中国の自撮りブームを徹底解析!文化背景と撮影事情の違い

  1. 中国経済・社会

中国の方はとにかく自分撮りが大好きです。中国の街中ではしょっちゅう「自撮り」をしている人を見かけます。

それには現代の中国社会における価値観が強く影響しています。また、過剰すぎる「自撮り」ブームがもたらす弊害を懸念する声もあがっています。

中国の自撮りブームを徹底解析!文化背景と撮影事情の違い

中国国内で加熱し続ける「自撮り」ブーム

スマートフォンの普及に伴い、世界中で自分撮りがすごい人気となりました。日本でもSNSの普及に伴い「インスタ映え」という言葉が頻繁に聞かれるようになりました。

自分が撮影したものを共有して他の人に見てもらう、自分の生活をいかにしてより良く他の人に見せるか、多くの人はそんなことを気にしながら毎日を過ごしています。

中国では日本以上に「自撮り」が加熱しており、中国国内のスマーフォン業界もそんなニーズに応えるべく、「自撮り」機能に特化したモデルを次々と売り出しています。

今回は、中国で加熱し続ける「自撮り」ブームと、懸念される問題点について紹介します。

「自撮り」は中国語で何という?

中国の女性の間では自分撮りが主流となっています。

zì pāi

自拍

自撮り

zì pāi gān

自拍杆

自撮り棒

中国ではテンセント社が開発した「魅拍」という「自撮り」アプリが大人気を集めたことがあります。

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美白,瘦脸, 磨皮,丰胸, 放大眼睛

美白、顔やせ、肌のゴミ取り、豊胸、ぱっちりおめめ

日本なら、これにマツエクも加わるところでしょうか。

ネット上には、あごが細くておめめぱっちり、ななめ上から撮られたリカちゃん人形そっくりの「自撮り」の写真があふれています。

スマホで自撮り

自撮りにスマートフォンが重宝される理由

スマートフォンが普及する前は、中国ではデートの時によく男性がカメラを首からぶらさげていました。中国では女性を撮ってあげるのが普通のデートスタイルなのです。

しかし、問題は写真を撮った後です。一眼レフはプリクラではありません。昨今のカメラは解像度が高く、ハイエンドであればあるほどシワもくっきり、シミもくっきり見えてしまいます。

目をつぶっちゃったなんてのはいいほうで、二重あご・つりあがった目・たるんだほうれい線など、よっぽどの技術がないかぎり、彼女の満足する写真などとうてい撮れません。

qiān wànbu ýào ràng nán péng you gěi nǐ pāi zhào

千万不要让男朋友给你拍照!

絶対彼に自分の写真をとらせちゃダメ!

女の子なら、自分をうんと可愛く撮りたいというのは当たり前。中国の人気キャスター柴静や、ハリウッドのジュリア・ロバーツがフォトグラファーと結婚した気持ちもわかるというものです。

そんな女性たちのニーズを満たしてくれるのがスマートフォンです。スマートフォンはコンパクトで持ちやすく、片手に持って「自撮り」が可能です。

大事なのがスマートフォンのアプリを用いて、写真を加工することができるということです。「自撮り」した写真を自分の満足の行くようにアプリで加工して、そのままSNS上にアップロードすることができます。

中国では、写真の修正はほぼ当たり前にされています。北京で外国人が開く合コンパーティでは、時々「入り口に応募していただいた女性の顔写真を貼っておきます。写真と実物があまりに違う方は入れません」という但し書きがあるなど、中国では写真の加工が日常的に行われていることを見て取れます。

中国で自撮りが人気の理由

中国で「自撮り」が加熱する背景

「自分を良く見せたい」という気持ちは誰にでもあるものです。中国のこうした風潮は理解できるのですが、「なんでそこまでするの?」と違和感を覚える人もいることでしょう。

中国人の美の基準

中国で「自撮り」が加熱していることには、現在の中国社会の価値観が強く影響しています。一つは、中国人の「きれい」に関する基準が人間離れしていることです。

中国の若い女性の「きれい」の基準は、まず異常なまでに痩せていることです。あごは錐(きり)のようにシャープで、目は西洋人形のように大きくなければなりません。そしてニキビやシワが1つもなく、少女どころか乳幼児のような肌でなければなりません。

実際に中国のSNS社会では、面白い表情を作った「変顔」や個性的な写真より、「颜值」(yán zhí;顔面偏差値)が高い写真が好かれる傾向にあります。きれいな顔だったら変顔でもきれいだが、そもそも「きれいでないと意味がない!」という暗黙のルールがあります。

欧米の若者のように「リアル」で活気ある笑顔が最高、というものとは根本的に異なります。

美貌を武器に売り出す「网红」(wǎng hóng;ワンホン、ネットアイドル)は、全員このような顔をしているので「网红颜」(wǎng hóng yán)と呼ばれ、多くの若い女性があこがれの対象になっています。

网红」はSNSなどで活動することで経済的利益も得ようとするので、実際に美容整形に踏み切ったり、念入りにメイクしたりします。ただ、もっときれいになりたいと願う一般の中国人女性は、そこまですることはできません。

時間的にも資金的にもそこまでの余裕はないのです。「それではどうすればいいのか?」という疑問が残ります。

ネットの世界で「理想の自分に」

もう一つの要因は、中国ではオシャレする機会はあまり多くないということです。

現実の世界では、ほとんどの会社で制服の着用を求められることはなく、カジュアルな服装にすっぴんで過ごします。そのため、オシャレしてきれいになる機会があまりありません。

「化粧のテクニックを身に付けるまでには時間がかかるし、毎日化粧すると変なことを言われるし、肌にもよくない、実際にオシャレしようとするとお金と費用もかかる。だから短時間で理想的な化粧した自分を作るには自撮りしかない」

「整形や化粧ができないなら、テクノロジーの力を借りて、顔を細くして目は大きく、肌を白く、脚も長くして、理想の自分を作り上げてSNSに投稿すればいいのではないか」と、このように考えるのです。

このような理由から、現実社会から脱却してネット社会で理想的な自分を持とうとする心理が生まれます。そして、この心理こそが中国の「自撮り」ブームを促しているのです。

若者の「承認欲求」を満たす手段

中国の若者が使うSNSに「自撮り」を投稿すると、友達から「いいね!」を意味する「点赞」(diǎn zàn)を押してもらえ、「かわいい」という褒め言葉が次々と寄せられます。そして「どの加工アプリを使ってる?」などとコメントまでもが矢継ぎ早に届きます。

こうした反応は、中国の若者たちが実社会で得難く感じている「承認欲求」を満たしてくれるものとなっています。

「自撮り」に関する中国語

流行語としての「打卡」

打卡」(dǎ kǎ)とは、元々は「出退勤の際にタイムカードを打つ」という意味でした。それが「日々の記録を共有する」「流行の発信地を撮影する」といった、流行語として使われ始めています。「打卡胜地」(dǎ kǎ shèng dì;打卡の名勝地)といった言葉も生まれてきています。

中国国内の観光調査によると、2023年上半期の国内観光客総数は23億8,400万人で、前年同期比で9億2,900万人増加、前年比63.9%増加となっています。

中国国内で爆発的に増加している旅行者の数ですが、その背景には中国のコロナ政策が開放されたことと、「网红」による「打卡」の記録が共有されたことが主な理由です。

中国青年報社の調査によると、旅行先だけでなく、レストランの予約や映画鑑賞など、幅広い領域で「打卡」を意識した選択が広まりつつあり、若者の81%が自身または周囲で「打卡」が一般化していると回答しています。

「颜值」を求める中国人

そしてすでに紹介したネット用語「颜值」(yán zhí)という言葉は、もともとは顔の偏差値を表す言葉だったものが徐々に「見映え全般」に用いられるようになりました。

打卡」をする人は、ひたすらこの「颜值」の高いものを探し求めます。日本に来る中国人旅行者も「颜值」の高いものに集まります。

例を挙げると、日本の「駅弁」は「颜值」が高いとして非常に人気を博しています。温かくなければ料理ではないと考える中国人にとって、冷たい駅弁は必ずしも美味しいと感じるものではありません。

しかし何といっても駅弁は「颜值」が高いのです。冷たいという弱点さえも「颜值」の高さで克服し、今では中国人観光客の間で日本の駅弁は大人気となっています。

こうした中国人の動向を理解したうえで、日本の観光業界も「颜值」の高いもので中国人観光客を呼び寄せようとしています。

自撮りの弊害

「自撮り」行為の弊害

中国社会で当たり前となった「自撮り」行為ですが、その弊害も大きいと懸念する声が絶えません。

道徳心のない行動

例を挙げると、中国の景勝地で意識を無くして倒れている観光客の女性を背景に、笑顔で「自撮り」する中年女性の動画が多くの人々の怒りを買っています。

2023年6月、中国東部に位置する中国江蘇省無錫市内の錫恵公園内の山道で、足を滑らせて崖下に転倒してしまった観光客の女性がいました。

女性は川岸でうつ伏せのまま身動きひとつせず意識が無い状態で、女性の周りに人は見当たらなかったのですが、対岸では中年女性がスマートフォンを取り出し、倒れている女性を背景に満面の笑みを浮かべて「自撮り」する姿があったのです。

幸い倒れている女性の命は無事だったようですが、この時の様子を捉えた動画が中国のSNSに投稿されると次々と拡散され、多くの人々の注目を集め、次のような声が上がりました。

「人でなし!」

「なんて薄情なおばさんなんだろう。満面の笑みを見せるなんて!」

「悪魔のようだ!」

「自撮りしてないで助けに行けよ!」

「今の世の中ってこういう人増えたよね」

SNSで注目を集めるためか、「自撮り」のために時と場所を選ばず、このような無慈悲な行動をとることを厭わない人たちが増えているようです。

日本でも注目を集めるためにあえて人の迷惑となることをする「迷惑系ユーチューバー」の行為が問題視されたことがあります。アメリカでも2021年10月に、亡くなった父親が眠る棺の前でポージングした写真をSNSに投稿した「インスタグラマー」の女性に非難が殺到したことがあります。

「自撮り」をして自分が楽しむ分には全く問題がありませんが、このように道徳心のかけた行為は、中国でも非常に問題視されています。

「自撮り」依存症

中国の若者たちは「自撮り」によって、ネット社会で理想的な自分を形成し「承認欲求」を満たそうとしていることについて取り上げました。「自撮り」のもう一つの弊害として、あまりにはまると精神病になってしまうということです。

zì pāi shàng yǐn

自拍上瘾

自撮り依存症

この「上瘾」(shàng yǐn)というのは中毒という意味で、お酒・タバコ・ネット・麻薬・脱法ハーブなど、習慣性のあるものに溺れてしまうことを指します。

人が「自拍上瘾」になってしまう要因の一つに、テクノロジーの技術により、あまりにも自分の画像をきれいに加工できてしまうことが挙げられます。

いくらきれいに写真を加工したところで、自分そのものがきれいになっているわけではありません。写真の自分がきれいになればなるほど、現実の自分とのギャップが生まれることになります。

自分の写真をきれいに加工できると、友達から「いいね!」をたくさん受け取ることができます。自分の作った作品を褒めたもらえた時の快感はなかなか忘れることができず、まるで薬物に溺れてしまうかのように病みつきになってしまいます。

しかしきれいに加工した写真を投稿すればするほど、本当の自分とのギャップは広がるばかりです。「本当の自分はこんなにきれいじゃないのに…」という葛藤を抱えながら、画像をアップロードする日々が続きます。

せっかく一生懸命写真を加工しても、自分が期待するほどの反応が得られないことも多々あります。実際の自分とのギャップに耐えられなくなったり、失敗した作品への幻滅は、本人に強烈な精神的ダメージを与えるものとなり、中には自殺まではかる人もいるのです。

「自撮り」機能を備えたスマートフォンにしても、SNSにしても、その意義は人間の生活をより便利に、豊かにするためのものです。「一番大切なのは生身の自分なのだ!」ということを忘れないようにしたいものです。

まとめ

今回は中国の「自撮り」ブームについて紹介しました。「自撮り」した画像をいろいろ加工してみるのはとても楽しいですね。

ただし今回の記事で指摘したように、「自撮り」ブームには様々な問題点もあります。「自撮り」する際には、くれぐれも人に迷惑をかけたり、自分を傷つけたりしないようにしましょう。

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