消えゆく伝統の味-蘭州ラーメンの閉店背景と中国の食文化変化

  1. 中国経済・社会

近年、中国情勢は著しく変化していて中国国民もその変化に戸惑っています。

その変化の一つが中国全土にあった蘭州ラーメン(兰州拉面lánzhōulāmiàn)という有名なラーメンチェーン店が次々と閉められていることです。どうして中国で営業できなくなっているのでしょうか?

消えゆく伝統の味-蘭州ラーメンの閉店背景と中国の食文化変化

蘭州ラーメンとは?

蘭州ラーメンは中国ラーメントップテン(中国十大面条zhōngguóshídàmiàntiáo)で、いつもトップに挙げられる中国で有名なラーメンです。

蘭州ラーメンには、牛肉の白濁スープに手打ち面、さらに牛肉のチャーシューが入っています。

味のベースとなっているのが中国パセリと言われる香菜(xiāngcài)で、味精(wèijīng)と言われる中国の化学調味料も相まって、独特の風味を醸し出します。

この蘭州ラーメン、初めは日本人も慣れない味にビックリしますが、すぐにその味が病みつきになるでしょう。

蘭州ラーメンは中国国内ではどこにでもあるラーメンチェーン店でした。値段も8~12元(130~200円)くらいで庶民の食べ物として定着していたのです。

なぜ兰州拉面が中国国内で閉じられたのか?

ところがこの兰州拉面のチェーン店が2018年8月以降、次から次へと謎の閉店へと追い詰め得られているのです。どういう理由によるのでしょうか?

真相は分かりませんがいくつかの理由が考えられます。

lánzhōulāmiànjīběnshangdōuqīngzhēnkāi de

1、兰州拉面基本上都清真开的。

蘭州ラーメンはほとんどイスラムの人が営業している

lánzhōulāmiànbùtígōngzhūròu

2、兰州拉面不提供猪肉。

蘭州ラーメンでは豚肉を提供しない

lánzhōulāmiànzàiguówàifāzhǎn

3、兰州拉面在国外发展。

蘭州ラーメンは海外で発展している

どうしてこれらのことが中国国内での閉店の原因となりうるのでしょうか?

中国のモスクの前に座る大勢の人々。

中国政府とウイグル族

中国では長年にわたり、ウイグル民族への弾圧(镇压:zhènyā)が行なわれています。と言っても南アフリカの白人至上主義のように、ある民族を見下げているからではありません。

ウイグル地区は以前は中国政府からは独立していましたが、戦争の歴史の中で中国政府に統合されました。再び民族反乱が起きないために、今も中国政府はウイグル族の動きを厳しく監視しています。

ウイグル族のほとんどはイスラム教(清真:qīngzhēnjiào、もしくは伊斯兰教:yīsīlánjiào)です。ウイグル族=イスラムではないのですが、中国ではそのように思われています。

蘭州ラーメンはイスラムの人たちによって営業されて、彼らは自分たちのネットワークを持っていて連絡を取り合っています。

中国政府はもちろん彼らのネットワーク上の情報を監視しており、この度何らかの暴動の種となる情報を仕入れたのかもしれません。

イスラムの人々の資金源とみなされているのが蘭州ラーメンです。蘭州ラーメンが閉店されている背景には、こんな中国特有の事情があるのかもしれません。

宗教を捨てる圧力

以前はある程度宗教に寛容だった中国でしたが、近年宗教は認めない方針へと変わってきました。歴史のある少林寺にさえ、国家の象徴である国旗を掲げなければ存在を認めないと通達されています。

国旗を掲げること(挂国旗:guàguóqí)が国家への忠節の踏み絵というわけです。

イスラム教への圧力は仏教以上です。近年中国政府は宗教グループの中でももっとも反乱の可能性が高いイスラム教に断固たる措置を講じ、彼らの信条を捨てるように圧力を加えるようになりました。

熱心なイスラム教徒を拘束し、豚肉を食べれば解放するという報道がなされているほどです。

このようにイスラムの豚肉を食べないという文化は、中国政府から否定されるようになりました。

豚肉を提供しない食堂の代表である蘭州ラーメンが閉鎖に追い込まれたのは、こうした中国の宗教への見方の変化があるかもしれません。

中国の一時停止標識の横に立つ豚。

国外で思わぬ発展

少し前までは中国政府は「一带一路」(yídàiyílù )という中国のアジア経済政策の一環で日本を含め世界各国に蘭州ラーメンを展開しようとしていました。

しかし蘭州ラーメンはおいしいので、思った以上に反響があったのです。知っておられる方も多いですが、現在東京では蘭州ラーメン大ブームです。

国内の事情に加えて、思わぬ国外での人気ぶりに彼らの資金源拡大を恐れた政府が、国内の蘭州ラーメンを閉鎖する判断を下したのかもしれません。

やっぱり食べたい蘭州ラーメン

一時のペヤング焼きそばと一緒です。ある事情ゆえに食べられない時期があるともっと食べたくなるというのが人間の性です。

現在中国では蘭州ラーメンはなかなか食べられないのですが、また食べられるようになった時は蘭州ラーメンは再び大ブームを生むかもしれません。

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ヤン・ファン (楊芳) この記事を書いた人

講師育成で知られる中国・東北師範大学卒業。講師歴は14年に及び、特に日系企業の駐在員やビジネスパーソン向けの指導経験が豊富です。現役の日中医療通訳士としても活動し同行・商談通訳等にも対応可能です
基礎からの正確な発音指導、ビジネス中国語、赴任前短期集中レッスン、HSK・中国語検定対策、日中医療通訳トレーニング。クイック・レスポンス、シャドウイング等の通訳訓練法をレッスンに導入し、実践的なコミュニケーション能力の効率的な習得をサポートします。企業研修(対面・リモート)、個人・グループレッスン、同行・商談通訳等にも対応可能で教材作成、レッスンカリキュラム、講師育成など幅広い分野で活躍。

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