中国語学習を進める中で、多くの日本人学習者が「難しい!」と声を上げる文法項目の一つ、それが「使役文」です。日本語の「~せる」「~させる」という表現に相当しますが、中国語では使われる動詞が複数あり、その使い分けやニュアンスの把握が複雑に感じられることが多いでしょう。初心者の方はもちろん、ある程度中国語を話せるようになった方でも、正確に使いこなすのはなかなか手強いものです。
しかし、心配はいりません。この「使役文」も、正しい知識と練習方法を理解すれば、必ずマスターできます。この記事では、中国語の使役文の基本から、主要な使役動詞「让」「叫」「请」「使」「给」「令」などの詳細な使い方、そしてそれらの微妙なニュアンスの違いまで、豊富な例文と共に徹底的に解説します。この完全マスターガイドを読めば、あなたの中国語表現の幅は格段に広がり、より自然で正確なコミュニケーションが可能になるはずです!
中国語使役文の完全マスターガイド:「让」から「请」まで
目次
使役文とは何か?基本概念の再確認
まず、「使役文」とは何か、その基本的な意味をしっかりと把握しておきましょう。文法用語と聞くと難しく感じるかもしれませんが、概念自体はシンプルです。こうした基礎をはっきりと理解しておくことが、後の応用力を高め、成長速度を格段に早めるための鍵となります。
日本語の文法説明を参照すると、使役文は一般的に次のように定義されています。
日本語では「せる」「させる」といった助動詞を使って、使役の意味を表します。
「使役」とは文字通り「使(=人に何かを行わせる)、役(=仕事、行動)」のことです。つまり、使役とは、誰かに何かをさせること、ある行動をするように仕向けることを意味します。
動詞の使役形(例:「書く」→「書かせる」、「食べる」→「食べさせる」)を用いながら、主語が第三者(人や物事)に対してある行動や状態変化を引き起こすように働きかけることを表現した文のことです。
要するに、「AがBに~させる」という関係を表す文が使役文であると理解しておけば良いでしょう。この「~させる」という働きかけには、強制、許可、依頼、放任、原因など、様々なニュアンスが含まれます。
中国語の使役文も、この基本概念は共通していますが、その表現方法の多様性が特徴です。
日本人学習者が中国語使役文でつまずく理由
前述の通り、日本語の使役表現は主に助動詞「せる」「させる」で対応できます(例:「母は私に部屋を掃除させた」)。このシンプルさに慣れていると、中国語の使役表現の複雑さに戸惑うことがあります。
中国語では、使役の意味を表すために複数の「使役動詞」が用いられます。代表的なものとして、「让 (ràng)」「叫 (jiào)」「请 (qǐng)」「使 (shǐ)」「给 (gěi)」「令 (lìng)」などが挙げられます。これらの使役動詞は、それぞれが持つニュアンスや使われる文脈が微妙に異なり、日本語の「せる・させる」と完全に1対1で対応するわけではありません。
例えば、「让」「叫」「请」を辞書で引くと、どれも「~させる」といった似たような日本語訳が出てくるため、それぞれの言葉が持つ固有のニュアンス(強制の度合い、敬意の有無、意図的かどうかなど)の違いが非常に分かりにくいのです。これが、日本人学習者が混乱し、適切な使い分けに苦労する最大の要因となっています。「どれを使えばいいの?」と迷ってしまうのは当然のことです。
しかし、これらの違いも、一つ一つの動詞の核心的な意味と使われ方を丁寧に学べば、必ず整理できるようになります。

多くの学習者が悩む使役動詞の使い分け。でも大丈夫!
中国語の使役文・完全攻略3ステップ
「中国語の使役文は日本語と構造が異なるから難しそう…」と感じるかもしれませんが、決して日本人には習得できないものではありません。正しい学習ステップとポイントさえ押さえれば、確実に使いこなせるようになります。以下に、中国語使役文を攻略するための3つの重要なステップをまとめました。
使役文マスターへのロードマップ
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ステップ1:使役文の基本構造を理解する
まず、中国語の使役文がどのような語順で構成されるのか、基本的な型(S + 使役動詞 + O + V)をしっかりと頭に入れましょう。 -
ステップ2:最重要使役動詞「让(ràng)」を徹底マスターする
数ある使役動詞の中でも、最も使用頻度が高く、応用範囲も広い「让」の使い方を完璧に理解し、使えるようにします。これが全ての基礎となります。 -
ステップ3:「让」を軸に、他の使役動詞との違いを比較・理解する
「让」の知識をベースにして、他の使役動詞(「叫」「请」「使」「给」「令」など)が持つ独自のニュアンスや用法を一つずつ比較しながら学んでいきます。
中国語には複数の使役動詞が存在しますが、それらは全て「誰かに何かをさせる」という共通の機能を持っています。そして幸いなことに、文法上の基本的な語順は、どの使役動詞を使ってもほぼ同じです。ですから、まずは代表的な使役動詞「让」を一つ完璧にマスターしてしまえば、その後は他の動詞が持つ固有のニュアンスや制約を理解し、文脈に合わせて入れ替えるだけで対応できるようになります。
最初から6つ全ての動詞を同時に覚えようとすると、情報が混線して挫折しやすくなります。焦らず、まずは「让」という一つの確固たる土台を築くことに集中しましょう。このように学習のステップを分解して考えるだけで、一気に心理的なハードルが下がり、気が楽になるはずです。
ステップ1&2:最重要!基本の使役表現「让(ràng)」からマスターする
使役動詞の「让 (ràng)」は、中国語の使役表現において最も基本的かつ重要な単語です。使用頻度が非常に高く、許可・要求・放任・原因など、様々な状況で用いることができる非常に便利な言葉です。まずはこの「让」の基本的な語順と多様な用い方を徹底的に練習し、体に染み込ませてください。これが他の使役動詞を理解するための強固な土台となります。
「让」を使った使役文の基本構造
まず、最もシンプルな形の使役文の型(語順)を見ていきましょう。「让」は基本的に「(誰か)に~させる」という意味で、後ろに「誰に」と「何をさせるか」が続きます。
基本形1: 让 + 目的語(動作主) + 動詞 (+ その他)
この形では、文の主語が省略されているか、文脈上明らかである場合に用いられます。「目的語」には、「~させられる人や物」が入り、その後にその人や物が行う「動詞」が続きます。
让我看一下。
(Ràng wǒ kàn yīxià.)
私に(ちょっと)見せてください。 (直訳:私に見ることをさせてください)
让我考虑一下。
(Ràng wǒ kǎolǜ yīxià.)
私に(ちょっと)考えさせてください。 (直訳:私に考えることをさせてください)
これらのフレーズは非常に実用的で、日常生活で頻繁に使われます。後のステップで他の使役動詞と比較する際にも基本となるため、何度も音読し、自然に口から出てくるように練習しましょう。
次に、上記の構文の文頭に「誰が」という主語(使役の主体)が入る形を見てみましょう。
基本形2: 主語(使役主) + 让 + 目的語(動作主) + 動詞 (+ その他)
中文老师常常让我们背书。
(Zhōngwén lǎoshī chángcháng ràng wǒmen bèishū.)
中国語の先生はいつも私たちに(教科書などを)暗唱させます。
我爸爸不让我去日本。
(Wǒ bàba bù ràng wǒ qù Rìběn.)
父は私を日本に行かせてくれません。(行かせてくれないだろう)

基本構造「S + 让 + O + V」をしっかり覚えましょう。
「让」が持つ多様なニュアンスと表現
「让」は非常に応用範囲の広い使役動詞で、文脈によって様々なニュアンスを表します。ここでは代表的な使い方をいくつか見ていきましょう。
1. 強制・要求:「~させる」
相手に何かをするように強く求める、あるいは強制するニュアンスです。
老板让员工加班。
(Lǎobǎn ràng yuángōng jiābān.)
社長は従業員に残業をさせた。
2. 許可・容認:「~させてあげる」「~してもよい」
相手が何かをすることを許したり、容認したりするニュアンスです。
妈妈让我买新手机了。
(Māma ràng wǒ mǎi xīn shǒujī le.)
お母さんは私に新しい携帯電話を買わせてくれた。
3. 放任:「(好きに)~させる」「ほうっておく」
相手の行動に干渉せず、好きなようにさせる、または成り行きに任せるニュアンスです。
孩子们想玩就让他们玩吧。
(Háizimen xiǎng wán jiù ràng tāmen wán ba.)
子供たちが遊びたがっているなら、遊ばせてあげなさい。
4. 原因・結果:「(状況などが)~させる」「~という結果をもたらす」
ある事柄や状況が、特定の結果や感情を引き起こす原因となることを示します。この場合、主語は人だけでなく、事柄や状況になることも多いです。
这个消息让大家都很高兴。
(Zhège xiāoxi ràng dàjiā dōu hěn gāoxìng.)
この知らせは皆をとても喜ばせた。
5. ビジネスシーンなどフォーマルな表現
ビジネスの場面や少し改まった状況でも「让」は使われます。「~に~を担当させる」「~に~を任せる」といった意味合いで用いられます。
总经理决定让他负责这个项目。
(Zǒngjīnglǐ juédìng ràng tā fùzé zhège xiàngmù.)
社長(総経理)は彼にこのプロジェクトを任せる(担当させる)ことを決定しました。
6. 謝罪や気遣いを含む丁寧な使役
「让」が目下の人から目上の人に対して使われる場合や、相手に迷惑をかけたことを詫びる文脈では、謝罪や気遣いのニュアンスを含む丁寧な使役表現となります。この場合、主語の「我 (wǒ)」を省略し、「让您 (ràng nín)…」の形で使われることが多いです。これらは定番フレーズとして覚えておくと非常に便利です。
对不起,让您久等了。
(Duìbuqǐ, ràng nín jiǔ děng le.)
すみません、お待たせいたしました。(直訳:あなたを長く待たせてしまいました)
让您费心了。
(Ràng nín fèixīn le.)
ご心配をおかけしました。/お手数をおかけしました。
勧誘表現としての「让我们(ràng wǒmen)」
「让 + 人 + 動詞」という形は、英語の使役表現「let + 人 + 動詞」(例:Let me see.)と構造が似ています。英語で “Let us” を短縮して “Let’s” と言うと「~しましょう」という勧誘表現になるのと同様に、中国語でも「让我们 (ràng wǒmen)…」の形で「私たちに~させましょう」から転じて「~しましょう」という、聞き手を含む人々への提案や呼びかけ、勧誘の表現としてよく使われます。
让我们一起去吧!
(Ràng wǒmen yìqǐ qù ba!)
一緒に行きましょう!
让我们共同努力!
(Ràng wǒmen gòngtóng nǔlì!)
共に努力しましょう!
このように、「让」一つをとっても非常に多くの場面で活用できることがわかります。まずはこれらの基本的な使い方とニュアンスをしっかりと押さえることが、使役文マスターへの第一歩です。
ステップ3:他の主要使役動詞との比較と使い分け
基本となる「让」の理解が深まったところで、次はいよいよ他の主要な使役動詞「叫 (jiào)」「请 (qǐng)」「使 (shǐ)」「给 (gěi)」「令 (lìng)」が持つそれぞれの特徴と、「让」とのニュアンスの違いを比較しながら見ていきましょう。これらの動詞を適切に使い分けることで、あなたの中国語はより自然で、意図が正確に伝わるものになります。
「叫(jiào)」を使った使役表現:より口語的、命令・指示のニュアンス
「叫 (jiào)」も「~させる」という意味で使われる使役動詞で、「让」と共通する点が多いですが、いくつかの重要な違いがあります。「叫」の主な特徴は以下の通りです。
- 口語的:「让」が話し言葉・書き言葉の両方で使われるのに対し、「叫」は主に話し言葉で使われます。
- 命令・指示のニュアンス:「让」よりも、やや命令口調であったり、相手に何かをするよう指示するニュアンスが強くなることがあります。そのため、目上の人に対して使うのは避けた方が無難です。
- 対象が人:多くの場合、「叫」の後に来る目的語(~させられる対象)は「人」です。
中文老师常常叫我们背书。
(Zhōngwén lǎoshī chángcháng jiào wǒmen bèishū.)
中国語の先生はいつも私たちに暗唱をさせます。(「让」を使った場合よりも、先生の指示・命令感が少し強まる)
妈妈叫我去买酱油。
(Māma jiào wǒ qù mǎi jiàngyóu.)
お母さんは私に醤油を買いに行かせた(買いに行くように言った)。
最初の例文は、「让」のセクションで用いたフレーズの使役動詞を「叫」に置き換えたものです。この場合、「叫」を使うことで、先生が生徒に「命令してさせる」「指示してさせる」というニュアンスがより強調されます。友人同士や家族間など、比較的カジュアルな関係で「~してと頼む」「~するように言う」といった意味合いでもよく使われます。
目上の人にお願いする「请(qǐng)」:敬意を込めた依頼
「请 (qǐng)」は、元々「どうぞ~してください」と相手に何かを勧めたり依頼したりする際に使われる動詞で、英語の “please” に近い丁寧なニュアンスを持っています。ここから派生し、使役動詞としては、目上の人やあまり親しくない人に対して、敬意を込めて何かをしてもらうようお願いする場面で用いられます。「(人)に~していただく」「(人)にお願いして~してもらう」といった意味合いが強くなります。
我们请李老师来发表演讲。
(Wǒmen qǐng Lǐ lǎoshī lái fābiǎo yǎnjiǎng.)
私たちは李先生に(お願いして)スピーチをしていただきました。
我想请您帮个忙。
(Wǒ xiǎng qǐng nín bāng ge máng.)
あなたにちょっと手伝っていただきたいのですが。
我们请王老师陪小李去医院。
(Wǒmen qǐng Wáng lǎoshī péi Xiǎo Lǐ qù yīyuàn.)
私たちは王先生に、(お願いして)李さんに付き添って病院へ行っていただきました。
「请」は、食事に招待する(例:我请客 Wǒ qǐngkè – 私がおごります)、人を招くといった意味でも使われ、常に相手への敬意や丁寧さが伴います。「让」や「叫」のように強制的な意味合いは全くありません。

使役動詞はニュアンスのバランスが大切です。
「使(shǐ)」と他の使役動詞との違い:非意図的な原因と結果
「使 (shǐ)」は、「~させる」という意味を持つ使役動詞ですが、「让」「叫」「请」とは大きく異なる特徴を持っています。「使」は、ある原因や状況が、意図的ではなく、自然とある結果(主に状態変化や心理活動)をもたらすことを表します。話し手が積極的に誰かに働きかけるというよりは、客観的な因果関係を示す場合に用いられることが多いです。
- 非意図的:「让」「叫」「请」が基本的に意図的な働きかけを表すのに対し、「使」は意図的でない原因によって結果が生じる場合に使われます。
- 結果は非動作的:「使」の後に続く結果は、具体的な動作ではなく、何らかの状態、変化、心理活動などを指すことが多いです。(例:喜ばせる、悲しませる、向上させる、悪化させるなど)
- 文語的・硬い表現:話し言葉よりも書き言葉やフォーマルなスピーチでよく使われ、やや硬い印象を与えます。
这次的失败使我失去了信心。
(Zhè cì de shībài shǐ wǒ shīqù le xìnxīn.)
今度の失敗は私から自信を失わせた(今回の失敗で私は自信を失いました)。
この例文では、「失敗」という出来事(原因)が、「自信を失う」という心理的な結果を引き起こしています。失敗は意図的に起こしたものではありません。このように、主語が人ではなく事柄になることも「使」の特徴です。
他的话使我很生气。
(Tā de huà shǐ wǒ hěn shēngqì.)
彼の言葉は私をとても怒らせた。
科技的发展使人们的生活更加便利。
(Kējì de fāzhǎn shǐ rénmen de shēnghuó gèngjiā biànlì.)
科学技術の発展は人々の生活をより便利にさせた。
「给(gěi)」と「让」の違い:許可と話し手の関与
「给 (gěi)」も「~させる」「~させてあげる」「~することを許す」といった意味で使役の働きをすることがあり、特に口語で「让」や「叫」に近い用法が見られます。ただし、いくつかのニュアンスの違いがあります。
- 許可・容認のニュアンス:「让」と同様に許可を表しますが、「给」はより話し手の積極的な許可や、「~させてあげる」という恩恵的なニュアンスが強まることがあります。
- 具体的な授受を伴う場合:「给」は元々「与える」という意味を持つ動詞なので、使役で使われる際も、何かを「手渡して見せる」ように、具体的な物の移動や行為の提供を伴う場面で好まれることがあります。
- 口語的:主に話し言葉で使われます。
给我看一下。
(Gěi wǒ kàn yīxià.)
私に見せてください。(「让」よりも、手渡してくれることを期待するニュアンス)
「让我看一下」と比較すると、「给我看一下」の方が、相手に何かを「こちらに渡して」見せてほしい、という具体的な行為を求める感じが強まります。
请给我看一下您的身份证。
(Qǐng gěi wǒ kàn yīxià nín de shēnfènzhèng.)
あなたの身分証明書を見せてください。(手渡して提示することを求める)
この場合も、「让」に置き換えることは可能ですが、「给」を用いることで、相手の身分証を実際に手渡してもらい、確認するという具体的な行為の許可を求めるニュアンスがより明確になります。
你再给我一次机会吧!
(Nǐ zài gěi wǒ yī cì jīhuì ba!)
もう一度私にチャンスをください(チャンスを与えてください)!
感情を表す使役文「令(lìng)」:文語的で心理変化を促す
「令 (lìng)」は、「~させる」という意味の中でも、特にある原因が人の感情や心理状態に何らかの変化を引き起こす場合に使われる使役動詞です。「使」と同様に、意図的に人を行動させるのではなく、非意図的な原因によって結果が生じる場合に用いられますが、「令」はより感情・心理面に特化しています。
- 感情・心理変化:「令」の後には、感動する、喜ぶ、怒る、失望する、満足するなど、感情や気持ちを表す言葉が置かれるのが一般的です。
- 文語的:「使」よりもさらに文語的で、書き言葉や格調高いスピーチ、詩などで使われることが多いです。日常会話ではあまり使いません。
- 対象は人のみ:「令」によって感情が変化させられる対象(兼語)は、基本的に「人」や人を指す言葉に限られます。
- 注意点:「令」の後に、程度副詞の「很 (hěn)」などを直接置くことはできません。(例:令我很感动 は誤り。「令我感动」または「使我很感动」)
她的演讲令我感动。
(Tā de yǎnjiǎng lìng wǒ gǎndòng.)
彼女のスピーチは私を感動させた。
这个消息真令人兴奋。
(Zhège xiāoxi zhēn lìng rén xīngfèn.)
この知らせは本当に人を興奮させる(わくわくさせる)。
「令人 (lìng rén) ~」という形は、「人を~させる」という意味の慣用表現として非常によく使われます。後ろに感情を表す単音節または二音節の形容詞や動詞が来ます。これらはセットフレーズとして覚えてしまうのが効率的です。
「令人~」の頻出フレーズ:
中国語 (漢字) | ピンイン | 日本語訳 |
---|---|---|
令人感动 | lìng rén gǎndòng | 人を感動させる |
令人高兴 | lìng rén gāoxìng | 人を喜ばせる |
令人满意 | lìng rén mǎnyì | 人を満足させる |
令人生气 | lìng rén shēngqì | 人を怒らせる |
令人失望 | lìng rén shīwàng | 人を失望させる |
令人痛苦 | lìng rén tòngkǔ | 人をつらくさせる、苦しませる |
令人尊敬 | lìng rén zūnjìng | 人に尊敬の念を抱かせる |
令人厌倦 | lìng rén yànjuàn | 人をうんざりさせる、飽きさせる |
令人佩服 | lìng rén pèifu | 人を感服させる、敬服させる |
令人尴尬 | lìng rén gāngà | 人を気まずくさせる、困惑させる |
令人期待 | lìng rén qīdài | 人に期待させる、待ち遠しくさせる |
令人担忧 | lìng rén dānyōu | 人に心配させる、懸念させる |
これらの「令人~」の表現は、ニュース記事や評論、文学作品などで頻繁に見られます。覚えておくと読解力向上にも繋がります。
使役文の疑問文と否定文の作り方
使役文を使いこなすためには、肯定文だけでなく、疑問文や否定文の形も理解しておく必要があります。基本的なルールは難しくありません。
使役の疑問文
使役文を疑問文にする主な方法は2つあります。
1. 文末に「吗(ma)」をつける
最も一般的な疑問文の作り方で、肯定文の最後に「吗」を置くだけです。
这个业务让他做吗?
(Zhège yèwù ràng tā zuò ma?)
この業務は彼にさせますか?
你可以让我进去吗?
(Nǐ kěyǐ ràng wǒ jìnqù ma?)
私を入らせてくれますか?
2. 反復疑問の形(動詞/助動詞 + 不 + 動詞/助動詞)
使役動詞の前に「要不要 (yào bu yào)」や、文脈によっては使役動詞自体を反復させる形(例:让不让 ràng bu ràng)を用いることもあります。
这个业务要不要让他做?
(Zhège yèwù yào bu yào ràng tā zuò?)
この業務は彼にさせますか(させませんか)?
你让不让我说?
(Nǐ ràng bu ràng wǒ shuō?)
私に話させてくれるの、くれないの?
使役の否定文
使役文を否定形にするには、基本的に使役動詞の前に否定詞「不 (bù)」または「没 (méi) / 没有 (méiyǒu)」を置きます。
「不 (bù)」を用いる場合:
現在の意志や習慣的な不許可、未来の不許可などを表します。
这个业务不让他做。
(Zhège yèwù bù ràng tā zuò.)
この業務は彼にはさせない。
妈妈不叫我晚上出去玩。
(Māma bù jiào wǒ wǎnshang chūqù wán.)
母は私に夜遊びに行かせない(行かせてくれない)。
这话并不使人感到意外。
(Zhè huà bìng bù shǐ rén gǎndào yìwài.)
この話は少しも人に意外であるとは感じさせない。(少しも意外ではない)
「没 (méi) / 没有 (méiyǒu)」を用いる場合:
過去の事実としての不許可や、ある状況が発生しなかったことを表します。
他昨天没让我用他的电脑。
(Tā zuótiān méi ràng wǒ yòng tā de diànnǎo.)
彼は昨日、私に彼のパソコンを使わせてくれなかった。
中国語の検定試験(HSKなど)では、このような使役構文や受身構文(被動文)といった特殊な語順を持つ文の、特に否定文や疑問文の語順がよく出題される傾向にあります。試験を受ける予定の方は、これらのルールをしっかりと復習し、多くの例文に触れておくことが大切です。
【一覧比較】それぞれの使役動詞のニュアンス早分かり表
ここまで解説してきた主要な使役動詞「让」「叫」「请」「使」「给」「令」の主な特徴とニュアンスの違いを、一覧表にまとめてみました。もちろん、これらの意味は一言で完全に定義できるものではなく、文脈によって様々に変化しますが、それぞれの動詞が持つ中心的なイメージを掴むのに役立つはずです。学習の整理や復習にご活用ください。
使役動詞 | 主な意味・ニュアンス | 強制力 | 敬意 | 口語/文語 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
让 (ràng) | ~させる(許可、要求、放任、原因など)。最も汎用的。 | 中~強 | 中 | 口語・文語 | 使役の基本。丁寧な依頼にも。 |
叫 (jiào) | ~させる(命令、指示、頼む)。「让」より口語的。 | 中~強 | 低 | 主に口語 | 対象は主に人。目上には不向き。 |
请 (qǐng) | ~してもらう、お願いする(依頼、招待)。敬意を込める。 | 無 | 高 | 口語・文語 | 丁寧な依頼。食事をおごる等も。 |
使 (shǐ) | (非意図的な原因が)~させる、~という結果をもたらす。 | 無 | 中 | 主に文語 | 客観的因果関係。硬い表現。 |
给 (gěi) | ~させてあげる、~することを許す。(口語的) | 弱~中 | 中 | 主に口語 | 許可、恩恵。具体的な行為を伴うことも。 |
令 (lìng) | (原因が)人の感情・心理を~させる。文語的。 | 無 | 中 | 主に文語 | 感情変化に特化。「令人~」の形で多用。 |
使役の働きをするその他の動詞たち
これまで紹介してきた主要な使役動詞以外にも、文脈によっては使役的な意味合いを持つ動詞がいくつか存在します。これらは厳密には使役動詞と分類されないこともありますが、結果として「誰かに何かをさせる」という状況を作り出すため、関連知識として覚えておくと表現の幅が広がります。代表的な動詞を例文と共に見ていきましょう。
「劝 (quàn)」:説得して~させる、勧める
相手を説得したり、アドバイスしたりして、ある行動をするように促す場合に使います。
我劝你把酒戒掉。
(Wǒ quàn nǐ bǎ jiǔ jièdiào.)
私はあなたにお酒をやめるように勧めます。
「派 (pài)」:派遣する、任命して~させる
人を選んで特定の任務や仕事に行かせる、担当させる場合に使います。
总部已经派了两个人出差。
(Zǒngbù yǐjīng pài le liǎng ge rén chūchāi.)
本社はすでに二人の者を出張させた(出張するよう派遣した)。
「要求 (yāoqiú)」:要求する、~するよう求める
相手に対して、ある行動や基準を満たすよう強く求める場合に使います。
公司要求员工遵守规定。
(Gōngsī yāoqiú yuángōng zūnshǒu guīdìng.)
会社は従業員に規定を遵守するよう要求している。
「求 (qiú)」:頼む、懇願して~してもらう
相手に何かをしてもらうように、切に頼む、お願いする場合に使います。「请」よりも必死さが伴うことがあります。
我求你帮我打个国际电话。
(Wǒ qiú nǐ bāng wǒ dǎ ge guójì diànhuà.)
あなたに国際電話をかけていただきたいのですが(どうかお願いします)。
「逼 (bī)」:強いる、無理やり~させる
相手の意に反して、何かを無理に強要する場合に使います。強制力が非常に強い言葉です。
他被逼说出了秘密。
(Tā bèi bī shuōchū le mìmì.)
彼は秘密を言うように強いられた。(受身形ですが「逼」の使役的な意味合いがわかります)
これらの動詞は、使役動詞と組み合わせて使われることもあります(例:我要求老板让我加薪 – 私は社長に昇給させてくれるよう要求した)。文脈に応じて最適な言葉を選べるようになると、より高度な中国語表現が可能になります。
使役文を自然に使いこなすための練習法
理論を理解した後は、実際に使えるようにするための練習が不可欠です。ここでは、中国語の使役文を自然に使いこなすためのおすすめ練習法をいくつかご紹介します。
- 例文の音読と暗唱:この記事で紹介したような基本的な例文を、感情を込めて何度も音読し、最終的には暗唱できるレベルを目指しましょう。正しい語順とリズムが自然と身につきます。
- 置き換え練習:一つの使役文の主語、目的語、動詞を様々に置き換えて、新しい文を作る練習をします。例えば、「老师让我读书(先生は私に本を読ませる)」から、「妈妈让我做饭(母は私にご飯を作らせる)」のように展開します。
- 和文中訳・中文和訳:日本語の使役表現を見て中国語に訳したり、中国語の使役文を見て日本語の自然な表現に訳したりする練習は、両言語の対応関係を深く理解するのに役立ちます。
- 日記や作文で使ってみる:日々の出来事や自分の考えを中国語で書く際に、意識して使役文を取り入れてみましょう。間違っても良いので、積極的に使うことが大切です。
- 会話の中で実践する:中国人の友人や先生との会話の中で、習った使役表現を実際に使ってみましょう。フィードバックをもらうことで、より自然な言い回しが身につきます。オンラインレッスンなども活用できます。
- 中国のドラマや映画を参考にする:リアルな会話の中で使役文がどのように使われているか、ドラマや映画を注意して見てみましょう。生きた表現を学ぶ良い機会になります。
まとめ:使役文を制する者は中国語を制す!
今回は、中国語学習の大きな関門の一つである「使役文」について、その基本から各使役動詞の使い分け、さらには疑問文・否定文の作り方まで、網羅的に解説しました。中国語の使役文は、日本語の感覚とは異なる部分が多いため、最初は難しく感じるかもしれませんが、この記事で紹介した攻略ポイントと学習ステップを意識して取り組めば、必ずや習得できるはずです。
何よりも大切なのは、まず基本となる使役動詞「让」を徹底的にマスターし、その使い方に慣れることです。そして、その土台の上に、他の使役動詞(「叫」「请」「使」「给」「令」など)が持つそれぞれの独自のニュアンスや用法を、一つずつ丁寧に積み重ねていくように学習を進めてください。焦らず、一歩一歩確実に理解を深めていくことが、結果的に最も効率的な学習方法となります。
使役文を自由自在に使いこなせるようになると、あなたの中国語の表現力は飛躍的に向上し、より複雑で nuanced(ニュアンスに富んだ)なコミュニケーションが可能になります。これは、日常会話はもちろん、ビジネスシーンやよりフォーマルな場面においても、あなたの中国語能力を大いに高めてくれるでしょう。
すでにある程度中国語を話せるようになっている方も、現状に満足せず、この記事を参考に全ての使役動詞を正確に使いこなせるよう、さらなる努力を続けてみてください。使役文を制する者は、中国語を制す!あなたの中国語学習が、より実り多く、楽しいものになることを心から応援しています。