【決定版】中華デザートの世界へようこそ!定番から本格レシピ、文化まで徹底解説
中華料理は日本でも深く愛され、食卓に欠かせない存在です。しかし、その締めくくりを彩る「デザート」の世界については、意外と知らないことが多いのではないでしょうか。杏仁豆腐やごま団子はもちろんのこと、実は中国のデザートは、その広大な国土と長い歴史の中で育まれた、驚くほど多様で奥深い世界を持っています。そこには、体を労わる「医食同源」の思想が息づき、地域ごとの特色が色濃く反映され、そして現代では伝統と革新が融合した新しいカルチャーも生まれています。この記事では、定番のあの味から、少し珍しい本格的な一品まで、魅力あふれる中華デザートの世界へ皆様をご案内します。家庭で簡単に作れる初心者向けレシピから、腕自慢の上級者向けレシピ、さらにはデザートを通じて知る中国のカフェ文化や言葉まで、余すところなくご紹介します。さあ、あなただけのお気に入りの一品を見つけて、甘く豊かな中国の食文化を心ゆくまで堪能してください。

杏仁豆腐、エッグタルト、マンゴープリンなど、彩り豊かな中華デザートの世界。
目次
中華デザートの二大巨頭:杏仁豆腐と豆腐花を極める
中華デザートの世界を探求するなら、まず押さえておくべき二つのデザートがあります。それは、日本でも絶大な知名度を誇る「杏仁豆腐」と、シンプルながら奥深い魅力を持つ「豆腐花」。この二つを深く知ることで、中華デザートの思想と多様性が見えてきます。
杏仁豆腐 – 「杏仁」の香りを巡る探求
中華デザートの主役といえば、やはり「杏仁豆腐」。そのつるりとした食感と、華やかでどこかエキゾチックな甘い香りは、多くの人々を魅了してきました。しかし、この「杏仁」の香りこそが、杏仁豆腐の真髄であり、同時に誤解されやすいポイントでもあります。
名前が示す通り、“ホンモノ”の杏仁豆腐は「杏仁(きょうにん)」、すなわち杏(あんず)の種の中にある「仁(じん)」を粉末にした「杏仁霜(きょうにんそう)」を用いて作られます。日本で手軽に作られる、牛乳寒天にアーモンドエッセンスで香りをつけたものは、厳密には「アーモンド風味のブランマンジェ」に近いもので、本来の杏仁豆腐とは風味が異なります。アーモンドと杏仁は、見た目は似ていますが全くの別物なのです。
さらに専門的な話をすると、杏仁には二種類あります。
- 南杏(なんきょう):主に食用とされ、甘みが強く香りは穏やか。「甜杏仁」とも呼ばれます。
- 北杏(ほっきょう):主に薬用とされ、香りが非常に強い反面、苦みがあります。「苦杏仁」とも呼ばれ、咳止めなどの漢方薬として利用されます。
本格的な杏仁豆腐では、この南杏と北杏を絶妙なバランスでブレンドすることで、甘みと香りの両方を引き出した、深く豊かな味わいを生み出します。この独特の風味が、ある人には癖に感じられ、またある人にはたまらない魅力となるのです。大切なのは、どちらが優れているかではなく、その違いを知った上で、自分の好みの味を見つけることでしょう。
豆腐花(トウファ) – シンプルを極めた豆の芸術
近年、日本でも台湾スイーツのブームと共に人気が急上昇しているのが、「豆腐花(トウファ)」です。その最大の特徴は、ふるふると震えるほど柔らかく、出来立ての絹ごし豆腐以上に滑らかな食感と、ほのかに香る優しい大豆の風味です。
日本の豆腐のように醤油をかけて食べるのではなく、甘いデザートとして楽しむのが基本ですが、その食べ方は地域によって大きく異なります。
- 南方・台湾式(甘い):黒糖や生姜のシロップをかけ、ピーナッツ、小豆、緑豆、タロイモ団子、仙草ゼリーなど、豊富なトッピングと一緒に食べるのが主流。温かいもの(熱豆花)も冷たいもの(冷豆花)もあります。
- 北方式(しょっぱい):北京など中国北部では、醤油ベースのタレにラー油やネギ、ザーサイなどをかけて、朝食や軽食として食べることが多いです。これは「豆脳(ドウナオ)」とも呼ばれ、日本の湯豆腐に近い感覚かもしれません。
日本で流行しているのは、主に台湾式のカラフルで具沢山な豆腐花です。非常にシンプルながら、トッピング次第で無限のバリエーションが楽しめる奥深さと、身体に優しいヘルシーさが、多くの人々を惹きつけています。

タロイモ団子や小豆など、彩り豊かなトッピングが楽しい台湾式豆腐花。
定番から知る!珠玉の中華スイーツコレクション
中華デザートの世界は、まだまだ魅力的なスター選手で溢れています。ここでは、特に日本でも親しまれている定番のスイーツを、その背景や特徴と共にいくつかご紹介します。
揚げ菓子の王様「芝麻球(ごま団子)」と「蛋撻(エッグタルト)」
芝麻球(ごま団子)は、中華街の食べ歩きの定番。もち米の生地で餡を包み、白ごまをたっぷりとまぶして揚げた、外はカリカリ、中はもちもちの食感がたまりません。揚げたての香ばしさは格別です。
蛋撻(エッグタルト)は、今やアジアンスイーツの代表格。サクサクの生地と、とろりとした卵のフィリングの組み合わせが絶品です。実は、エッグタルトには大きく分けて二つの系統があります。
- 香港式:クッキー生地(ショートクラスト)またはパイ生地を使い、フィリングは滑らかで光沢のある黄色い仕上がり。
- マカオ式:ポルトガルの「パステル・デ・ナタ」が原型。何層にも重なったサクサクのパイ生地を使い、フィリングの表面にキャラメリゼされた焦げ目がつくのが特徴。
どちらも甲乙つけがたい美味しさ。ぜひ食べ比べて、お気に入りを見つけてみてください。

滑らかな香港式(左)と、焦げ目が香ばしいマカオ式(右)。
医食同源の心髄「亀苓膏(亀ゼリー)」と「芒果布甸(マンゴープリン)」
亀苓膏(亀ゼリー)は、その名の通り亀の腹甲と漢方薬草から作られる薬膳デザート。真っ黒な見た目と独特の苦味があり、初めて食べるには少し勇気がいるかもしれませんが、「良薬は口に苦し」の言葉通り、デトックスや美肌効果が期待され、古くから健康食品として親しまれています。シロップや練乳をかけて食べるのが一般的です。
芒果布甸(マンゴープリン)は、もはや説明不要の人気デザート。濃厚なマンゴーの甘みと香りが口いっぱいに広がる、トロピカルな味わいです。その発祥は、1980年代に香港の高級広東料理店「利苑酒家」が、当時まだ珍しかったフィリピン産のマンゴーを使って創作したのが始まりと言われています。本場のレシピでは、コクを出すために「エバミルク(無糖練乳)」が使われることが多く、日本のものより一層濃厚でクリーミーな味わいが楽しめます。
温かい癒し「湯圓(タンユェン)」と「芝麻糊(黒ごま汁粉)」
中華デザートには、心も体も温まる「温かいデザート(温糖水)」も豊富です。湯圓(タンユェン)は、白玉粉で作ったお団子で、中に黒ごまやピーナッツの餡が入っています。温かいシロップや生姜湯に浮かべて食べ、特に冬至や元宵節(旧正月の15日目)には、家族団らんを象徴する縁起物として欠かせません。その丸い形が「円満」を表すとされています。
芝麻糊(黒ごま汁粉)は、香ばしく煎った黒ごまをすり潰して作る、とろりとしたお汁粉。黒ごまの豊かな風味と栄養がたっぷりで、特に髪や肌に良いとされています。優しい甘さで、ほっと一息つきたい時にぴったりのデザートです。

寒い日に嬉しい、心も温まる湯圓。中には濃厚な黒ごま餡が。
【完全レシピガイド】おうちで楽しむ本格中華デザート
ここからは、ご家庭でも挑戦できる中国の美味しいスイーツのレシピを、難易度別に詳しくご紹介します。手作りの楽しさと、出来立ての美味しさをぜひ体験してみてください。
【初心者向け】中華クッキー
まずは、お菓子作り初心者の方でも安心の簡単レシピから。素朴でどこか懐かしい味わいの「中華クッキー」です。アーモンドとゴマの香ばしさが後を引く、サクサクとした食感が楽しめます。
【材料】
- 薄力粉:125g
- ベーキングパウダー:小さじ1/2
- ショートニング(または無塩バター):60g(室温に戻す)
- 砂糖:60g
- 卵(溶き卵):1/2個分
- 重曹:小さじ1/4+水小さじ1で溶いておく
- アーモンドエッセンス:少々
- アーモンド、白ごま(飾り用):適量
- つや出し用の溶き卵(または牛乳):適量
【作り方】
- 薄力粉とベーキングパウダーを合わせてふるいます。オーブンは170度に予熱します。
- ボウルにショートニングを入れクリーム状に練り、砂糖を加えて白っぽくなるまですり混ぜます。
- 溶き卵を少しずつ加えて混ぜ、次に水溶き重曹とアーモンドエッセンスを加えて混ぜ合わせます。
- ふるった粉類を加え、ゴムベラでさっくりと混ぜてひとまとめにします。
- 生地を8等分して丸め、軽く押しつぶして円形にし、天板に並べます。
- 表面につや出し用の溶き卵を塗り、アーモンドや白ごまを飾ります。
- 170度のオーブンで約15~20分、きつね色になるまで焼けば完成です。
【中級者向け】本格杏仁豆腐
次は、中華デザートの王道「杏仁豆腐」の本格レシピに挑戦!杏仁霜を使い、ゼラチンと寒天を両方使うことで、滑らかでありながら程よい弾力のある、お店のような食感を目指します。
【材料】
- 杏仁霜:45g
- 砂糖:35g
- 牛乳:100cc
- 生クリーム:200cc
- 水:250cc
- 粉寒天:2g弱
- 粉ゼラチン:5g+水大さじ2でふやかしておく
【作り方】
- 鍋に杏仁霜と砂糖を入れ、少量の水(分量内)でペースト状になるまでよく練ります。
- 残りの水、牛乳、生クリーム、粉寒天を加え、弱火にかけます。焦げ付かないように絶えず混ぜながら温め、沸騰直前で火を止めます。
- 火から下ろし、ふやかしておいたゼラチンを加えて余熱で完全に溶かします。
- 目の細かいザルやガーゼで漉しながらボウルに移し、より滑らかにします。
- ボウルの底を氷水にあてて混ぜながら粗熱を取り、とろみがついてきたら容器に流し入れ、冷蔵庫で一晩冷やし固めます。
- お好みでシロップやクコの実を添えてお召し上がりください。
【上級者向け】月餅(五仁餡風)
最後は、中国の中秋節に欠かせない伝統菓子「月餅(げっぺい)」です。皮から手作りする本格レシピは少し手間がかかりますが、完成した時の達成感と味わいは格別です。ここではナッツやドライフルーツがぎっしり詰まった五仁餡(ごじんあん)風に挑戦します。
【材料】(皮)
- 薄力粉:65g
- 強力粉:65g
- 転化糖(または水飴、はちみつ):40g
- ピーナッツ油(またはサラダ油):25ml
- かんすい:ごく少量
【材料】(餡)
- 小豆こしあん:170g
- 黒ごま、レーズン、ピーナッツ、アーモンド、胡桃など:合計100g程度
- ラード(または無塩バター):20g
【材料】(つや出し用)
- 卵黄:1個分+水小さじ1
【作り方】
- 皮を作ります。ボウルに転化糖、油、かんすいを入れよく混ぜます。ふるった粉類を加え、ゴムベラで混ぜてから手でまとめ、ラップをして冷蔵庫で1時間以上休ませます。
- 餡を作ります。ナッツ類は軽くローストして粗みじんにし、レーズンも刻みます。全ての餡の材料をボウルに入れ、よく混ぜ合わせ、10等分にして丸めます。
- 休ませた皮生地も10等分にします。生地を円形に伸ばし、餡を包み込みます。
- 月餅型に打ち粉をして生地を入れ、しっかりと押さえて成形し、天板に並べます。
- 180度に予熱したオーブンで5分焼き、一度取り出して表面につや出し用の卵黄を薄く塗ります。
- 再びオーブンに戻し、温度を160度に下げて約15~20分、きれいな焼き色がつくまで焼けば完成です。
デザートから覗く現代中国:カフェ文化と言葉の世界
中国のデザート文化は、伝統的な甘味処だけでなく、現代的なカフェの中でも独自の進化を遂げています。最後に、デザートを通じて垣間見える現代中国のカフェ文化と、そこで使える便利な中国語フレーズをご紹介します。
スターバックスから「新中式」カフェまで
中国の都市部では、日本と同じようにスターバックス(星巴克咖啡 / Xīngbākè Kāfēi)が大人気です。しかし近年、それ以上に若者の心を掴んでいるのが、「新中式茶飲」と呼ばれる新しいスタイルのティースタンドです。喜茶(HEYTEA)や奈雪的茶(NAIXUE)といったブランドが牽引し、新鮮なフルーツを贅沢に使ったフルーツティーや、濃厚なチーズクリームを乗せたチーズフォームティーなど、革新的なメニューで一大ブームを巻き起こしています。
これらのカフェでは、伝統的なデザートの要素(タロイモ、黒ごま、白玉など)を取り入れたドリンクも多く、伝統とモダンが融合した新しいデザート文化が生まれています。中国を訪れる際は、ぜひこうした最新のカフェも覗いてみてください。

フルーツティーやチーズフォームティーが人気の「新中式」カフェ。
注文で使える!デザートを楽しむ中国語フレーズ
現地のカフェや甘味処で、スマートに注文するための便利なフレーズをいくつかご紹介します。
请给我一个这个。
(Qǐng gěi wǒ yí ge zhège.)
これを一つください。(メニューを指差しながら)
这个甜不甜?
(Zhège tián bu tián?)
これは甘いですか?
我想要少糖。
(Wǒ xiǎngyào shǎo táng.)
甘さ控えめでお願いします。
打包。
(Dǎbāo.)
持ち帰りでお願いします。
これらのフレーズを覚えておけば、よりスムーズに、そして自分好みのデザートを楽しむことができるでしょう。
中国デザートの世界、いかがでしたでしょうか。伝統的なものから最新のトレンドまで、その魅力は尽きることがありません。ぜひこの記事を参考に、美味しい中華デザート作りや、お気に入りのお店探しを楽しんでみてください。甘い幸せが、あなたを待っています。





