中国旅行の計画を立てている時、または中国語の学習を始めたばかりの時、「あれ?中国語で『駅』ってなんて言うんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?
日本語と同じ漢字文化圏だから「駅」で通じるかな?と思いきや、実は中国語で「駅」と書いても全く通じません。それどころか、中国語の「駅」にあたる漢字は、私たち日本人には少し意外なものかもしれません。
この記事では、「駅中国語」と検索したあなたのために、以下の点を徹底的に、そして深く掘り下げて解説していきます。
- 中国語で「駅」を意味する基本的な単語は何か?
- 「站」と「車站」はどう使い分ければいいのか?
- 駅で実際に使える実践的な中国語フレーズ集
- なぜ日本語の「駅」と中国語の「站」はこんなに違うのか?(驚きの語源)
- 乗り物の種類(地下鉄、新幹線など)で「駅」の言い方は変わるのか?
この記事を読み終える頃には、中国の駅で困らない実用的な知識はもちろん、「なるほど!」と誰かに話したくなるような面白い雑学まで、すっかりマスターできているはずです。もし、さらに本格的に中国語を学びたくなったら、中国語教室で学習をスタートするのも素晴らしい選択肢ですよ。
中国語で「駅」は「站(zhàn)」!まずは基本をおさえよう
さっそく結論からいきましょう。中国語(普通話)で「駅」を意味する最も基本的な単語は 「站」(zhàn / ジャン)です。
これに「車」という字を加えて、「車站」(chēzhàn / チョージャン)と言うことも非常に多いです。どちらも「駅」という意味で広く使われていますが、微妙なニュアンスの違いや使い分けがあります。
「車站(chēzhàn)」と「站(zhàn)」の基本的な使い分け
この二つの単語は、多くの場面で互換可能ですが、一般的な傾向として以下のように使い分けられます。
車站 (chēzhàn / チョージャン)
文字通り「車(乗り物)が停まる場所」というニュアンスが強く、駅の「建物全体」や「施設」を指す場合によく使われます。
例:「火車站」(汽車の駅)、「地鐵站」(地下鉄の駅)、「公交車站」(バス停)など、乗り物の種類を明確にする場合に「〇〇站」の形になることが多いです。
站 (zhàn / ジャン)
「車站」を省略した形で、日常会話で気軽に使われます。また、駅名を言う時にも「〇〇站」という形で使われます。
例:「北京站」(北京駅)、「上海站」(上海駅)など。
日常会話では、「駅はどこですか?」と尋ねる場合、「車站」でも「站」でも通じます。
会話例:
A: 請問,車站在哪裡? (Qǐngwèn, chēzhàn zài nǎlǐ? / チンウェン、チョージャン ザイ ナァリ?)
(すみません、駅はどこですか?)
B: 站就在前面。 (Zhàn jiù zài qiánmiàn. / ジャン ジウ ザイ チィエンミィエン。)
(駅はすぐ前ですよ。)
知ってた?日本語の「駅」は中国語では通じない
ここが重要なポイントです。日本語の「駅」という漢字は、中国大陸で使われている簡体字には存在しません。
もし中国で「駅はどこですか?」と紙に書いて見せても、相手は「?」となってしまう可能性が非常に高いです。日本語の「駅」は、旧字体の「驛」を日本独自の方法で簡略化した「国字(和製漢字)」に近い存在なのです。
中国語で「驛」を簡略化した文字は 「驿」(yì / イー)です。これは「駅伝」や「宿場」といった古い意味で使われることが多く、現代の「ステーション」という意味では、前述の「站」が使われます。
なぜこのように日中で異なる漢字が使われるようになったのか、その歴史的な背景については、後ほど「なぜ中国語は「駅」ではなく「站」?」の章で詳しく解説します。
(補足)台湾や香港ではどう言う?
中国語と一口に言っても、地域によって使われる漢字や言葉が少し異なります。
- 台湾:
台湾では、中国大陸のような簡体字ではなく、日本語の旧字体に近い「繁体字」が使われます。台湾でも「駅」は 「車站」(発音は同じ chēzhàn)が一般的です。例えば、台北の主要駅は「台北車站」と呼ばれます。 - 香港:
香港は広東語が主流ですが、書き言葉としては繁体字が使われます。香港でも「駅」は 「站」(広東語読みは zaam6 / ジャーム)と呼ばれます。地下鉄(MTR)の駅は「地鐵站」と言います。
このように、どの地域でも「站」という漢字が共通して使われていることがわかりますね。
【シーン別】すぐに使える!駅で役立つ中国語会話フレーズ集(全角10000字へ深掘り)
「站」と「車站」の基本がわかったところで、次は実践編です。中国の駅は非常に広く、複雑なことも多いため、基本的なフレーズを知っているだけで安心感が全く違います。ここでは、シーン別に使える会話フレーズを、ピンイン(発音記号)とカタカナ読み、日本語訳付きで大量にご紹介します。
「售票处 (Shou Piao Chu)」は切符売り場のこと。ここで会話が始まります。
レベル1:駅の場所を尋ねる・教える
まずは基本中の基本、駅の場所を尋ねる表現です。
フレーズ1:駅はどこですか?
A: 請問,火車站在哪裡?
(Qǐngwèn, huǒchēzhàn zài nǎlǐ? / チンウェン、フゥオチョージャン ザイ ナァリ?)
(すみません、駅はどこですか?)
※「火車站」を「地鐵站 (dìtiězhàn)」や単に「車站 (chēzhàn)」に入れ替えてもOKです。
B: 就在前面,走路五分鐘就到了。
(Jiù zài qiánmiàn, zǒulù wǔ fēnzhōng jiù dào le. / ジウ ザイ チィエンミィエン、ゾウルー ウーフェンジョン ジウ ダオラ。)
(すぐ前ですよ、歩いて5分で着きます。)
フレーズ2:ここから遠いですか?
A: 請問,北京站離這裡遠嗎?
(Qǐngwèn, Běijīng zhàn lí zhèlǐ yuǎn ma? / チンウェン、ベイジンジャン リー ジェリ ユゥエン マ?)
(すみません、北京駅はここから遠いですか?)
B: 不遠,坐地鐵兩站地。
(Bù yuǎn, zuò dìtiě liǎng zhàn dì. / ブーユゥエン、ズゥオ ディーティエ リィアンジャン ディー。)
(遠くないですよ、地下鉄で2駅です。)
フレーズ3:どうやって行けばいいですか?
A: 我想去上海站,應該怎麼走?
(Wǒ xiǎng qù Shànghǎi zhàn, yīnggāi zěnme zǒu? / ウォ シィアン チュイ シャンハイジャン、インガイ ゼンマ ゾウ?)
(上海駅に行きたいのですが、どう行けばいいですか?)
B: 你可以坐1號線地鐵,很方便。
(Nǐ kěyǐ zuò yī hào xiàn dìtiě, hěn fāngbiàn. / ニー コーイー ズゥオ イーハオシィエン ディーティエ、ヘン ファンビィエン。)
(地下鉄1号線に乗れますよ、とても便利です。)
レベル2:切符を買う・窓口での実践会話
中国の駅で切符を買うのは少し緊張する瞬間かもしれません。特に高速鉄道(高鐵)は身分証(パスポート)の提示が必須です。
フレーズ4:切符売り場はどこですか?
A: 請問,售票處在哪裡?
(Qǐngwèn, shòupiàochù zài nǎlǐ? / チンウェン、ショウピィアオチュー ザイ ナァリ?)
(すみません、切符売り場はどこですか?)
※「售票处 (shòupiàochù)」が「切符売り場」です。
B: 在那邊,進門左轉。
(Zài nàbiān, jìn mén zuǒ zhuǎn. / ザイ ナァビィエン、ジンメン ズゥオジュアン。)
(あそこです、入口を入って左に曲がってください。)
フレーズ5:〜までの切符をください
A: 你好,我想買一張去南京的票。
(Nǐ hǎo, wǒ xiǎng mǎi yī zhāng qù Nánjīng de piào. / ニーハオ、ウォ シィアン マイ イージャン チュイ ナンジン ダ ピィアオ。)
(こんにちは、南京まで(の切符)を1枚買いたいです。)
※「一張 (yī zhāng)」が「1枚」。「二張 (liǎng zhāng)」で「2枚」です。
B: 好的,要什麼時候的?
(Hǎo de, yào shénme shíhòu de? / ハオダ、イァオ シェンマ シーホウ ダ?)
(はい、いつの(切符)が要りますか?)
A: 最早的一班。
(Zuì zǎo de yī bān. / ズイ ザオ ダ イーバン。)
(一番早い便をお願いします。)
フレーズ6:片道ですか?往復ですか?
B: 要單程還是往返?
(Yào dānchéng háishì wǎngfǎn? / イァオ ダンチョン ハイシー ワンファン?)
(片道ですか、それとも往復ですか?)
A: 單程票。
(Dānchéng piào. / ダンチョン ピィアオ。)
(片道切符です。)
A: 往返票。
(Wǎngfǎn piào. / ワンファン ピィアオ。)
(往復切符です。)
フレーズ7:パスポートの提示
B: 請出示一下您的護照。
(Qǐng chūshì yīxià nín de hùzhào. / チン チューシー イーシィア ニン ダ フージャオ。)
(パスポートをご提示ください。)
※「護照 (hùzhào)」が「パスポート」です。
A: 好的,給你。
(Hǎo de, gěi nǐ. / ハオダ、ゲイ ニー。)
(はい、どうぞ。)
フレーズ8:いくらですか? / 支払い
A: 一共多少錢?
(Yīgòng duōshǎo qián? / イーゴン ドゥオシャオ チィエン?)
(全部でいくらですか?)
B: 一百二十塊。
(Yībǎi èrshí kuài. / イーバイ アーシー クァイ。)
(120元です。)
A: 可以用信用卡嗎?
(Kěyǐ yòng xìnyòngkǎ ma? / コーイー ヨン シンヨンカー マ?)
(クレジットカードは使えますか?)
A: 我用支付寶 / 微信支付。
(Wǒ yòng zhīfùbǎo / Wēixìn zhīfù. / ウォ ヨン ジーフーバオ / ウェイシン ジーフー。)
(アリペイ / Wechatペイで支払います。)
レベル3:駅構内で(入口・出口・乗り場・案内所)
中国の主要駅は空港のように巨大です。迷わないためのフレーズを覚えましょう。
フレーズ9:入口 / 出口 / 改札口
入口: 進站口 (jìnzhànkǒu / ジンジャンコウ)
出口: 出站口 (chūzhànkǒu / チュージャンコウ)
改札口: 檢票口 (jiǎnpiàokǒu / ジィエンピィアオコウ)
A: 請問,進站口在哪裡?
(Qǐngwèn, jìnzhànkǒu zài nǎlǐ? / チンウェン、ジンジャンコウ ザイ ナァリ?)
(すみません、入口(改札)はどこですか?)
B: 請上二樓。
(Qǐng shàng èr lóu. / チン シャン アーロウ。)
(2階へ上がってください。)
フレーズ10:待合室 / 乗り場
待合室: 候車室 (hòuchēshì / ホウチョーシー)
乗り場 (ホーム): 站台 (zhàntái / ジャンタイ)
A: G123次列車在哪個候車室?
(G yāo èr sān cì lièchē zài nǎge hòuchēshì? / ジー ヤオアーサン ツー リィエチョー ザイ ナァガ ホウチョーシー?)
(G123号列車はどの待合室ですか?)
B: 在5號候車室。
(Zài wǔ hào hòuchēshì. / ザイ ウーハオ ホウチョーシー。)
(5番待合室です。)
フレーズ11:トイレ / 案内所
トイレ: 洗手間 (xǐshǒujiān / シーショウジィエン) または 衛生間 (wèishēngjiān / ウェイションジィエン)
案内所: 服務台 (fúwùtái / フーウータイ)
A: 請問,洗手間在哪裡?
(Qǐngwèn, xǐshǒujiān zài nǎlǐ? / チンウェン、シーショウジィエン ザイ ナァリ?)
(すみません、トイレはどこですか?)
B: 在那邊,直走右轉。
(Zài nàbiān, zhí zǒu yòu zhuǎn. / ザイ ナァビィエン、ジーゾウ ヨウジュアン。)
(あそこです、まっすぐ行って右に曲がってください。)
レベル4:電車に乗る・降りる・乗り換える
いよいよ乗車です。自分の乗る車両や席を確認しましょう。
フレーズ12:何番ホームですか?
A: 這趟車在幾號站台?
(Zhè tàng chē zài jǐ hào zhàntái? / ジェ タン チョー ザイ ジーハオ ジャンタイ?)
(この列車は何番ホームですか?)
B: 在8號站台。
(Zài bā hào zhàntái. / ザイ バーハオ ジャンタイ。)
(8番ホームです。)
フレーズ13:車両と座席
車両: 車廂 (chēxiāng / チョーシィアン)
座席: 座位 (zuòwèi / ズゥオウェイ)
A: 請問,5號車廂在哪裡?
(Qǐngwèn, wǔ hào chēxiāng zài nǎlǐ? / チンウェン、ウーハオ チョーシィアン ザイ ナァリ?)
(すみません、5号車はどこですか?)
B: 往前面走。
(Wǎng qiánmiàn zǒu. / ワン チィエンミィエン ゾウ。)
(前の方へ進んでください。)
フレーズ14:次の駅は〜ですか?
A: 請問,下一站是南京站嗎?
(Qǐngwèn, xià yī zhàn shì Nánjīng zhàn ma? / チンウェン、シァ イー ジャン シー ナンジンジャン マ?)
(すみません、次の駅は南京駅ですか?)
B: 對,下一站就是南京。
(Duì, xià yī zhàn jiùshì Nánjīng. / ドゥイ、シァ イー ジャン ジウシー ナンジン。)
(はい、次が南京です。)
フレーズ15:乗り換え
乗り換える: 換乘 (huànchéng / フゥアンチョン)
A: 我要去故宮,在哪裡換乘?
(Wǒ yào qù Gùgōng, zài nǎlǐ huànchéng? / ウォ イァオ チュイ グーゴン、ザイ ナァリ フゥアンチョン?)
(故宮に行きたいのですが、どこで乗り換えですか?)
B: 你在天安門東站換乘1號線。
(Nǐ zài Tiān’ānmén dōng zhàn huànchéng yī hào xiàn. / ニー ザイ ティエンアンメン ドン ジャン フゥアンチョン イーハオ シィエン。)
(天安門東駅で1号線に乗り換えてください。)
レベル5:駅でのトラブル・質問
フレーズ16:電車が遅れていますか?
遅れる: 晚點 (wǎndiǎn / ワンディエン)
A: 我們的車晚點了嗎?
(Wǒmen de chē wǎndiǎn le ma? / ウォーメン ダ チョー ワンディエン ラ マ?)
(私たちの電車は遅れていますか?)
B: 是的,晚點了大概三十分鐘。
(Shì de, wǎndiǎn le dàgài sānshí fēnzhōng. / シーダ、ワンディエン ラ ダーガイ サンシー フェンジョン。)
(はい、30分ほど遅れています。)
フレーズ17:落とし物をしました
落とし物: 丟東西 (diū dōngxi / ディウ ドンシ)
遺失物取扱所: 失物招領處 (shīwù zhāolǐng chù / シーウー ジャオリン チュー)
A: 我把錢包丟在車上了!
(Wǒ bǎ qiánbāo diū zài chē shàng le! / ウォ バー チィエンバオ ディウ ザイ チョー シャン ラ!)
(財布を電車に忘れてしまいました!)
B: 請去失物招領處問一下。
(Qǐng qù shīwù zhāolǐng chù wèn yīxià. / チン チュイ シーウー ジャオリン チュー ウェン イーシィア。)
(遺失物取扱所で尋ねてみてください。)
なぜ中国語は「駅」ではなく「站」?驚きの語源と歴史の旅
さて、実用的なフレーズを学んだところで、この記事のもう一つの大きなテーマである「なぜ中国語では「駅」ではなく「站」を使うのか?」という疑問に迫ります。ここには、モンゴル帝国の壮大な歴史が関わっています。
「站」の語源は、モンゴル帝国の駅伝制度「ジャムチ」にあります。
「站」はモンゴル語由来?知られざるルーツ「站赤(ジャムチ)」
参考元原稿にもある通り、現代中国語の「站」は、実はモンゴル語に由来するというのが最も有力な説です。
13世紀、モンゴル帝国が広大な領土を支配した「元」の時代、帝国は広大な領土を効率的に統治・連絡するため、「駅伝制度」を整備しました。この制度、またはその拠点をモンゴル語で 「Jam(ジャム)」と呼びました。
そして、この「Jam(ジャム)」を管理する役人や、制度そのものを指す言葉として 「站赤(ジャムチ)」という言葉が使われました。『元史』などの歴史書にも「元制の站赤は、駅伝の訳語である」といった記述が見られます。
このモンゴル語の「Jam(ジャム)」の音に、当時「立つ」という意味で使われ始めていた「站」という漢字を当てた、あるいは「Jam」の発音に近い漢字として「站」が選ばれた、と考えられています。
語源のポイント:
- モンゴル帝国(元)が整備した駅伝制度(宿場) = 「Jam(ジャム)」
- その音訳、あるいは当て字として 「站」 が使われるようになった。
- これが、現代中国語で「ステーション(駅)」を意味する「站」の直接のルーツとなった。
さらに興味深いことに、この「Jam」はトルコ語の「Yam」(同じく駅伝を意味する)から借用された可能性があり、そのトルコ語はさらに古い中国語の「駅(驛)」から借用されたのではないか、という説もあります。言葉がシルクロードを行き交うように、モンゴル→トルコ→中国、あるいは中国→トルコ→モンゴル→中国と、言葉が「逆輸入」された可能性も指摘されており、非常にロマンのある話です。
「站」という漢字が使われ始めた時代
「站」という漢字自体は、実は唐代以前の古い文献にはほとんど見られません。宋代の辞書『集韻』に初めて登場しますが、その時の意味は「座って立ち動かない様子」といったもので、「立つ」や「駅」という意味ではありませんでした。
「立つ」という意味で使われ始めたのも比較的あとになってからで、「ステーション」という意味で定着したのは、上記のようにモンゴル語の影響を受けた元代以降のことです。
明の時代、初代皇帝の朱元璋がモンゴルの風習を排除しようと、「站」を古い「驿(驛)」に戻そうとした時期もありました。しかし、すでに民衆の口語として「站」が広く定着していたため、この試みは完全には成功せず、清代を経て現代に至るまで「站」が「駅」の主流の言葉として残ったのです。
一方、日本語の「駅」のルーツは「驛」
では、日本語の「駅」はどこから来たのでしょうか?
これは、古代中国(唐代など)で使われていた 「驛」(yì / イー)という漢字に由来します。「驛」は、馬や役人が待機し、公文書などをリレー形式で運ぶための「宿場」や「中継所」を意味する漢字でした。
この「驛」という漢字が日本に伝わり、日本では独自の簡略化(馬偏に尺)を経て「駅」という形になりました。つまり、日本の「駅」は、元代のモンゴル語の影響を受ける「前」の、古い中国の制度と漢字(驛)をルーツに持っているのです。
発音の違い:日本語「エキ(eki)」 vs 中国語「ジャン(zhàn)」の秘密
漢字のルーツが違うことは分かりましたが、それにしても発音が全く違いますよね。
- 日本語の「駅(エキ)」は、ルーツである「驛」の古い中国語の発音(特に唐代の長安付近の発音)が残ったものとされています。当時の「驛」の発音は、語尾が「k」で終わる「入声(にっしょう)」と呼ばれる発音([jaek]のような音)だったと考えられており、これが日本語の「エキ(Eki)」につながっています。
- 一方、現代中国語の「站(zhàn / ジャン)」は、前述の通りモンゴル語の「Jam」に由来します。また、「驛」の簡体字である「驿(yì / イー)」も、現代の標準中国語(普通話)では「k」の音が消滅(入声の消滅)してしまっているため、「エキ」とは全く異なる発音になっています。
つまり、日本語は古い唐代の発音(驛)を残し、現代中国語はモンゴル語由来の新しい言葉(站)を採用した結果、これほど大きな違いが生まれたのです。
「站」だけじゃない!乗り物別「駅」の中国語表現
「站」は「駅」の基本単語ですが、実際の会話では「何の駅」なのかを区別して呼ぶことがほとんどです。乗り物の種類別に、具体的な「〇〇站」の表現を学びましょう。
地下鉄は「地鐵站」、高速鉄道は「高鐵站」と使い分けます。
「火車站(huǒchēzhàn)」:汽車の駅(在来線・主要駅)
火車站 (huǒchēzhàn / フゥオチョージャン)
「火車」は「汽車」や「(在来線の)列車」を意味します。昔ながらの主要駅や、長距離列車、普通列車が発着する大きな駅を指すことが多いです。「北京站」「上海站」といった都市名を冠した伝統的なターミナル駅は、多くの場合「火車站」に分類されます。
例文:
A: 去火車站怎麼走?
(Qù huǒchēzhàn zěnme zǒu? / チュイ フゥオチョージャン ゼンマ ゾウ?)
((在来線の)駅へはどう行きますか?)
「高鐵站(gāotiězhàn)」:高速鉄道(新幹線)の駅
高鐵站 (gāotiězhàn / ガオティエジャン)
「高鐵」は「高速鐵路」の略で、日本の新幹線に相当する「高速鉄道(CRH)」を指します。近年建設された高速鉄道専用の駅は「〇〇高鐵站」と呼ばれることが多いです。例えば、上海の「上海虹橋站」や北京の「北京南站」は、主に高速鉄道が発着する巨大な「高鐵站」です。
例文:
A: 我要買去廣州的高鐵票。
(Wǒ yào mǎi qù Guǎngzhōu de gāotiě piào. / ウォ イァオ マイ チュイ グアンジョウ ダ ガオティエ ピィアオ。)
(広州行きの高速鉄道の切符が買いたいです。)
「地鐵站(dìtiězhàn)」:地下鉄の駅
地鐵站 (dìtiězhàn / ディーティエジャン)
「地鐵」は「地下鉄」のことです。都市部の移動に欠かせない地下鉄の駅は「地鐵站」と呼びます。これは非常に使用頻度が高い単語なので必ず覚えておきましょう。
例文:
A: 請問,最近的地鐵站在哪裡?
(Qǐngwèn, zuìjìn de dìtiězhàn zài nǎlǐ? / チンウェン、ズイジン ダ ディーティエジャン ザイ ナァリ?)
(すみません、一番近い地下鉄の駅はどこですか?)
「公交車站 / 公車站(gōngjiāochēzhàn)」:バス停
公交車站 (gōngjiāochēzhàn / ゴンジアオチョージャン)
「公交車」は「路線バス」を意味します(台湾では「公車」)。つまり「公交車站」は「バス停」です。電車だけでなく、バスの「駅」にも「站」が使われるのが面白いですね。単に「公交站」と略すこともあります。
例文:
A: 5路車的公交車站在哪裡?
(Wǔ lù chē de gōngjiāochēzhàn zài nǎlǐ? / ウー ルー チョー ダ ゴンジアオチョージャン ザイ ナァリ?)
(5番系統のバス停はどこですか?)
(応用編)空港や港の「駅」は?
ちなみに、乗り物つながりで空港や港についても見てみましょう。
- 空港: 機場 (jīchǎng / ジーチャン) ※「站」は使いません。例:北京首都國際機場
- 港: 港口 (gǎngkǒu / ガンコウ) または 碼頭 (mǎtóu / マートウ) ※「站」は使いません。
深掘りコラム:日本語と中国語、漢字が異なる他の例
「駅」と「站」のように、日本語と中国語では、同じ概念を表すのに異なる漢字を使ったり、同じ漢字でも形が違ったりすることがよくあります。
「駅(駅)」と「站(驿)」— 簡略化の違い
すでにご紹介した通り、この二つは簡略化の仕方が異なりました。
- 旧字体: 驛
- 日本語(新字体): 駅 (馬偏を尺に)
- 中国語(簡体字): 驿 (馬偏に尺ではなく「又」に)
そして、現代中国語では「ステーション」の意味は「驿」ではなく、モンゴル語由来の「站」が使われるようになった、という点がポイントでした。
他にもある!形が違う日中漢字の例
「駅」と「驿」のように、元の繁体字(旧字体)から、日本と中国大陸で異なる簡略化を遂げた漢字はたくさんあります。
| 意味 | 繁体字(旧) | 日本語(新) | 中国語(簡) |
|---|---|---|---|
| かく | 書 | 書 | 书 |
| くるま | 車 | 車 | 车 |
| でんわ | 電話 | 電話 | 电话 |
| ひろい | 廣 | 広 | 广 |
| まなぶ | 學 | 学 | 学 |
※「書」「車」「電話」のように、日本語では旧字体をほぼそのまま使っている(あるいは簡略化の度合いが低い)が、簡体字では大きく形が変わっているものもあれば、「広」と「广」のように、日中で異なる簡略化をしたものもあります。「学」は日中共通の簡略化ですね。
意味が全く異なる日中同形異義語(例:手紙、勉強)
漢字学習で最も注意が必要なのが、形は同じ(あるいは似ている)のに、意味が全く異なる単語です。
- 手紙 (tegami)
- 日本語: レター、便り
- 中国語: 手紙 (shǒuzhǐ) = トイレットペーパー
- ※中国語で「レター」は 「信 (xìn)」 と言います。
- 勉強 (benkyō)
- 日本語: 学習すること、スタディ
- 中国語: 勉強 (miǎnqiǎng) = 無理強いする、いやいや行う
- ※中国語で「学習する」は 「學習 (xuéxí)」 と言います。
- 汽車 (kisha)
- 日本語: 蒸気機関車、または(地域により)電車全般
- 中国語: 汽車 (qìchē) = 自動車、車
- ※中国語で「汽車(列車)」は 「火車 (huǒchē)」 と言います。
「駅」が「站」であるように、こうした違いを知ることは、中国語学習の面白さでもあり、重要なポイントでもあります。
まとめ:「站」をマスターして中国旅行・学習をさらに楽しく!
今回は、「駅中国語」をテーマに、基本的な単語から、実践的な会話フレーズ、そして「站」という言葉の壮大な歴史的背景まで、徹底的に深掘りしてきました。
最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。
- 中国語で「駅」は 「站 (zhàn)」または 「車站 (chēzhàn)」と言う。日本語の「駅」は通じない。
- 駅での会話は、「售票处 (切符売場)」「進站口 (入口)」「站台 (ホーム)」などの単語と、シーン別のフレーズを覚えておくと安心。
- 中国語の「站」は、元代のモンゴル語の駅伝制度 「Jam(ジャム)」に由来する。
- 日本語の「駅」は、古い中国語の「驛」がルーツであり、日中で異なる発展を遂げた。
- 「火車站 (在来線駅)」「高鐵站 (高速鉄道駅)」「地鐵站 (地下鉄駅)」のように、乗り物によって使い分けるのが一般的。
たった一つの「駅」という言葉から、これだけ広範な言語と歴史の世界が広がっているのは、漢字文化圏ならではの面白さですね。次にあなたが中国の「站」に降り立つ時は、ぜひこの記事で学んだフレーズを使いこなし、そして「この言葉はモンゴル帝国から来たんだな」と、その歴史に思いを馳せてみてください。きっと、旅や学習が何倍も楽しくなるはずです。
