日本は島国であり、植物防疫の観点から海外からの果物の持ち込みには厳しい制限があります。しかし、お隣の中国は広大な国土と多様な気候に恵まれ、まさに「フルーツ天国」とも呼べるほど多種多様な果物が生産・消費されています。「日本ではなかなかお目にかかれない珍しい果物」から「同じ果物でも中国産は味が濃くて格別!」といったものまで、その魅力は尽きません。中国の市場を覗けば、色とりどりの果物が山と積まれ、その甘い香りが漂ってくる光景に圧倒されることでしょう。
かつて筆者が中国に滞在していた頃は、夏から秋にかけて特に果物が豊富で、甘いお菓子よりも新鮮なフルーツが毎日のおやつでした。値段も日本と比べると驚くほど安く、日本では高級品のマンゴーやライチも、中国では気軽に楽しめる日常の味覚です。この記事では、そんな魅力あふれる中国の果物の世界を、種類、味、旬、食べ方、そして文化的な背景まで含めて徹底的にご紹介する「中国果物大図鑑」をお届けします。
【中国の果物図鑑】日本ではレア物も?蟠桃・ライチから謎の果実まで種類・食べ方・旬を徹底解説!

目次
- 1 中国フルーツの魅力:安さ・新鮮さ・種類の豊富さ
- 2 中国の代表的な果物たち:種類・特徴・食べ方
- 2.1 1. 蟠桃 (pántáo) – 不老不死の平たい桃
- 2.2 2. 石榴 (shíliú) – 子孫繁栄の象徴ザクロ
- 2.3 3. 玫瑰香葡萄 (méigui xiāng pútáo) – バラの香りのブドウ
- 2.4 4. 芒果 (mángguǒ) – 種類豊富なマンゴー天国
- 2.5 5. 油桃 (yóutáo) – 皮ごと食べられるネクタリン
- 2.6 6. 山竹 (shānzhú) – 果物の女王マンゴスチン
- 2.7 7. 菠萝 (bōluó) – 甘くてジューシーなパイナップル
- 2.8 8. 荔枝 (lìzhī) – 楊貴妃が愛したライチ
- 2.9 9. 龙眼 (lóngyǎn) – 龍の眼という名の果実
- 2.10 10. 杨梅 (yángméi) – 甘酸っぱい初夏の味ヤマモモ
- 2.11 11. 火龙果 (huǒlóngguǒ) – 見た目も鮮やかドラゴンフルーツ
- 2.12 12. 释迦 (shìjiā) – 甘くてクリーミーなシャカトウ
- 2.13 13. 冬枣 (dōngzǎo) – 秋から冬のパリパリナツメ
- 2.14 14. 哈密瓜 (Hāmìguā) – 究極の甘さハミウリ
- 2.15 15. その他、中国でよく見かける果物
- 3 中国で果物を楽しむためのヒント
- 4 まとめ:中国の果物は旅の大きな楽しみ!
中国フルーツの魅力:安さ・新鮮さ・種類の豊富さ
中国で果物を楽しむ醍醐味は、何と言ってもその「安さ」「新鮮さ」、そして圧倒的な「種類の豊富さ」にあります。日本では高級品とされる果物も、中国では日常的に手頃な価格で手に入ることが多く、旬の時期には特に味も濃く、栄養価も高いと言われています。ここでは、中国の果物がなぜこれほどまでに魅力的なのか、その背景を探ります。
活気あふれる「農貿市場 (nóngmào shìchǎng)」と果物屋台
中国の果物を語る上で欠かせないのが、「農貿市場 (nóngmào shìchǎng)」の存在です。これは日本のファーマーズマーケットに近いもので、地元の農家が直接持ち寄った新鮮な野菜や果物、肉、魚などが所狭しと並びます。店先の籠や台の上に山と積まれた色鮮やかな果物は見ているだけでも楽しく、日本ではプラスチックパックに綺麗に詰められているのとは対照的です。強い香りが漂い、活気のある呼び込みの声が飛び交う市場では、値段交渉も日常茶飯事。「这个多少钱一斤? (Zhège duōshao qián yī jīn?) – これ1斤(500g)いくら?」と尋ね、少し負けてもらうのも買い物の楽しみの一つです。旬の果物は特に安く、筆者もよく1週間分をまとめて購入していました。
また、街角には「水果摊 (shuǐguǒtān)」と呼ばれる果物屋台も多く、手軽に新鮮な果物を購入できます。その場でカットしてくれるサービスもあり、すぐに食べられるのも魅力です。スーパーマーケット(超市 chāoshì)でも果物は売られていますが、市場ほどの活気や種類の豊富さ、安さはないかもしれません。ただし、衛生面や品質管理はスーパーの方が徹底している場合もあります。
広大な国土と多様な気候が生み出す果物の宝庫
中国は南北に長く、東西にも広いため、熱帯から亜寒帯まで多様な気候帯が存在します。この地理的条件が、驚くほど多くの種類の果物を育んでいます。南部の海南島や広東省、福建省ではトロピカルフルーツが、北部の山東省や河北省ではリンゴや梨、ブドウなどが、そして内陸の新疆ウイグル自治区では糖度の高いメロンやブドウが特産となっています。それぞれの地域で特色ある果物が栽培され、一年を通して何かしらの旬の果物を楽しむことができます。
中国の代表的な果物たち:種類・特徴・食べ方
それでは、中国で人気の代表的な果物や、日本ではあまり見かけない珍しい果物を具体的に見ていきましょう。それぞれの中国語名(ピンイン付き)、味、旬、主な産地、選び方のコツ、美味しい食べ方などを詳しく解説します。

1. 蟠桃 (pántáo) – 不老不死の平たい桃
「蟠桃 (pántáo)」は、その名の通り平たく潰れたような形が特徴的な桃の一種です。普通の球形の桃よりも小ぶりですが、甘みが非常に強く、果汁も豊富。日本では「座禅桃」や「ドーナツピーチ」などと呼ばれることもあります。もともとは新疆ウイグル自治区の特産で、中国神話では西王母の桃園に3000年に一度実る不老不死の仙桃として登場し、『西遊記』で孫悟空がこれを盗み食いするエピソードは有名です。
- 旬:夏(7月~8月頃)
主な産地:新疆ウイグル自治区、山東省、河北省など。
選び方:表面に傷がなく、良い香りがするもの。軽く押して少し弾力があるものが食べ頃。
食べ方:皮をむいてそのまま食べるのが一般的。甘みが強いので、冷やして食べるとより美味しい。
日本での入手:近年、日本でも栽培されるようになり、一部の高級スーパーや通販で見かけることも。
2. 石榴 (shíliú) – 子孫繁栄の象徴ザクロ
「石榴 (shíliú)」は、日本でもお馴染みのザクロです。硬い皮を割ると、中にはキラキラと輝くルビーのような赤い粒(仮種皮)がぎっしりと詰まっています。このたくさんの種を持つことから、中国では古くから子孫繁栄や豊穣の象徴とされ、縁起の良い果物として扱われてきました。結婚祝いの際にザクロの絵や置物を贈る習慣もあります。
- 旬:夏~秋(8月~10月頃)
主な産地:陝西省、山東省、河南省など。
選び方:皮にハリとツヤがあり、ずっしりと重みのあるもの。割れ目から赤い粒が見えているものは完熟している証拠。
食べ方:種の周りの甘酸っぱくみずみずしい果肉を食べます。スプーンですくったり、粒を取り出してそのまま食べたりします。ジュースやサラダ、料理のアクセントにも使われます。ヨーロッパではジュースにして飲むのが一般的です。
栄養価:ビタミンC、カリウム、ポリフェノールが豊富。
日本では最近あまり果物屋で見かけなくなりましたが、中国では夏になると市場にたくさん並びます。
3. 玫瑰香葡萄 (méigui xiāng pútáo) – バラの香りのブドウ
「玫瑰香葡萄 (méigui xiāng pútáo)」は、その名の通り、「玫瑰 (méigui)」つまりバラのような華やかで芳醇な香りが特徴のマスカット系のブドウです。「ぶどうの女王」と称されることもあり、中国では非常に人気のある品種の一つ。粒は日本の巨峰ほど大きくはありませんが、程よい大きさで、甘みと酸味のバランスが絶妙。水分も多く、ジューシーな味わいが楽しめます。
- 旬:夏~秋(7月~9月頃)
主な産地:新疆ウイグル自治区、河北省、山東省など。
選び方:軸が緑色でしっかりしており、粒にハリがあり、表面に白い粉(ブルーム)が均一についているもの。香りが良いものを選びましょう。
食べ方:皮ごと食べられる品種もありますが、一般的には皮をむいて食べます。冷やして食べると香りが引き立ちます。
近年、日本でもシャインマスカットなど様々な種類のぶどうが人気ですが、この玫瑰香葡萄も独特の風味があり、一度食べると忘れられない美味しさです。
4. 芒果 (mángguǒ) – 種類豊富なマンゴー天国
「芒果 (mángguǒ)」は、日本でもすっかりお馴染みのトロピカルフルーツ、マンゴーです。しかし、中国で売られているマンゴーは、日本で一般的なフィリピン産やメキシコ産のものとは異なり、品種が格段に多く、味も濃厚で非常に美味しいものが手に入ります。特に南部の海南省や広西チワン族自治区、雲南省などが主産地です。
代表的なマンゴーの品種
- 象牙芒果 (xiàngyá mángguǒ): 象の牙のように細長い形をした大型のマンゴー。繊維が少なく、滑らかな舌触りと濃厚な甘みが特徴です。
鶏蛋芒果 (jīdàn mángguǒ): 鶏の卵くらいの大きさで、熟しても皮が緑色のことが多い品種。果肉は鮮やかな黄色で、酸味と甘みのバランスが良い。見た目から「青マンゴー」とも呼ばれます。
台農芒果 (Táinóng mángguǒ): 台湾で改良された品種で、比較的小ぶり(スマートフォンくらいのサイズ)。非常に糖度が高く、濃厚な甘みと芳醇な香りが楽しめます。アップルマンゴー(愛文芒果 àiwén mángguǒ)もこの系統です。
水仙芒果 (shuǐxiān mángguǒ): 水仙のような爽やかな香りがすることから名付けられました。小ぶりで種が薄く、可食部が多い。
貴妃芒果 (guìfēi mángguǒ): 唐の時代の楊貴妃が愛したとされるライチにちなんで名付けられたとも言われる品種。細長い形で、甘みが強く、香りも豊か。
- 旬:種類によりますが、主に春~夏(3月~8月頃)
選び方:皮にツヤがあり、傷や黒い斑点が少ないもの。ふっくらとしていて、軽く押すと少し弾力があり、甘い香りが漂ってくるものが食べ頃。
食べ方:皮をむき、種に沿って三枚におろすのが一般的。さいの目に切れ目を入れて皮を反り返らせる「花咲カット」も人気。そのまま食べるほか、ジュース、スムージー、プリン、アイスクリームなどデザートにも多用されます。
5. 油桃 (yóutáo) – 皮ごと食べられるネクタリン
「油桃 (yóutáo)」は、日本で「ネクタリン」として知られる、表面に毛がない桃の一種です。「油」という字が付いているのは、皮がツルツルと光沢があり、まるで油を塗ったように見えることから。普通の桃と比べて果肉がややしっかりしており、甘みと酸味のバランスが良いのが特徴です。皮ごと丸かじりできる手軽さも魅力。
- 旬:夏(6月~8月頃)
主な産地:山東省、河北省、陝西省など。
選び方:皮にハリがあり、鮮やかな赤色または黄色をしているもの。良い香りがするもの。
食べ方:よく洗って皮ごと食べるのが一般的。冷やすとより美味しくなります。
日本のスーパーでも見かけるようになりましたが、中国ではより手軽に、様々な品種の油桃が楽しめます。
6. 山竹 (shānzhú) – 果物の女王マンゴスチン
「山竹 (shānzhú)」は、東南アジア原産の「マンゴスチン」のことです。その上品な味わいと栄養価の高さから「果物の女王」と称されています。濃い紫色の硬い皮に包まれており、中にはニンニクの房のような形の、白くてジューシーな果肉が入っています。甘みと酸味のバランスが絶妙で、一度食べたら忘れられない美味しさです。
- 旬:主に夏(5月~9月頃、輸入品が多いため通年見かけることも)
主な産地:タイ、マレーシアなど東南アジアからの輸入品が主ですが、中国国内でも海南省などで栽培。
選び方:皮が濃い紫色でツヤがあり、ヘタが緑色のもの。軽く押してみて、少し弾力があるものが新鮮。硬すぎるものは古い可能性があります。
食べ方:ヘタの周りに指で切れ込みを入れ、皮を上下に割るようにして中の白い果肉を取り出して食べます。種が入っている房もあるので注意。
注意点:皮の紫色の汁は服に付くと落ちにくいので注意が必要です。
7. 菠萝 (bōluó) – 甘くてジューシーなパイナップル
「菠萝 (bōluó)」はパイナップルのことです。日本で一般的に食べられる輸入パイナップルも美味しいですが、中国、特に海南島や台湾で生産される菠萝は、糖度が非常に高く、酸味が少なく、驚くほどジューシーで甘いものが多いです。筆者も、中国で海南島産のパイナップルを食べて以来、その美味しさにすっかり魅了されました。
- 旬:春~夏(3月~7月頃)
主な産地:海南省、広東省、福建省、台湾など。
選び方:葉が濃い緑色で、果実はずっしりと重みがあり、甘い香りがするもの。皮の色は品種によって異なりますが、全体的に黄色がかっているものが熟しています。
食べ方:中国の果物屋や屋台では、専用のナイフで皮を螺旋状に剥き、V字型の彫刻刀のような道具で「目」と呼ばれる黒い窪みを巧みに取り除いてくれるサービスがあります。こうして処理してもらったものは、芯まで食べられる品種もあり、丸ごとかぶりつくことができます。パイナップルを使った料理「菠萝饭 (bōluófàn) – パイナップルライス」も人気です。

8. 荔枝 (lìzhī) – 楊貴妃が愛したライチ
「荔枝 (lìzhī)」は、日本でも人気の高いライチです。唐の玄宗皇帝の寵姫であった楊貴妃がこよなく愛した果物として知られ、遠く南方の産地から都長安まで早馬で運ばせたという逸話が残っています。赤くゴツゴツした皮をむくと、乳白色で半透明のプルプルとした果肉が現れ、上品な甘さと独特の芳香、そして豊富な果汁が口いっぱいに広がります。「果物の王様」とも称されることがあります。
- 旬:初夏(5月~7月頃)
主な産地:広東省、福建省、広西チワン族自治区、海南省など。
品種:「妃子笑 (fēizixiào)」「桂味 (guìwèi)」「糯米糍 (nuòmǐcí)」など多くの品種があり、それぞれ味や香りが異なります。
選び方:皮が鮮やかな赤色(品種によっては緑がかったものも)でハリがあり、傷がないもの。枝付きのものが新鮮。
食べ方:皮をむいて中の果肉を生で食べます。種があるので注意。冷やすとより一層美味しくなります。食べ過ぎるとのぼせることがあると言われています。冷凍してシャーベットのように食べるのも人気。
9. 龙眼 (lóngyǎn) – 龍の眼という名の果実
「龙眼 (lóngyǎn)」はリュウガンと読み、その名の通り「龍の眼」を意味します。薄茶色の硬い皮をむくと、ライチに似た半透明の白い果肉が現れ、その中央に大きな黒い種がある様子が龍の眼を連想させることから名付けられました。ライチと同じムクロジ科の果物で、味もライチに似ていますが、より独特の風味と香りがあり、甘みが強いのが特徴です。
- 旬:夏(7月~9月頃)
主な産地:広東省、福建省、広西チワン族自治区など。
選び方:皮にハリがあり、傷がないもの。枝付きのものが新鮮。
食べ方:生で食べるほか、乾燥させた「桂圆肉 (guìyuánròu)」は漢方薬やお茶、デザートの材料として広く使われます。体を温める効果があるとされています。
10. 杨梅 (yángméi) – 甘酸っぱい初夏の味ヤマモモ
「杨梅 (yángméi)」は、日本でヤマモモとして知られる果物です。初夏に熟し、鮮やかな赤紫色から黒紫色になります。表面には小さな粒々の突起があり、独特の食感があります。甘酸っぱくジューシーで、梅に似た爽やかな酸味とベリー系の甘みを併せ持つような味わいです。非常に傷みやすく、収穫時期も短いため、産地以外ではなかなか新鮮なものを味わうのが難しい貴重な果物です。
- 旬:初夏(5月下旬~6月頃)
主な産地:浙江省、江蘇省、福建省、広東省など長江以南の地域。
選び方:色が濃く、ハリがあり、傷がないもの。完熟すると非常に柔らかくデリケートです。
食べ方:生でそのまま食べるのが一番ですが、砂糖漬けにしたり、ジュースや「杨梅酒 (yángméijiǔ) – ヤマモモ酒」にしたりするのも人気です。
11. 火龙果 (huǒlóngguǒ) – 見た目も鮮やかドラゴンフルーツ
「火龙果 (huǒlóngguǒ)」は、サボテン科の果物で、英語名と同じ「ドラゴンフルーツ」と呼ばれます。その名の通り、龍の鱗のような鮮やかなピンク色や赤色の皮が特徴的です。果肉には、白肉種(白心火龙果 báixīn huǒlóngguǒ)と赤肉種(红心火龙果 hóngxīn huǒlóngguǒ)があり、どちらも黒ゴマのような小さな種が散らばっています。味は比較的淡白で、ほんのりとした甘みとシャキシャキとした食感が楽しめます。赤肉種の方が甘みが強く、栄養価も高いと言われています。他に黄色い皮の品種(黄火龙果 huáng huǒlóngguǒ)もあります。
- 旬:夏~秋(6月~11月頃)
主な産地:広東省、広西チワン族自治区、海南省、台湾など。
選び方:皮の色が鮮やかでハリがあり、ずっしりと重みのあるもの。表面の突起(鱗片)がしなびていないもの。
食べ方:縦半分に切り、スプーンですくって食べるか、皮を剥いて適当な大きさにカットします。種もそのまま食べられます。ヨーグルトやサラダに混ぜても美味しいです。
12. 释迦 (shìjiā) – 甘くてクリーミーなシャカトウ
「释迦 (shìjiā)」は、そのゴツゴツとした外観がお釈迦様の頭(螺髪)に似ていることから名付けられた果物で、日本では「シャカトウ」や「バンレイシ」「シュガーアップル」などと呼ばれます。熟すと皮が柔らかくなり、手で簡単に割ることができます。中の白い果肉は非常にクリーミーで、カスタードのような濃厚な甘さと独特の芳香があります。黒くて大きな種がいくつか入っています。
- 旬:夏~秋(6月~10月頃)
主な産地:広東省、広西チワン族自治区、福建省、台湾など。
選び方:皮の溝がはっきりしていて、表面に傷がなく、手に持った時に少し柔らかさを感じるもの。熟しすぎると崩れやすいので注意。
食べ方:手で割るかナイフで切り、スプーンですくって食べます。種は食べられません。冷やすとより美味しくなります。
13. 冬枣 (dōngzǎo) – 秋から冬のパリパリナツメ
「冬枣 (dōngzǎo)」は、秋から冬にかけて旬を迎えるナツメの一種です。日本の一般的な乾燥ナツメとは異なり、生で食べられるのが特徴で、リンゴや梨のようなパリパリとした食感と、爽やかで強い甘みがあります。大きさはブドウの巨峰くらいで、熟すと皮が緑色から赤褐色に変わります。
- 旬:秋~冬(9月~1月頃)
主な産地:山東省、河北省、陝西省など。
選び方:皮にツヤがあり、傷がなく、ハリのあるもの。赤みがかったものが甘い傾向にあります。
食べ方:よく洗ってそのまま皮ごと食べます。種があるので注意。
栄養価:ビタミンCが非常に豊富で、「天然のビタミン丸」とも呼ばれます。
14. 哈密瓜 (Hāmìguā) – 究極の甘さハミウリ
「哈密瓜 (Hāmìguā)」は、新疆ウイグル自治区のハミ(哈密)地区が原産の、非常に糖度が高いメロンの一種です。楕円形で、網目のあるものとないものがあります。果肉はオレンジ色や緑色で、ジューシーでとろけるような食感と、芳醇な香りが特徴です。その甘さは格別で、中国を代表する高級フルーツの一つとされています。
- 旬:夏~秋(7月~10月頃)
主な産地:新疆ウイグル自治区。
選び方:ずっしりと重みがあり、網目が均一で美しいもの。お尻の部分を軽く押して少し弾力があり、甘い香りがするものが食べ頃。
食べ方:縦半分に切って種を取り、くし形にカットして食べます。冷やすとより美味しくなります。
15. その他、中国でよく見かける果物
- 枇杷 (pípá): ビワ。初夏が旬。日本のものより大ぶりの品種も。咳止めなど薬効もあるとされる。
柿子 (shìzi): カキ。種類豊富で、日本の富有柿や次郎柿とは異なる品種も多い。干し柿「柿饼 (shìbǐng)」も人気。
西瓜 (xīguā): スイカ。夏に欠かせない果物。種類も豊富で、黄色い果肉のものも。
香蕉 (xiāngjiāo): バナナ。南部の広東省や雲南省などで多く栽培され、小ぶりで甘みの強い品種も。
橘子 (júzi) / 橙子 (chéngzi) / 柚子 (yòuzi): ミカン類、オレンジ類、ブンタン(ポメロ)類。冬の代表的な果物。金柑「金橘 (jīnjú)」やポンカン「椪柑 (pènggān)」なども人気。
草莓 (cǎoméi): イチゴ。冬から春にかけて。日本ほど品種改良は進んでいないが、安価で手に入る。
樱桃 (yīngtáo): サクランボ。アメリカンチェリーのような大粒のものや、中国原産の小粒で酸味のあるものも。

中国で果物を楽しむためのヒント
市場での買い方・選び方のコツ
- 旬を意識する:どんな果物も旬の時期が一番美味しく、安価です。店員に「现在什么水果最好吃? (Xiànzài shénme shuǐguǒ zuì hǎochī?) – 今何が一番美味しいですか?」と尋ねてみるのも良いでしょう。
見た目と香りで選ぶ:色つやが良く、傷がなく、ずっしりと重みがあり、それぞれの果物特有の良い香りがするものが新鮮です。
量り売りと値段交渉:中国の市場では、果物は基本的に「斤 (jīn)」(500グラム)単位の量り売りです。値段は表示されていることもありますが、交渉できる場合も。「便宜一点,好吗? (Piányi yīdiǎn, hǎo ma?) – 少し安くしてくれませんか?」と笑顔で頼んでみましょう。
試食:一部の店では試食させてくれることもあります。「可以尝尝吗? (Kěyǐ chángchang ma?) – 味見してもいいですか?」と聞いてみましょう。
果物を使った人気のデザートや飲み物
- 糖水 (tángshuǐ): 広東料理の伝統的な甘いデザートスープ。様々な果物や豆類、芋類などをシロップで煮込んだもの。マンゴーやパパイヤを使ったものが人気。
鲜榨果汁 (xiānzhà guǒzhī): フレッシュジュース。街中のジューススタンドで、様々な果物をその場で搾ってくれます。
水果捞 (shuǐguǒ lāo): カットしたフルーツをヨーグルトやココナッツミルク、コンデンスミルクなどで和えたデザート。
冰糖葫芦 (bīngtánghúlu): サンザシやイチゴなどの果物を串に刺し、飴でコーティングした北京発祥の伝統的なお菓子。冬の風物詩。
日本への持ち込みに関する注意点
残念ながら、多くの生の果物は、植物防疫法により日本への持ち込みが禁止または制限されています。病害虫の侵入を防ぐためです。事前に農林水産省植物防疫所のウェブサイトなどで確認し、ルールを守りましょう。ドライフルーツや缶詰など加工品であれば持ち込める場合が多いです。思い出は心の中に、そして写真にたくさん収めて持ち帰りましょう。
まとめ:中国の果物は旅の大きな楽しみ!
中国の果物の種類の豊富さ、美味しさ、そして手頃な価格は、一度体験すると忘れられない魅力があります。日本ではなかなか味わえない珍しいフルーツに出会ったり、旬の味覚を存分に楽しんだりすることは、中国旅行の大きな醍醐味の一つと言えるでしょう。この記事で紹介した情報を参考に、ぜひ中国の豊かなフルーツ文化に触れてみてください。きっと、あなたの旅をより一層彩り豊かにしてくれるはずです。「百闻不如一见 (bǎiwén bùrú yījiàn) – 百聞は一見に如かず」、そして「百见不如一尝 (bǎijiàn bùrú yīcháng) – 百見は一味に如かず」です!