテルにでも泊まれると思っていませんか? この当たり前が、中国では通用しないケースがあることをご存知でしょうか。

「まさか!」と思われるかもしれませんが、実際に中国国内の多くのホテルでは、日本人を含む外国人旅行者が「泊めてください」とお願いしても、断られてしまうことがあるのです。一体なぜ、そんなことが起こるのでしょうか? この記事では、その背景にある理由と、安心して中国旅行を楽しむための具体的な対策を詳しく解説します。

予約したのに断られた?中国で外国人がホテルに泊まれない衝撃の理由と確実な対処法

夕暮れ時の中国のホテル街

中国のホテル事情、事前に知っておくべきこと

衝撃!中国でホテルに断られる「外宾」問題とは?

中国でのホテル予約は、日本と同様に、電話、インターネット(予約サイト)、旅行代理店を通じて行うのが一般的です。予約情報はホテル側で管理され、当日のチェックイン時に部屋が用意されているはずです。しかし、問題はチェックイン時に発生することがあります。

ホテル受付での典型的な断り文句

意気揚々と予約したホテルに到着し、パスポートを提示した瞬間、受付スタッフから予期せぬ言葉を告げられることがあります。それが、このフレーズです。

bùhǎoyìsi wǒmen lǚguǎn bùnéng jiēdài wàibīn

不好意思, 我们旅馆不能接待外宾。

(申し訳ございません、当ホテルでは外国人のお客様は受け入れておりません)

一つずつ単語を見ていきましょう。

  • 不好意思 (bùhǎoyìsi): 「すみません」「ごめんなさい」という謝罪や恐縮を表す言葉です。
  • 我们 (wǒmen): 「私たち」という意味で、ここではホテル側を指します。
  • 旅馆 (lǚguǎn): 日本語の「旅館」に近いですが、ホテル全般を指すこともあります。
  • 不能 (bùnéng): 「~できない」という否定の助動詞です。
  • 接待 (jiēdài): 日本語の「接待」とは少し異なり、「(客として)受け入れる、応対する」という意味合いです。

では、誰を受け入れることができないと言っているのでしょうか?

ホテルの受付で困惑する外国人旅行者

予約したはずなのに…なぜ?

「外宾」と「内宾」:外国人か、国内客かの違い

断りの言葉の最後に登場した 外宾 (wàibīn) こそが、この問題のキーワードです。これは「外国人のお客さん」を意味します。これに対する言葉が 内宾 (nèibīn) で、こちらは「国内(中国本土)のお客さん」を指します。

日本では、ホテルや旅館で宿泊客の国籍によって受け入れを拒否することは、原則としてありません。外国人観光客であっても、パスポート等で身分を確認し、料金を支払えば基本的に宿泊できます。しかし、中国では「外宾」であるという理由だけで、宿泊を断られるケースが少なくないのです。

特に、地方都市の安価なホテルや、個人経営の小さな旅館などでこの傾向が顕著です。予約サイトで予約できたとしても、当日フロントで「外宾は不可」と言われてしまうことがあるため、注意が必要です。

なぜ外国人だと断られるのか?「システムがない」の真意

突然の宿泊拒否に納得がいかず、「予約もしたのに、なぜ泊まれないんだ!」と詰め寄ると、ホテル側からは決まって次のような説明がなされます。

yīnwèi wǒmen lǚguǎn méiyǒu xìtǒng

因为我们旅馆没有系统。

(なぜなら、うちのホテルにはシステムがないからです)

系统 (xìtǒng)、つまり「システム」。一体何のシステムのことなのでしょうか? これは、「外国人の宿泊者情報を登録し、公安当局にオンラインで報告するための専用システム」を指します。このシステムが導入されていないホテルは、原則として外国人を宿泊させることができない、というわけです。

つまり、単なる差別や意地悪ではなく、法的な規制とそれに伴うインフラの問題が根底にあるのです。

外国人宿泊登録システムと公安への報告義務

なぜホテルは外国人の宿泊情報を「システム」に登録する必要があるのでしょうか? それは中国の法律に基づいています。

法律で定められた宿泊者情報の登録

中国では、国内の治安維持や人口管理の観点から、宿泊施設に対して宿泊者の情報を記録し、管轄の公安機関に報告することが義務付けられています。これは「中華人民共和国反テロリズム法」や「旅館業治安管理弁法(旅馆业治安管理办法)」といった法律・法規に基づいています。

国内の宿泊者(内宾)については、身分証(身份证)を提示させ、その情報を記録・報告します。一方、外国人(外宾)の場合は、パスポート情報を基に、氏名、国籍、パスポート番号、生年月日、ビザの種類、入国日、滞在期間などの詳細な情報を登録し、規定時間内(通常はチェックイン後数時間以内)に公安機関のシステムにアップロードする必要があります。

「系统(xìtǒng)」の正体:公安ネットへの接続端末

ホテル側が言う「システムがない」とは、この外国人宿泊者情報を公安当局のネットワークにオンラインで送信するための専用端末やソフトウェアが導入されていない、あるいはその利用資格(ライセンス)を取得していないことを意味します。

このシステムは、ホテルのフロントにあるコンピューターにインストールされ、パスポートリーダーと連携していることもあります。これにより、迅速かつ正確に情報を公安当局へ送信できるようになっています。

外国人宿泊登録システムのインターフェース画面

これが「系统(xìtǒng)」のイメージ。公安への報告が義務付けられている。

なぜ全てのホテルにシステムがないのか?

では、なぜ全てのホテルがこのシステムを導入していないのでしょうか? いくつかの理由が考えられます。

  • コストの問題: システムの導入には初期費用や維持費(ライセンス料、通信費など)がかかります。特に地方の小規模なホテルや安価な宿泊施設にとっては、外国人客の受け入れ頻度が低い場合、コスト負担が割に合わないと判断されることがあります。
  • 手続きの煩雑さ: システム導入や利用資格の申請には、公安当局への届け出や審査など、煩雑な手続きが必要となる場合があります。ホテル側がこれを手間だと感じ、導入を見送るケースもあります。
  • 需要の問題: 主に国内客(内宾)をターゲットとしているホテルでは、外国人客(外宾)を受け入れる必要性を感じていない場合があります。特に、外国語対応ができるスタッフがいない、外国人向けのサービスを提供できないといった理由も考えられます。
  • 政策的な背景: 以前は、外国人を受け入れられるホテル(「渉外ホテル」と呼ばれる)は厳しく制限されていました。規制緩和は進んでいますが、その名残や地域ごとの運用方針の違いから、依然として外国人を受け入れない(あるいは受け入れられない)ホテルが存在します。

これらの理由から、特に価格帯の低いホテルや地方都市のホテルでは、「外宾」の受け入れ体制が整っていないことが多いのです。

【重要】外国人が中国で確実にホテルに泊まる方法

せっかくの中国旅行で、宿無しのトラブルに見舞われるのは避けたいものです。では、どうすれば外国人が確実に泊まれるホテルを見つけられるのでしょうか? いくつかポイントがあります。

「渉外ホテル」を探すのが基本

まず基本となるのが、「渉外ホテル(shèwài jiǔdiàn)」と呼ばれる、外国人宿泊客の受け入れが許可されているホテルを選ぶことです。これらは、前述の公安システムが導入されており、外国人対応に慣れている場合が多いです。

一般的に、国際的なブランドのホテルチェーンや、星付き(特に三つ星以上)のホテルは渉外ホテルであることがほとんどです。しかし、見た目だけでは判断できない場合もあるため、以下の方法で確認するのが確実です。

大手ホテル予約サイト(Ctrip, Booking.comなど)の活用法

最も効率的で確実な方法の一つが、大手ホテル予約サイトを利用することです。これらのサイトでは、外国人の宿泊可否に関する情報が記載されていることが多いです。

  • フィルター機能の活用: 多くの予約サイトには、宿泊者タイプ(例:「外国人」「内宾」)や「外国人受け入れ可」といった条件で絞り込むフィルター機能があります。これを活用しましょう。中国国内で最も普及している予約サイトの一つである「Ctrip(携程)」などでは、検索結果やホテル詳細ページに「外宾可接待(外国人の受け入れ可)」といった表示があるか確認できます。Booking.comやAgodaなどの国際的なサイトでも、同様の情報や注意書きがある場合があります。
  • ホテルポリシーの確認: 予約を進める前に、ホテルの詳細情報やポリシー欄をよく確認しましょう。「Important Information」や「宿泊施設ポリシー」といった項目に、「Only Mainland Chinese citizens are allowed to stay(中国本土の国民のみ宿泊可能)」や「This property reserves the right to release the room after 18:00 on the day of check-in. Guests who plan to arrive after this time should contact the property directly. The contact information can be found on the confirmation letter. Please note that the property does not accept foreign guests.(当施設は、チェックイン日の18:00以降、客室を販売する権利を有します。この時間以降に到着予定のお客様は、事前に直接宿泊施設までご連絡ください。連絡先は予約確認書に記載されています。なお、当施設では外国人のお客様は受け入れておりません。)」といった記載がないかチェックします。
  • 予約確認書の保持: 予約サイトを通じて予約した場合、予約確認書を印刷またはスマートフォンに保存しておきましょう。万が一、フロントで問題が発生した場合の証明になります。
ホテル予約サイトで「外国人宿泊可」を確認する画面

予約サイトのフィルターや注意書きを必ず確認しよう

星付きホテル(三つ星以上)は比較的安心

一般的に、中国ではホテルの星の数が信頼性の一つの指標となります。三つ星以上のホテル、特に四つ星、五つ星クラスのホテルであれば、ほぼ確実に外国人(外宾)の受け入れ体制が整っています。これらのホテルは、国際基準のサービスを提供することを目指しており、外国人宿泊登録システムも導入されていることが通常です。

もちろん、予算との兼ね合いもありますが、特に初めての中国旅行や、地方都市への訪問で不安な場合は、少し奮発してでも星付きホテルを選ぶと安心感が増します。

事前の電話確認も有効な手段

予約サイトの情報だけでは不安な場合や、特定のホテルにどうしても泊まりたい場合は、予約前に直接ホテルに電話して確認するのも有効な手段です。中国語または英語で、「外国人は宿泊できますか?(外国人可以入住吗? Wàiguórén kěyǐ rùzhù ma? / Can foreigners stay here?)」と尋ねてみましょう。

ただし、電話口のスタッフが必ずしも正確な情報を把握しているとは限らない場合や、言語の壁がある可能性も考慮に入れる必要があります。国際的なホテルチェーンであれば、英語対応可能なスタッフがいる可能性が高いです。

もしホテルに断られたら?冷静な対処法

万全の準備をしていても、予期せぬトラブルは起こり得ます。もし予約したホテルで「外宾は泊まれない」と断られてしまった場合、どのように対応すればよいでしょうか? パニックにならず、冷静に対処することが重要です。

予約確認書を見せて交渉する(予約サイト経由の場合)

大手予約サイト経由で予約し、サイト上で「外国人宿泊可」の記載があったにも関わらず断られた場合は、まず予約確認書(メールやアプリ画面)を提示しましょう。サイトを通じて正式に予約が成立していることを伝え、ホテル側に再度確認を促します。

それでも受け入れられない場合は、予約サイトのカスタマーサポートに連絡を取るのも一つの手です。状況を説明し、代替のホテルを探してもらうなどのサポートを受けられる可能性があります。ただし、すぐに対応してもらえるとは限らないため、次の手も考えておく必要があります。

近くの「渉外ホテル」を探す

最も現実的な対処法は、その場でスマートフォンの地図アプリやホテル予約アプリを使って、現在地周辺の外国人受け入れ可能なホテル(渉外ホテル)を探し、連絡を取ることです。前述の通り、星付きホテルや国際ブランドのホテルが比較的見つけやすいでしょう。

断られたホテルのスタッフに、近くに外国人でも泊まれるホテルがないか尋ねてみるのも良いでしょう。親切なスタッフであれば、教えてくれるかもしれません。

旅行会社や現地の知人に相談する

もしツアーで旅行している場合は、すぐに旅行会社の担当者やガイドに連絡を取り、対応を依頼しましょう。個人旅行の場合でも、中国に知人や友人がいれば、電話で助けを求めることができます。現地の事情に詳しい人がいれば、スムーズに解決できる可能性が高まります。

ホテル以外での宿泊と「臨時宿泊登記」

中国滞在中、ホテルではなく友人や知人の家に泊まるというケースもあるかもしれません。この場合、ホテルでの宿泊とは異なる手続きが必要になるので注意が必要です。

友人・知人宅に泊まる場合も手続きが必要

中国では、外国人がホテル以外の場所(例えば、個人宅、会社寮、学校寮など)に宿泊する場合、「臨時宿泊登記(临时住宿登记 / Línshí Zhùsù Dēngjì)」と呼ばれる手続きを、管轄の公安局派出所で行う必要があります。

これは、ホテルが宿泊者の情報を公安システムに登録する代わりに行う手続きで、「中華人民共和国出境入境管理法」によって義務付けられています。都市部では到着後24時間以内、農村部では72時間以内に届け出る必要があります。

臨時宿泊登記の手順と注意点

手続きは、宿泊先の家主(友人や知人)と一緒に行うのが一般的です。必要なものは主に以下の通りですが、地域によって異なる場合があるため、事前に管轄の派出所に確認することをおすすめします。

  • 宿泊する外国人本人のパスポート(原本とコピー)
  • 有効なビザまたは居留許可証(原本とコピー)
  • 宿泊先の家主の身分証(原本とコピー)
  • 宿泊先の賃貸契約書や不動産権利書など、住所を証明する書類(コピー)
  • 派出所で受け取る申請用紙(臨時住宿登记表)

手続き自体は通常、書類に記入し提出すれば、その場で「臨時宿泊登記表(外国人住宿登记凭证)」という証明書が発行されます。この証明書は、ビザの延長申請や他の行政手続きで必要になる場合があるため、大切に保管してください。

公安局派出所での臨時宿泊登記のイラスト

友人宅などに泊まる場合は、臨時宿泊登記を忘れずに

無届け滞在のリスク

臨時宿泊登記を怠ると、法律違反となり、警告や罰金(最高2000元)が科せられる可能性があります。また、将来的なビザ申請などに影響が出る可能性も否定できません。短期の滞在であっても、友人宅などに宿泊する場合は、必ずこの手続きを行うようにしましょう。家主にも協力してもらうことが重要です。

まとめ:中国旅行で快適な宿泊先を見つけるために

中国で外国人(外宾)がホテルに泊まれないという問題は、主に公安当局への宿泊者情報登録システムが導入されていないホテルが存在するためです。決して全てのホテルが外国人を拒否しているわけではありませんが、特に安価なホテルや地方のホテルでは注意が必要です。

快適な中国旅行を楽しむためには、以下の点を心がけましょう。

  • 事前の情報収集と予約: 大手予約サイトを活用し、「外国人受け入れ可」のホテルを選び、ポリシーをよく確認する。
  • 渉外ホテルや星付きホテルを選ぶ: 特に不安な場合は、三つ星以上のホテルや国際ブランドのホテルを選ぶと安心。
  • 予約確認書の携帯: 万が一のトラブルに備え、予約確認書をすぐに提示できるようにしておく。
  • 友人宅宿泊時の臨時宿泊登記: ホテル以外に泊まる場合は、忘れずに派出所で臨時宿泊登記を行う。
  • 最新情報の確認: 中国の政策や状況は変化する可能性があるため、旅行前に最新情報をチェックするよう心がける。

少しの手間と知識があれば、中国でのホテル探しは決して難しいことではありません。しっかりと準備をして、素晴らしい中国旅行をお楽しみください!

author avatar
ヤン・ファン (楊芳) この記事を書いた人

講師育成で知られる中国・東北師範大学卒業。講師歴は14年に及び、特に日系企業の駐在員やビジネスパーソン向けの指導経験が豊富です。現役の日中医療通訳士としても活動し同行・商談通訳等にも対応可能です
基礎からの正確な発音指導、ビジネス中国語、赴任前短期集中レッスン、HSK・中国語検定対策、日中医療通訳トレーニング。クイック・レスポンス、シャドウイング等の通訳訓練法をレッスンに導入し、実践的なコミュニケーション能力の効率的な習得をサポートします。企業研修(対面・リモート)、個人・グループレッスン、同行・商談通訳等にも対応可能で教材作成、レッスンカリキュラム、講師育成など幅広い分野で活躍。

\ まずは、お試しレッスン!  /

中国語教室をお探しの方へ、中国国人講師を条件を絞り込んで全国から探すことができます。中国語を学ぶのに最適なカフェマンツーマンレッスンです!教室よりも簡単・経済的に学べる!まずは、無料体験レッスン

 中国語教室をお探しの方へ。全国から中国人先生を条件に合わせて絞り込んで探すことができます。
 中国語を学ぶのに最適なカフェでのマンツーマンレッスン!教室よりも簡単かつ経済的に学べます。優秀な講師によるプライベートレッスンが評判。

  • まずは無料体験レッスン>

    中国語マンツーマン

    納得いくまで何度でも!無料体験レッスン

    無料体験レッスンをお受けになっても、ご入会の義務はございません。

    講師からの強引・一方的な勧誘は一切ありません。

    入会後も相性が合わないと思ったら、いつでも先生を変更可。

  • 近くの中国語先生を検索する>

    中国語マンツーマン

    場所・時間を選ばない柔軟な受講スタイル

    担任制で挫折知らず!目標達成まで伴走

    LINEでいつでも質問OK!自宅学習を徹底サポート

    自分のやりたいペースでオーダーメイド安心して学べる。

  • 卒業生のご感想はこちら>

    中国語マンツーマン

    「友人と中国語で気兼ねなく会話を楽しむ」ことが、可能になりました。

    カフェのリラックスした雰囲気の中で、先生との自然な会話を通じて、生きた言葉を身につけることができました

    すぐに質問でき、その場で丁寧な解説を受けることができ効率的。

    言語を向上させるだけでなく、異文化理解にも繋がった。

\ まずは、お試しレッスン!  /

\\まずは無料お試しレッスン!//
近くの中国語先生とマンツーマン
\\まずは無料お試しレッスン!//
近くの中国語先生とマンツーマン