「食は中国にあり」と言われるように、中国の食文化は世界三大料理の一つに数えられ、その多様性と奥深さは世界中の人々を魅了しています。これから中国語を学んでいく中で、あるいは旅行やビジネスで中国を訪れた際に、本場の美味しい中華料理に出会う機会は数えきれないほどあるでしょう。
そんな時、「美味しい!」という感動をストレートに伝えられたら、作り手やご馳走してくれた人との距離もぐっと縮まりますよね。この記事では、中国語で「美味しい」を表現するための基本から応用まで、発音のコツ、様々な味や食感の表現、感情のニュアンスの伝え方、さらには食文化に関する知識まで、例文を豊富に交えながら徹底的に解説します。
【決定版】中国語で「美味しい!」を伝える完全ガイド|好吃・好喝の発音から味・食感・感情表現まで例文満載
目次
基本の「美味しい」:好吃 (hào chī) と 好喝 (hǎo hē) の違い
まず、中国語で「美味しい」を表す最も基本的な言葉が “好吃” (hǎochī) です。中国の食卓では毎日のように耳にする、非常によく使われる表現です。しかし、このシンプルな言葉にも、使い方や発音に注意すべき点があります。しっかり理解しておきましょう。
食べ物には「好吃」、飲み物には「好喝」
何かを食べ物(固形物)を食べてみて「美味しい!」と感じた時に “好吃” (hǎochī) を使います。ここで非常に重要な注意点があります。それは、“好吃” は食べ物に対してのみ使うということです。
では、飲み物が美味しかった時はどう言うのでしょうか?その場合は、“好喝” (hǎohē) を使います。
- 食べ物が美味しい → 好吃 (hǎochī)
- 飲み物が美味しい → 好喝 (hǎohē)
日本語の「美味しい」は、ラーメンでもビールでもケーキでもお茶でも、食べ物・飲み物に関わらず使えますが、中国語では明確に区別する必要があります。これは初級学習者が間違いやすいポイントなので、しっかりと覚えておきましょう。
「好き」じゃない? “好” の意味合い
“好吃”や“好喝”の構造を見てみましょう。
- 好 (hǎo):「良い」という意味の形容詞。
- 吃 (chī):「食べる」という意味の動詞。
- 喝 (hē):「飲む」という意味の動詞。
つまり、“好吃”は「食べてみて(味が)良い」、“好喝”は「飲んでみて(味が)良い」というのが文字通りの意味になります。ここで注意したいのは、“好” は英語の “good” に近く、「好き (like)」という意味ではない点です。「食べるのが好き」と言いたい場合は “喜欢吃 (xǐhuān chī)” のように “喜欢 (xǐhuān)” を使います。
最重要!「好吃」の正しい発音をマスターしよう
「美味しい!」という気持ちをしっかり伝えるためには、正しい発音が欠かせません。特に “好吃” (hǎochī) の “chī” の発音は、多くの日本人学習者がつまずきやすいポイントです。
日本人の壁?そり舌音「ch」とは
“吃 (chī)” の子音「ch」は、中国語のピンインにおける「そり舌音(そりじたおん)」の一つです。そり舌音には他に「zh」「sh」「r」があり、これらは日本語には存在しない音のため、習得が難しいとされています。中国語では「翘舌音 (qiào shé yīn)」や「卷舌音 (juǎn shé yīn)」と呼ばれます。
そり舌音は、その名の通り、舌先を少し反り上げて(翹=持ち上げる、卷=巻く)、硬口蓋(口の中の天井の前方の硬い部分)に近づけて、その狭い隙間から息を出すことで発音されます。
この発音がうまくできないと、例えば “吃 (chī)” が、舌を反らさない「cī」(日本語の「ツー」に近い音)に聞こえてしまい、意味が通じにくくなることがあります。多くの学習者がこのそり舌音に苦手意識を持ち、それが学習の壁になってしまうことも少なくありません。
しかし、心配はいりません!そり舌音は、確かに日本語にはありませんが、正しいコツさえ掴めば、日本人でも必ず発音できるようになります。苦手意識を克服し、自信を持って発音できるよう、ポイントを押さえて練習しましょう。
【発音のコツ①】舌は巻きすぎない!正しい舌の形
そり舌音の発音でよくある間違いが、「そり舌」を意識しすぎて、舌を内側に巻き込みすぎてしまうことです。舌を過度に巻いてしまうと、かえって正しい音が出せなくなります。
ポイントは、舌先を「少しだけ」上に持ち上げることです。舌全体をリラックスさせた状態で、舌先だけを軽く上向きにし、上の歯茎の少し後ろあたり(硬口蓋の前部)に近づけます。舌先が口の天井に触れるか触れないかくらいの微妙な位置です。そして、その持ち上げた舌先に、少し力を入れて硬くするイメージを持つと良いでしょう。
【発音のコツ②】息が重要!有気音「ch」を強く出す
もう一つの非常に重要なポイントは、息の出し方です。中国語の子音には、息を強く出す「有気音(ゆうきおん)」と、息を抑え気味に出す「無気音(むきおん)」の区別があります。
“吃 (chī)” の子音「ch」は有気音です。これは、舌を正しい位置にセットした後、勢いよく「パッ」と息を吐き出して発音する必要があることを意味します。
実は、「そり舌音の発音が苦手」と感じている人の多くが、舌の形はそれなりにできていても、この有気音の息の出し方が弱いために、音が不明瞭になっているケースが多いのです。息が弱いと、せっかく作った舌と口蓋の隙間から出る摩擦音がはっきりと聞こえず、相手にうまく伝わりません。

正しい口の形と息の出し方を意識して練習しよう
自信を持って発音しよう!伝わらない原因と対策
「自分はそり舌ができないんじゃないか…」と自信をなくすと、声が小さくなり、息も弱くなって、ますます発音が聞き取りにくくなる、という悪循環に陥りがちです。発音が伝わらない原因の多くは、技術的な問題だけでなく、自信のなさからくる声量や息の弱さにもあります。
対策としては、まず正しい舌の形を意識し、舌先にしっかり力を入れること。そして、その舌の壁に息を思いっきりぶつけるつもりで、強く、鋭く息を吐き出すことです。恥ずかしがらずに、「絶対に相手に伝えてやる!」くらいの強い気持ちで発音練習をしてみてください。勢いよく息を出せば、有気音は自然とクリアになります。
“好吃!” と言うときは、美味しいと思ったその感動を、思いっきり発音に乗せるくらいの気持ちで言ってみましょう!きっと通じます。
練習あるのみ!ネイティブ音声の活用法
発音のコツを理解したら、あとは練習あるのみです。中国語学習サイトやアプリ、教材の付属CDなどで、ネイティブスピーカーの正しい発音を繰り返し聞きましょう。音の高さ(声調)だけでなく、子音や母音の響き、息の出し方などを注意深く観察します。
そして、聞いた音を真似て声に出して練習します。この時、自分の発音を録音し、ネイティブの音声と聞き比べてみるのが非常に効果的です。どこが違うのか、客観的に分析することで、改善点が見えてきます。発音練習アプリなどには、自分の発音を判定してくれる機能がついているものもあるので、活用するのも良いでしょう。地道な練習が、確かな発音力につながります。
実践!「好吃」「好喝」を使った基本会話フレーズ
正しい発音を意識しながら、「好吃」や「好喝」を使った基本的なフレーズを練習してみましょう。
「これ美味しい!」と伝える
zhè ge (cài) hěn hǎo chī!
这个 (菜) 很好吃!
(この(料理)はとても美味しい!)
zhè ge tāng tài hǎo hē le!
这个汤太好喝了!
(このスープ、すごく美味しい!)
「这个 (zhège)」は「これ」。指差しながら言うと分かりやすいですね。「菜 (cài)」は「料理」、「汤 (tāng)」は「スープ」です。美味しい度合いを強調する「很 (hěn)」や「太~了 (tài ~ le)」については後ほど詳しく説明します。
「美味しいですか?」と尋ねる
nǐ juéde zhè ge cài hǎo chī ma?
你觉得这个菜好吃吗?
(あなたはこの料理を美味しいと思いますか?)
zhè bēi kāfēi hǎo bù hǎo hē?
这杯咖啡好不好喝?
(このコーヒーは美味しいですか?)
相手に味の感想を尋ねるフレーズです。「觉得 (juéde)」は「~と思う、感じる」。「好吃吗? (hǎo chī ma?)」のように文末に疑問の「吗 (ma)」をつけるか、「好不好吃? (hǎo bu hǎo chī?)」のように肯定形と否定形を並べる反復疑問文の形を使います。
もっと豊かに表現!「美味しい」の言い換え&関連表現集
「美味しい」という感想も、「すごく美味しい」「さっぱりして美味しい」「食感がいい」など、ニュアンスは様々です。“好吃”以外にも、味や食感を具体的に表現する言葉を知っていると、より豊かな食レポが可能になります。
味を褒める言葉
- 可口 (kěkǒu): 口当たりが良い、美味しい。食べ物・飲み物両方に使えるやや改まった表現。「美味可口 (měiwèi kěkǒu)」のようにセットで使われることも。
- 美味 (měiwèi): 美味。日本語と同じ意味で、やや書き言葉的、または少し高級なニュアンス。レストランのメニュー紹介などで見かける。
zhè zhǒng pútao gāntián kěkǒu.
这种葡萄甘甜可口。
(この(種類の)ぶどうは甘くて美味しい。)
wǒmen tīngshuō nà jiā diàn de cài hěn měiwèi.
我们听说那家店的菜很美味。
(私たちはあのお店の料理がとても美味しいと聞きました。)
食感を褒める言葉
- 口感好 (kǒugǎn hǎo): 食感が良い、口当たりが良い。具体的な食感を表す言葉と組み合わせて使うことも。(例:口感很Q)
- 脆 (cuì): サクサクしている、パリパリしている。(例:揚げ物、クッキー、新鮮な野菜など)
- 嫩 (nèn): 柔らかい、みずみずしい。(例:肉、豆腐、若い野菜など)
- Q / Q弹 (qū / qū tán): モチモチしている、弾力がある、プリプリしている。(例:タピオカ、麺類、グミなど)台湾発祥の表現だが広く使われる。
- 软 (ruǎn): (単に)柔らかい。(”嫩”のようなポジティブなニュアンスが必須ではない)
- 糯 (nuò): ねっとりしている、もちもちしている。(例:もち米、餅菓子など)
zhè ge zhūpái zhà de hěn cuì.
这个猪排炸得很脆。
(このポークカツはとてもサクサクに揚がっている。)
zhè ge niúròu zhēn nèn!
这个牛肉真嫩!
(この牛肉、本当に柔らかい!)
zhēnzhū nǎichá de zhēnzhū hěn Q弹.
珍珠奶茶的珍珠很Q弹。
(タピオカミルクティーのタピオカはとてもモチモチ(プリプリ)している。)
全体的な良さを伝える言葉
- 不错 (búcuò): 悪くない、なかなか良い、美味しい。(直訳は「間違っていない」。味に間違いがない、期待通り、というニュアンス)
- 棒 (bàng): すごい、素晴らしい、最高!(味だけでなく、物事全般を褒める時に使う若者言葉に近いスラング)
nà ge cāntīng de cài hěn búcuò.
那个餐厅的菜很不错。
(あのレストランの料理はなかなか美味しい。)
nǐ zuò de zhè ge dàngāo tài bàng le!
你做的这个蛋糕太棒了!
(君が作ったこのケーキ、最高だよ!)
食欲をそそる表現
- 开胃 (kāiwèi): 食欲をそそる、食欲が出る。(直訳は「胃を開く」)
- 香 (xiāng): いい匂いがする、香ばしい、美味しそう。匂いだけでなく、味そのものが美味しいという意味でも使われる。
suānlàtāng hěn kāiwèi.
酸辣汤很开胃。
(サンラータンはとても食欲をそそる。)
wén qǐlái hǎo xiāng a! kěndìng hěn hào chī.
闻起来好香啊!肯定很好吃。
(匂いを嗅ぐとすごくいい香り!きっと美味しいに違いない。)
さっぱり感を伝える言葉
- 爽口 (shuǎngkǒu): さっぱりしている、口当たりが良い、爽やか。(例:冷たい飲み物、サラダ、フルーツなど)
- 清淡 (qīngdàn): あっさりしている、油っこくない、味が薄め。(ポジティブな意味でも、味が物足りないという意味でも使われる)
zhè ge liángcài chī zhe zhēn shuǎngkǒu.
这个凉菜吃着真爽口。
(この冷菜は食べると本当にさっぱりしている。)
wǒ zuìjìn xǐhuān chī qīngdàn yìdiǎnr de.
我最近喜欢吃清淡一点儿的。
(私は最近、少しあっさりしたものを食べるのが好きです。)
「うーん…」正直な感想も伝えたい:「美味しくない」の表現
褒める言葉だけでなく、時には「口に合わない」「あまり美味しくない」と感じることもあるでしょう。そんな時に使える表現も覚えておくと、正直な感想を(相手を気遣いつつ)伝えるのに役立ちます。
直接的な表現「难吃」「难喝」
「美味しくない」を直接的に表現するのが “难吃” (nánchī)(食べ物)と “难喝” (nánhē)(飲み物)です。「难 (nán)」は「難しい」という意味ですが、ここでは「~しにくい」「~するのが良くない」というニュアンスで、「食べ/飲みづらいほど味が悪い」といった意味合いになります。
注意:これらの表現は非常にストレートで強い否定なので、相手が作ってくれた料理や、ご馳走になった場面で使うのは失礼にあたる可能性が高いです。使う場面には注意が必要です。自分で作った料理や、客観的な評価として述べる場合などに限定するのが無難でしょう。
zhè ge yào tài nán chī le.
这个药太难吃了。
(この薬はまずすぎる。) ※薬など、味が悪いことが想定されるものには使いやすい
wǒ juéde zhè ge yǐnliào yǒudiǎnr nán hē.
我觉得这个饮料有点儿难喝。
(私はこのドリンクはちょっと美味しくないと思う。)
少し和らげた表現「不好吃」「不好喝」
もう少しマイルドに「(あまり)美味しくない」と言いたい場合は、“好吃” や “好喝” の前に否定の “不 (bù)” をつけて “不好吃 (bù hǎo chī)” や “不好喝 (bù hǎo hē)” と言うことができます。“难吃/难喝” ほど強い否定ではなく、「美味しいとは言えない」「まあまあだね(良くはない)」くらいのニュアンスになります。
wǒ zìjǐ zuò de cài bù hǎo chī.
我自己做的菜不好吃。
(私が自分で作った料理は(あまり)美味しくない。)
zhè ge shuǐguǒ zhī bù zěnme hǎo hē.
这个水果汁不怎么好喝。
(このフルーツジュースはあまり美味しくない。) ※「不怎么 (bù zěnme)」= あまり~ない
慣れない味「吃不惯」「喝不惯」
味が悪いというより、「単に自分の口に合わない」「食べ慣れていない/飲み慣れていない」と言いたい場合は、“吃不惯 (chī bu guàn)” や “喝不惯 (hē bu guàn)” を使うのが適切です。「惯 (guàn)」は「慣れる」という意味で、“吃/喝 + 不 + 惯” で「食べ/飲み慣れていない」となります。これは、相手の料理を否定するのではなく、自分の側の問題として伝えることができる、比較的丁寧で無難な表現です。
duìbuqǐ, wǒ有点儿 chī bu guàn zhè ge xiāngliào.
对不起,我有点儿吃不惯这个香料。
(すみません、私はこのスパイスが少し食べ慣れません。)
zhè zhǒng chá wǒ yǐqián méi hē guò, kěnéng hē bu guàn.
这种茶我以前没喝过,可能喝不惯。
(この種のお茶は以前飲んだことがないので、飲み慣れないかもしれません。)
ちょっと違うかも?「味道有点怪」
美味しくないとは断定できないけれど、「何か味が変だ」「ちょっと普段と違う味がする」と感じた時には、“味道有点怪 (wèidào yǒudiǎn guài)” という表現が使えます。「味道 (wèidào)」は「味」、「有点儿 (yǒudiǎnr)」は「少し」、「怪 (guài)」は「変だ、おかしい」という意味です。これも直接的な否定を避ける婉曲な表現として使えます。
nǐ chángchang, zhè ge tāng de wèidào shì bu shì yǒudiǎn guài?
你尝尝,这个汤的味道是不是有点怪?
(ちょっと味見してみて、このスープの味、少し変じゃない?)
味の基本ボキャブラリーを増やそう!五味+α
「美味しい」だけでなく、具体的な味を表現できるようになると、食レポの幅がぐっと広がります。まずは基本的な味の表現を覚えましょう。
五味 (酸, 甜, 苦, 辣, 咸) の使い方

まずは基本の五味を覚えよう
- 味道 (wèidao): 味、風味
- 酸 (suān): 酸っぱい
- 甜 (tián): 甘い
- 苦 (kǔ): 苦い
- 辣 (là): 辛い(唐辛子系のヒリヒリする辛さ)
- 咸 (xián): 塩辛い、しょっぱい
zhè ge tángcù lǐji 酸酸甜甜 de, hěn hǎo chī.
这个糖醋里脊酸酸甜甜的,很好吃。
(この酢豚は甘酸っぱくて、とても美味しい。) ※形容詞を重ねると「〜な感じ」というニュアンス
sìchuān cài yòu là yòu xiāng.
四川菜又辣又香。
(四川料理は辛くて香ばしい(美味しい)。) ※「又A又B」= AでもありBでもある
zhè ge wèizēngtāng shì bu shì yǒudiǎnr xián?
这个味噌汤是不是有点儿咸?
(この味噌汁は少ししょっぱくないですか?)
中国料理特有の味「麻 (má)」とは? (花椒の痺れる辛さ)
中国料理、特に四川料理を語る上で欠かせないのが “麻” (má) という味覚です。これは、日本語に直訳しにくい独特の感覚で、舌がピリピリと痺れるような辛さを指します。
この「麻」の味の元となるのが、“花椒” (huājiāo) という中国の山椒(日本の山椒とは種類が異なる)です。唐辛子のヒリヒリする辛さ「辣 (là)」と、花椒の痺れる辛さ「麻 (má)」が組み合わさった味を「麻辣 (málà)」と呼び、麻婆豆腐や火鍋などに代表される四川料理の大きな特徴となっています。
zhè mápó dòufu má dé bù dé liǎo!
这麻婆豆腐麻得不得了!
(この麻婆豆腐は痺れる辛さがたまらない!) ※「~得不得了 (de bù dé liǎo)」= ~でたまらない
日本人にとっては慣れない感覚かもしれませんが、この「麻」の刺激が癖になると、中華料理の楽しみ方がさらに広がります。
その他の味覚表現
- 淡 (dàn): 味が薄い
- 浓 (nóng): 味が濃い
- 油腻 (yóunì): 油っこい、脂っこい
- 清淡 (qīngdàn): あっさりしている
- 香 (xiāng): (前述の通り)香ばしい、いい匂い、美味しい
- 鲜 (xiān): うま味がある、新鮮で美味しい(海鮮などによく使う)
wǒ kǒuwèi比jiào dàn, bù xǐhuān tài xián de.
我口味比较淡,不喜欢太咸的。
(私は比較的薄味が好みで、しょっぱすぎるのは好きではありません。) ※「口味 (kǒuwèi)」= 味の好み
zhè ge zhēng yú hěn xiān.
这个蒸鱼很鲜。
(この蒸し魚はとてもうま味があって美味しい。)
感動を伝えたい!「美味しい」のレベルを表現する程度副詞
「美味しい」にも、「まあまあ美味しい」「すごく美味しい」「超美味しい!」など、様々なレベルがありますよね。こうした感情の度合いは、「程度副詞」を形容詞(好吃、好喝、酸、甜など)の前につけることで表現できます。程度副詞を使いこなせると、表現の幅が格段に広がります。
レベル別!程度副詞の使い方
主な程度副詞を、程度の強い順に並べてみましょう(ニュアンスは文脈によります)。
- 极了 (jíle): きわめて〜だ、最高に〜だ。(形容詞の後ろにつく)
例: 好吃极了! (hǎochī jíle!) → 最高に美味しい! - 超 (chāo): 超〜だ。(若者言葉的)
例: 超好吃! (chāo hǎochī!) → 超美味しい! - 非常 (fēicháng): 非常に〜だ、とても〜だ。(フォーマルでも使える)
例: 非常好吃。 (fēicháng hǎochī.) → 非常に美味しい。 - 太 (tài): すごく〜だ、あまりに〜だ。(しばしば文末に“了 (le)”を伴う。「太~了!」で感動や驚きを表す)
例: 太好吃了! (tài hǎochī le!) → 美味しすぎる!/すごく美味しい! - 真 (zhēn): 本当に〜だ。(主観的な感情、感嘆を表す)
例: 真好吃! (zhēn hǎochī!) → 本当に美味しい! - 很 (hěn): とても〜だ。(最も一般的。程度を強調しない場合でも、形容詞述語文では慣習的によく使われる)
例: 很好吃。 (hěn hǎochī.) → とても美味しい。/美味しい。 - 挺 (tǐng): なかなか〜だ、まあまあ〜だ。(しばしば文末に“的 (de)”を伴う)
例: 挺好吃的。 (tǐng hǎochī de.) → なかなか美味しいね。/まあまあ美味しい。 - 有点儿 (yǒudiǎnr): 少し〜だ、ちょっと〜だ。(しばしば好ましくない状況や、予想外の状況に使う)
例: 有点儿咸。 (yǒudiǎnr xián.) → ちょっとしょっぱい。
これらの程度副詞は、“好吃” や “好喝” だけでなく、他の形容詞(例:辣、甜、香、贵 guì 高い、便宜 piányi 安い など)にも使えます。使いこなせるようになると、感情の微妙なニュアンスを表現豊かに伝えられるようになります。
「太~了」構文のニュアンス
「太~了 (tài ~ le)」は非常によく使われる感嘆表現です。「すごく~だ!」という強い感情を表します。美味しいものに出会った時の感動を表現するのにぴったりです。
哇!这个小笼包太好吃了吧!
哇!这个小笼包太好吃了吧!
(わぁ!この小籠包、美味しすぎるでしょう!) ※「哇 (wā)」= 感嘆詞、「吧 (ba)」= 推測や確認
食通への道?料理法に関する中国語
中華料理は、炒める、煮る、蒸す、揚げるといった基本的な調理法から、さらに多様な技法が駆使されています。料理法に関する言葉を知っていると、メニューを理解したり、作り方を尋ねたりするのに役立ちます。
基本的な調理法
- 炒める → 炒 (chǎo) 例:炒饭 (chǎofàn) チャーハン
- 煮る → 煮 (zhǔ) 例:水煮鱼 (shuǐzhǔyú) 魚の四川風煮込み
- 蒸す → 蒸 (zhēng) 例:蒸饺 (zhēngjiǎo) 蒸し餃子
- 揚げる → 炸 (zhá) 例:炸鸡 (zhájī) フライドチキン
その他の調理法
- 焼く(オーブンや直火) → 烤 (kǎo) 例:烤鸭 (kǎoyā) 北京ダック
- 煮込む(弱火でじっくり) → 炖 (dùn) 例:炖牛肉 (dùn niúròu) 牛肉の煮込み
- 炒り焼く(少量の油で) → 煎 (jiān) 例:煎饺 (jiānjiǎo) 焼き餃子
- 和える → 拌 (bàn) 例:凉拌黄瓜 (liángbàn huángguā) きゅうりの和え物
- (油で)炒め揚げる → 爆 (bào) 例:爆炒腰花 (bàochǎo yāohuā) 豚マメの強火炒め
- 燻製にする → 熏 (xūn) 例:熏鱼 (xūnyú) 魚の燻製
調理法を尋ねるフレーズ
料理が美味しい時、どうやって作ったのか気になることもありますよね。そんな時に使えるフレーズです。
zhè ge cài shì zěnme zuò de?
这个菜是怎么做的?
(この料理はどうやって作ったのですか?) ※ zuò = 作る
zhè ge shì zhēng de háishi zhá de?
这个是蒸的还是炸的?
(これは蒸したものですか、それとも揚げたものですか?) ※「还是 (háishi)」= それとも
zhēng shuǐjiǎo yào duōshao fēnzhōng cái shú?
蒸水饺要多少分钟才熟?
(蒸し餃子は何分蒸したら(火が通って)良いですか?) ※ 熟 (shú) = (火が通って)熟れる
広大な中国の食文化:地域ごとの特色に触れる
日本の約25倍もの広大な国土を持つ中国では、地域ごとに気候風土や歴史、産物が異なり、それが多様で特色豊かな食文化を育んできました。「八大菜系(八大料理)」という分類が有名ですが、ここでは特に代表的なものをいくつか紹介します。地域ごとの料理の特徴を知っていると、中国の人々との会話がより一層楽しくなりますよ。

地域ごとに特色ある料理が存在します
食は広州にあり?「広東料理 (粤菜 yuècài)」の特徴と代表料理
中国語では “广东菜 (Guǎngdōng cài)” もしくは “粤菜 (Yuècài)” と呼ばれます。「粤」とは広東地域の古い名称です。広州、香港、マカオを含む珠江デルタ地域が中心です。
特徴は、素材本来の味(鲜味 xiānwèi うま味)を活かした、比較的薄味で洗練された調理法が多いことです。海に近いこともあり、新鮮な海産物を使った料理も豊富。蒸し物、炒め物、スープ(煲汤 bāotāng)などが得意とされます。
代表的な料理には、飲茶(点心 dim sum)、フカヒレスープ、各種海鮮料理、焼き物(焼味 siu mei – チャーシューなど)、お粥(粥 zhōu)などがあります。日本の中華料理店でもお馴染みのメニューが多いですね。
広東人は食に対する探求心が旺盛であることで知られ、冗談めかして次のように言われることもあります。
dì shàng pá de—chú le zhuō yǐ, bèi jǐ xiàng tiān de dōu kě yǐ chī. tiān shàng fēi de—chú le fēi jī, zhǐ yào néng fēi de yě kě yǐ chī.
地上爬的—除了桌椅,背脊向天的都可以吃。 天上飞的—除了飞机,只要能飞的也可以吃。
(地上を這うものでテーブルと椅子以外、背中が天を向いているものは何でも食べられる。空を飛ぶもので飛行機以外、飛べるものなら何でも食べられる。)
辛さの饗宴!「四川料理 (川菜 chuāncài)」の特徴と辛さ調整
中国語では “四川菜 (Sìchuān cài)” もしくは “川菜 (Chuāncài)” と呼ばれます。四川省が発祥の地です。
最大の特徴は、唐辛子の「辣 (là)」と花椒の「麻 (má)」を効かせた、刺激的で複雑な辛さです。他にも酸味、甘味、塩味、苦味、香味を組み合わせた多様な味付け(「七滋八味」と言われる)が特徴です。内陸部で湿気が多い気候のため、発汗を促す辛い料理が発達したとも言われます。
代表的な料理は、麻婆豆腐 (mápó dòufu)、火鍋 (huǒguō)、担担面 (dàndànmiàn)、回锅肉 (huíguōròu ホイコーロー)、宫保鸡丁 (gōngbǎo jīdīng 鶏肉とカシューナッツ炒め)、夫妻肺片 (fūqī fèipiàn 牛モツのラー油和え) など、日本でも人気の高いメニューが数多くあります。
四川料理を注文する際は、辛さのレベルを指定できることが多いです。辛さへの耐性は人それぞれなので、無理せず調整してもらいましょう。
- 特辣 (tè là): 激辛
- 中辣 (zhōng là): 中辛
- 微辣 (wēi là): ピリ辛、少しだけ辛い
- 不辣 (bú là): 辛くない(辛さ抜き)
例えば、「请给我微辣 (qǐng gěi wǒ wēi là)」(ピリ辛でお願いします)のように伝えます。
他の代表的な地方料理
広東料理、四川料理と並んで有名なものに、以下の料理があります。
- 山東料理 (鲁菜 Lǔcài): 北京を含む北部地域の料理の基礎。塩味ベースで、ネギやニンニクをよく使い、スープ(清湯、奶湯)の技術が高い。北京ダックも元々は山東料理の技法。
- 江蘇料理 (苏菜 Sūcài): 上海、南京、揚州など長江下流地域の料理。素材の味を重視し、煮込み(炖)、蒸し物(蒸)が得意。見た目も美しく、繊細な味付けが特徴。上海料理もこの系統。東坡肉(トンポーロー)などが有名。
- 浙江料理 (浙菜 Zhècài): 杭州、寧波、紹興など。新鮮な素材、特に河鮮(川魚)や野菜を用い、さっぱりした味付けが多い。龍井蝦仁(ロンジンシャーレン – 川エビの龍井茶炒め)などが有名。
- 福建料理 (闽菜 Mǐncài): 福建省。海産物を多用し、スープ(汤)や、紅麹(红糟)を使った料理が特徴。佛跳墙(フォーティャオチァン – 高級乾物を煮込んだスープ)が有名。
- 湖南料理 (湘菜 Xiāngcài): 四川料理と並び、唐辛子を多用した辛い料理で知られるが、四川の「麻辣」に対し、こちらは酸味と辛味(酸辣 suānlà)が特徴。燻製(腊味 làwèi)も多用される。
- 安徽料理 (徽菜 Huīcài): 安徽省。山の幸や川魚を使い、ハムなどの保存食、とろみをつけた煮込み料理(烧 stew)が特徴。火加減を重視する。
これらは大まかな分類であり、各地域内でもさらに細かなスタイルの違いがあります。中国の食文化の奥深さを感じますね。
まとめ:食を通じて中国語をもっと楽しもう!
今回は、中国語で「美味しい」を伝えるための様々な表現を、発音のコツから味覚・食感の表現、地域料理の特色まで幅広く紹介しました。
基本となる “好吃” と “好喝” の使い分け、そして日本人にとっての難関である「そり舌音」を含む発音を、まずはしっかりとマスターすることが大切です。正しい発音で伝えられれば、相手にも気持ちがより伝わります。
さらに、味や食感、感情の程度を表す様々な表現を少しずつ覚えていくことで、あなたの中国語表現は格段に豊かになります。「美味しい!」というポジティブな感情を共有することは、言語学習のモチベーションを高め、異文化理解を深める素晴らしいきっかけになります。
中国では食はコミュニケーションの重要な一部です。食事の場で使える表現をたくさん身につければ、中国の人々との交流がよりスムーズで楽しいものになるはずです。ぜひ、美味しい料理を味わいながら、積極的に中国語を使ってみてくださいね!