MINISO:日本を装った中国ブランドが世界で成功する秘密

  1. 中国経済・社会

【徹底解剖】MINISO(メイソウ)は日本のパクリ?世界80カ国を席巻する中国発”日本風”ブランドの光と影

海外のショッピングモールで、ユニクロのようなロゴ、無印良品のような店内、ダイソーのような価格帯の雑貨店「MINISO(メイソウ)」を見かけたことはありませんか?多くの人が日本のブランドだと信じていますが、その正体は巧妙な戦略で世界を席巻する中国企業です。この記事では、MINISOの成功の秘密と、その背景にある中国人消費者の複雑な心理を徹底的に解き明かしていきます。

MINISOの戦略や中国人の消費行動を理解するには、その国の文化や価値観を知ることが不可欠です。ビジネスや交流の場で一歩先を行くために、中国語教室で現地の言葉と文化を学んでみませんか?

第1部:世界を席巻する「日本風」ブランド、MINISOの正体

海外で生活する日本人が日本のものを恋しく思うように、世界の多くの人々もまた「日本製」あるいは「日本風」のデザインや品質に魅力を感じています。その心理を巧みについて急成長したのがMINISOです。中国や台湾のあらゆる街角、そして今や世界80以上の国と地域で4,300店舗以上を展開するこの巨大チェーンの正体に迫ります。

ユニクロ+無印良品+ダイソー?絶妙なブランド戦略

MINISOの成功の根幹には、日本の有名ブランドを組み合わせたかのような、緻密な模倣戦略があります。

  • ロゴと外観: 赤地に白抜きのロゴは、多くの人がユニクロを想起させます。シンプルでクリーンな店舗デザインは、無印良品(无印良品: wúyìnliángpǐn)のミニマリズムを感じさせます。
  • 商品と価格: 店内に並ぶのは、デザイン性の高い雑貨や化粧品、文房具。そのコンセプトと手頃な価格帯は、日本の100円ショップの巨人、ダイソーを彷彿とさせます。実際、MINISOの中国語名「名创优品」の「名创」はメイソウと発音し、「ミニソー」とも聞こえるため、ダイソーを意識していることは明らかです。

この「いいとこ取り」戦略により、消費者は「ユニクロや無印のようなオシャレなデザインの商品が、ダイソーのような価格で手に入る」という、極めて魅力的な価値提案を受け取ることになるのです。

「100%日本品質」と謎の日本人デザイナー

MINISOが巧妙なのは、デザインの模倣だけではありません。ブランドの背景に「日本」を強く感じさせるストーリーテリングを徹底しています。

初期の店舗では「100%日本品質」というスローガンが堂々と掲げられ、三宅順也氏という精悍な日本人デザイナーが創業者の一人として紹介されていました。彼のプロフィール写真が店内に大きく飾られ、消費者に「日本のデザイナーが監修するブランド」という強力な印象を与えました。

さらに、商品の値札やパッケージには日本語表記が多用され、その上から中国語の翻訳シールが貼られていることもありました。これは、海外の消費者に対して「日本から輸入(进口: jìnkǒu)された製品である」かのような錯覚を意図的に生み出すための演出でした。

日本人が見抜く「奇妙な日本語」の秘密

しかし、中華圏に住む日本人がMINISOの店内を注意深く見ると、すぐにその「化けの皮」に気づきます。その理由は、商品に使われている日本語が、ネイティブから見ると明らかにおかしいからです。

yīnwèi chǎnpǐn de rìyǔ hěn qíguài

因为产品的日语很奇怪

商品の日本語がとってもおかしいから

例えば、現代の日本語ではまず使われない歴史的仮名遣いの「ゐ」が商品説明に含まれていたり、文法的に不自然な表現が散見されたりします。これは、おそらく翻訳ツールなどを頼りに日本語ラベルを作成した結果でしょう。中国人消費者には「日本の文字」としか認識されませんが、日本人にとっては日本製ではない動かぬ証拠となるのです。

MINISO風の製品タグに書かれた、不自然で面白い日本語のクローズアップ写真。

不自然な日本語表記は、ブランドの出自を見抜く手がかりとなります。

創業から上場まで:MINISOの驚くべき成長ストーリー

MINISOの正体は、広州に本社を置く純然たる中国企業です。創業者の葉国富氏は、この「日本風」コンセプトで2013年に事業を開始し、わずか数年で中国国内に巨大な店舗網を築き上げました。そしてその勢いは止まらず、2020年にはニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場を果たします。

日本にも「海外進出の実績作り」のためか、一時期は池袋や高田馬場に店舗を構えていましたが、日本ではそのビジネスモデルが通用せず、数年で閉店に追い込まれています。(2024年現在、再び日本国内で店舗展開を進めている動きもあります)。しかし、世界的に見ればその成長は驚異的であり、そのマーケティング手法は多くのビジネススクールで研究対象となるほどです。

第2部:なぜ「日本風」は売れるのか?中国人の消費心理と爆買いの深層

MINISOの成功は、なぜ「日本ブランド」を装う戦略がこれほどまでに有効なのか、という問いを投げかけます。その答えは、中国人観光客が日本で「爆買い」を行う背景にある消費心理と深く結びついています。

理由1:日本の人口を超える「富裕層・中間層」の存在

中国の貧富の差は大きいですが、その人口の絶対数を忘れてはなりません。中国の人口約14億人のうち、たとえ10%が富裕層だとしても、その数は1億4000万人となり、日本の総人口を上回ります。この膨大な数の富裕層が、高い購買意欲を持って市場を牽引しているのです。

さらに重要なのは、近年急速に拡大している中間層です。彼らもまた、生活水準の向上に伴い、より良い品質、より良いデザインの製品を求めるようになっており、海外旅行やブランド品消費の主役となりつつあります。

日本のデパートの免税カウンターで、たくさんの買い物袋に囲まれて微笑む中国人観光客。

「爆買い」は、中国の巨大な経済力と消費意欲を象徴する光景です。

理由2:「日本製品=高品質」という揺るぎない神話

中国人消費者にとって、「日本製」という言葉は、今なお「高品質」「安全」「信頼」の代名詞です。化粧品、医薬品、家電、ベビー用品に至るまで、多くの分野で日本製は絶対的な信頼を得ています。これは、日本の製造業が長年にわたって築き上げてきたブランドイメージの賜物です。MINISOは、この強力な「日本製神話」に巧みに便乗し、自社製品にそのイメージを投影させることで成功しました。

理由3:ステータスシンボルとしての日本ブランド

「成功=金持ち」という価値観が根強い中国社会では、何を持っているかがその人の社会的地位(ステータス)を示す重要な指標となります。中国製の車や化粧品ではなく、海外の有名ブランド、特に信頼性の高い日本ブランドの製品を所有し、使用することは、自身の経済力とセンスを周囲にアピールするための有効な手段なのです。日本へ旅行し、そこで「爆買い」すること自体が、友人や知人に対する一種のステータス報告となる側面もあります。

理由4:根深い自国製品への不信感 – なぜ中国製品は信頼されないのか?

日本製品への絶大な信頼は、裏を返せば、自国の製品に対する根強い不信感の表れでもあります。利益最優先の考え方が蔓延する一部の企業では、安全や品質を軽視した製品作りが後を絶ちません。過去に起きた粉ミルクへのメラミン混入事件のような深刻な食品安全問題や、すぐに壊れる粗悪な工業製品の記憶が、消費者の心に深く刻まれています。

その結果、「どうせ買うなら、少し高くても信頼できるものを」という心理が働き、それが日本製品への需要、ひいては「爆買い」に繋がっているのです。

【深掘り解説】中国の品質問題を象徴する自動車業界の事例

自国製品への不信感は、自動車のような高額商品でより顕著になります。海外の自動車メーカーが中国で車を生産・販売する場合、多くは中国企業との合弁会社(合资车: hézīchē)を設立する必要があります。

合资车和进口车看起来一模一样, 但是合资车不结实, 进口车才结实。

hézīchē hé jìnkǒuchē kànqǐlái yìmúyíyàng, dànshì hézīchē bù jiēshi, jìnkǒuchē cái jiēshi.

「合弁会社の車と輸入車は見た目はそっくり。でも合弁車は頑丈じゃなく、輸入車こそが頑丈だ」

これは、中国の車事情に詳しい人々の間でよく言われる言葉です。例えば、日本で製造され輸入された車(进口车: jìnkǒuchē)のバンパー(衝撃吸収材)には軽くて強いアルミ合金が使われているのに対し、中国の合弁工場で生産された同じブランドの車では、コストの安い鋼鉄製で、しかも構造が簡略化されているケースがあります。

見た目ではわからないこうした「見えない手抜き」が、事故時の安全性に直結することを消費者は知っています。だからこそ、確実な品質を求め、わざわざ日本で製品を購入しようとするのです。

日本製(高品質アルミ)と中国市場向け(安価な鋼鉄)の自動車部品を比較し、品質の違いを示す技術写真。

目に見えない部分の品質こそが、ブランドへの信頼を左右します。

MINISOのその後と日本ブランドが学ぶべきこと

世界的な成功を収めたMINISOですが、その戦略は諸刃の剣でもあります。「日本風」戦略が批判を浴びることも増え、近年ではロゴからカタカナを排し、よりグローバルなブランドイメージへと舵を切る「脱・日本風」の動きも見られます。これは、模倣から生まれたブランドが、次のステージとして独自のアイデンティティを模索し始めた証拠と言えるでしょう。

このMINISOの事例から、日本のブランドが学ぶべき点は少なくありません。それは、日本のブランドイメージや品質が、海外市場において今なお強力な資産であるという事実の再確認です。しかし、その資産に胡坐をかくのではなく、MINISOのような新興勢力のスピーディーな商品開発や巧みな価格戦略、デザイン力を常に分析し、競争力を維持し続ける努力が不可欠です。

結論:MINISOと爆買いから見える現代中国のリアル

MINISOの成功と中国人の爆買い現象は、一見異なる事象のようで、その根底では深く繋がっています。それは、「信頼できる良いものを、賢く手に入れたい」という消費者の普遍的な願いと、中国の国内市場が抱える品質問題という構造的な課題です。

MINISOは、そのギャップに「日本風」という名の橋を架けることで巨大なビジネスチャンスを掴みました。そして消費者は、その橋が本物でないと知りつつも、その利便性とデザイン性を享受し、あるいは本物の「日本製」を求めて国境を越えます。

これらの現象を単に「パクリ」「金満主義」と切り捨てるのではなく、その背景にある複雑な社会構造と消費者心理を理解すること。それこそが、グローバル化する世界で、巨大な隣人である中国と向き合っていく上で、私たちに求められる視点なのではないでしょうか。

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ヤン・ファン (楊芳) この記事を書いた人

講師育成で知られる中国・東北師範大学卒業。講師歴は14年に及び、特に日系企業の駐在員やビジネスパーソン向けの指導経験が豊富です。現役の日中医療通訳士としても活動し同行・商談通訳等にも対応可能です
基礎からの正確な発音指導、ビジネス中国語、赴任前短期集中レッスン、HSK・中国語検定対策、日中医療通訳トレーニング。クイック・レスポンス、シャドウイング等の通訳訓練法をレッスンに導入し、実践的なコミュニケーション能力の効率的な習得をサポートします。企業研修(対面・リモート)、個人・グループレッスン、同行・商談通訳等にも対応可能で教材作成、レッスンカリキュラム、講師育成など幅広い分野で活躍。

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