中国での生活が長くなると、ふと酢飯の香りやしょうゆの味が恋しくなる瞬間が訪れます。上海や北京、広州、深圳といった大都市を見渡せば、日系の回転寿司チェーンから現地のカジュアルな寿司店、高級ホテル内の日本料理店まで、さまざまな場所で寿司を楽しむことができます。

しかし、実際に店舗へ足を運んでみると、日本の寿司とは異なる味付けや、見たことのないメニューに驚くかもしれません。特に、中国語で「三文鱼」と呼ばれるサーモンの圧倒的な存在感や、生魚を食べる際の安全性の基準については、事前に正しい知識を持っておく必要があります。「中国の生魚は危ない」と決めつけるのではなく、適切な店舗選びと注文時の確認を行うことで、リスクを大きく減らすことが可能です。

本記事では、中国特有の寿司文化と日本との違い、安全で衛生的な店舗を見極めるポイント、そして実際に現地で注文する際にそのまま使える中国語フレーズを豊富に紹介していきます。基礎から実践的な会話まで網羅しており、本格的に言語を身につけたい方は中国語教室での学習と併用することで、よりスムーズなコミュニケーションが可能になります。

まずは、中国で寿司がどのように受け入れられ、独自の進化を遂げてきたのか、その背景と特徴から見ていきましょう。

中国における独自の寿司文化と日本との違い

この章の要点
  • 中国ではサーモン(三文鱼)が圧倒的な人気を誇り、多様なアレンジが存在する
  • 厚切りで豪華な盛り付け、マヨネーズや甘いたれなどの濃い味付けが好まれる
  • 水やお茶、おしぼりが有料となる店舗が多く、着席時の確認が重要である

中国の寿司は、日本の伝統的なスタイルをベースにしつつも、現地の味覚や消費者のニーズに合わせて独自の発展を遂げています。日本の寿司とまったく同じものを期待して店に入ると、メニューの構成やサービスの違いに戸惑うかもしれません。

特に大きな違いとして挙げられるのが、特定の魚種に対する偏愛と、視覚的な豪華さを重視する傾向です。中国における寿司の楽しみ方は、日本の「素材の味をシンプルに引き出す」アプローチとは異なるベクトルの魅力を持っています。

具体的にどのような違いがあるのか、メニューや味付け、サービス面での特徴を深掘りしていきましょう。

サーモンの圧倒的な存在感

日本の寿司店では、マグロや白身魚、青魚などが季節ごとに主役を飾りますが、中国の寿司店において主役の座に君臨しているのは間違いなくサーモンです。中国語では一般的に「三文鱼(sānwényú)」と呼ばれ、メニューの大部分を占めることも珍しくありません。

鮮やかなオレンジ色が写真映えすることや、脂の乗った甘みが中国人の味覚に合いやすいことが、爆発的な人気の理由です。生サーモンの握りだけでなく、炙り、軍艦巻き、アボカドやチーズと合わせたロール寿司など、サーモンだけで数十種類のメニューを展開する店も存在します。

日本でマグロの赤身、中トロ、大トロを食べ比べるように、中国では「サーモンのさまざまな調理法を食べ比べる」という楽しみ方が定着しています。サーモン尽くしの盛り合わせは、友人同士の食事でも定番の選択肢となっています。

マヨネーズや甘いたれがかかった、厚切りの炙りサーモン寿司の盛り合わせ
中国で人気の厚切りで豪華なサーモン寿司の盛り合わせ

厚切りと濃い味付けが好まれる傾向

中国のカジュアルな寿司店では、ネタを非常に厚く切り、視覚的なボリューム感を強調する盛り付けが頻繁に見られます。日本の寿司が「シャリとネタの黄金比」を追求するのに対し、中国では「魚の大きさと脂の豊かさ」が満足度に直結しやすいからです。

味付けに関しても、マヨネーズ、チーズ、甘辛い照り焼きソース、スパイシーなチリソースなどをたっぷりと使った創作メニューが主流です。生の魚を食べ慣れていない層でも抵抗なく食べられるよう、味の輪郭をはっきりさせる工夫が凝らされています。

さらに、フォアグラを使った「鹅肝寿司(égān shòusī)」のような高級食材を組み合わせたメニューも人気です。脂の濃厚さと甘いたれのハーモニーは、淡白な白身魚の繊細さとは対極にある、わかりやすい美味しさを提供しています。

お茶やおしぼりが有料となるサービスの違い

日本では、席に着くと無料でお茶とおしぼりが出てくるのが当然とされています。しかし、中国の飲食店ではこれらが有料(茶位費や餐具費などと呼ばれる)であることが少なくありません。寿司店も例外ではなく、テーブルに置かれた個包装のおしぼりや食器セットを使用すると、会計時に数元(数十円〜百円程度)が加算される仕組みです。

たかが数元とはいえ、人数分が加算されると想定より高額になることがあります。不要な場合は開封前に店員に確認し、下げてもらうことが可能です。この点を知っておくだけで、会計時の不要なトラブルを避けることができます。

続いて、中国の寿司を語る上で避けては通れない「三文鱼」の実態と、安全な選び方について

「三文鱼」の実態と安全な選び方

この章の要点
  • 「三文鱼」にはアトランティックサーモンだけでなくニジマスが含まれることがある
  • 淡水魚か海水魚かだけでなく、衛生管理と処理方法が安全性の鍵を握る
  • パッケージの「可生食」や「需加热后食用」などの表示を正確に見分ける

中国でサーモンを注文する際、「三文鱼」という言葉の定義が日本よりも広いことを理解しておく必要があります。この言葉はアトランティックサーモンだけでなく、淡水養殖のニジマス(虹鱒)を含む総称として使われることがあるためです。

生食における安全性は、魚の名称だけで決まるものではありません。養殖環境、寄生虫対策のための冷凍処理、流通時の温度管理など、複数の要素が組み合わさって初めて安全が担保されます。

ここでは、魚種の違いを正確に把握し、パッケージの表示を正しく読み解くための知識を身につけましょう。

アトランティックサーモンとニジマスの違い

中国のメニューやスーパーの表記では、サーモン類に関して以下のような明確な区別が求められます。「三文鱼」とだけ書かれている場合、それがどの魚種を指すのか不透明なケースがあります。

アトランティックサーモンは「大西洋鲑(dàxīyáng guī)」、ニジマスは「虹鳟(hóngzūn)」と表記されます。ノルウェー産(挪威产)やチリ産(智利产)といった産地が明記されている商品を選ぶことで、トレーサビリティが確保された安全な魚を選ぶ確率が高まります。

淡水魚であるニジマスだからといって一律に危険というわけではなく、厳格な衛生管理のもとで生食向けに養殖・処理されたニジマスも存在します。重要なのは、消費者が魚種と生産背景を確認できる透明性があるかどうかです。

「可生食」ラベルの正しい見方と落とし穴

スーパーマーケットで刺身用の切り身を購入する際、表面の商品名だけでなく、裏面や側面に貼られた詳細なラベルを必ず確認してください。生で食べられるかどうかは、以下の中国語表記で見分けます。

「可生食(生食可能)」や「即食(そのまま食べられる)」と明記されている商品は、生食を前提に処理されています。一方、「需加热后食用(加熱後に食べる)」や「非即食」と書かれたものは、絶対に生で食べてはいけません。見た目が新鮮そうだからといって自己判断で刺身にするのは非常に危険です。

また、「可生食」と書かれていても、購入後の持ち歩き時間が長すぎたり、家庭の冷蔵庫での保存状態が悪ければ、細菌が繁殖してしまいます。表示はあくまで「出荷時点での状態」を示すものだと理解しておきましょう。

注意点

家庭用の冷凍庫で一晩凍らせただけでは、寄生虫を完全に死滅させることはできません。業務用設備によるマイナス20度以下での長期間の冷凍処理が必要なため、「買ってきた加熱用サーモンを自宅で冷凍して刺身にする」という行為は絶対に避けてください。

魚の表示や扱い方がわかったところで、次は実際に店舗で食べる際の「安全な店の選び方」について見ていきましょう。

衛生面を見極める:安全な寿司店の選び方

この章の要点
  • 口コミアプリで直近の低評価(異臭や体調不良など)がないか確認する
  • 店内のにおい、テーブルのべたつき、食器の汚れなどの衛生状態を観察する
  • 職人が生魚用と加熱用のまな板を分けているか、手洗いを徹底しているかを見る

生ものを扱う寿司店において、衛生管理は命に直結する最も重要な要素です。有名チェーン店や高級店だからといって盲信せず、自分の目で店舗の状態をチェックする習慣をつけましょう。

中国では外食産業の競争が激しく、店舗ごとのクオリティに大きなばらつきがあります。入店前から着席時、そして調理の過程に至るまで、安全性を測るための客観的な指標をいくつか持っておくことが大切です。

ここでは、誰でも実践できる3つのチェックポイントをお伝えします。

口コミアプリ「大衆点評」などの活用法

中国で飲食店を探す際、欠かせないのが「大众点评(Dàzhòng Diǎnpíng)」などの口コミアプリです。ただし、総合的な星の数だけで判断するのは危険です。高評価の中には、サービスでデザートをもらう代わりに書かれたレビューが混ざっていることがあるからです。

注目すべきは、「直近1ヶ月以内の低評価レビュー」です。「不新鲜(新鮮ではない)」「异味(異臭がする)」「拉肚子(おなかを壊した)」といったキーワードが複数のユーザーから書き込まれている場合、その店舗の衛生管理が慢性的に破綻している可能性が高いと判断できます。

また、写真付きのレビューで、ネタが乾いている様子や盛り付けが乱雑な様子が確認できる場合は、避けた方が無難です。

タッチパネル式のメニューを見ながら、清潔な回転寿司店の様子を確認する客
店内の清潔さや設備の稼働状況は、安全な食事のための重要な手がかり

店内のにおいと清掃状態のチェック

店舗に足を踏み入れた瞬間の「におい」は、非常に重要なセンサーとなります。新鮮な魚を適切に扱っている店では、強い生臭さが店内に充満することはありません。刺激的な生臭さや、腐敗臭がわずかでも感じられた場合は、退店を検討すべきです。

また、客席の清掃状態は厨房の衛生状態を映す鏡です。テーブルがべたついている、しょうゆ差しに液だれがこびりついている、床にゴミが落ちたままになっている店は、見えない場所(冷蔵庫内や調理器具)の清掃も行き届いていないと考えられます。

ネタケースのガラスが結露しているだけでなく、ケース内にドリップ(魚から出た液体)が溜まっている場合も、鮮度管理に問題がある証拠です。

職人の動作と厨房環境の観察

カウンター席やオープンキッチンがある店では、調理者の手元をよく観察してください。手袋を着用しているかどうかが重要なのではありません。同じ手袋のまま、現金やスマートフォンを触り、そのまま生魚を握っているようなら、素手よりも不衛生です。

確認すべきは、「交差汚染(食材同士の菌の移り)」を防ぐ行動が取られているかです。生食用の魚を切る包丁やまな板と、加熱用の食材を扱う器具が明確に分けられているか。作業が変わるたびに手洗いや布巾の交換が行われているかを見極めます。

切り付けた魚を常温の調理台の上に長時間放置している店は、食中毒のリスクが格段に跳ね上がります。

安全な店を選ぶ基準がわかったところで、次は実際に店舗で使える実践的な中国語フレーズを学んでいきましょう。

実践!寿司店で使える中国語フレーズ集

この章の要点
  • 「三文鱼」の具体的な魚種や生食可否を尋ねるフレーズを習得する
  • わさび抜きや別添え、作りたての注文など、細かい要望を伝える表現を学ぶ
  • アレルギーや体調に関する重要な情報を店員に正確に伝達する

寿司店での注文は、タッチパネルで済むことも増えましたが、細かい要望を伝えたり、安全性を確認したりするためには、店員との直接のコミュニケーションが欠かせません。

ここでは、実際の店舗でそのまま使える実用的なフレーズを場面別にお伝えします。文法的に完璧である必要はありません。重要な単語をはっきりと発音し、場合によってはこの画面を直接店員に見せるだけでも十分に意図は伝わります。

それでは、魚の種類や産地を確認するフレーズから見ていきましょう。

魚の種類や産地を確認するフレーズ

フレーズ
这是大西洋鲑还是虹鳟? (Zhè shì dàxīyáng guī háishì hóngzūn?)
日本語訳
これはアトランティックサーモンですか、それともニジマスですか?
使う場面
メニューに「三文鱼」としか書かれておらず、具体的な魚種が不明なとき。
注意点・誤用例
「这是三文鱼吗?(これはサーモンですか?)」とだけ聞くと、「はい」としか返ってこないため、選択肢を提示して尋ねるのが効果的です。
発音・ニュアンス
「ダァシーヤン グゥィ(大西洋鲑)」と「ホンズゥン(虹鳟)」の対比を強調して発音します。
フレーズ
这是可以生吃的吗? (Zhè shì kěyǐ shēngchī de ma?)
日本語訳
これは生で食べられますか?
使う場面
刺身用として管理された食材かどうかを店員に確認したいとき。
注意点・誤用例
店員が曖昧に返事をした場合は、無理に生で注文せず、炙りや加熱メニューに変更する勇気を持ちましょう。
発音・ニュアンス
「ションチー(生吃)」をはっきり発音し、疑問のニュアンスを込めて語尾を上げます。

注文時の細かい要望(わさび抜き・作りたて)

フレーズ
不要芥末。 (Bú yào jièmò.)
日本語訳
わさびは入れないでください。
使う場面
サビ抜きの寿司を注文したいとき。子ども用や辛いものが苦手な場合に必須です。
注意点・誤用例
「芥末」は和風のわさびだけでなく、からしを指すこともあります。確実に伝えるなら「不要日式芥末(Bú yào Rìshì jièmò.)」と言い換えます。
発音・ニュアンス
「ブーヤオ(不要)」を強めに言い、拒否の意思を明確に示します。
フレーズ
请给我现做的。 (Qǐng gěi wǒ xiàn zuò de.)
日本語訳
作りたてをください。
使う場面
回転寿司のレーン上にある乾いた皿ではなく、新しく握ってほしいとき。
注意点・誤用例
混雑時は対応してもらえないこともありますが、食中毒対策として非常に有効なフレーズです。
発音・ニュアンス
「シエンズオ(现做)」の部分を強調して、今すぐ作ってほしいことをアピールします。

アレルギーや注意点を伝えるフレーズ

フレーズ
我对虾过敏。 (Wǒ duì xiā guòmǐn.)
日本語訳
私はエビのアレルギーがあります。
使う場面
注文前や、特定の食材を抜いてほしいと交渉する前提として。
注意点・誤用例
アレルギーが重度の場合、言葉で伝えても微量混入(まな板や包丁経由)を防げないことがあります。不安な場合は利用を避ける決断も必要です。
発音・ニュアンス
深刻な表情で、ゆっくりと「グオミン(过敏)」を伝えます。

単発のフレーズを覚えたら、次はこれらを実際の会話の中でどう組み立てるかを見てみましょう。

シチュエーション別・中国語会話ロールプレイ

この章の要点
  • カウンター店で職人に魚種を確認し、条件付きで注文する流れを掴む
  • 着席時のお茶・おしぼりの有料確認をスムーズに行う
  • 炙りメニューの加熱具合について、自分の要望を正確に伝える

実際の店舗では、一方的にフレーズを話すだけでなく、店員との言葉のキャッチボールが発生します。ここでは、中国の寿司店でよくあるシチュエーションを想定した会話例をお伝えします。

会話の流れをイメージしておくことで、本番でも焦らずに対応できるようになります。声に出して練習してみましょう。

カウンター店での魚種確認と注文

会話の流れ
学習者: 你好,请问这个三文鱼是什么鱼?
(Nǐ hǎo, qǐngwèn zhège sānwényú shì shénme yú?)
こんにちは。このサーモンは何という魚ですか?

店員: 这是大西洋鲑。
(Zhè shì dàxīyáng guī.)
アトランティックサーモンです。

学習者: 是可以生吃的吗?可以看一下标签吗?
(Shì kěyǐ shēngchī de ma? Kěyǐ kàn yíxià biāoqiān ma?)
生で食べられますか。ラベルを見せてもらえますか?

店員: 可以,标签上写着“可生食”。
(Kěyǐ, biāoqiān shàng xiězhe “kě shēngshí”.)
はい。ラベルに「生食可能」と書かれています。

学習者: 那请给我一份现做的三文鱼握寿司,不要芥末。
(Nà qǐng gěi wǒ yí fèn xiàn zuò de sānwényú wò shòusī, bú yào jièmò.)
では、作りたてのサーモン握りを一つ、わさび抜きでお願いします。

着席時の有料サービス確認

会話の流れ
学習者: 服务员,桌上的这个毛巾和茶收费吗?
(Fúwùyuán, zhuō shàng de zhège máojīn hé chá shōufèi ma?)
すみません、テーブルのこのおしぼりとお茶は有料ですか?

店員: 是的,每位三块钱。
(Shì de, měi wèi sān kuài qián.)
はい、お一人様3元です。

学習者: 那我们不用了,请帮我撤走。给我两杯白开水,谢谢。
(Nà wǒmen bú yòng le, qǐng bāng wǒ chè zǒu. Gěi wǒ liǎng bēi báikāishuǐ, xièxie.)
では結構です、下げてください。白湯を二杯お願いします。

炙りメニューの加熱具合を調整する

中国の炙り寿司は、表面だけをバーナーで軽く焼き、中心は生のままであることが非常に多いです。生魚を完全に避けたい場合は、中までしっかり火を通すよう明確に指示しなければなりません。

会話の流れ
学習者: 我想点这个炙烤三文鱼,请彻底加热,里面也要熟。
(Wǒ xiǎng diǎn zhège zhìkǎo sānwényú, qǐng chèdǐ jiārè, lǐmiàn yě yào shú.)
この炙りサーモンを注文したいのですが、しっかり加熱して中まで火を通してください。

店員: 里面全熟的话口感会变老,可以吗?
(Lǐmiàn quán shú de huà kǒugǎn huì biàn lǎo, kěyǐ ma?)
中まで火を通すと食感が硬くなりますが、よろしいですか?

学習者: 没关系,不要只是炙烤表面,一定要全熟。
(Méi guānxi, bú yào zhǐshì zhìkǎo biǎomiàn, yídìng yào quán shú.)
構いません。表面を炙るだけではなく、必ず完全に火を通してください。

ここまで店舗での会話を中心に見てきましたが、中国ではデリバリーやスーパーでの購入も非常に身近です。続いて、持ち帰りや配達を利用する際の注意点について見ていきましょう。

スーパーやデリバリーで寿司を買う際の注意点

この章の要点
  • スーパーのパック寿司は、冷蔵ケースの温度と製造時刻を厳しくチェックする
  • デリバリー利用時は、生ものと温かい料理を分けて包装するよう指示する
  • 少しでも異臭や容器の異常を感じたら、絶対に食べずに店舗へ連絡する

自宅やホテルで気軽に寿司を楽しめるスーパーのパック寿司や、美団(Měituán)などのデリバリーサービスは非常に便利です。しかし、店舗で食べるよりも調理から口に入るまでの時間が長くなるため、温度管理と鮮度の見極めがより一層シビアになります。

「便利だから」という理由だけで油断せず、購入前や到着時に必ず確認すべきポイントを押さえておきましょう。

スーパーのパック寿司・チェック項目

スーパーの売り場でパック寿司を手に取る際、値引きシールだけに気を取られてはいけません。以下の項目を必ずチェックし、安全基準を満たしているか判断してください。

  1. 常温に放置されていないか:必ずしっかりと冷えた冷蔵ケース内に陳列されているものを選ぶ。
  2. 製造時刻の確認:「生产日期(製造日)」だけでなく、時間が記載されていれば最も新しいものを選ぶ。
  3. ドリップ(水分)の有無:魚から赤い液体が大量に出てパックの底に溜まっているものは鮮度が落ちている証拠。
  4. パッケージの破損:ふたが浮いている、テープが剥がれているものは異物混入や温度上昇のリスクがある。
  5. 乾燥と変色:ネタの端が反り返って乾燥していたり、色がくすんでいるものは避ける。

購入後は、寄り道をせずに直帰して冷蔵庫に入れるか、保冷バッグを使用することが鉄則です。一度常温で温まってしまった寿司を、家の冷蔵庫で冷やし直しても、増殖した細菌が消えることはありません。

整然と並べられたスーパーの冷蔵寿司コーナーと、ラベルの表記
スーパーで購入する際は、ラベルの表示と陳列状態の確認が不可欠

デリバリー時の温度管理と配達指示

中国のデリバリーアプリは非常に優秀ですが、配達員が複数の注文を掛け持ちしている場合、到着までに予想以上の時間がかかることがあります。また、熱々のラーメンや唐揚げと、冷たい生魚の寿司が同じ袋に密着して入れられるトラブルも後を絶ちません。

これを防ぐため、注文時の備考欄(备注)に以下の中国語を記入して、店舗側に対策を促しましょう。

備考欄に書くフレーズ
请把寿司和热食分开包装,并放冰袋。(Qǐng bǎ shòusī hé rèshí fēnkāi bāozhuāng, bìng fàng bīngdài.)
日本語訳
寿司と温かい料理を分けて包装し、保冷剤を入れてください。

到着した商品が明らかにぬるい、汁が漏れている、容器のふたが開いているといった場合は、もったいないと思わずに廃棄するか、写真を撮ってアプリ経由で返金申請を行うのが賢明です。

しかし、いくら気をつけていても、不運にも体調を崩してしまうことはあり得ます。最後に、万が一の際の緊急対応について見ていきましょう。

食後のトラブル:体調不良時に使える中国語

この章の要点
  • 激しい腹痛や嘔吐がある場合は、自己判断せず速やかに医療機関を受診する
  • 医師に対して、生魚を食べた事実と症状の経過を正確に伝える
  • 原因究明のため、食べた時間、店舗名、残っている食品の情報を保存しておく

寿司を食べた後、数時間から数日以内に強い腹痛、嘔吐、下痢、発熱などの症状が現れた場合、食中毒の疑いがあります。特に妊娠中の人や子ども、免疫力が低下している人は重症化しやすいため、我慢せずに医療機関を受診することが極めて重要です。

病院で診察を受ける際、医師に状況を素早く正確に伝えるための中国語フレーズをいくつか覚えておきましょう。

病院で症状を伝えるフレーズ

フレーズ
我吃了生鱼以后开始肚子痛。 (Wǒ chī le shēngyú yǐhòu kāishǐ dùzi tòng.)
日本語訳
生魚を食べた後からおなかが痛くなりました。
使う場面
問診の最初に、痛みのきっかけとなった食べ物を提示するとき。
注意点・誤用例
「肚子痛(腹痛)」の他に、「恶心(吐き気)」がある場合も合わせて伝えます。
フレーズ
我从昨晚开始一直呕吐和腹泻。 (Wǒ cóng zuówǎn kāishǐ yìzhí ǒutù hé fùxiè.)
日本語訳
昨夜から嘔吐と下痢が続いています。
使う場面
具体的な症状と、それがいつから続いているかを医師に説明するとき。
フレーズ
我怀疑是食物中毒。 (Wǒ huáiyí shì shíwù zhòngdú.)
日本語訳
食中毒ではないかと思います。
使う場面
原因が明確に心当たりがある(直前に不審な寿司を食べたなど)場合、医師に検査の方向性を示唆するため。
注意点

食中毒が疑われる場合、残っている食品を自己判断で捨てたり、店に苦情を言うために常温で持ち歩いたりしてはいけません。原因究明のために保健当局や医療機関が検査する可能性があるため、密閉して冷蔵保管し、レシートや注文履歴とともに保存しておきましょう。

中国の寿司を安心して楽しむための総括

中国における寿司は、日本の伝統をそのままコピーしたものではなく、現地の食文化と融合した新しいジャンルの料理として発展しています。厚切りのサーモンや、マヨネーズとチーズを駆使した濃厚な味付けは、最初は驚くかもしれませんが、慣れると独特の美味しさがあります。

大切なのは、日本との違いを優劣で語るのではなく、「別の食文化」として柔軟に受け入れる姿勢です。そして同時に、生ものを口にする以上は、自分の身を守るための衛生チェックと、中国語での意思疎通を怠らないことです。

「大西洋鲑ですか?」「生食できますか?」「しっかり中まで火を通してください」と、ポイントを絞って質問できるだけでも、外食時の安心感は大きく変わります。日常的な食事の場面を通じて言葉を学ぶことは、語学学習において非常に効果的なアプローチとなります。

「三文鱼」はすべてアトランティックサーモンですか?

いいえ、中国で「三文鱼」という言葉は、アトランティックサーモン(大西洋鲑)だけでなく、淡水養殖のニジマス(虹鳟)などサーモン類全般を指す総称として使われることがあります。注文時や購入時にパッケージの表示を確認することが重要です。

淡水魚の刺身は絶対に危険ですか?

淡水魚だから一律に危険というわけではなく、海産魚であっても寄生虫や細菌のリスクはあります。安全性の鍵は、厳密な衛生管理のもとで養殖され、生食用の冷凍処理・加工が正しく行われているかどうかにかかっています。

お茶やおしぼりでお金を取られるのは普通ですか?

中国の飲食店では珍しくありません。テーブルにセットされている個包装のおしぼりや食器を使用すると、数元の使用料(茶位費や餐具費など)が加算されるのが一般的です。不要な場合は開封前に店員に伝えて下げてもらいましょう。

炙り寿司なら完全に安全ですか?

中国の炙り寿司の多くは、表面に焦げ目をつけるだけで中心部分は生のまま(レア状態)です。生魚を避けたい場合は、「彻底加热(中まで完全に火を通す)」ように店員へ明確に指示する必要があります。

食中毒を疑う症状が出たらどうすればいいですか?

激しい腹痛、嘔吐、下痢などの症状が出た場合は、自己判断で市販薬を飲まずに速やかに医療機関を受診してください。受診時は「我怀疑是食物中毒(食中毒の疑いがあります)」と伝え、食べた日時や店舗情報を提示できるように準備しておきます。