「現地を一人で歩いても本当に大丈夫なのだろうか」「日本人が犯罪に巻き込まれることはないのだろうか」と、中国への渡航を前に不安を感じる方は少なくありません。初めての土地や言葉の壁がある環境では、想定外のトラブルに対する恐れが大きくなるのはごく自然なことです。

現在の北京、上海、広州、深圳、西安、成都などの主要都市では、駅や空港、繁華街を中心に警察官や警備員が多数配置されており、防犯カメラの運用も進んでいます。そのため、一般的な観光旅行において過度に恐れを抱く必要はありません。しかし、日本と全く同じ感覚で行動できるわけではなく、旅行者が直面しやすい特有のリスクが存在します。

スリや置き引き、無許可タクシーでの高額請求といった軽犯罪に加え、パスポートの携行義務や写真撮影の制限など、日本とは異なる法律上の注意事項も理解しておく必要があります。安全で充実した滞在を実現するためには、現地の治安事情を正確に把握し、事前に十分な対策を講じることが重要です。出発前の準備として、現地の言葉に触れておきたい方は中国語教室での学習も大きな助けとなります。

ここからは、旅行者が遭いやすいトラブルの実態と、それらを未然に防ぐための具体的な行動、そして万が一の事態に備えた対応方法を詳しく掘り下げていきます。

中国の治安は危険なのか?地域・場面別の実態と基本認識

この章の要点
  • 主要都市の中心部は警備体制が整っているが、観光客を狙った軽犯罪には警戒が必要
  • 新疆ウイグル自治区やチベット自治区など、移動や撮影に制限がある地域が存在する
  • 人が集まる場所では、常に周囲の異変を察知して距離を取る意識が身を守る

中国は広大な国土を持つため、地域、時間帯、周辺の環境によって治安の状況が大きく異なります。大都市の中心部であれば、夜間でも比較的明るく、多くの人が行き交うため、凶悪犯罪に遭遇する確率は低いと言えます。しかし、安全そうに見える場所ほど観光客が多く集まり、旅行者の不慣れな様子を狙った軽犯罪が発生しやすいという側面があります。

街頭犯罪だけでなく、人が多く集まる場所での突発的な事件、交通事故、法令違反、自然災害なども考慮しなければなりません。出発前には、外務省の安全情報を確認し、滞在する都市ごとのリスクを把握しておくことが不可欠です。

たとえば、北京の王府井、上海の南京東路や外灘、広州の珠江新城といったエリアは、観光客にとって必須の訪問地ですが、スリや客引きの標的にもなりやすい場所です。地下鉄の改札や繁華街の交差点など、人との距離が急に近くなる場面では、貴重品の管理に意識を向ける必要があります。

また、新疆ウイグル自治区やチベット自治区への旅行を検討している場合は、一般的な都市観光とは全く異なる準備が求められます。立ち入りや写真撮影が厳しく制限される区域があり、外国人旅行者が自由に移動できない場合も少なくありません。これらの地域を訪れる際は、信頼できる旅行会社を通し、各大使館や総領事館の最新の傾向を必ず確認してください。

では、具体的にどのような場面で、どのような被害が発生しやすいのでしょうか。旅行者が巻き込まれやすいトラブルの傾向を見ていきましょう。

混雑した中国の地下鉄駅でリュックを前に抱える旅行者
人混みでは荷物を身体の前で管理することが基本の防犯対策です

旅行者が巻き込まれやすいトラブルと発生しやすい場所

この章の要点
  • 被害の多くは、旅行者の注意が別の物事へ向いた瞬間に発生する
  • 貴重品の抜き取り、不正決済、高額請求など、手口は多岐にわたる
  • 地図の確認や荷物検査など、立ち止まる場面での警戒が特に重要

中国旅行で警戒すべき対象は、財布やパスポートといった物理的な貴重品から、スマートフォン内のデータ、さらには法律上の制限事項まで幅広く存在します。以下の表は、対象となる物事と、それに関連する主なトラブル、および注意すべき場所を整理したものです。

【財布・現金】スリ、抜き取り、偽札とのすり替え(地下鉄、バス、駅、観光地、夜市)
【パスポート】スリ、置き引き、紛失(手荷物検査場、ホテル、列車内)
【スマートフォン】盗難、不正決済、個人情報の流出(飲食店、歩道、駅、配車の待ち場所)
【タクシー】白タク、高額請求、遠回り(空港、鉄道駅、繁華街)
【電子決済】偽QRコード、不正送金、誤決済(小規模店舗、自販機、路上サービス)
【飲食・交友】茶館やバーへの誘導、睡眠薬を使った犯罪(観光地周辺、繁華街)
【法律】撮影、無許可の調査、禁止区域への立ち入り(軍事関連施設、保安区域)

これらのトラブルに共通する特徴は、旅行者の注意が貴重品以外へ向いた瞬間を狙われるという点です。たとえば、スマートフォンで地図を見ているとき、駅で切符を探しているとき、あるいは親しげに話しかけてきた人物との会話に応じているときなどです。意識が他へ向いているときほど、持ち物への警戒が薄れることを念頭に置いておく必要があります。

次に、これらのトラブルの中でも特に発生頻度の高い、スリと置き引きから貴重品を守るための具体的な行動基準を見ていきます。

スリと置き引き対策:財布とパスポートを死守する防犯術

この章の要点
  • 混雑した場所ではバッグを必ず身体の前側で保持する
  • パスポート、現金、クレジットカードを一か所のバッグにまとめない
  • 16歳以上の外国人にはパスポートの常時携行義務があるため、ホテルに置いて外出しない

中国語で財布は「钱包(qiánbāo)」、泥棒やスリを指す言葉としては「小偷(xiǎotōu)」が日常的に使われます。都市部の混雑した地下鉄やバスでは、複数人がグループで犯行に及ぶケースが報告されています。一人が旅行者の進路を不自然にふさいだり、わざとぶつかったりして注意をそらし、その隙に別の人物がバッグのファスナーを開けて貴重品を抜き取るという手口です。

このような被害を防ぐためには、リュックサックを背負ったままにせず、身体の前で抱え込むように持つことが鉄則です。ファスナーの引き手部分を自分の手で覆うように持てば、背後からの不自然な動きにすぐ気づくことができます。口が完全に閉まらないトートバッグや、薄手の布製バッグに貴重品を入れるのは非常に危険です。

また、レストランやカフェで休憩する際、バッグを椅子の背もたれに掛けたり、隣の空いている椅子に無造作に置いたりする行動は、置き引きの標的になります。足元に置く場合でも、必ずバッグのストラップに自分の足を通しておくなど、持ち去られそうになったときに物理的な抵抗を感じられる状態にしておきましょう。

注意点:パスポートの携行義務について

中国では、16歳以上の外国人に対してパスポート(または居留証)の常時携行が法律で義務付けられています。「盗難が心配だから」という理由でホテルの金庫に置いたまま外出すると、公安当局からの身分確認や、鉄道の乗車時、トラブルに巻き込まれた際の手続きで大きな不利益を被る可能性があります。必ず原本を携帯し、服の内側に隠せるセキュリティポーチなどを活用して厳重に管理してください。

リスクを分散させることも重要です。パスポート、すべてのクレジットカード、現金の全額を一つのバッグに入れてしまうと、そのバッグを失った瞬間に旅行を継続する手段が断たれてしまいます。当日に使用する少額の現金だけを小型の財布に入れ、予備のカードや多額の現金は衣服の内側など別の場所に分けて持ち歩くのが賢明です。

フレーズ
请问,附近有派出所吗?
(Qǐngwèn, fùjìn yǒu pàichūsuǒ ma?)
日本語訳
すみません、近くに交番(派出所)はありますか?
使う場面
財布やパスポートを盗まれたことに気づき、現地の通行人や駅員に警察の場所を尋ねるとき。
発音・ニュアンス
「チンウェン(请问)」は人に尋ねるときの丁寧な前置きです。「派出所(パイチュースオ)」は中国における末端の警察機関を指します。

財布やパスポートと同じくらい、現代の中国旅行で致命的なダメージとなるのがスマートフォンの紛失です。続いて、端末とデータを守るための対策を確認します。

スマートフォン防犯対策:端末とデータを守る必須設定

この章の要点
  • 中国ではスマホ紛失=移動手段と決済手段の同時喪失を意味する
  • 出発前に端末を探す機能、複雑な画面ロック、生体認証を必ず設定する
  • 歩きスマホはスリの標的になるだけでなく、無音で近づく電動二輪車との接触リスクを高める

中国語でスマートフォンは「智能手机(zhìnéng shǒujī)」、日常会話では単に「手机(shǒujī)」と呼ばれます。中国での日常生活や旅行は、地図アプリでの経路検索、配車サービスでの移動、翻訳アプリでの意思疎通、そして電子決済まで、すべてがスマートフォンを起点として成り立っています。そのため、端末を失うことは、旅行におけるインフラの全喪失に直結します。

盗難や紛失による被害を最小限に抑えるため、渡航前に以下の設定を必ず済ませておきましょう。推測されにくいパスコードの設定、顔認証や指紋認証の有効化、そして「端末を探す機能」と位置情報のオンは必須です。また、ロック画面にメッセージの内容や認証コードが表示されないよう、通知内容を非表示にする設定も不正利用防止に役立ちます。

行動面での最大の防犯は「歩きながら操作しない」ことです。地図アプリを見ながら歩行していると、周囲への警戒が完全に途切れます。中国の都市部では、電動二輪車がエンジン音を立てずに背後から高速で接近してくることが多々あり、接触事故のリスクが非常に高くなります。地図を確認する際は、壁際や建物のロビーなど、背後を取られにくく通行の妨げにならない場所で立ち止まってから操作してください。

フリーWi-Fiの利用にも注意が必要です。名称が似ている不審なアクセスポイントに接続してしまうと、通信内容を傍受される危険があります。クレジットカード番号の入力やパスワードの変更など、重要な操作はホテルの信頼できるネットワークか、自身の海外用モバイル通信環境で行うのが安全です。

夜市の屋台でQRコードを読み取って支払いをする旅行者
日常の買い物から交通機関まで、電子決済が社会インフラとして定着しています

AlipayとWeChat Payを安全に使いこなす防犯テクニック

この章の要点
  • 店舗に掲示されたQRコードに偽のシールが貼られていないか確認する
  • 自分の支払いコード(バーコード)を他人に見せたり撮影させたりしない
  • 電子決済が使えない事態に備え、10元・20元などの少額紙幣を予備として持つ

現在の中国では、Alipay(支付宝)とWeChat Pay(微信支付)が決済手段として広く普及しており、屋台での支払いや自販機での飲み物購入にも欠かせません。外国発行のクレジットカードを登録して利用できる環境も整ってきましたが、アプリのダウンロードや本人確認、カードの紐付けは、SMS認証などが必要になるため、必ず日本を出発する前に完了させておきましょう。

便利な電子決済ですが、特有の詐欺手口も存在します。店舗のレジ前やシェアサイクルの車体に掲示されているQRコードの上に、悪意のある第三者が偽のQRコードシールを重ねて貼り付けるという手口です。これを読み取ってしまうと、犯罪者の口座へ送金されたり、個人情報を抜き取る偽サイトへ誘導されたりします。読み取る前に不自然なシールの浮きがないか確認し、決済実行前には画面に表示された店舗名と金額が正しいか必ず確認してください。

注意点:偽札へのすり替え被害

現金を使用する際、100元札などの高額紙幣を店員やタクシー運転手に渡した直後、手元で偽札にすり替えられ、「このお札は偽物だから使えない、別のものを出せ」と突き返される手口があります。これを防ぐには、そもそも高額紙幣の使用を減らし、少額紙幣での支払いを心がけること。そして紙幣を渡す際は相手の手元から絶対に目を離さないことが重要です。

通信障害やアプリの不具合によって決済が完了しない場面も想定されます。人民元は法定通貨であるため現金払いを拒否することは原則として禁じられていますが、小規模な店舗ではお釣りを用意していないことが珍しくありません。トラブルを避けるため、10元や20元といった少額紙幣を常にいくらか持ち歩くようにしてください。

フレーズ
店員:您扫我,还是我扫您?
(Nín sǎo wǒ, háishi wǒ sǎo nín?)
学習者:我扫您吧。
(Wǒ sǎo nín ba.)
日本語訳
店員:お客様が私のコードを読み取りますか、それとも私がお客様のコードを読み取りますか?
学習者:私があなたのコードを読み取ります。
使う場面
レジで電子決済を行う際、支払い方式を確認されたとき。
注意点・誤用例
自分の支払いバーコードを画面に出したまま列に並ぶと、後ろから第三者にスキャンされて不正に引き落とされるリスクがあります。コードの提示は直前に行いましょう。

移動に関するトラブルも、旅行者を悩ませる大きな要因です。次に、悪質なタクシーを避けるための方法を見ていきましょう。

悪質タクシー(白タク)の手口と安全な移動方法

この章の要点
  • 空港や駅の到着口で個人的に声をかけてくる運転手には絶対について行かない
  • DiDiなどの配車アプリを活用し、乗車前にアプリの表示と車両のナンバーを照合する
  • 料金トラブルに備え、降車時は必ず領収書(发票)を受け取る習慣をつける

中国語で無許可営業の車両は「黑车(hēichē)」と呼ばれます。特に空港や長距離鉄道の駅の到着口付近では、「タクシー乗る?」「安く行くよ」と日本語や片言の英語で声をかけてくる客引きがいます。彼らについて行くと、降車時に法外な料金を請求されたり、目的地とは異なる不審な店舗に連れて行かれたり、トランクに入れた荷物を持ち去られたりする危険があります。

タクシーを利用する場合は、案内板の「出租车(タクシー)」の表示に従い、必ず正規のタクシー乗り場から乗車してください。近年は「DiDi(滴滴出行)」などの配車アプリが主流となっており、目的地を事前に設定し、料金の目安もわかるため旅行者にとって非常に便利です。

配車アプリを利用する際の最も重要な確認事項は、「到着した車両のナンバープレート」と「アプリに表示されている車両番号」が完全に一致しているか確かめることです。運転手から「今日は別の車で来た」「アプリの車は故障したからこれに乗れ」と言われても、絶対に乗り込んではいけません。乗車記録が残らない車両での移動は、密室でのトラブル解決を極めて困難にします。

フレーズ
運転手:打车吗?去哪儿?
(Dǎchē ma? Qù nǎr?)
学習者:不用了,我坐正规出租车。
(Búyòng le, wǒ zuò zhèngguī chūzūchē.)
日本語訳
運転手:タクシー乗る?どこ行くの?
学習者:結構です。正規のタクシーに乗ります。
使う場面
空港や駅の到着ロビーで、個人的に声をかけてきた白タクの客引きを断るとき。
注意点・誤用例
曖昧な笑顔で対応すると「交渉の余地がある」と判断され、しつこくつきまとわれます。歩みを止めず、はっきりと拒絶して正規の乗り場へ向かってください。

移動手段だけでなく、観光地での「親しげな声かけ」にも重大な落とし穴があります。次に、悪質なぼったくり被害を避けるための知識を深めましょう。

茶館・バー・マッサージ店の高額請求(ぼったくり)回避法

この章の要点
  • 「日本語を勉強している」「おすすめのお茶がある」といった路上での誘いは詐欺の可能性が高い
  • 見知らぬ人物が指定する店舗(茶館、バー、カラオケなど)には絶対に入らない
  • 断る際は愛想笑いをせず、「不要(要らない)」と明確に伝えてその場を離れる

有名な観光地や繁華街で、流暢な日本語や英語を話す若者から「写真のシャッターを押してくれませんか?」「学生で日本語を勉強しています。文化交流をしませんか?」「近くにとても美味しいお茶を飲める場所があるから一緒に行きましょう」と親しげに話しかけられることがあります。これに応じると、彼らが結託している茶館やバーに案内されます。

店内で楽しく会話をした後、お茶や酒を数杯飲んだだけで、数万円から数十万円に及ぶ法外な料金が記載された伝票を突きつけられます。支払いを拒否しようとすると、奥から複数の屈強な男性が現れ、支払うまで店から出られないよう取り囲まれるという非常に危険な状況に陥ります。

注意点:安全な店舗選びの原則

相手がどれほど身なりが良く、丁寧で親切そうに見えても、路上で出会った見知らぬ人が指定する店舗には絶対に入ってはいけません。飲食店やマッサージ店を利用したい場合は、必ず自分で情報収集し、自分で選んだ店舗に直接向かうことが確実な自衛策です。入店前には料金表を確認し、指名料やサービス料が別途加算されないかもチェックしてください。

見知らぬ人からの誘いは、きっぱりと断ることが重要です。ここでも、毅然とした態度を相手に示すためのフレーズが役立ちます。

フレーズ
不要。我不去。
(Bú yào. Wǒ bú qù.)
日本語訳
要りません。行きません。
使う場面
観光地で不審な人物から茶館やバーへしつこく誘われ、明確に拒否するとき。
注意点・誤用例
日本人は「すみません(不好意思)」と前置きしがちですが、詐欺師に対して丁寧さは不要です。「不要(ブーヤオ)」と短く強い口調で発音し、相手から目を逸らしてその場を歩き去るのが正解です。

ここまでは一般的な旅行者全体に向けた防犯対策でした。続いて、女性の一人旅や小さな子供を連れた家族旅行において、追加で意識すべき独自の安全対策を見ていきましょう。

女性の一人旅・子連れ旅行における独自の安全対策

この章の要点
  • 女性の一人歩きは夜間の路地を避け、配車アプリの待ち時間は明るい建物内で行う
  • 飲食店で自分の飲み物から目を離さず、見知らぬ人からの飲食物は絶対に受け取らない
  • 子供には保護者の連絡先を書いたカードを持たせ、迷子時の集合場所を具体的に決めておく

女性が一人で旅行する場合、大都市の中心部であっても、深夜の人気のない路地や公園、建物内の密室空間は避けるべきです。ナイトスポットやバーを利用する際は、自分のグラスから絶対に目を離さないでください。トイレに立つなどして目を離した飲み物は、睡眠薬などが混入されているリスクを考慮し、手を付けないのが安全です。

ホテル滞在中も、エレベーター内やロビーなどで、自分の部屋番号や一人旅であることを周囲に聞こえるように話すのは危険です。タクシーや配車サービスを待つ際も、暗い路上で立ちんぼをするのではなく、ホテルのロビーや明るい商業施設の中で待機し、車両が到着したのを確認してから外へ出るようにしてください。

子供連れの家族旅行では、迷子対策が最優先課題となります。中国の観光地や駅は想像以上に混雑し、一瞬目を離した隙に人波に飲まれてしまうことがあります。切符の購入や地図の確認で立ち止まる際も、必ず子供と手をつないでおきましょう。

万が一はぐれてしまった場合に備え、子供には保護者の氏名、宿泊先のホテル名と住所、緊急連絡先を記載したカードを持たせておきます。ただし、個人情報が常に外から見える名札のような形ではなく、ポケットの内側やポーチに収納するようにします。子供には「迷子になったら歩き回らず、制服を着た警察官や施設の職員にこのカードを見せる」と繰り返し教えておいてください。

フレーズ
对不起,我找不到我的孩子了。
(Duìbuqǐ, wǒ zhǎo bú dào wǒ de háizi le.)
日本語訳
すみません、私の子供が見つかりません(迷子になりました)。
使う場面
駅や商業施設で子供とはぐれてしまい、警備員や警察官に助けを求めるとき。
発音・ニュアンス
「找不到(ジャオブダオ)」は探しても見つからない状態を表します。このフレーズの後に、子供の年齢や着ている服の色を身振り手振りで伝えると効果的です。

犯罪被害の防止について詳しく見てきましたが、中国旅行では交通事故や法律上の制限など、犯罪以外のリスクも多々存在します。次に、それらの注意事項を確認しましょう。

街中で中国の警察官に道を尋ねる東アジア系の旅行者
現地の法律や規則を遵守し、不明な点は制服を着た職員に確認すると安心です

交通事故・飲食・法律:街頭犯罪以外の重要リスク

この章の要点
  • 右側通行の交通ルールに注意し、無音で接近する電動二輪車に常に警戒する
  • 水道水はそのまま飲まず、市販の密封されたボトルウォーターを利用する
  • 軍事・政府関連施設、港湾・空港の保安区域などでの写真撮影は厳しく罰せられる可能性がある

中国での歩行時は、日本とは逆の「右側通行」であることを常に意識する必要があります。青信号の横断歩道を渡っている最中でも、右左折してくる自動車が遠慮なく進入してくることがあります。また、歩道や自転車レーンを走行する電動二輪車や宅配バイクが非常に多く、これらはエンジン音がしないため背後からの接近に気づきにくく危険です。道路を横断する際は、信号の色だけを信用せず、必ず左右と後方を目視で確認してください。

飲食面でのリスク管理も大切です。水道水は飲用適ではないため、そのまま飲むのは避け、ホテルで提供される飲料水や、コンビニ・スーパーで購入した密封状態のボトルウォーターを使用します。購入した際は、ボトルのキャップ下のリングが切れていないか(未開封か)を確認する習慣をつけましょう。屋台で食事をする際は、客の回転が速く、食材が新鮮な状態で提供されている店を選ぶのが胃腸トラブルを避けるコツです。

注意点:写真撮影の制限と国家安全に関する法律

中国では国家安全やスパイ行為の防止に関する法律が厳格に運用されています。観光目的で悪意が全くない場合でも、軍事施設、政府機関、国境地帯、港湾や空港の保安検査場、警察の活動現場などをスマートフォンで撮影すると、拘束や事情聴取の対象になるおそれがあります。「禁止拍照(撮影禁止)」の表示がある場所は当然ですが、表示がなくても安全保障に関わりそうな場所では絶対にカメラを向けないでください。

また、ホテル以外の場所(知人の家や民泊など)に宿泊する場合、到着後24時間以内に現地の公安機関(警察)へ出向き、「臨時宿泊登記」を行う義務があります。民泊のホストが「手続きは不要だ」と言っても、未登録の滞在が発覚した場合、出国の際にトラブルになったり罰金を科されたりする可能性があるため、事前に登録手順を確実に確認しておく必要があります。

では、これまでに学んだ対策を踏まえ、実際に現地でピンチに陥りそうになったときに役立つ、実践的な中国語フレーズを場面別に総ざらいしましょう。

【場面別】危険・トラブルを回避する必須の中国語フレーズ集

この章の要点
  • 緊急時は複雑な文章を作ろうとせず、短いフレーズで意図を明確に伝える
  • 発音に自信がない場合は、このページをスクリーンショットして画面を指差す
  • 「丢了(失くした)」と「被偷了(盗まれた)」を正しく使い分ける

いざというとき、慌てて長文を組み立てようとしても言葉は出てきません。短く、相手に誤解を与えないフレーズを覚えておくことが最大の防御となります。以下に、状況別の必須フレーズをまとめました。

【緊急・助けを求める】
请帮帮我。 (Qǐng bāngbang wǒ.)
・日本語訳:助けてください。
・使う場面:道に迷った、体調が悪くなったなど、周囲の人に援助を求めるとき。

请报警。 (Qǐng bàojǐng.)
・日本語訳:警察を呼んでください。
・使う場面:事件に巻き込まれた、重大な被害に遭ったとき。

请叫救护车。 (Qǐng jiào jiùhùchē.)
・日本語訳:救急車を呼んでください。
・使う場面:急病や大きなケガで、一刻も早い医療措置が必要なとき。

【紛失・盗難を伝える】
我的护照丢了。 (Wǒ de hùzhào diū le.)
・日本語訳:パスポートをなくしました。
・注意点:「丢了(失くした)」は自分の不注意で落としたり置き忘れたりしたニュアンスです。

我的手机被偷了。 (Wǒ de shǒujī bèi tōu le.)
・日本語訳:スマートフォンを盗まれました。
・注意点:「被偷了(盗まれた)」は明確に犯罪被害に遭ったことを示します。警察への被害届を作成する際、単なる紛失か盗難かで扱いが変わるため、正確に使い分けてください。

【タクシー・料金トラブル】
这个价格不对。 (Zhège jiàgé bú duì.)
・日本語訳:この金額は正しくありません。
・使う場面:タクシーのメーターが不当に高い、店舗で法外な請求をされたとき。

请给我发票。 (Qǐng gěi wǒ fāpiào.)
・日本語訳:領収書(レシート)をください。
・使う場面:タクシー降車時や、後でトラブルになった際の証拠として要求するとき。これを言うことで相手への牽制にもなります。

【確認・許可をとる】
这里可以拍照吗? (Zhèlǐ kěyǐ pāizhào ma?)
・日本語訳:ここで写真を撮ってもいいですか?
・使う場面:美術館内、商業施設、警備員がいる場所などで、撮影の可否が不明なとき。

もし、細心の注意を払っていたにもかかわらず、トラブルに巻き込まれてしまったらどうすればよいのでしょうか。最後に、被害直後の正しい行動手順を見ていきましょう。

被害に遭ってしまった場合の緊急対応マニュアル

この章の要点
  • スマホ紛失時は、まず遠隔ロックと通信・決済の利用停止を最優先に行う
  • パスポート紛失時は、現地の警察(派出所)で事案発生証明を必ず取得する
  • 強盗などの被害に遭った場合は、無理に抵抗せず自身の生命と安全の確保を最優先とする

スマートフォンを盗まれた、あるいは紛失したと気づいた場合、パニックにならずに初動対応を行うことが傷口を広げないための鍵です。まずは同行者の端末やホテルのパソコンを借りて、自分のアカウントから端末の位置確認と遠隔ロック・データ消去を実行してください。次に、契約している日本の通信会社に連絡して回線を停止し、クレジットカード会社や決済アプリのサポート窓口にも利用停止を依頼します。その後、最寄りの派出所へ出向き、被害届を出して証明書を発行してもらいます。

パスポートを紛失・盗難された場合の手続きは、少し複雑で日数を要します。以下の順序で手続きを進めるのが一般的です。

1. 最寄りの派出所(警察)で「事案発生証明」を取得する。
2. 公安局の出入境管理部門へ行き、「パスポート紛失証明」を取得する。
3. 日本大使館または総領事館へ連絡し、事情を説明する。
4. 大使館等で「新しいパスポート」または「帰国のための渡航書」を申請する。
5. (渡航書等の発行後)再び公安局出入境管理部門へ行き、出国に必要なビザ(査証)や滞在許可の手続きを行う。

これらの手続きには、パスポートのコピーや証明写真が必要になります。渡航前に紙のコピーと予備の写真を準備し、原本とは別のバッグに入れておくことで、手続きをスムーズに進めることができます。

もし、夜道で刃物などで脅される強盗や、身体的な危険に遭遇した場合は、金品を守ろうとして無理に抵抗してはいけません。要求された現金やバッグは手放し、自身の生命と身体の安全を最優先してください。犯人が立ち去った後、速やかに明るく安全な場所(ホテルや24時間営業の店舗など)へ移動し、現地の緊急番号「110(警察)」へ通報します。ケガをしている場合は「120(救急)」も呼びます。中国語での状況説明が困難な場合は、ホテルのフロントスタッフなどに通報と通訳を依頼するのが確実です。

中国では本当に現金が一切使えないのですか?

人民元の現金そのものが使用禁止になっているわけではありません。法定通貨であるため、建前上はどこの店舗でも受け取る義務があります。しかし、日常の決済の9割以上が電子決済に移行しているため、小さな屋台やタクシーでは「お釣りがない」「偽札の確認が面倒」という理由で受け取りを渋られることがあります。電子決済をメインにしつつ、お釣りが出ないよう10元や20元の少額紙幣を予備として持っておくのが最も現実的です。

夜間の一人歩きは絶対に避けるべきですか?

エリアによって異なります。上海の外灘や北京の王府井など、夜でもネオンが明るく観光客や警察官が多数いる大通りであれば、夜間でも過度な心配は不要です。しかし、そこから一本裏に入った薄暗い路地や、人通りの途絶えた郊外の公園などは犯罪リスクが高まります。夜遅くにホテルへ戻る場合は、徒歩ではなくDiDiなどの正規配車サービスを利用し、ドア・ツー・ドアで移動することをおすすめします。

タクシーで高額な料金を請求されたらどうすればいいですか?

車内で運転手と激しく口論するのは、密室であり相手のテリトリーであるため危険です。まずは安全な人目のある場所(ホテルの前など)まで移動し、そこから降りることを優先します。支払う前に「发票(ファーピャオ=領収書)」を必ず要求し、車両のナンバープレートの写真を撮ってください。ホテルに到着後、スタッフに事情を説明して警察やタクシー会社へのクレームを代行してもらうのが安全な解決方法です。

写真撮影をしてもよい場所かどうか、見分けるコツはありますか?

「禁止拍照」という標識があれば絶対に撮影してはいけません。標識がなくても、軍事施設、警察車両、国境付近の検問所、空港の保安検査場などは世界共通で撮影NGと考えるべきです。もし制服を着た職員や警備員から撮影をやめるよう注意されたら、反論したり「もう一枚だけ」と粘ったりせず、すぐにカメラを下ろして謝罪してください。迷った場合は「这里可以拍照吗?(ここで写真を撮ってもいいですか?)」と事前に確認するのが確実です。

中国の緊急電話番号を教えてください。

中国国内の緊急通報番号は、警察が「110」、救急車が「120」、消防が「119」、交通事故が「122」です。日本の110番や119番と似ていますが、救急車が120番である点に注意が必要です。通話は中国語での対応となるため、自分で説明が難しい場合は周囲の中国人やホテルのスタッフに「请帮帮我(助けてください)」と声をかけ、代わりに通報してもらうのがスムーズです。