中国滞在中や旅行先で急に体調を崩し、現地の薬局に駆け込んだ際、「中国の薬は日本の薬よりも成分が強すぎるのではないか」「体に負担がかかるのではないか」と強い不安を感じた経験はないでしょうか。見慣れない簡体字がぎっしりと並ぶパッケージを前にして、何を基準に安全な薬を選べばよいのか分からず、立ち尽くしてしまうのはごく自然な反応です。

しかし、中国の医薬品を一括りに危険だと決めつける必要はまったくありません。現地には、現代の西洋医学に基づく薬から、歴史ある伝統的な中医学の薬まで多種多様な選択肢が存在し、国家機関による厳格な分類・管理制度も整えられています。正しい薬の基礎知識と、薬局で最低限のやり取りができる語学力さえあれば、現地でも落ち着いて自分の症状に合った薬を判断できます。現地の言語表現を体系的に身につけたい方は中国語教室で医療や生活場面の会話をあらかじめ練習しておくと、いざというときの非常に心強い備えになります。

本記事を最後までお読みいただければ、薬の分類方法から、日本でおなじみの名称に似た商品の実態、安全な購入場所の見分け方、パッケージの正しい読み方、そして薬局の店頭でそのまま使える実践的な中国語フレーズまで、不安を解消するためのあらゆる知識が身につきます。では、中国の薬の効き目について囁かれる噂の真相から、一つずつ順を追って読み解いていきましょう。

中国の薬は本当に「強い」のか?効きすぎると感じる理由の正体

この章の要点
  • 中国の薬が一律に強いわけではなく、成分の複合や剤形による感じ方の違いが大きい。
  • 症状の自然経過や、眠気などの副作用を「効き目」と錯覚しているケースがある。
  • 作用が強い薬を安易に選ぶことは、内臓への負担や副作用のリスクを高める。

旅行者や駐在員の間では、「中国で飲んだ薬が驚くほど劇的に効いた」「日本の薬よりも成分量が無制限に多いのではないか」という体験談がまことしやかに語られることがあります。しかし結論から言えば、中国の市販薬が国全体として日本の薬より危険なほど強いという事実はありません。効き目が強いと感じる背景には、薬の複合成分による相乗効果や、個人の体調など複数の要因が複雑に絡み合っています。

服用したときに効き目が鋭いと感じる主な要因の一つに、成分の組み合わせがあります。たとえば鎮痛成分にカフェインなどの補助成分が配合されている場合、単一成分の薬を飲むよりも痛みの引きが早く、より強力に感じられることがあります。また、1錠あたりの含有量や1日の上限回数は製品ごとに緻密に設計されており、同じ成分であっても「1回2錠」なのか「1回1錠」なのかで体内に入る摂取量は大きく変わります。

さらに、風邪や一時的な腹痛がピークに達したタイミングで薬を服用し、それがちょうど体の自然な回復期と重なったことで「薬のおかげで一気に治った」と強く認識されるケースも多々あります。抗ヒスタミン成分による強い眠気や口の渇きといった副作用を「薬が強力に作用している証拠」と脳が受け取り、効果の印象が増幅されている事例も少なくありません。

薬の本来の役割は、安全な範囲内で身体の自己回復力を補助することにあります。必要以上に強い作用を求めることは、肝臓や腎臓への負担を無意味に増やし、アレルギーや副作用のリスクを高めることと同義です。症状を力づくで抑え込むのではなく、原因と体調に見合った適切な強さの薬を選ぶという発想が、結果的に最も早い回復につながります。では、中国にはどのような種類の薬が存在するのでしょうか。

西洋医学と伝統医学の融合:西薬・中薬・中成薬の明確な違い

この章の要点
  • 中国の薬は、西洋医学に基づく「西薬」と伝統医学に基づく「中薬」に大別される。
  • 中成薬は生薬を飲みやすく加工したもので、定番品が広く流通している。
  • 日本の「漢方」と中国の「中医学」はルーツが同じでも処方の考え方が異なる。

中国で流通している医薬品を正しく理解するための第一歩は、薬の体系が大きく二つに分かれているという事実を知ることです。それが「西药(西薬)」と「中药(中薬)」という区分です。現地の薬局では棚やコーナーごとにこの表示が明確に出ているため、それぞれの性格をあらかじめ把握しておくと、目的の薬にたどり着くまでの時間が大幅に短縮されます。

西药(xīyào/シーヤオ)は、近代的な西洋医学の理論に基づいて開発・製造された医薬品全般を指します。解熱鎮痛薬、風邪薬、抗生物質、胃腸薬、アレルギー用薬など、日本のドラッグストアや病院で処方・販売されているものと全く同系統の医薬品が含まれます。使われている化学成分(一般名)の多くは日本や国際的に用いられているものと共通しており、アセトアミノフェン(对乙酰氨基酚)やイブプロフェン(布洛芬)などがその代表例です。ただし、同じ化学成分だからといって含有量や用法が日本と同一とは限らないため、個別の確認が必須です。

一方の中药(zhōngyào/ジョンヤオ)は、中国の伝統医学の理論に基づいて処方される薬の総称です。植物の根茎、鉱物、動物由来の素材などの生薬を組み合わせたもので、現代の薬局ではこれらを飲みやすく錠剤や顆粒に加工した中成药(zhōngchéngyào/ジョンチョンヤオ)が広く流通しています。喉の違和感に用いられる「板蓝根颗粒」、暑気あたりに使われる「藿香正气水」、咳や痰に用いられる「川贝枇杷膏」などは、日本人旅行者にもなじみのある定番品です。

ここで注意すべきは、日本で習慣的に使われる「漢方薬」と中国の「中医学」は同じものではないという点です。日本の漢方は独自の進化を遂げ、決まった配合の処方から選ぶ「方証相対」が主流ですが、中国の中医学は患者の細かな状態に合わせて生薬を加減する「弁証論治」を根幹とします。同じ漢字名の処方でも配合比率が異なることがあるため、自己判断ではなく専門家の意見を仰ぐことが重要になります。次に、日本人に馴染み深い名前に似た薬の実態について見ていきます。

木製のカウンターの上に置かれた様々な中国の薬のパッケージ、西洋薬の箱、伝統的な生薬のクローズアップ
薬局には西洋薬と伝統的な中成薬が並んで配置されています

日本でおなじみの名前に似た薬の実態:百服宁や散利痛の正しい知識

この章の要点
  • 海外ブランドが中国市場に参入する際、音と意味を組み合わせた漢字名が付けられる。
  • 「百服宁(バファリン風)」はアスピリンではなくアセトアミノフェンが主成分であることが多い。
  • 「散利痛(サリドン風)」はアセトアミノフェンとピリン系成分の複合処方でありアレルギーに注意。

中国の薬局を訪れると、日本のドラッグストアでよく目にする商品名と非常によく似た響きを持つ薬品に出会うことが多々あります。これは海外ブランドが中国市場へ参入する際、元の発音に似せながら、薬としての効果や好印象を連想させる漢字を巧みに当てはめる文化があるためです。音と意味を同時に担わせるこの手法は非常に優れていますが、消費者にとっては成分の誤認を招くリスクも孕んでいます。

代表的な例が「百服宁(bǎifúníng/バイフーニン)」です。これは日本でも知名度の高い「バファリン」に近い音を持つ製品名です。漢字には「多くの人(百)が服用(服)して穏やか(宁)になる」という前向きな意味が込められています。しかし、日本のバファリンAがアスピリンを主成分とするのに対し、中国の百服宁シリーズはアセトアミノフェンを主成分とするものが大半を占めます。響きが近くても中身の化学成分が全く異なる典型的なケースです。

もう一つの代表例である「散利痛(sǎnlìtòng/サンリートン)」は、「サリドン」に近い響きを持つ解熱鎮痛薬です。「痛み(痛)を効果的(利)に散らす(散)」という明確な意味を持ちます。一般的な散利痛は、アセトアミノフェンとピリン系成分(イソプロピルアンチピリン)の複合処方となっています。日本の「サリドンA」とは成分構成が異なり、ピリン系成分にアレルギー歴がある人は絶対に避ける必要があります。名前の親しみやすさだけで手に取ると、思わぬ落とし穴に突き当たることになります。

他にも、総合感冒薬の「泰诺(tàinuò)=タイレノール系」や、昼用と夜用で成分が異なる「白加黑(昼用の白錠と夜用の黒錠)」など、機能や音を漢字に落とし込んだ製品が多数存在します。これらを安全に使用するためには、ブランド名ではなく成分表示を確認する知識が不可欠です。続いて、中国の医薬品そのものを管理する国の制度について見ていきましょう。

中国の医薬品管理制度:OTC(甲類・乙類)の確実な見分け方

この章の要点
  • 中国の医薬品は国家機関により厳格に審査・承認され、管理されている。
  • 非処方薬(OTC)は安全性の高さに応じて「赤色の甲類」と「緑色の乙類」に分かれる。
  • 抗生物質は原則として処方薬であり、薬局で自由に購入することはできない。

一部の旅行者の間には「中国では薬の安全基準が曖昧なのではないか」という不信感を持つ人もいますが、実際には「国家薬品監督管理局(NMPA)」という国家機関が医薬品の審査・承認、製造・流通の監督を厳格に行っています。処方薬と非処方薬の明確な区分、パッケージ表示の厳格なルール、そして承認番号の付与といった枠組みは、法制度としてしっかりと確立されています。

薬局で処方箋なしに購入できる一般用医薬品は「非处方药(fēichǔfāngyào)」と呼ばれ、パッケージに大きく「OTC」のマークが印字されています。さらに、このOTCマークは安全性の評価や販売要件に応じて二つの色に色分けされています。赤色のマークは甲類非処方薬を示し、相対的に注意が必要な医薬品であるため、薬剤師や管理担当者の指導のもとで購入・服用することが想定されています。

一方、緑色のマークは「乙類非処方薬」を示します。こちらは甲類よりもさらに安全性が高く、副作用のリスクが低いとされる医薬品です。条件を満たした一般のスーパーや小売店などでも取り扱いが許可される場合があります。旅行者やセルフケア初心者が現地の薬局で薬を選ぶ際は、この緑色のOTCマークが一つの安心度の目安として大いに役立ちます。ただし、緑色であっても副作用が完全にゼロというわけではないため、用法用量の遵守は絶対条件です。

また、かつては窓口で気軽に買えた抗生物質(抗生素)も、現在では耐性菌対策の抜本的な強化により処方薬として厳重に管理されています。薬局での販売にも処方箋の確認が求められるのが原則です。「風邪をひいたから念のため抗菌薬を飲んでおこう」という考え方はウイルス性の風邪には全くの的外れであり、耐性菌を育てる要因にしかなりません。では、こうした薬を安全に購入するには、街のどこへ向かえばよいのでしょうか。

中国で薬を安全に購入する場所:薬店とドラッグストアの決定的な違い

この章の要点
  • 中国で医薬品を買う場合は、緑十字の看板を掲げた「药店」「药房」を探す必要がある。
  • ワトソンズなどのドラッグストアは日用品中心であり、医薬品は扱っていないことが多い。
  • 近年は生活サービスアプリを通じた医薬品の配達サービスも広く普及している。

日本人が中国で薬を買おうとしたとき、意外な落とし穴となるのが販売チャネルの構造的な違いです。日本ではマツモトキヨシなどのドラッグストアが薬の主な購入先として定着していますが、中国では事情が根本的に異なります。中国で医薬品を探す場合は、看板に「药店(yàodiàn)」または「药房(yàofáng)」と表記されている専門店を探す必要があります。

街角や大病院の周辺、住宅街の一階などに緑十字の看板を掲げた店が点在しており、これが正規の薬局の目印です。都市部では「24小时(24時間営業)」の表示がある店舗も存在します。滞在先のホテル周辺で最寄りの药店をあらかじめ地図アプリで確認しておくと、深夜や休日に突然体調を崩したときにも慌てずに行動できます。「屈臣氏(Watsons)」や「萬寧(mannings)」といったチェーン店は日本のドラッグストアに近い外観をしていますが、扱っているのはシャンプー、コスメ、サプリメントなどの日用品が中心であり、本格的な医薬品は置いていないことがほとんどです。

また近年、中国では「美团(Meituan)」などの生活サービスアプリに医薬品購入の専門窓口が設けられ、提携する薬局から短時間で自宅やホテルにデリバリーしてもらう方法が日常的に使われています。高熱で一歩も外に出られないような状況では極めて有効な選択肢となります。ただし、アプリ経由では実物のパッケージを手にとって確認する前に注文が確定してしまうため、成分名や剤形の中国語表記を正確に把握しておくことが前提となります。次に、その要となるパッケージ表記の読み方を見ていきましょう。

清潔な薬局で、スマートフォンの画面を見ながら薬剤師に症状を伝えている学習者
スマートフォンのメモや翻訳アプリを活用すれば的確に症状を伝えられます

安全性を高めるパッケージ表記の正しい読み方

この章の要点
  • パッケージ表面の宣伝文句ではなく、裏面の正式な成分表示を必ず確認する。
  • 「成分」「规格」「用法用量」の3点は、自分の身を守るための最重要項目である。
  • 正規の医薬品には必ず「国药准字」から始まる承認番号が記載されている。

現地で薬を手に取った際、最も重要になるのは箱の表面に大きく書かれた宣伝文句に惑わされないことです。裏面や側面に細かく印字されている正式な成分表示と注意書きを熟読する癖をつけることこそが、最大の安全対策となります。読むべき項目は法律で明確に定められており、以下の5つのポイントを順番にたどるだけで十分な情報を得ることができます。

第一に「药品名称(yàopǐn míngchēng)」です。ここには商品ブランド名と、その下に小さく記載されている一般名の両方が書かれています。「复方(fùfāng)」という文字が含まれている場合、それは複数の有効成分を配合した複合薬であることを意味するため、他の風邪薬や鎮痛薬との成分重複に強い警戒が必要です。第二に「成分(chéngfèn)」と「规格(guīgé)」です。含まれる化学成分名や生薬名と、1錠(または1包)中の配合量(mg)が明記されています。過去にアレルギーが出た成分が含まれていないかをここで確実にチェックします。

第三に、絶対に守るべき「用法用量(yòngfǎ yòngliàng)」です。1回の服用数(片=錠、粒=カプセル)、1日の服用回数、食前(饭前)か食後(饭后)かといった詳細が書かれています。日本の薬の感覚で自己流の飲み方を当てはめるのは極めて危険です。第四に「不良反应・禁忌・注意事项」の欄です。不良反应は副作用、禁忌は服用してはいけない条件、注意事项は服用中の禁止事項を表します。「孕妇(妊婦)」や「儿童(子ども)」といった語句があれば、該当しないか慎重に確認します。

最後に「批准文号(pīzhǔn wénhào)」です。国家の厳正な審査を経て承認を受けた正規の医薬品には、必ず「国药准字+アルファベット+8桁の数字」という承認番号が記載されています。この番号が見当たらない製品は正規の医薬品ではない可能性が高いため、露店やノーブランドの怪しい通販サイトでの購入は避けるのが賢明です。パッケージが読めるようになったところで、次は実際の服用に伴う重大なリスクについて確認しましょう。

重大な健康被害を防ぐ:中国の薬を服用する際の5つの厳重注意

この章の要点
  • 総合風邪薬と鎮痛薬の併用によるアセトアミノフェンの過剰摂取が最も危険。
  • 薬の代謝を妨げ、内臓に深刻なダメージを与えるため服用中の飲酒は厳禁。
  • 症状が改善しない場合は漫然と薬を飲み続けず、速やかに医療機関を受診する。

親しみやすい名称や緑色のOTCマークがついていたとしても、それらが実際の医薬品であることに変わりはありません。誤った飲み方をすれば、深刻な健康被害に直結します。特に旅行中や出張中は体力が低下しており、普段よりもリスクが高まるため、以下の厳重な注意点を必ず守ってください。

注意点

最も警戒すべきはアセトアミノフェンの重複摂取です。散利痛や百服宁を頭痛薬として飲みながら、同時に総合風邪薬を服用すると、双方に含まれるアセトアミノフェンが合算され、1日の安全な許容量を容易に超えてしまいます。過量投与は重篤な急性肝機能障害を招き、最悪の場合は命に関わる危険があります。

服用期間中の飲酒も絶対に避けるべき行為です。アルコールは薬の代謝プロセスを著しく妨げ、胃粘膜への強烈な刺激や肝臓への深刻な負担を増大させます。接待や会食が連日続く出張中は特に気が緩みがちですが、薬を飲む日と飲酒の兼ね合いは厳格にコントロールしてください。また、薬の連用にも明確な上限が定められています。一般的に、自己判断で飲み続けるのは解熱目的なら3日、鎮痛目的なら5日が限度です。

数日経過しても症状が改善しない、あるいは突然の激しい頭痛、胸の圧迫感、高熱が下がらないといった異常なサインが現れた場合は、もはや市販薬で様子を見る段階を完全に超えています。直ちに120番(中国の救急車)を呼ぶか、大病院の救急外来を受診してください。都市部には日本語対応が可能な国際病院もあるため、渡航前に連絡先をスマートフォンのアドレス帳に登録しておくことが何よりの危機管理となります。それでは、実際に薬局に赴いた際に使える中国語の表現を学んでいきましょう。

薬局でそのまま使える実践会話フレーズ集:症状・要望を的確に伝える

この章の要点
  • 自分の具体的な症状と発症時期を伝えることで、薬剤師が的確な薬を選びやすくなる。
  • 眠気の有無や処方箋の必要性など、購入前に確認すべき重要フレーズをマスターする。
  • 発音に自信がない場合は、スマートフォンに打ち込んで画面を見せる方法が確実。

体調が悪い最中に、外国語で複雑な症状を伝えるのは精神的にも肉体的にも大きな負担となります。しかし、定型的な表現をいくつか覚えておくだけで、現場でのやり取りは驚くほどスムーズになります。ここでは、薬局のカウンターで店員に直接話しかけることを想定した、最も実用的な会話フレーズを場面別にお伝えします。

フレーズ
我头疼,发烧了。症状从昨天开始。
(Wǒ tóuténg, fāshāo le. Zhèngzhuàng cóng zuótiān kāishǐ.)
日本語訳
頭が痛くて熱があります。症状は昨日から始まりました。
使う場面
学習者が薬局の店員(薬剤師)に対して、風邪の初期症状を伝える最も基本的な場面。
注意点・誤用例
「从昨天开始(昨日から)」のように発症時期を明確に伝えないと、慢性的な病気と勘違いされる可能性があります。
発音・ニュアンス
「头疼(tóuténg)」の「疼」は上昇する2声でしっかりと発音し、痛みを訴えるニュアンスを持たせます。
フレーズ
我肚子疼,一直拉肚子。
(Wǒ dùzi téng, yìzhí lā dùzi.)
日本語訳
お腹が痛くて、下痢が続いています。
使う場面
食あたりや水質の違いなどで、急激な胃腸の不調に見舞われたときに胃腸薬や下痢止めを求める場面。
注意点・誤用例
便秘(便秘:biànmì)と下痢(拉肚子)は正反対の症状なので、単語を間違えないよう注意が必要です。
発音・ニュアンス
「一直(yìzhí)」を強調することで、症状が一時的なものではなく継続して苦しんでいる状況を的確に伝えられます。
フレーズ
有没有不犯困的药?我在吃别的药,可以一起吃吗?
(Yǒu méiyǒu bù fànkùn de yào? Wǒ zài chī bié de yào, kěyǐ yìqǐ chī ma?)
日本語訳
眠くなりにくい薬はありますか? 他の薬を飲んでいますが、一緒に飲めますか?
使う場面
仕事や運転の予定があり副作用を避けたいとき、また持病の薬を常用している学習者が安全性を確認する場面。
注意点・誤用例
「一起吃(一緒に食べる・飲む)」と聞く際は、実際に自分が飲んでいる薬のパッケージや処方箋を必ず店員に提示してください。
発音・ニュアンス
「不犯困(bù fànkùn)」は日常的によく使われる表現で、直訳すると「眠気を犯さない」となり、眠気成分なしを指定する便利な言葉です。

こうした中国語のフレーズをいくつか知っておくだけで、いざという時の安心感は大きく変わります。しかし、可能であれば薬局に頼る事態は避けたいものです。そこで最後に、日本からの持参ルールと、中国から持ち帰る際の法的な規定について整理しておきましょう。

日本から常備薬を持参・中国から持ち帰る際のルールと準備

この章の要点
  • 体質に合わないリスクを避けるため、飲み慣れた日本の常備薬を持参するのが最も確実。
  • 持参する際は、成分証明のため外箱や説明書を絶対に捨てずに同梱しておくこと。
  • 中国で購入した薬を日本へ持ち帰る場合、内服薬は用法用量換算で2ヶ月分以内が原則。

現地で薬を買う手段や中国語のフレーズを知っておくことは危機管理として極めて重要ですが、それ以前の基本として、飲み慣れた常備薬を日本から持参するほうが、体質に合わないリスクを回避できるという意味で最も確実な防衛策となります。解熱鎮痛薬、胃腸薬、下痢止め、絆創膏などを小分けポーチにまとめておけば、深夜の急な体調不良にも即座に対応できます。

持参する際の鉄則は、成分が確認できるように外箱や添付文書(説明書)を絶対に捨てず、薬と一緒に保管しておくことです。荷物を減らすために中身のシートだけを別容器に移し替えると、入国時の税関や現地の医療機関で中身の説明ができず、大きなトラブルの原因になります。医師の処方薬を携行する場合は、英文または中文で書かれた薬剤情報提供書の控えを用意しておくと、現地で受診したときに医師との情報共有が格段にスムーズに進みます。

逆に、中国の現地で買って余った薬や、自分用に持ち帰りたい優れた中成薬などがある場合は、日本の厚生労働省が定める厳格な医薬品の個人輸入ルールに従う義務があります。一般用医薬品(内服薬)の個人持ち帰りは、あくまで自分が使用する目的であり、標準的な用法用量に換算して2ヶ月分以内であれば、特別な輸入確認の手続きなしで持ち込むことが認められています。

ただし、日本国内で正式な承認を受けていない海外医薬品を服用して予期せぬ健康被害が生じた場合、日本の公的な「医薬品副作用被害救済制度」の補償対象外となってしまいます。この点は万が一の際の費用面でも決定的な差になるため、持ち帰りは本当に必要な最小限の分量にとどめ、他人への譲渡や転売は法律違反となるため絶対に避けてください。次に、こうした知識を定着させるための継続的な学習計画を提案します。

机の上に開かれた中国語の医療関連の学習ノート、ペン、お茶のカップ
日々の継続的な学習がいざという時の大きな力になります

独学でつまずかないための医療中国語・継続学習カレンダー

この章の要点
  • 医療関連の語彙は一度に丸暗記せず、曜日ごとにテーマを絞って反復練習する。
  • 声に出す音読練習と、簡体字の視覚的な確認を必ずセットで行う。
  • 独学の限界を感じたら、プロのフィードバックを受けて正しい発音を定着させる。

旅行や駐在に向けて医療関連の専門的な語彙を身につける際、焦って一度にすべてを丸暗記しようとすると、記憶が定着しにくく挫折の原因になります。人間の脳は反復によって情報を定着させるため、1週間単位で無理のない範囲に区切り、声に出す練習とパッケージの簡体字の確認をセットにして進めるのが最も効率的です。

例えば、月曜日は「体の部位と基本的な痛みの表現(头疼、肚子疼など)」に集中し、自分のどこが痛いかを正確に声に出して言えるようにします。火曜日は「風邪や消化器の症状(发烧、咳嗽、拉肚子など)」を取り上げ、具体的な症状を3つ以上組み合わせて表現する練習をします。水曜日は「主要な成分名とパッケージ用語(成分、规格、用法用量など)」の読み取りに特化し、実際の薬の箱の画像をインターネットで検索しながら重要箇所を瞬時に認識する訓練を行います。

木曜日は「薬局での質問フレーズ(一天吃几次?会困吗?)」をロールプレイ形式で練習し、金曜日は「アレルギーや持病を伝える表現(过敏、怀孕など)」で自分特有の注意点を的確に提示できるよう備えます。そして週末の土日を使って、これまでの全フレーズを通しで総復習し、つまらずに会話の流れを再現できるかを確認します。この小さなサイクルを回すだけで、実戦での対応力は見違えるように向上します。

しかし独学では、自分の声調(四声)が正しく相手に伝わるレベルなのか、言い回しが不自然ではないかを自分で客観的に判断しづらいという壁に必ず直面します。発音の微妙な癖や語順の揺れを正確に修正したい段階に入ったら、ネイティブ講師の個別レッスンを並行して活用することが飛躍の鍵となります。プロの細やかなフィードバックを受けておくと、いざ自分が体調を崩して頭が回らない緊急事態であっても、必要な情報を落ち着いて正確に伝えられる強靭な地力が育ちます。

Q&Aコーナー

中国の薬は日本の薬より成分量が制限なく多いというのは本当ですか。

制限なく多いということはありません。中国にも国家薬品監督管理局(NMPA)の厳格な基準が存在し、成分ごとに上限規格が定められています。ただし製品によって配合量や1回の服用数が日本の標準と異なる場合があるため、パッケージの「成分・规格」欄と「用法用量」を必ずご自身で確認してください。

「百服宁」は日本のバファリンAと同じ成分ですか。

同じではありません。日本のバファリンAはアスピリンを主成分としていますが、中国の百服宁の多くはアセトアミノフェンを主成分とする解熱鎮痛薬です。名前の響きが似ていても化学成分が根本的に違うため、特定成分にアレルギー歴がある人は特に注意が必要です。

中国の薬局で「OTC」マークがついている薬は処方箋なしで買えますか。

はい、非处方药(OTC)のマークが印字されている製品は医師の処方箋なしで購入可能です。OTCには赤色の甲類と緑色の乙類があり、緑色のほうがより安全性が高い区分とされています。抗生物質などは処方薬として扱われるため、店頭で自由に買うことはできません。

中国のドラッグストアで風邪薬は買えますか。

一般的には買えません。屈臣氏(Watsons)などのドラッグストアは日用品やコスメ、サプリメントが中心であり、本格的な医薬品は「药店」「药房」の表示がある専門の薬局で購入します。外出が難しい場合は、生活サービスアプリの医薬品配達を利用するのも有効な手段です。

薬局で中国語がうまく話せない場合、どうすればよいですか。

症状と欲しい薬の種類を簡体字でメモに入力し、スマートフォンの画面や紙で見せる方法が最も確実です。買いたい薬がすでに決まっている場合は、パッケージの画像をそのまま見せると誤解が生じません。「一天吃几次?(1日何回ですか)」「会困吗?(眠くなりますか)」の2フレーズを覚えておくだけでも安心感が大きく違います。