中国語ピンイン完全ガイド:初心者が最短で発音をマスターする全知識と学習法【音声練習のコツ】

  1. 中国語発音ガイド完全版|ピンイン・声調の基礎からネイティブ表現まで徹底解説

中国語学習を始めようと思ったあなたが、まず最初に向き合うべき最重要課題、それが「ピンイン(拼音)」です。

「アルファベットみたいだし、なんとなく読めそう」
「発音は後回しにして、まずは単語や文法を覚えたい」

もしこのように考えているなら、少し立ち止まってください。中国語において、発音学習、すなわちピンインのマスターは、他のどの学習項目よりも優先されるべき「土台」なのです。中国語学習のスタートラインに立った今、専門の中国語教室で正しい発音の基礎を学ぶことも、最速の上達への近道です。

この記事では、なぜピンインがそれほど重要なのか、そして日本人が特につまずきやすいポイントをどう克服すればよいのか、効率的な学習法から実践的なタイピング技術まで、ピンインに関する全知識を徹底的に解説します。この記事を読み終える頃には、ピンイン学習への迷いが消え、正しい発音をマスターするための明確な道筋が見えているはずです。

目次

中国語ピンインとは?学習の「土台」が9割の理由

まず、ピンインとは何か、そしてなぜそれが中国語学習において絶対不可欠なのかを深く理解しましょう。この基礎理解が、あなたの学習効率を大きく左右します。

ピンイン(拼音)の基本的な定義と役割

ピンイン(拼音:Pīnyīn)とは、「中国語の発音をアルファベットで表記するための記号体系」のことです。1958年に中国大陸で制定されて以来、標準中国語(普通話)の教育や、外国人学習者のための発音ガイドとして広く使われています。

例えば、日本語の「こんにちは」にあたる中国語は「你好」という漢字ですが、これだけ見てもどう発音すればいいか分かりません。そこでピンイン「nǐ hǎo」が振られるのです。これにより、私たちはその漢字の「読み方」を知ることができます。

ピンインの役割

  • 漢字の読み方を示す: 数万ある漢字の読み方を統一的に示します。
  • 発音の基準となる: 中国国内でも地域によって方言が強い中、標準語の「正しい発音」の基準となります。
  • 外国人の学習ガイド: 私たち外国人が発音を学ぶための唯一無二のツールです。
  • PC・スマホの入力: 中国語をタイピングする際の標準的な入力方式です。

なぜピンイン学習が中国語習得の鍵なのか?

結論から言えば、「ピンインが間違っていると、中国語は全く通じない」からです。

日本語は、多少アクセントが違っても(例:「橋」と「箸」)、文脈で意味が通じることが多い言語です。しかし、中国語は「音の高さ(声調)」が意味を決定づける言語です。同じ「ma」という音でも、声調が違えば全く異なる意味になります。

声調が違うと意味が変わる例

  • (第一声) → (お母さん)
  • (第二声) → (麻、しびれる)
  • (第三声) → (馬)
  • (第四声) → (罵る)

もしあなたが「お母さん()」と言おうとして、間違って「馬()」や「罵る()」の発音をしてしまったら、相手は全く意味を理解できません。それどころか、非常に失礼にあたる可能性もあります。

ピンインは、家を建てる時の「基礎工事」です。基礎がグラグラな家に、立派な柱(単語)や壁(文法)を建てても、すぐに崩れてしまいます。最初に強固な基礎(正しい発音)を築くことこそが、上達への最短距離なのです。

日本人学習者が陥る「カタカナ読み」という最大の罠

私たち日本人がピンイン学習で最も注意すべきこと、それは「カタカナ(またはローマ字)の感覚で読んでしまう」ことです。

ピンインはアルファベットを使っていますが、その読み方は英語のローマ字読みとも、日本語のカタカナ読みとも全く異なります。

危険な「カタカナ読み」の例
例えば、中国語で「食べる」は「chī」です。
これをカタカナで「チー」と覚えてしまうと、永久に通じません。
なぜなら、chは日本語の「チ」とは全く異なる「そり舌音」であり、iもこの場合「イ」ではなく「ウ」に近い特殊な発音だからです。

ピンイン学習の第一歩は、「カタカナでフリガナを振る」という長年の癖を完全に捨てることです。これは心理的に難しいことですが、必須の心構えです。

ピンイン学習に必要な期間の目安は?

学習方法や確保できる時間によりますが、一般的に、ピンインの全ての音のルールを理解し、一通り正しく発音できるようになるまでには、毎日集中して学習して最低でも1ヶ月〜2ヶ月はかかると言われています。

「そんなに時間がかかるのか」と落胆する必要はありません。この最初の1〜2ヶ月の投資が、その後の数年間の学習効率を決定づけます。中国には「yù sù zé bù dá欲速则不达)」ということわざがあります。これは日本語の「急がば回れ」と同じ意味です。発音学習こそ、まさにこの言葉が当てはまります。

ピンインの構造を徹底解剖!「声母」「韻母」「声調」

ピンインの音は、基本的に「声母(子音)」、「韻母(母音)」、そして「声調(音の高低)」の3つの要素で構成されています。この構造を理解することが、学習の第一歩です。

音の始まり「声母(子音)」とは?

声母(せいぼ)は、音節の先頭に来る子音のことです。全部で21種類(+ゼロ声母)あります。

声母一覧 (21個)

b, p, m, f, d, t, n, l, g, k, h, j, q, x, zh, ch, sh, r, z, c, s

例えば「(お母さん)」の「m」が声母です。日本語の子音と似ているものもあれば、「zh」や「q」のように全く異なるものもあります。

音の響き「韻母(母音)」とは?

韻母(いんぼ)は、声母の後ろに来る母音の部分です。音の響きや音節の終わり方を決定づけます。全部で36種類以上あります。

韻母はさらに3種類に分類されます。

  1. 単韻母:母音が一つのもの (例: a, o, e, i, u, ü)
  2. 複韻母:母音が二つ以上組み合わさったもの (例: ai, ei, ao, ou)
  3. 鼻韻母:最後に鼻から息を抜く音 (-n や -ng) が付くもの (例: an, en, ang, eng)

例えば「」の「a」が韻母です。「hǎo(良い)」では「ao」が韻母になります。

音の高低「声調(四声)」とは?

声調(せいちょう)は、音節の音の高低変化(メロディー)のことです。先ほども触れたように、これが中国語の意味を決定づける最も重要な要素です。

基本となる4つの声調があるため、「四声(しせい)」と呼ばれます。これに加えて、軽く発音する「軽声(けいせい)」があります。

  • 第一声 ( ̄ ):高く平らに伸ばす音
  • 第二声 ( ́ ):低い音から高い音へ上げる音
  • 第三声 ( ̌ ):低い音を維持し、最後に少し上げる(または上げない)音
  • 第四声 ( ̀ ):高い音から低い音へ一気に下げる音
  • 軽声 (無印):軽く短く添える音

3つの組み合わせで全ての中国語の音が決まる

中国語の全ての音節(漢字一文字分の音)は、この3つの要素の組み合わせで成り立っています。

声母 (m) + 韻母 (a) + 声調 (第一声) = (お母さん)

この構造を理解し、声母、韻母、声調のそれぞれを正確に発音できるよう練習することが、ピンイン学習の全体像です。

【最重要】日本人が絶対につまずく「難関ピンイン」徹底攻略

そり舌音や鼻母音を発音する口の形

舌の位置や息の強さが発音の決め手です

ピンインの中には、日本語の音と似ていて簡単なものもありますが、日本語に存在しないために習得が難しい「難関ピンイン」が存在します。これらを重点的に攻略することが、ネイティブに通じる発音への近道です。

難関①:そり舌音 (zh, ch, sh, r) – 舌を巻かないのがコツ

多くの日本人学習者が最初にぶつかる壁が「そり舌音」です。かつては「巻き舌音」とも呼ばれていましたが、実際には舌を巻く(カールさせる)のではなく、「そり上げる」のが正しい形です。

そり舌音の発音のコツ

  1. 舌先を、上の歯茎のさらに奥(硬口蓋)に向かって「そり上げ」ます。
  2. 舌先と天井の間にわずかな隙間を作ります。
  3. その隙間に息を通して摩擦音を出します。
  • zh: 舌をそり上げ、息を破裂させずに出す(無気音)。日本語の「ヂ」に近いが舌の位置が違う。
  • ch: zhと同じ形で、強く息を破裂させる(有気音)。
  • sh: zhと同じ形で、息を摩擦させ続ける。日本語の「シ」より深い音。
  • r: shと同じ形で、声帯を震わせる。英語の「r」とも違う。

練習用単語:
知道 zhīdào (知っている)
吃饭 chīfàn (ご飯を食べる)
shì (〜です)
日本人 Rìběnrén (日本人)

難関②:有気音 (p, t, k, q, ch, c) vs 無気音 (b, d, g, j, zh, z) – 息の強弱が全て

日本語には「清音(か行)」と「濁音(が行)」の区別(声帯の震えの有無)がありますが、中国語の多くの声母は「息を強く出すか、出さないか」で区別されます。

  • 有気音:息を強く破裂させる音 ( p, t, k, q, ch, c )
  • 無気音:息を抑えて出す音 ( b, d, g, j, zh, z )

ティッシュペーパーで確認!
口の前にティッシュを1枚垂らしてみてください。
有気音 (例: ) を発音すると、ティッシュが激しく揺れます。
無気音 (例: ) を発音すると、ティッシュはほとんど揺れません。

日本人は、無気音の「b」を日本語の「バ」のように発音しがちですが、中国語の「b」はむしろ「息を出さないパ」に近い音です。この区別ができないと、「(八)」と「(這う)」のような単語を聞き分けてもらえません。

難関③:鼻母音 (n vs ng) – 舌先の位置で区別する

韻母の最後が「-n」で終わる音(前鼻母音)と、「-ng」で終わる音(後鼻母音)の区別も、日本人にとって大きな関門です。

日本語の「ん」は、実はこの両方の音を曖昧に使っていますが、中国語では明確に区別されます。

-n と -ng の違い

  • -n (an, en, in…): 発音し終わった時、舌先が「上の歯茎」にしっかり付いている。日本語の「案内(アンナイ)」の「ン」。
  • -ng (ang, eng, ing…): 発音し終わった時、舌先はどこにも付かず、舌の付け根(奥)が持ち上がり、喉の奥(軟口蓋)を塞ぐ。日本語の「案外(アンガイ)」の「ン」。

練習用単語:
安全 ānquán (安全) ※両方 -n
当然 dāngrán (当然) ※dāng が -ng, rán が -n
安静 ānjìng (静かだ) ※ān が -n, jìng が -ng

難関④:日本にない母音 (e, ü) – 口の形と喉の使い方

日本語のア・イ・ウ・エ・オに当てはまらない母音が、中国語学習者を悩ませます。

  • e: 「エ」でも「オ」でもない、口を「エ」の形に軽く横に引き、喉の奥から「オ」を出すような曖昧な音です。お腹を殴られた時に思わず「ウッ」と声が出る時の喉の奥の感覚に近いです。

    (練習: 喝 – 飲む、 课 – 授業)
  • ü (yu, qu, xu, ju): 日本語の「ユ」とは全く違います。口を「イ」の形にしたまま、唇だけをすぼめて「ウ」を発音するイメージです。唇をしっかり丸め、すぼめたまま動かさないのがコツです。

    (練習: 雨 – 雨、 去 – 行く)

難関⑤:「i」の特殊な発音 (zi, ci, si, zhi, chi, shi, ri)

ピンインの「i」は、ほとんどの場合「イ」と発音しますが、特定の声母と組み合わさると全く違う音になります。

それが「z, c, s」および「zh, ch, sh, r」の後ろに来る「i」です。

注意:「i」を「イ」と読まない例外

  • zi, ci, si: 舌先を上の歯の裏に近づけて出す音。口を横に引いて「ウ」と言うような、日本語の「ツィ」に近い音。
  • zhi, chi, shi, ri: そり舌のまま、喉の奥で「ウ」を唸るような音。「イ」の音は全く入らない。

例えば「chīfàn(食べる)」を「チーファン」と発音してはいけないのは、このためです。「ch」と「i」の両方が日本語の感覚と異なるのです。

中国語の「メロディー」声調(四声)をマスターする練習法

中国語の四声(第一声から第四声)を示すグラフアイコン

四声は音の高低変化(メロディー)で意味を伝えます

声母と韻母の「音」が正しくても、「声調(メロディー)」が間違っていれば通じません。四声+軽声の感覚を体で覚えましょう。

第一声(高・平):飛行機のように真っ直ぐ

記号: ̄ (例: )
自分が楽に出せる音域の中で、最も高く、平らな音をキープします。カラオケで音を伸ばす時や、歯医者さんで「あー」と言う時の感覚です。音が下がったり揺れたりしないように注意しましょう。

第二声(中→高):驚きの「え?」と聞き返す音

記号: ́ (例: )
普通の高さ(中音域)から、一気に高い音へ引き上げます。日本語で「え? 何?」と驚いて聞き返す時のイントネーションそのものです。中途半端に上げず、しっかり高音まで引き上げるのがコツです。

第三声(低・谷):最も低い音をキープする

記号: ̌ (例: )
最も低い音域まで下げ、その低さをキープする音です。教科書では「低く下げてから上げる」とV字型で説明されますが、実際の会話では、後ろに他の音節が続く場合、「低く抑えるだけ」(半三声)がほとんどです。不満がある時に「あぁ…」と低く唸る感覚に近いです。

第四声(高→低):カラスの「カァ!」と叱る音

記号: ̀ (例: )
最も高い音から、一気に低い音へ叩きつけます。カラスの「カァ!」という鳴き声や、誰かを強く叱る時の「コラ!」という感覚です。短く、鋭く、強く発音するのがコツです。

軽声:力を抜いて軽く添えるだけ

記号:なし (例: ma)
声調記号が付かない音節は「軽声」と呼ばれます。直前の音節に「軽く添える」ように、短く、弱く、力を抜いて発音します。音の高さは直前の声調によって変わりますが、まずは「軽く短く」を意識すればOKです。(例:māma – お母さん)

【例文で徹底練習】声調の組み合わせパターン

実際の会話では声調が連続します。組み合わせで練習することで、滑らかな発音を身につけましょう。自分の手を上げ下げしながら「エアー声調」で練習するのも効果的です。

第一声 ( ̄ ) + 各声調

  • 1+1: 今天 jīntiān (今日) [高・高]
  • 1+2: 中国 Zhōngguó (中国) [高・中→高]
  • 1+3: 休息 xiūxi (休憩する) [高・低]
  • 1+4: ā kāishǐ (始める) [高・高→低]
  • 1+軽: ā gēge (お兄さん) [高・中]

第二声 ( ́ ) + 各声調

  • 2+1: ē shénme (何) [中→高・高]
  • 2+2: í xuéxí (学習する) [中→高・中→高]
  • 2+3: á méiyǒu (持っていない) [中→高・低]
  • 2+4: ú yúkuài (愉快だ) [中→高・高→低]
  • 2+軽: á láile (来た) [中→高・中]

第三声 ( ̌ ) + 各声調

【重要ルール】第三声が連続すると、前の第三声は第二声に変化します。 (例: nǐ hǎo → 実際の発音は [ ní hǎo ])

  • 3+1: ǒ hěn gāo (とても高い) [低・高]
  • 3+2: ǎ lǎoshī (先生) [低・中→高]
  • 3+3: 你好 nǐ hǎo (こんにちは) → [中→高・低] と発音
  • 3+4: ǒ hěn dà (とても大きい) [低・高→低]
  • 3+軽: ě nǎinai (おばあさん) [低・中]

第四声 ( ̀ ) + 各声調

  • 4+1: à xià chē (車を降りる) [高→低・高]
  • 4+2: à kàn shū (本を読む) [高→低・中→高]
  • 4+3: è xièxie (ありがとう) [高→低・低] (※軽声になることも多い)
  • 4+4: à zàijiàn (さようなら) [高→低・高→低]
  • 4+軽: à bàba (お父さん) [高→低・低]

効率爆上げ!ピンインの正しい学習ステップと覚え方

やみくもに練習しても、発音はなかなか上達しません。正しいステップを踏むことが重要です。

ステップ1:まずは「聞く」。正しい音を徹底的にインプット

発音学習の基本は「インプット」です。自分が発音できない音は、聞き取ることもできません。まずはネイティブスピーカーの正しい発音を、何度も何度も聞きましょう。

この段階では、自分で発音しようと焦らなくて構いません。「zh」と「z」の音はどう違うか、「-n」と「-ng」の響きはどう違うか、その「違い」を認識することに集中します。

ステップ2:口の形を「見る」。動画や鏡で完璧に模倣する

音の違いを認識できたら、次は「音の作り方」を学びます。
発音は口や舌の筋肉運動です。ネイティブスピーカーが発音する時の「口の形」「舌の位置」「唇のすぼめ方」を、動画などで徹底的に観察します。

そして、鏡を見ながら自分の口の形をそっくりそのまま真似てみましょう。特に「ü」や「o」のような唇の形が重要な音は、見た目の模倣が非常に効果的です。

ステップ3:録音して「比較」。自分の声とネイティブ音声を客観的にチェック

これが最も重要かつ、最も効果的なステップです。
お手本(ネイティブ音声)を聞き、それを真似て発音し、自分の声をスマートフォンなどで録音します。

次に、お手本の音声と、録音した自分の音声を交互に聞き比べます。
「自分の『sh』は息が足りないな」「第四声が下がりきっていないな」といった客観的な「ズレ」を発見できます。

自分の声を聞くのは恥ずかしいかもしれませんが、この「ズレの発見→修正」のサイクルこそが、発音矯正の最短ルートです。

ピンイン学習に役立つ神アプリ・Webサイト5選

独学でも効率的に学習を進めるために、便利なツールを活用しましょう。

  1. 音声付きピンイン表サイト:(例: “Sora-as.jp ピンイン表” など) Web上で検索すると、全ての声母・韻母の組み合わせと四声の音声を再生できるサイトがあります。まずはここで全ての音の基本を確認しましょう。
  2. 発音練習アプリ:(例: “HelloChinese”, “Super Chinese” など) 多くの中国語学習アプリには、AIによる発音判定機能が搭載されています。自分の発音がネイティブにどれだけ近いかを点数化してくれるため、ゲーム感覚で練習できます。
  3. YouTubeチャンネル:ネイティブの先生が、口の形を大袈裟に見せながら発音を教えてくれるチャンネルが多数あります。視覚的に学ぶのに最適です。
  4. 中国語辞書アプリ:(例: “weblio日中中日辞典” など) 単語を調べたついでに、必ず音声再生ボタンを押して正しい発音を聞く癖をつけましょう。
  5. 録音アプリ:スマートフォンに標準搭載されているボイスメモ機能で十分です。すぐに録音・再生できる環境を整えておきましょう。

ピンイン学習を継続する「3つの近道」

ピンイン学習は単調で、時に心が折れそうになるかもしれません。しかし、いくつかのコツを知っておけば、効率的に継続できます。

① 音節表の丸暗記は非効率(音節表の罠)

ピンインには「音節表」(声母と韻母の組み合わせ一覧表)があります。学校の九九のように、これを最初から最後まで全て暗記しようとする人がいますが、これは非常に非効率です。

なぜなら、実際にはほとんど使われない組み合わせも含まれているからです。音節表は「辞書」として使い、全ての音を一通り発音確認したら、次のステップに進みましょう。

② 難しい音から集中的に潰す

ma」や「ni」のように、日本語の感覚でほぼ正しく発音できる音に時間をかける必要はありません。学習時間を、先ほど紹介した「そり舌音」「有気音/無気音」「-n/-ng」「e, ü」といった難関ピンインに集中投下しましょう。苦手な音を克服することが、全体のレベルアップに直結します。

③ 実際の単語の中で発音を定着させる

zh」や「ch」といった音単体で練習するよりも、「zhīdào(知っている)」や「chīfàn(食べる)」といった「実際の単語」の中で練習する方が、はるかに記憶に定着しやすく、実践的です。

単語を覚える際は、漢字と意味だけでなく、必ず「ピンイン(発音)」をセットで覚えるようにしてください。これが結局、単語力と発音力を同時に鍛える近道となります。

実践編:ピンイン入力(タイピング)の基本とコツ

スマートフォンとPCで中国語のピンイン入力(Ni Hao)をしている様子

ピンイン入力は学習の成果を試す絶好の機会です

ピンインを学習する最大のメリットの一つが、PCやスマホで中国語が入力(タイピング)できるようになることです。これもピンイン学習の強力なモチベーションになります。

PC(Windows / Mac)での設定方法と入力

どちらのOSでも、設定の「言語」または「キーボード」セクションから「中国語(簡体字、拼音)」を追加するだけで、ピンイン入力が可能になります。

入力モードを中国語に切り替え、例えば「nihǎo」とタイプすると、変換候補に「你好」が表示されます。声調記号を入力する必要はありません。

スマホ(iPhone / Android)での設定方法と入力

PCと同様に、キーボード設定から「中国語(簡体字・拼音)」のキーボードを追加します。基本的な入力方法はPCと同じです。

「ü」はどう入力する? (vキーの活用)

ピンイン学習者が必ず疑問に思うのが「ü」の入力方法です。キーボードには「ü」キーがありません。

解決策: 「v」キーで代用します。
例えば「(緑)」を入力したい場合は「lv」とタイプします。
(女)」は「nv」です。

(※ j, q, x の後ろに来る u は、ルール上必ず ü なので、これらは「ju, qu, xu」とそのまま u で入力できます)

ピンイン入力が最強の復習ツールになる理由

ピンイン入力は、単なる作業ではありません。これは「最強のアウトプット型復習ツール」です。

「あれ、『安全』のアンは an だっけ? ang だっけ?」と迷った時、間違ったピンイン(例: angquan)を入力しても、正しい漢字(安全)は候補に出てきません。そこで「あ、an だった」と気づくことができます。

このように、タイピングするたびに、自分の曖昧なピンインの知識が強制的に矯正されていきます。中国語で日記を書いたり、チャットをしたりすること自体が、優れた発音練習になるのです。

ピンイン学習に関するQ&A

最後に、初心者が抱きがちなピンインに関する疑問にお答えします。

Q. 声調記号はどこに付ける?ルールを教えて

A. 声調記号は必ず「韻母(母音)」の上につけます。韻母が複数ある場合は、優先順位があります。

声調記号の優先順位ルール
a > o, e > i, u, ü

  1. まず「a」があれば、最優先で「a」に付けます。(例: hǎo)
  2. a」がなく「o」か「e」があれば、それに付けます。(例: tóu, lèi)
  3. a, o, e」が全てなく、「i」「u」「ü」が並んでいる場合は、後ろに来る方に付けます。(例: liù, guī)

※「i」に声調記号を付ける時は、上の点 (・) は取ります。

Q. ピンインを飛ばして漢字から覚えてもいい?

A. 絶対にやめるべきです。

これは、英語学習で発音記号を無視して、ひたすら単語のスペルだけを覚えるようなものです。読めても話せない、話されても聞き取れない、という典型的な失敗パターンに陥ります。漢字を見た瞬間に、正しいピンイン(声調含む)が自動的に頭に浮かぶ状態を目指すのが、正しい学習の順序です。

Q. 発音がどうしてもネイティブっぽくならない時の対処法は?

A. 2つの可能性があります。1つは「声調が中途半端」であること。特に第二声と第四声の「高低差」が足りないと、非常に日本語訛りに聞こえます。大袈裟すぎるくらいメリハリをつけて練習しましょう。

もう1つは「有気音/無気音」の区別ができていないことです。ティッシュを使った練習法に戻り、息のコントロールを徹底的にマスターしてください。この2点を改善するだけで、発音は劇的に「ネイティブっぽく」なります。

まとめ:ピンインは「急がば回れ」。正しい基礎が未来の中国語力を決める

中国語学習におけるピンインは、単なる「発音記号」ではありません。それは、あなたの中国語力全体を支える「基礎(土台)」そのものです。

最初の1〜2ヶ月、ピンイン学習に集中的に取り組むことは、遠回りに見えるかもしれません。しかし、ここで築いた強固な基礎がなければ、単語や文法をどれだけ積み上げても、実用的なコミュニケーション能力は身につきません。逆に言えば、ピンインさえマスターすれば、その後の学習スピードは飛躍的に向上します。

この記事で紹介した「難関ピンイン」の攻略法と、「聞いて・見て・録音する」という3ステップの学習法を実践すれば、独学でも必ず正しい発音は身につきます。「カタカナ読み」の癖を捨て、一つ一つの音とメロディーに真摯に向き合い、通じる中国語の第一歩を踏み出しましょう。

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ヤン・ファン (楊芳) この記事を書いた人

講師育成で知られる中国・東北師範大学卒業。講師歴は14年に及び、特に日系企業の駐在員やビジネスパーソン向けの指導経験が豊富です。現役の日中医療通訳士としても活動し同行・商談通訳等にも対応可能です
基礎からの正確な発音指導、ビジネス中国語、赴任前短期集中レッスン、HSK・中国語検定対策、日中医療通訳トレーニング。クイック・レスポンス、シャドウイング等の通訳訓練法をレッスンに導入し、実践的なコミュニケーション能力の効率的な習得をサポートします。企業研修(対面・リモート)、個人・グループレッスン、同行・商談通訳等にも対応可能で教材作成、レッスンカリキュラム、講師育成など幅広い分野で活躍。

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