中国四大刺繍:蘇州の優美、広東の華やかさ、四川の力強さ、湖南の生命力

  1. 中国歴史・民族

養蚕の発展と共に約二千年前から民間伝統手工芸として始まった中国刺繍は、各地域や民族性を色濃く反映した様々な流派があります。

その数ある流派の中でも特に有名なのが中国四大刺繍です。中国には、蘇州刺繍、広東刺繍、四川刺繍、湖南刺繍の4つの代表的な刺繍があります。それぞれどんな特徴があるのでしょうか?

中国四大刺繍:蘇州の優美、広東の華やかさ、四川の力強さ、湖南の生命力

中国四大刺繍とは

刺繍は一般的に母親から娘へ、その地方ならではの刺繍法を教えたものです。それが19世紀半ばに販売目的で商品化されるようになり、国内外に市場が広がりました。

中でも「苏绣」(sī xiù)、「湘绣」(xiāngxiù)、「粤绣」(yuèxiù)、「蜀绣」(shǔxiù)は特に人気を集め、「中国四大名绣」(Zhōngguósìdàmíngxiù 中国四大刺繍)と呼ばれるようになったのです。

蜀绣

2019年に国の無形文化遺産に登録された蜀绣は四川省成都市の特産品です。

古来豊かな国とされた蜀は三国時代から既に良質の絹織物で知られていました。刺繍の主なモチーフは花鳥、動物、山水、人物、掛け軸の絵に似せた竹や石、虫や魚などです。

刺繍の歴史の古さと、大きく12に分類される130余りの「针法」(zhēnfǎ 刺繍法)は他に類を見ません。19世紀末からは分業化が進められ、丁寧な刺繍、仕上がりの良さと合理的な価格で高評価を得ました。

近年では子供服、結婚関連用品、室内装飾、贈答品などの日常品に広く使われており、2015年には蜀绣関連商品の売り上げが2.5億元(日本円で約45億円)を超えるほどになりました。

中国の影響を受けた木の床に赤いペイズリー柄のキルト。

粤绣

唐時代に始まった粤绣は広東省の省都広州の「广州刺绣」(Guǎngzhōucìxiù)と、広東省潮安県の「潮州刺绣」(Cháozhōucìxiù)を含む珠江デルタ地域の民間刺繍工芸の総称です。

刺繍法は60種類以上あり、珍しいことに男性の職人が大勢います。早くも16世紀にはポルトガルやイギリス、フランスなどヨーロッパ各国に輸出され、貴族たちの服飾品として珍重されていました。

余白が少なく、布地一杯に様々なモチーフを実に細かく、色鮮やかに、また立体的に刺繍していくスタイルです。

主に「真丝绒绣」(zhēnsīróngxiù シルク糸刺繍)、「金银绒绣」(jīnyínróngxiù 金銀糸刺繍)、「线绣」(xiànxiù 刺繍糸による平面刺繍)、「珠绣」(zhūxiù ビーズ刺繍)の四種類が制作されています。

中でも場所によっては2-3cmの高さにまで立体的な絵画描写ができる金银绒绣、刺繍にビーズを組み込んだ珠绣が人気です。

苏绣

苏绣は蘇州を中心にした地域で作られる刺繍の総称で、2006年には国の無形文化遺産に登録されています。

二千年以上に及ぶ歴史と、歴代皇帝の「龙袍」(lóngpáo 皇帝が着用した竜の模様を刺繍した礼服)に施された刺繍として名を馳せてきました。

清王朝時代には皇室御用達の刺繍制作管理の役所「江南织造府」(jiāngnán zhīzàofǔ)が設けられるほどでした。今でも海外の要人への贈答品に準備される中国刺繍の多くは苏绣です。

絹織物と色とりどりな刺繍糸の生産に適した蘇州の穏やかな気候、母から娘へと幼少期から数ある刺繍法を教わり、熟練した技術を持つこの地域の多くの女性たちが苏绣の発展に貢献してきました。

製品は衣服、クッションカバー、布団カバーや枕カバーなどの「日用品」(rìyòngpǐn)と、屏風や掛け軸などの「欣赏品」(xīnshǎngpǐn)に大きく分類され、虎や猫などの動物、花鳥、風景、静物、建築物などを静かに、落ち着いた優しい色合いで表現しています。

また海外でのデモンストレーションも積極的に実施しています。

湘绣

絵筆で絵を描いたかのような質感にこだわるのが湘绣です。湘绣は湖南省長沙市を中心にした地域の伝統刺繍で、苏绣粤绣の良い所を取り入れています。

72種類の刺繍法があり、違う色の糸を混ぜ込みながら色調にもこだわっています。題材には山水や人物、動物のモチーフを多く取り上げていますが、特に生きているかのように見えるライオンや虎が好んで制作されています。

中国の人が馬が描かれた紙を制作しています。

苦難の時期を乗り越えて

中国刺繍が大きな試練を受けたのが文化大革命の時期でした。

Zàishínián de Wéngéyùndòngzhōng,

在十年的文革运动中,

yīnwèicìxiùtóngxǔduōyōuxiù de mínzúwénhuàyíchǎnbèizāoyù le měnglièpīpàn,

因为刺绣同许多优秀的民族文化遗产被遭遇了猛烈批判,

zhìshǐ cóngshìcìxiù de yìréngǎihánglìngmóushēnglù。

致使从事刺绣的艺人改行另谋生路。

Cìxiù hángyètíngzhǐ le qiánjìn de bùfá,chuàngxīnyǐjíchuàngzuòjīhūwéilíng。

刺绣行业停止了前进的步伐,创新以及创作几乎为零。

十年間に及ぶ文化大革命運動の中で、刺繍はその他の優秀な民族文化遺産と共に猛烈な批判にさらされたため、刺繍に携わる職人たちは転職して別の生計の道を図らねばならなくなった。刺繍業界の発展の歩みは閉ざされ、新しいものを作り出したり、創作したりすることはほぼなかった。

まとめ

こうした苦難の時期を乗り越えて、1980年代以降、刺繍は再度発展し始めました。より自由な題材で、より豊かな色彩で表現ができる時代になったのです。

四大刺繍以外にも有名な刺繍は各地にたくさんありますから、気に入ったものをぜひ手に入れたいものですね。

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