「中国人は財布を持たない」という話を聞いたことはありませんか?実際に中国の都市部を歩くと、レストランや大型スーパーはもちろん、道端の小さな青果店、移動式の屋台、タクシー、さらにはお寺のお賽銭箱に至るまで、至る所に支払い用のQRコードが掲示されています。

これから中国へ渡航する予定の方や、語学学習を通じて現地の文化に触れている方にとって、「本当に現金は使えないのか」「現地の人々はどのように日常の支払いをしているのか」という疑問は、非常に気になるところでしょう。言葉の壁に加えて決済の壁があると、買い物のハードルが大きく上がってしまいます。本格的に学び、現地の人と同じようにスムーズなコミュニケーションを取りたい方は、中国語教室での実践的な会話練習も大変役立ちます。

本記事では、中国で財布を持たないライフスタイルが定着した歴史的・社会的な理由から、2種類のスマホ決済の仕組み、そして実際に現地で買い物やトラブル対応をする際に役立つ実践的な中国語フレーズまで、徹底的に詳しくお伝えします。決済システムへの理解を深め、不安なく現地での滞在を楽しめるようになりましょう。

中国人が財布を持たない最大の理由

この章の要点
  • 財布の役割がスマートフォン内の「スーパーアプリ」に完全に集約されたため
  • 支払いだけでなく、移動・予約・公共料金の納付など生活のあらゆる手続きがスマホで完結するから
  • 財布を意識的に捨てたのではなく、開く機会が減り「持ち歩く必要性が消滅した」自然な結果

中国の都市部で財布が使われなくなった直接的な理由は、支払いだけでなく、生活に必要なありとあらゆる手続きがスマートフォン上で完了するようになったことです。現金や物理的なカードを持ち歩く必要性が、社会インフラの進化とともに極端に少なくなりました。

その中心となるのが、支付宝(Alipay)と微信支付(WeChat Pay)という2大決済アプリです。これらは単なる「レジでお金を払うためのツール」ではありません。移動、食事、予約、個人間送金、さらには公共料金の納付や病院の予約までつながる「生活基盤(スーパーアプリ)」として広く浸透しています。

たとえば、飲食店のテーブルにあるQRコードを読み取れば、そのままメニューが表示されて注文と会計が同時に完了します。地下鉄やバスに乗る際は乗車コードをかざすだけですし、新幹線の切符もスマホ内の身分証情報と紐付いており、改札で顔認証やスマホをかざすだけで通過できます。映画館の予約、シェアサイクルの解錠、デリバリーの注文など、以前なら現金や会員証、切符を出していた場面が、すべてスマートフォンの画面一つで済むようになりました。

日本では、現金、クレジットカード、交通系ICカード、ポイントカード、診察券などをそれぞれのポケットに入れて財布を膨らませていますが、中国ではその物理的な束が「デジタルデータ」として一つの端末に移行しました。財布を持たないのは、決して奇をてらった行動ではなく、何日も財布を開かない状態が続いた結果、やがて「持って出る必要がない」と判断された極めて合理的な流れなのです。

では、なぜ諸外国に比べて中国はこれほどまでにスマートフォンを通じた決済が短期間で、かつ爆発的に普及したのでしょうか。次に、その背景にある具体的な社会事情を深掘りしていきましょう。

スマートフォンで決済アプリを確認しながら中国語を学習している大人の様子
スマホ決済の仕組みを知ることは、現代中国の文化そのものを学ぶことにもつながります。

中国でスマホ決済が広がった5つの背景

この章の要点
  • クレジットカードの普及期を飛び越え、一気にQRコードが定着した
  • 人民元の最高額面が100元であり、大金の持ち運びが不便だった
  • 偽札や傷んだ紙幣をめぐる確認作業の負担とトラブルが解消された
  • 店舗側にとって釣り銭を用意する手間や専用端末の導入費用が省けた
  • SNSアプリの「紅包(お年玉)」機能が、人々の送金ハードルを劇的に下げた

中国のスマホ決済は、単に「新しい技術だったから」という理由だけで受け入れられたわけではありません。利用者と店舗の双方が抱えていた「現金決済における具体的な不便と苦痛」を劇的に減らしたことが、大きな推進力になりました。

多くの先進国では、現金からクレジットカードへ移り、その後に電子マネーが加わるという段階を踏みました。しかし中国では、一般の生活者が日常の少額決済でクレジットカードを頻繁に使う習慣が定着する前に、安価なスマートフォンと通信環境が急速に広がりました。中国にも銀行のデビットカード(銀聯カードなど)は普及していましたが、小さな食堂や露店が高価なカード読み取り端末を置いているとは限りませんでした。

そこで相性がよかったのがQRコードです。店舗側は高価な専用端末を用意する必要がなく、紙に印刷したQRコードをレジ横に貼るだけで決済を受け付けることができます。初期投資がほぼゼロであるため、道端の果物売りや靴磨きの屋台でも即座に導入でき、利用できる場所が一気に増えました。

さらに、中国特有のお金にまつわる物理的・精神的な負担も関係しています。人民元の一般的な最高額紙幣は100元札(日本円で約2000円強)です。家電や高級な食事など、まとまった金額を現金で支払うには、分厚い札束を持ち運ばなければならず、盗難のリスクや枚数を数える手間がありました。

また、過去には精巧な偽札が市中に出回る問題もあり、現金決済が中心だった時期には、100元札を受け取った店員が必ず透かしを確認したり、紫外線ランプの鑑別機に通したりする光景が日常的に見られました。破れや汚れがある紙幣は受け取りを拒否されることもあり、現金のやり取り自体に強いストレスが存在していたのです。

小規模な店舗にとっては、毎朝の「釣り銭の準備」も軽くない負担でした。朝一番の客が少額の商品を100元札で買おうとすると、釣り銭が足りずに対応できない事態が頻発します。QRコードで1角(0.1元)単位まで正確な金額をデジタルで支払えれば、客も店も紙幣を数える必要がなく、釣り銭の渡し間違いも起こり得ません。

注意点

「中国は偽札が多かったからスマホ決済が選ばれた」と単一の理由に帰着して語られることがありますが、それは側面の一つに過ぎません。支払いの速さ、個人間送金の容易さ、店舗側の導入費用の低さ、各種サービスとの連携など、実生活のあらゆる不便をテクノロジーが一挙に解決した結果であることを理解しておきましょう。

こうした背景に加え、対話アプリであるWeChat(微信)が、春節(旧正月)の時期にデジタルでお年玉を送り合える「紅包(ホンバオ)」機能を実装したことで、遊び感覚で銀行口座をアプリに紐づける人が爆発的に増加しました。このように、社会の課題解決とエンターテインメントが融合したことで、キャッシュレス化が一気に完了したのです。

デジタルへと移行する前、人々はどのように現金を持ち歩いていたのでしょうか。次の章では、過去から現在へ至る人々の意識の変化を見ていきます。

実利を重んじる姿勢と財布の歴史的変化

この章の要点
  • かつては富や信用の象徴として、大量の100元札を入れた大きな長財布が使われていた
  • 防犯目的で、ティッシュ袋などを財布代わりにする実用主義的な工夫もあった
  • 新しい技術が「便利で実益がある」と判断されれば、過去の習慣を即座に捨てる合理性がある

中国ではスマホ決済が普及する前から、必ずしも全員が日本と同じような形の財布を使っていたわけではありません。広大な国土と多様な生活環境の中で、目的に応じてさまざまな現金の保管方法が見られました。

たとえば、ビジネスの商談や会食の場では、厚みのある高級な長財布に100元札を何枚も入れて持ち歩く人が少なくありませんでした。これは単に支払いに備えるだけでなく、十分な支払い能力があることを周囲へ示す「信用」の役割を持っていたためです。現金を見せることが成功の表現になる場面では、大きな財布には明確な意味がありました。

一方で、市場で買い物をする一般の生活者の中には、使い終わったポケットティッシュの袋や、小さなビニール袋に紙幣を折りたたんで入れる人も多くいました。これは新しい財布を買う費用を抑えるだけでなく、外から見て貴重品だと分かりにくくすることでスリに狙われないようにする、非常に実利的な防犯の知恵でした。また、身軽さを重視する若い世代は、その日に使う紙幣だけを直接ズボンのポケットに突っ込んで出かけることも珍しくありませんでした。

大きな財布、ティッシュ用の袋、ポケットへの直入れ。見た目はバラバラですが、「目的に応じて最も実用的な道具を選ぶ」という点では共通しています。この実利を重んじる姿勢こそが、スマートフォン決済の爆発的普及の根底にあります。現金もカードも使わない人にとって、高価な財布を形式だけで毎日持ち歩く理由は弱くなります。利便性が確認されると、古い方法から新しい方法への切り替えが社会全体で短期間に進むのが、中国の大きな特徴といえます。

このように合理的な理由で広まった仕組みですが、旅行者が実際に店頭で決済をする際、システムの違いに戸惑うことがあります。続いて、店頭での具体的な支払い方式について

中国のQRコード決済は2つの方式がある

この章の要点
  • 客が店のQRコードを読み取り、金額を入力する「主掃」方式(個人店に多い)
  • 店が客のスマホ画面に表示された支払いコードを読み取る「被掃」方式(チェーン店に多い)
  • 金額の入力間違い防止やセキュリティの観点から、それぞれの正しい操作手順を把握しておく

中国の店頭で使われるQRコード決済には、大きく分けて2つの方式が存在します。旅行者はこの違いを知っておかないと、レジ前でスマホを構えたまま互いに見つめ合ってしまうことになります。

1つ目は、客が店のQRコードを読み取る方式で、中国語では「主扫(zhǔsǎo)」と呼ばれます。露店、小さな食堂、青果店、個人商店など、レジのシステムを導入していない場所でよく使われます。客自身がアプリの「スキャン(扫一扫)」機能を起動して店頭に貼られたコードを読み取り、自分で金額を手入力して確定し、支払い完了画面を店員に見せて確認をもらいます。このとき、12元を120元と入力してしまうような桁間違いには細心の注意が必要です。

2つ目は、店が客の支払いコードを読み取る方式で、「被扫(bèisǎo)」と呼ばれます。スーパー、コンビニ、ファストフード店、大型商業施設など、POSレジが導入されている店舗で一般的です。客はアプリ上でバーコードとQRコードが合わさった「支払いコード(付款码)」画面を開き、店員がそれをレジのリーダーでピッと読み取ります。客が金額を手入力しないため、会計が非常に速く、入力間違いも起こりません。ただし、支払いコードは金銭に直結する重要な情報なので、レジの順番が来る前に無防備に画面を表示したままにしておくと、後ろから盗撮されて不正利用されるリスクがあるため注意が必要です。

それぞれの方式に対応するため、まずは自分がコードをスキャンする際の基本フレーズを確認してみましょう。

フレーズ
我扫你。
(Wǒ sǎo nǐ.)
日本語訳
私がそちら(のコード)を読み取ります。
使う場面
卓上やレジ横、あるいは屋台の看板に掲示されている店舗のQRコードを、自分のスマートフォンで読み取って支払うとき。
注意点・誤用例
「扫」はスキャンするという意味の動詞です。読み取った後は、金額を手入力して「是这个金额吗?(Shì zhège jīn’é ma? / この金額で合っていますか?)」と画面を見せて店員に確認してもらってから、パスワード等を入力して確定すると安全です。
発音・ニュアンス
ウォ サオ ニー。第3声が続くため、「ウォ」を少し高く上がり気味に発音すると自然です。短くシンプルに伝えるのが現地風の響きになります。

続いて、自分の画面を店員に提示してレジの機械で読み取ってもらう場合のフレーズです。コンビニやスーパーなどではこの表現が活躍します。

フレーズ
你扫我。
(Nǐ sǎo wǒ.)
日本語訳
私の(支払いコード)を読み取ってください。
使う場面
アプリの支払い用バーコード画面を開き、店員のレジ用スキャナーに向けて提示するとき。
注意点・誤用例
このままだと少しぶっきらぼうに聞こえると感じる場合は、「请扫一下我的付款码。(Qǐng sǎo yíxià wǒ de fùkuǎnmǎ. / 私の支払いコードを読み取ってください。)」と丁寧に伝えると良いでしょう。
発音・ニュアンス
ニー サオ ウォ。画面の明るさが暗いと読み取りエラーになることが多いため、スマホの明るさを最大にして見せるのがスムーズな会計のコツです。
コンビニのレジで顧客がスマートフォン上のQRコードを店員に提示して支払う様子
店員に画面を読み取ってもらう「被掃」方式は、あっという間に会計が終わります。

非常に便利なスマホ決済ですが、すべてを一つのデバイスに依存することには当然リスクも伴います。次に、デジタル化の死角とも言えるトラブルの要因と対策について確認しておきましょう。

旅行者が知っておくべきスマホ決済のリスクと対処法

この章の要点
  • バッテリー切れは決済・連絡・移動など「すべての機能の停止」を意味する
  • 通信障害や海外カード由来のセキュリティブロックで決済が弾かれることがある
  • 外国人利用者は本人確認(実名認証)が不十分だと高額決済で制限がかかる

財布を持たない生活で最も分かりやすく、かつ致命的な弱点はスマートフォンのバッテリー切れです。中国では支払いだけでなく、地下鉄の乗車コード、タクシーの配車、ホテルの予約確認、地図アプリ、翻訳アプリ、すべてがスマホに依存しています。バッテリーが切れることは、見知らぬ土地で何もできなくなることを意味します。中国の街中には「充電宝(モバイルバッテリーのシェアリングサービス)」が至る所にありますが、そもそもスマホの電源が落ちてしまうと、その充電宝を借りるためのQRコードすら読み取れません。大容量のモバイルバッテリーと充電ケーブルは、常に持ち歩く必須アイテムです。

また、通信障害やアプリの一時的な不具合もリスクの一つです。人が密集する観光地や地下の飲食店では電波が弱く、QRコードの読み込み画面から先に進まないことがあります。さらに、旅行者の場合は「登録している日本のクレジットカード会社側のセキュリティ」が発動し、海外での不正利用と見なされて決済が突然ブロックされることも少なくありません。店員から見ると、客の通信問題なのか、カードの拒否なのか判断できないため、気まずい空気が流れることになります。

加えて、通常と異なる利用や高額な決済(高級ホテルや高価な土産物など)が行われると、アプリ側から追加の本人確認を求められることがあります。外国人利用者の場合、パスポート情報と顔写真の認証(実名認証)が完全に済んでいないと、アカウントに制限がかかるリスクがあります。日本にいる間に、できる限りの認証ステップを完了させておくことがトラブル回避の鍵です。

こうしたデジタルのリスクをカバーするのがアナログな「現金」です。では、実際のところ中国で現金は全く使えないのでしょうか?次はその実態について見ていきましょう。

中国旅行で現金(人民元)は本当に使えないのか?

この章の要点
  • 人民元は法定通貨であり、店舗が現金払いを拒否することは法令で禁じられている
  • ただし、店員が十分なお釣りを用意していないことが多く、会計に時間がかかることがある
  • 無人販売機や完全モバイルオーダー制の飲食店では、現金が物理的に使えない場合がある

結論から言うと、中国で現金が廃止されたわけではありません。人民元は法定通貨であり、中国人民銀行(中央銀行)は「対面で商品やサービスを提供する事業者は、現金での支払いを拒否してはならない」と定めています。過去に現金を拒否した企業や店舗が処分された事例もあり、制度上は確実に現金を使うことができます。したがって、「中国では現金が一切使えない」という極端な情報は正確ではありません。

しかし、「制度上利用できること」と「実際の店舗でスムーズに会計できること」は別問題です。スマホ決済の客が99%を占めるようなローカルな店舗では、レジに現金がほとんど入っておらず、店員が十分な釣り銭を持っていません。もしあなたが数元のミネラルウォーターを買うために100元札を出せば、店員は困惑し、隣の店まで両替に走ったり、他の店員からかき集めたりするため、非常に時間がかかる可能性があります。

また、無人コンビニ、シェアサイクル、自動券売機など、機械だけでサービスを提供する場所では、そもそも紙幣を投入する口が存在しないケースが増えています。飲食店でも、入り口で「注文はテーブルのQRコードからお願いします」と言われ、メニュー表すら物理的に存在しない店があります。こうした環境下では、現金を出すこと自体が難しい場面に直面します。

これらの事情を踏まえると、旅行者はどのような支払い手段を用意していくのがベストなのでしょうか。具体的な準備リストを見ていきましょう。

中国旅行で準備したい完璧な支払い手段

この章の要点
  • 出発前にAlipayとWeChat Payの両方をインストールし、日本のクレジットカードを登録する
  • 通信トラブルに備え、小額紙幣(10元や20元札)を中心とした現金を予備として持つ
  • 物理的なクレジットカード(Visa/Mastercard等)もホテルのデポジット用に携帯する

現地の生活者が財布を持たないからといって、旅行者まで真似をしてスマホ一台で乗り込もうとするのは大変危険です。外国人旅行者は、通信環境もアカウントの信用度も現地の人とは異なるため、複数の手段を分散して持つことが安全の鉄則です。

第一優先は、日本にいる間に出発前の準備として、AlipayとWeChat Payの両方を設定しておくことです。現在は日本のクレジットカード(Visa, Mastercard, JCBなど)を直接アプリに紐づけて、中国国内の店舗で支払う機能(Tour Pass機能の進化版など)が提供されています。現地に到着してからSMS認証を行おうとすると、ローミング設定の問題でメッセージが届かないことがあるため、必ず日本国内でパスポート認証やカード登録まで完了させておきましょう。

第二のバックアップが「現金」です。先述の通り、100元札はお釣りが出ないリスクがあるため、空港や銀行で両替する際は「できるだけ20元、10元、5元などの小額紙幣を多めに混ぜてください」と依頼するのがコツです。全額を一つの財布に入れず、バッグや衣服の内ポケットなどに分散させておくと、万が一のスリ対策にもなります。

第三の手段として、物理的なクレジットカードも1〜2枚持参しましょう。ローカルな食堂では使えませんが、外資系の大型ホテルでのデポジット(預り金)の支払いや、空港の免税店、大型デパートなどでは直接カードを切る方が確実な場合があります。

準備が万全でも、店頭で決済エラーが起きたり、現金を出す必要がある場面には必ず遭遇します。そんな時に役立つ、実践的な中国語のフレーズと会話例をマスターしておきましょう。

スマートフォン、モバイルバッテリー、クレジットカード、人民元紙幣などを机の上に整理して旅行の準備をしている様子
旅行者は万が一のエラーに備え、決済アプリ、現金、カードの「三段構え」で準備しましょう。

【超実践】支払いで困ったときに使える中国語フレーズ・会話例

この章の要点
  • 現金を使いたいときは「可以用现金吗?」と事前に確認する
  • 決済エラーが起きた場合は慌てず「我付不了」と伝えて代替手段を提案する
  • 実際の買い物シーンを想定したロールプレイで、会話の流れを丸ごと覚える

いざという時のために、いくつかのお役立ちフレーズを覚えておきましょう。特に現金を出したいときや、アプリの画面がうまく遷移しないときは、黙り込まずに言葉で状況を伝えることがトラブル解決への最短ルートです。

まずは、基本中の基本である「現金払いの可否」を尋ねる表現です。

フレーズ
可以用现金吗?
(Kěyǐ yòng xiànjīn ma?)
日本語訳
現金を使えますか?
使う場面
個人商店、食堂、タクシーなどで、スマホ決済が使えない、または現金で支払いたいとき。
注意点・誤用例
商品を手に取ってレジに並ぶ前、あるいはタクシーに乗車する前に聞いておくとトラブルになりません。もし100元札のような高額紙幣しか持っていない場合は、続けて「一百块,能找开吗?(Yìbǎi kuài, néng zhǎokāi ma? / 100元札ですが、お釣りはありますか?)」と確認しましょう。「找开」は大きいお金を崩して釣り銭を出すという意味です。
発音・ニュアンス
クーイー ヨン シエンジィン マ?と、最後を少し上げて尋ねるように発音します。

次に、通信環境が悪かったり、海外カードのセキュリティではじかれたりして、決済が完了しない場合のフレーズです。

フレーズ
我付不了。
(Wǒ fùbuliǎo.)
日本語訳
支払うことができません。(決済が通りません)
使う場面
アプリでエラー画面が出たときや、バーコードを読み取ってもらっても「ピー」とエラー音が鳴って決済が通らないとき。
注意点・誤用例
「動詞+不了」で、「その動作をする意思や条件はあるが、何らかの理由で実現できない」状態を表します。ただ「お金を払わない」と言っているわけではなく、「システム的な理由で払えない」というニュアンスが伝わります。この後に「可以换一种支付方式吗?(別の支払い方法に変えられますか?)」と繋げ、現金などを出しましょう。
発音・ニュアンス
ウォ フーブーリァオ。画面の「支付失败(決済失敗)」の赤い文字を見せながら言うと説得力が増します。

実際の店舗でのやり取りをイメージできるよう、実践的なロールプレイ(会話例)を見てみましょう。コンビニで飲み物を買い、決済エラーが起きた後に現金で支払うという、よくあるシチュエーションです。

実践会話例:コンビニエンスストアにて
店員:一共五块半。要袋子吗?
(Yígòng wǔ kuài bàn. Yào dàizi ma? / 全部で5.5元です。袋は要りますか?)

学習者:不要。你扫我。
(Bú yào. Nǐ sǎo wǒ. / 要りません。私のコードを読み取ってください。)
※スマホの支払い画面を提示する

店員:(ピッ)不行啊,失败了。
(Bù xíng a, shībài le. / だめですね、失敗しました。)

学習者:啊,我付不了。可以用现金吗?
(A, wǒ fùbuliǎo. Kěyǐ yòng xiànjīn ma? / あ、支払いができないようです。現金を使ってもいいですか?)

店員:可以。
(Kěyǐ. / いいですよ。)

学習者:十块。
(Shí kuài. / 10元です。)

店員:找你四块半。慢走。
(Zhǎo nǐ sì kuài bàn. Mànzǒu. / 4.5元のお返しです。お気をつけて。)

このように、単語を単体で覚えるのではなく、お店に入ってから出るまでの「流れ」の中でフレーズを記憶しておくことが非常に重要です。では、これらを確実に身につけるための学習スケジュールをごお伝えします。

会計フレーズを定着させる「1週間」練習メソッド

この章の要点
  • 発音と声調を間違えると致命的な意味の違いになるため、基礎を徹底する
  • スマートフォンを手に持ちながら「我扫你」と口に出す身体的シミュレーションが有効
  • トラブル場面(エラーや現金への切り替え)も想定してロールプレイを行う

支払い時の会話は決して長くありません。だからこそ、短い表現を「場面」と「動作」に直接結びつけて覚えるほうが、実際の店頭で反射的に使いやすくなります。渡航前の1週間でマスターするためのステップをお伝えします。

【1〜2日目:声調と単語の徹底確認】
「现金(現金)」「付款码(支払いコード)」「退款(返金)」といった基本単語の発音と声調(四声)をしっかり確認します。中国語は声調(音の上がり下がり)が変わると意味が全く変わってしまいます。特に会計でよく使う「买(mǎi/買う)」と「卖(mài/売る)」は声調だけの違いなので要注意です。

【3〜4日目:スマホを使ったエア・ロールプレイ】
単語が言えるようになったら、実際にスマートフォンを手に持って練習します。何もない空間に向かって机の上の架空のQRコードを読み取る動作をしながら「我扫你(私がスキャンします)」と言ってみる。あるいは、画面を前に突き出して店員に見せる動作をしながら「你扫我(私のコードを読んでください)」と言う。このように体を動かしながら発話することで、現地で同じ動作をした瞬間にフレーズが自然と口から出るようになります。

【5〜7日目:トラブルシューティングの即答練習】
正常に支払える場面だけでなく、前述したような「エラーが出た」「100元札しかない」「二重払いになった気がする」といった緊急時のフレーズを反復練習します。一人で練習する場合は、店員役と客役を交互に行い、自分の発音をスマホに録音して模範音声と聞き比べる方法が非常に役立ちます。

最後に、本記事の内容を振り返り、読者の方からよく寄せられる決済や習慣についての細かい疑問をQ&A形式で網羅的にまとめました。

よくある疑問(Q&A)

中国人は全員が財布を持っていないのですか?

全員ではありません。現金を好む高齢の方や、業務上で現金を扱う人、あるいは身分証や物理的な会員カードを多く持ち歩く必要がある人は現在も財布を使用しています。都市部において「財布なしでの生活が十分に成立し、そうしている人が非常に多い」という傾向を示す表現だと理解してください。

日本のクレジットカードをAlipayやWeChat Payに登録できますか?

はい、VISAやMastercardなど、対応する海外発行カードであれば登録可能です。ただし、登録できたとしても個人間送金(紅包など)には使えず、店舗での支払いのみに限定されるケースが多いため、機能の制限については事前に確認しておくことをおすすめします。

現金だけで旅行することは可能ですか?

制度上は現金で支払う権利が保障されているため可能です。しかし、無人レジやQRコード専用の注文システムを採用している店舗では非常に手間がかかったり、店員が釣り銭を持っていなくて待たされたりする可能性があります。快適な旅行のためには、アプリと現金の併用が現実的です。

中国の電話番号がなくてもアプリを使えますか?

日本の国際電話番号(+81)で登録できる仕組みが用意されています。登録時やセキュリティ確認時にSMS(ショートメッセージ)で認証コードを受け取る必要があるため、海外でもSMSが受信できる通信設定(ローミングなど)にしておくことが重要です。

スマートフォンを紛失した場合はどうすればよいですか?

まずは速やかに通信会社へ連絡し、回線を停止(遠隔ロック)してください。同時に、アプリに紐づけているクレジットカードの停止手続きも行います。スマホを失うと決済も連絡手段も絶たれるため、緊急連絡先やカード会社の電話番号は、紙のメモ帳などに控えて持ち歩く習慣をつけましょう。

店先にあるQRコードが偽物だったりする危険性はありますか?

過去には、店舗の正しいQRコードの上に悪意のある者が別の受取用QRコードのシールを上貼りして売上を横取りする詐欺事件がありました。自分がスキャンする「主掃」方式の際は、スキャンした後に画面に表示される「受取人(店舗名)」が正しいか、必ず店員と一緒に確認してからパスワードを入れて確定するようにしてください。

決済アプリの手数料はいくらかかりますか?

AlipayやWeChat Payに海外のクレジットカードを登録して利用する場合、一定金額(現在は200人民元)以下の決済であればアプリ側の手数料は免除されることが多いです。ただし200元を超える決済には3%程度の手数料が上乗せされるのが一般的です。さらに、日本のカード会社が定める海外事務手数料も別途かかる場合があります。

間違って二重に支払ってしまった場合はどう言えばいいですか?

通信のラグなどで二重に決済されたと感じた場合は、すぐにアプリの支払い履歴画面を開き、「好像付了两次。(Hǎoxiàng fù le liǎng cì. / 2回払ってしまったようです)」と伝えてください。返金を求める場合は「可以退款吗?(Kěyǐ tuìkuǎn ma? / 返金できますか?)」と聞き、店側の端末の履歴と照合してもらいます。

日本のPayPayやLINE Payはそのまま使えますか?

原則として、日本の国内向けバーコード決済アプリは中国本土では使えません。ただし、Alipay+のネットワークに参加している一部の決済サービス(特定の国のウォレットアプリなど)は相互利用が可能な場合がありますが、日本からの旅行者は素直に現地のAlipayかWeChat Payをセットアップするのが最も確実です。

地下鉄に乗る際もQRコード決済が使えますか?

はい。AlipayやWeChat Payの中にある「乘车码(乗車コード)」というミニプログラム(アプリ内のミニアプリ)を開き、各都市の交通システムと紐付けることで、改札の読み取り機にQRコードをかざすだけで乗車できます。わざわざ切符を買ったり、現地の交通系ICカードを買う必要がなくなります。