台湾で中国北京語を話しても大丈夫?

  1. 中国歴史・民族


中国香港では中国の標準語である北京語を話さないほうがいい理由について特集しました。香港ではNGなのですが、実は台湾では北京語を話しても大丈夫なのです。

今回はその理由を探ってきましょう。

台湾で北京語を話しても大丈夫?

台湾と香港歴史的背景の違い

香港はかつてイギリスの統治下にありましたが、台湾は日本の統治下にありました。年配の方なら日本語をペラペラと話すことができる人もいます。

戦時中に日本は台湾の交通網を作り、台湾の経済発展に大きく貢献しました。当時造られた日本式の鉄道や駅は今も残っており、それが台湾経済の基礎となっています。

戦後日本軍は退却し、その後中国大陸での共産党と国民党との戦いが起こりました。内戦に負けた蒋介石(蒋介石:jiǎngjièshí)が国民党の首都を台湾として現在に至っています。

台湾人の母国語

このような流れで台湾の母国語は中国語となっています。もちろん台湾の方言はありますが、学校では中国北京語が国語として教えられており、北京語を勉強しておけば、だれとでも話せます。

香港人は英語や広東語が母国語なので「無理やり中国語を習わされている」と感じていますが、台湾人は日本人が日本語を学ぶと同様、北京語を母国語として完全に受け入れています。

そのため、台湾では他の言語は必要ではなく、中国北京語を話せるようになることを目標にしておけば間違いないでしょう。

台湾語は勉強しなくていいの?

中国北京語が話せればいいと書きましたが、台湾は日本と同じように単一言語国家ではありません。

実は「台湾語」という台湾にもともとあった言語が存在します。では、この台湾語は勉強しなくてもいいのでしょうか?

台湾語は通常、ミンナン語(闽南语:mǐnnányǔ)と言われるもので、中国の福建省の人と台湾の人が話している地方言語です。実は台湾の年配者はこのミンナン語しか話せないという人は少なくありません。

ミンナン語は大きなくくりでは中国語の方言の一つにはなるのですが、「~語」という言葉がついているくらいで、標準中国語とはかなり異なる言語です。

なまりの強い大阪の方言も東京の人は聞き取れるかもしれません。しかし中国語しかできない人はミンナン語をほとんど聞き取ることはできません。

中国語とかなり違う現地の言葉ですが、それでも日本人が台湾語(ミンナン語)を勉強する必要はないでしょう。

今の若者たちや仕事をしているサラリーマン世代の人たちは、ミンナン語を話さないので、台湾にいる日本人がビジネスシーンや生活シーンでミンナン語を必要とするケースはありません。

道路交通や商品の表示もすべて中国語ですし、ミンナン語は地方の会話方法として残っているだけですから、やはり台湾では中国北京語だけ話せれば苦労しないということになります。

黒板に中国の文字を書く人。

中国語共通語の呼び方

ここまでずっと台湾では「中国北京語」が使われていると書いてきましたが、少し注意を必要とする点として中国語の共通語を指す呼び方があります。

実は中国共通語のことを、「中国北京語」だけではなく、「中国普通語」(普通话:pǔtōnghuà)ということもあるのです。

なぜなら厳格にいえば、「中国北京語」というのは北京の人が話す方言も含まれた地方語のことを指します。そのため、北京なまりを含まない中国共通語のことをわざわざ「中国普通語」という人もいます。

では中国共通語のことを「中国北京語」といっても問題ないのでしょうか?

中国語共通語=北京語で問題なし

中国共通語のことを「中国北京語」といってもまったく問題ないでしょう。それは日本でも首都の東京で使われる言葉を、共通語と認識しているのと同じです。

中国でも首都北京の人が話す言葉、「北京語」(北京话:běijīnghuà)は広く共通語として認識されています。やはりどの国でも首都強しというわけですね。

つづいて台湾に行くとき、言語面でどんな準備をしていけばよいのか見てみましょう。ここでは台湾へビジネスで行く時と、留学で行くときに分けて考えます。

台湾ビジネス

台湾に出張で行くときは、日本にいるうちに”中国北京語を勉強していくとよいでしょう。

英語はさほど重要ではありません。この点は日本と一緒ですね。欧米系の企業において英語は必要ですが、台湾企業との折衝ではほとんど必要ありません。

台湾は親日ですから、もしかしたら台湾人のほうが日本語で交渉したいというケースもあるかもしれません。

こういう向こうが日本語を使いたいという状況では、中国語が話せる場合でも、日本語で交渉するほうがビジネスはうまくいくかもしれません。

台湾留学

台湾に留学で行くときですが、言語留学で行くのであれば、日本にいるうちは言語面で、”何も準備せずにいく”のがおすすめです。

せっかく中国語の本場で勉強する機会があるのに、日本いるうちに自分で勉強すると、誤った発音の癖がついてしまうからです。

現地で0基礎(零基础:líng jī chǔ)から勉強し、正確な発音を身に付けるほうがいいでしょう。

通常、言語留学で台湾の大学に入るとき、最初に能力テストが行われます。全然回答できなくても構いません。

テストの目的は能力に応じたクラスわけですから、0基礎であれば初級クラスに割り当ててもらえます。

初級クラスでは発音を一から教えてもらえます。しかし発音の説明などは英語で行われることも多いので、日本にいるうちに”簡単な英語ができている”とよいかもしれません。

中級クラス以上は文法の説明と会話練習が主となり、中国語で授業が行われます。

台湾留学は生活も学校も中国語漬けの期間を過ごすことになり、大変苦しみはしますが、急成長が期待でき、1年ほど勉強すればある程度きれいな中国北京語が話せるようになっていることでしょう。

続いてある程度、中国語が話せるようになり、現地の台湾人と会話するときの注意点を見ていきましょう。

二つだけ拳击手套、上に中国と台湾の国旗が印刷されています。

台湾人に中国人か?と言ってはいけない

台湾の文化は基本的に中国文化が色濃く残っています。春節(:chūnjié)の時は爆竹を鳴らして祝います。

食べ物はチャーハン(:chǎofàn)やショーロンポー(:xiǎolóngbāo)ですし、母国語も中国語です。

よって初めての海外出張で、台湾に出張にいった日本人は「これが中国なのか~。」という錯覚に陥りますがそこは注意が必要です。

台湾人と初めて会ったときに自己紹介で、このように尋ねてしまっていませんか。

nǐshìzhōngguórén ma?

你是中国人? 

あなたは中国人ですか?

しかし、この質問を台湾の方にするのはNGです。一体なぜなのでしょう?

台湾人は自分は中国人ではないと思っている

「あなたは中国人ですか?」と聞かれた台湾人のほとんどは真顔でこう答えます。

wǒbùshìzhōngguórén。wǒshìtáiwānrén

我不是中国人。我是台湾人!

私は中国人ではありません。台湾人です。

日本人からすると、台湾人も香港人も中国大陸の人もみな中国人のように感じますが、台湾人は自分を「台湾人であって中国人ではない!」と強く自負していますし、香港人も同様です。

「中国人なのか、台湾人なのか」は台湾人にとって敏感な話題(敏感话题:mǐngǎn huàtí)なのでとりわけ気を付けるようにしましょう。台湾にいるときは台湾人という一つの国民としてみることが重要なのです。

台湾なのか中国台湾なのか

中国でも台湾でも中国北京語を話すという点は同じなのですが、中国にいるときと台湾にいる時で気を付けることがほかにもあります。それは国名(国名:guó míng)の呼び方です。

中国において無印良品(无印良品:wúyìn liángpǐn)が「生産地:台湾」(原产国台湾:yuánchǎnguó táiwān)と表記してしまいました。

それによって中国政府から20万元(約400万円)の罰金を命じられたのを知っておられる方も多いことでしょう。

つまり中国大陸にいるときは台湾という場所を国名として呼ぶとき「中国台湾」(zhōngguó táiwān)と必ず、台湾の前に中国という言葉を入れることが必要です。

その逆で、台湾国内では「中国台湾」ではなく、「台湾」と単独で呼ぶことが必要になるというわけです。

台湾で間違えて、「中国台湾」と言うと台湾人が不機嫌になるだけで終わりですが、中国国内においてうっかり国名として「台湾」と述べてしまうと、警察通報案件なので注意しましょう。

白い表面に中国の文字の山。

簡体字と繁体字

台湾で北京語を話すというときもう一つ覚えておく必要があるのは、使われている字が違うという点です。中国では簡体字(简体字:jiǎntǐ zì)を使いますが、台湾では繁体字(繁体字:fántǐ zì)を使います。

つまり北京語の発音の勉強、文法の勉強という点では中国の学校でも台湾の学校でも遜色ありません。しかし台湾の場合、繁体字を使わなければならないのです。

北京語を習得したいという場合、繁体語の台湾で勉強しても問題ないのでしょうか?

台湾の繁体字で中国語を学んでも大丈夫?

台湾の大学で中国語を勉強すると、テスト問題などはすべて繁体字で出題されます。これは少し面倒かもしれません。日本語の漢字「発」を例にとってみましょう。

簡体字ならこう書きます

簡単ですね。しかし繁体字ならこう書きます。

簡体字は日本語よりも簡単なのに、繁体字は日本語よりも複雑だと思いませんか?台湾で北京語を勉強すると、テスト対策で面倒な繁体字の漢字の書き方を覚えなくてはいけないという場面が増えます。

表現の仕方の違い

さらに台湾と大陸の中国語では、少し表現の仕方が違うのも覚えておいたほうがいいかもしれません。表現の違いとしてよく上がる例を一つ紹介しましょう。

「3回目のワクチンを打つ」これを中国と台湾ではどのように表現するのでしょうか?

中国の場合…

dǎ yìmiáo dì sān zhēn

打疫苗第三针

台湾の場合…

dǎ yìmiáo dì sān jì

打疫苗第三剂

3回目を指す量詞が中国大陸では針(针:zhēn)が用いられているのに対し、台湾では剤(:)が用いられているというわけです。

ですから台湾で中国語を勉強すると、大陸とは若干の表現の違うものを勉強することになるというのを覚えておきましょう。

では複雑な繁体語を使い、表現の仕方も若干違う台湾で中国語を勉強するのは避けたほうがいいのでしょうか?

台湾で中国北京語を勉強するメリット

台湾留学は上記のようなデメリットがありますが、総合的に考えた場合だとむしろメリットのほうが多いかもしれません。

台湾で中国北京語を勉強するメリットをいくつか紹介します。

táiwān shì zīběn zhǔyì de guójiā

1,台湾是资本主义的国家

台湾は資本主義国家である

méiyǒu bèi guǎnlǐ

2,没有被管理

管理されない

台湾は日本と同じ資本主義国家で、日本人に友好的な国家です。台湾では日本で買えるのと同じ製品が同じように売られており、日本の食材はすべて手に入ります。

日本にあるスタバもマクドナルドも、回転寿司も全てあります。日本にいるのと同じような生活環境で中国語が学べるメリットは大きいでしょう。

中国大陸では外国人は政府の厳しい管理下で生活しなければなりません。

外国人登録の際にすべての指紋と全身写真を撮られます。個人情報はすべて提出し、ネットのやり取りや行動記録は厳しく監視されています。

台湾ではそのような厳しい管理がされないので、自由を感じながら中国語が勉強できるのはとても大きなメリットでしょう。やはり資本主義で友好国というは居心地がいいのです。

まとめ

今回は、台湾で中国北京語を話すこと、勉強することのさまざまな注意点やメリット・デメリットを考察しました。

中国語を含め各国の言語というのは、勉強することそのものは何の問題もありませんし、自分にとって必ずプラスとなります。

ですがその言語をどこで勉強するか、どこで使うかによって大きな違いがあるのです。今までの歴史の流れや今後の政治情勢をよく把握したうえで、言語というものに向き合わないといけないということがよくわかることでしょう。

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