中国語のニュースを読んだり、現代ドラマを見たりしていると、若者の働き方や就職に関する話題が頻繁に登場することに気づくかもしれません。しかし、単語の表面的な意味は分かっても、「なぜその仕事が人気なのか」「どのような社会背景があるのか」が見えずに戸惑うことはありませんか。

中国の若者は、どのような仕事に憧れ、何を基準に進路を選んでいるのでしょうか。実は、中国の職業選択には、単なる収入の多寡や業務内容だけでは測れない、非常に複雑で特有の価値観が絡み合っています。個人の能力発揮、家族からの承認、社会的な信用、そして景気後退時にも雇用を守れるかといった要素が、人気の進路を大きく左右しているのです。

かつては、爆発的な成長を遂げるインターネット企業や電子商取引(EC)企業、あるいは若くして成功を収める起業家が脚光を浴びていました。しかし近年、激しい就職競争や経済の不確実性が意識されるようになるにつれ、公務員、国有企業、公立学校、公立病院といった「体制内(公的な枠組みの中)」へ熱い視線を送る若者が急増しています。とはいえ、すべての若者が保守的になったわけではありません。安定した本業を持ちつつ副業でリスクを分散する人や、動画制作など新時代の職種で自由を手にする人もいます。

この記事では、中国の若者に人気の職業ランキングを読み解きながら、現代中国の社会構造と仕事観を深く掘り下げていきます。同時に、就職や働き方に関連する実践的な中国語の語彙・フレーズも豊富に見ていきましょう。社会背景と生きた中国語をセットで学ぶことで、あなたの語学力は一段と深みのあるものになるはずです。もし、こうしたリアルなテーマでネイティブ講師と会話練習をしてみたい場合は、実践的な指導が受けられる中国語教室を活用するのも有効な手段です。

それでは早速、若者たちが憧れる職業のランキングの裏側に隠された、彼らの切実な想いと価値観から見ていきましょう。

中国の人気職業ランキングから読み解く若者の3大価値観

この章の要点
  • 若者に人気の職業の上位は「医師」「教師」「インターネット業界」。
  • 職業選択の基準は「社会的信用」「成長性と高収入」「雇用の安定」の3つに大別される。
  • 安定を求めるだけでなく、起業など「能力で収入を増やす」志向も根強い。

中国の若者がどのような職業に憧れているのかを知ることは、現代社会の縮図を覗き込むことでもあります。中国青年報社会調査センターの調査データなどを基にすると、若者の支持を集める職業の顔ぶれと、そこに秘められた「安定か挑戦か」という葛藤が浮き彫りになります。

調査によると、憧れの職業のトップ層には「医師(43.9%)」や「教師(38.9%)」がランクインしています。次いで、「インターネット業界(37.3%)」「電子商取引(EC)(34.9%)」「技術者(34.7%)」と続き、「公務員(32.6%)」「起業者(26.0%)」なども上位に入っています。

もちろん、このランキングは調査対象の年齢、居住地域(大都市か地方か)、学歴、経済状況によって変動します。しかし、この顔ぶれから中国の若者が仕事に求める「3つの重要な価値観」を明確に読み取ることができます。それは以下の通りです。

  • 医師や教師に代表される「社会的信用(メンツ)」
  • インターネット・EC・技術職に代表される「成長性と高収入」
  • 公務員に代表される「雇用と生活の安定」

ここで注目すべきは、公務員のような堅実な道が上位にある一方で、起業家も8位に食い込んでいる点です。つまり、中国の若者の仕事観は単純な「全員が安定志向」ではなく、自分の能力を武器に大きく稼ぎたいという野心と、組織に守られたいという安心感への欲求が複雑に混ざり合っているのです。

では、なぜ「医師」や「教師」がこれほどまでに強い支持を集めるのでしょうか。次はその背景にある中国特有の家族観について見ていきましょう。

医師と教師が圧倒的に支持される「社会的地位」と「家族の顔」

この章の要点
  • 医師や教師は高度な専門性が必要であり、社会生活に不可欠なため信用が高い。
  • 中国では個人の職業が「家族や一族の誇り(メンツ)」に直結しやすい。
  • 不況時でも需要が途絶えないため、手堅い職業として親世代からも推奨される。

中国社会において、医師(医生 / yīshēng)や教師(老师 / lǎoshī)が高く評価される最大の理由は、その「専門性の高さ」と「社会的信用の厚さ」にあります。これらは、単に給料が良いからという理由だけではありません。

医師は人々の健康と生命を直接預かる仕事であり、教師は国家の未来を担う子どもたちの教育を司ります。いずれも厳しい試験を突破し、長期の専門教育と訓練を受けなければ就けない職業です。そのため、「医師や教師になれた=優秀であり、努力ができる人間である」という強烈な証明になります。

さらに、中国特有の文化として進路に対する家族・親族の影響力が非常に強いことが挙げられます。子どもが医師や大学教員になったという事実は、本人の成功であると同時に、両親や一族にとっての大きな誇り(メンツ)となります。親戚の集まりなどで「うちの子は公立病院で医者をしている」と語ることは、最高レベルの社会的成功のアピールとなるのです。

フレーズ
在中国,医生和老师有很高的社会地位。
日本語訳
中国では、医師と教師は非常に高い社会的地位を持っています。
使う場面
中国の職業観や文化について議論するとき。相手の職業が医師や教師であると知ったときの敬意を表す背景として。
発音・ニュアンス
Zài Zhōngguó, yīshēng hé lǎoshī yǒu hěn gāo de shèhuì dìwèi. 「社会地位(shèhuì dìwèi)」は、人々の尊敬を集める度合いや世間体を表す非常によく使われる言葉です。

また、医療や教育は「景気に左右されにくい」という決定的な強みがあります。民間企業の業績が悪化しリストラが横行するような不況下であっても、人々が病気になることや子どもが学校に通うことはなくなりません。この「恒久的な需要」が、将来の不安を抱える若者やその親たちにとって、非常に魅力的に映るのです。

しかし、こうした安定した職業の対極にありながら、若者の心を強く惹きつけてやまないのが「インターネット業界」です。彼らはなぜ激務と言われるIT業界を目指すのでしょうか。

実力主義と激務の代名詞:インターネット業界と「996工作制」

この章の要点
  • IT・EC業界は年齢に関係なく「実力(实力)」で評価され、若くして高収入を得やすい。
  • 高い報酬の裏には「996工作制(朝9時から夜9時まで週6日勤務)」と呼ばれる激務が存在する。
  • 過酷な労働環境への反発から、民間企業を避けて公務員を目指す若者も増えている。

インターネット企業(互联网公司)や電子商取引(EC)企業は、過去十数年にわたり中国経済の爆発的な成長を牽引してきました。アリババ、テンセント、バイトダンスといった巨大テック企業は、若者にとって「成功の象徴」です。

旧来の伝統的な組織や一部の国有企業では、年齢や勤続年数が昇進・昇給に影響する年功序列的な側面が残っている場合があります。しかし、IT業界のアプリ開発、データ分析、アルゴリズム構築、ECサイトの運用といった分野では、若くても成果さえ出せば即座に重要なポストに抜擢され、破格の報酬を得られる可能性があります。中国語で実力は「实力(shílì)」と言い、肩書きではなく実力で判断されることを「看实力(kàn shílì)」と表現します。

フレーズ
在互联网公司,比起年龄,大家更看重实力。
日本語訳
インターネット企業では、年齢よりも実力が重視されます。
使う場面
IT業界の社風や、外資系・ベンチャー企業の評価制度について説明するとき。
発音・ニュアンス
Zài hùliánwǎng gōngsī, bǐqǐ niánlíng, dàjiā gèng kànzhòng shílì. 「看重(kànzhòng)」は「重視する、重きを置く」という意味で、仕事の価値観を語る際に必須の単語です。

一方で、高収入の裏側には過酷な労働環境が潜んでいます。ここで必ず知っておくべきキーワードが「996工作制(jiǔ jiǔ liù gōngzuòzhì)」です。これは「朝9時に出社し、夜9時まで働き、それを週6日続ける」という超長時間労働の形態を指します。短期間での圧倒的な成果や、激しいシェア争いに勝ち抜くため、多くのテック企業でこの過酷な働き方が常態化しました。

いくら給料が高くても、家賃が高騰する大都市で、通勤に時間を奪われ、週末は疲労で寝て過ごすだけとなれば、若者たちは「自分は何のために働いているのか」と疑問を抱き始めます。近年、若者が公務員や国有企業へ回帰している背景には、単に保守的になったからではなく、「民間企業の過酷な消耗戦から逃れて人間らしい生活を取り戻したい」という切実な願いがあるのです。

では、過酷な競争を避けて「安定」を手に入れたい若者たちが目指す、究極の理想形とは何でしょうか。それが次に解説する「鉄飯碗」という概念です。

一生安泰の象徴「铁饭碗(鉄飯碗)」とは?

この章の要点
  • 「铁饭碗(鉄のご飯茶碗)」は、失業の心配がない一生安泰な職業を意味する。
  • 代表例は公務員、国有企業、公立の学校・病院など。
  • 軍組織で専門業務を行う「軍隊文職」なども安定職として人気を集めている。

中国の職業観を語る上で絶対に外せない言葉が「铁饭碗(tiě fànwǎn)」です。直訳すると「鉄で作られたご飯茶碗」となります。普通の陶磁器の茶碗は、落とせば簡単に割れてしまい、ご飯が食べられなくなります(失業を意味します)。しかし、鉄の茶碗は落としても決して割れません。

ここから転じて、「絶対に失業しない、生涯にわたって安定した収入が約束された仕事」を指すようになりました。日本で言うところの「親方日の丸」「食いはぐれのない仕事」に相当します。

オフィスのデスクの上に置かれた金属製のお茶碗と本。中国における安定した職業(鉄飯碗)を象徴している。
「铁饭碗(鉄飯碗)」は、壊れることのない安定した生活基盤の象徴です。

鉄飯碗の代表格とされるのが「公務員」です。しかし、安定した職業は公務員だけではありません。国の基幹インフラを担う国家電網(電力会社)や中国煙草などの巨大な「国有企業(国企)」、学校や病院などの公共サービスを担う「事業単位(事业单位)」も鉄飯碗と見なされます。さらには、軍の組織内で教育や医療、技術研究などの非戦闘業務を担当する「軍隊文職(军队文职)」も、給与水準の高さと圧倒的な福利厚生から、近年大人気の安定職となっています。

注意点

「铁饭碗」の反対語として、壊れやすくて不安定な仕事を意味する「泥饭碗(ní fànwǎn:泥の茶碗)」という言葉があります。しかし、相手の職業に対して直接「あなたの仕事は泥饭碗ですね」と言うのは非常に失礼にあたるため、実際の会話で相手に向かって使うのは厳禁です。あくまで社会現象を客観的に語る際に使用しましょう。

さて、高収入の激務か、あるいは鉄飯碗の安定か。こうした二極化が進む中、現代中国の若者の精神状態を如実に表す、ある「2つの流行語」が社会現象となりました。それが「内卷」と「躺平」です。

現代中国を象徴するキーワード:「内卷(過剰競争)」と「躺平(寝そべり)」

この章の要点
  • 「内卷(ネイチジュアン)」は、パイが増えない中で努力量だけがインフレする過剰競争のこと。
  • 「躺平(タンピン)」は、勝てない競争から降りて、最低限の生活で満足する「寝そべり」状態。
  • 最近では、全力でもなく放棄もしない「45度人生」というバランス志向も生まれている。

中国の若者の間で、挨拶代わりのように使われる言葉が「内卷(nèijuǎn)」です。日本語では「内巻(うちまき)」や「インボリューション」と訳されます。本来は社会学の専門用語ですが、現在は「得られる成果やパイが増えないのに、内部での競争だけが過剰に激化している状態」を指します。

例えば、映画館で前の人が立ち上がって見始めたら、後ろの人も立ち上がらざるを得ず、最終的に全員が立ち見で疲弊しているのに、映画自体が見えやすくなったわけではない、という状況が「内卷」です。就活においては、「誰もが大学院に進学するから、自分も行かないと不利になる」「同僚が夜10時まで残業しているから、仕事がなくても自分も残らざるを得ない」といった、無意味な努力のインフレ状態を嘆く言葉として使われます。日常会話では単に「太卷了(tài juǎn le / 競争が激しすぎる)」と言うことも多いです。

この絶望的な「内卷」に対するカウンターカルチャーとして爆発的に流行したのが「躺平(tǎngpíng)」です。直訳すると「横たわって平らになる」、つまり「寝そべる」という意味です。

カフェでノートパソコンを閉じ、少し疲れた表情ながらも笑顔で休息を取る東アジアの若者。過度な競争から距離を置く様子を表している。
過酷な競争(内卷)に疲れ、心身の平穏を優先する「躺平」の感覚は多くの若者の共感を呼びました。

いくら必死に努力しても、家も買えず、理想の仕事にも就けない。それならいっそ、家を買うこと、車を買うこと、結婚すること、出世することを最初から放棄し、最低限の生活費だけを稼いで心身の平穏を保とう、という消極的な抵抗の姿勢です。すべてを拒絶する怠け者という意味ではなく、「消耗戦から距離を置きたい」という自己防衛の表れでもあります。

フレーズ
这个行业太卷了,我不想再卷了,只想躺平一会儿。
日本語訳
この業界は競争が激しすぎます。もう競争には疲れたので、少し横になって(競争から降りて)休みたいです。
使う場面
同僚や友人と、日々の仕事の辛さや社会の厳しさについて愚痴をこぼし合うとき。
注意点・誤用例
「躺平」は自虐や冗談として使われることが多く、本気で明日から無職になるわけではありません。上司に向かって「私は明日から躺平します(怠けます)」と言うのは重大なマナー違反です。

最近では、90度の直立(全力競争)でもなく、0度の水平(完全な放棄)でもない、中間的な生き方を目指す「45度人生」という言葉も生まれています。最低限の責任は果たしつつ、自分の趣味やプライベートの時間も確保するという、ある意味で非常に健全なバランス感覚を持った若者が増えている証拠と言えるでしょう。

このような仕事観の変化は、生まれた時代によって大きく異なります。次は、世代別の価値観の違いを見ていきましょう。

世代で異なる職業観:「70后」から「00后」への変遷

この章の要点
  • 中国では生まれ年代を「〇〇后(ホウ)」と呼び、世代間の価値観のギャップが大きい。
  • 70后・80后は組織の安定と経済成長を重視した世代。
  • 90后は起業やITブームを経験し、00后は安定と個人の自由の「両立」を求める世代。

中国では、世代を表現する際に「生まれた年代+后(hòu)」という言葉を使います。1970年代生まれなら「70后」、2000年代生まれなら「00后(リンリンホウ)」となります。中国は過去数十年の間にすさまじい経済成長と社会変化を経験したため、たった10年の違いでも仕事に対する価値観が劇的に異なります。

70后・80后:組織の中での安定と成長の追求

70后(1970年代生まれ)は、計画経済から市場経済への過渡期を生きた世代です。選択肢が少なかったため、国有企業や大きな組織に入り、定年まで勤め上げて家族を養う「絶対的な安定」が美徳とされました。続く80后(1980年代生まれ)は、改革開放の恩恵を強く受けた世代です。民間企業が台頭し始めたため、外資系企業や大企業でハードに働き、高収入を得てマンションを買うという「成長と物質的豊かさ」を追い求めた世代です。

90后:インターネットと起業ブームの洗礼

90后(1990年代生まれ)が社会に出る頃、中国はインターネットとスマートフォンの大爆発期を迎えました。アリババなどの成功物語を見て育ったため、「会社に縛られず、起業して一攫千金を狙う」「転職を繰り返して給与を上げる」というマインドが広がりました。同時に、激しい内卷(過剰競争)や996の直撃を受けたのもこの世代であり、仕事に対する疲弊感が生まれ始めた時期でもあります。

00后:安定と自由のハイブリッド志向

そして現在の就職市場の主役である00后(2000年代生まれ)は、最も多様で複合的な価値観を持っています。彼らは生まれた時から物質的に豊かで、スマホやSNSを使いこなすデジタルネイティブです。企業の評判や残業の実態をネットで事前に調べ尽くしているため、盲目的に大企業に入ることはしません。

彼らの多くは「安定した公務員や国有企業」を志望しつつも、単に組織にぶら下がるのではなく、動画編集やデザイン、Webライターといった「自分のスキルを活かせる新興職業(新兴职业)」への関心も非常に高いのが特徴です。組織に依存しすぎず、個人の力でも生き抜ける準備をしているのです。

では、こうした00后が実際にどのような働き方を実践しているのか、その代表的な例である「副業」について見てみましょう。

「主业(本業)」と「副业(副業)」を巧みに組み合わせる若者たち

この章の要点
  • 中国ではデジタルプラットフォームの発達により、個人で稼ぐ副業のハードルが極めて低い。
  • 安定した本業(主业)で生活基盤を守りつつ、副業(副业)でやりたいことや追加収入を得る。
  • 動画配信、ECサイト運営、イラスト制作など、個人の専門スキルが活かされている。

近年、中国の若者の間で急速に広がっているのが、複数の収入源を持つ働き方です。中国語で本業を「主业(zhǔyè)」、副業を「副业(fùyè)」と呼びます。

中国はスマートフォン決済や配送網、ECプラットフォーム、そしてライブコマース(ライブ配信を通じた商品販売)などのデジタルインフラが世界で最も発達している国の一つです。そのため、個人がスマホ一台で小さなビジネスを始めるハードルが非常に低いという特徴があります。

机に向かってノートに書き込みながら、タブレットで中国語を熱心に勉強している東アジアの学生。明るい表情で意欲的に学んでいる。
語学や専門スキルを身につけることは、転職や副業を成功させる強力な武器になります。

例えば、日中は国有企業や一般企業で事務職として定時まで働き(安定の確保)、退勤後や週末にビデオブロガーとして動画を配信したり、SNSでイラストの受注販売をしたりする(自己実現と追加収入の確保)といった働き方です。いきなり会社を辞めて起業するのではなく、まずは副業として小さく試し、軌道に乗れば独立するという、非常に堅実でリスクを抑えた戦略をとっています。

フレーズ
我下班后做副业,比如拍视频和做翻译。
日本語訳
私は退勤後に、動画撮影や翻訳などの副業をしています。
使う場面
自分の趣味やスキルを活かした活動について自己紹介するとき。
発音・ニュアンス
Wǒ xiàbān hòu zuò fùyè, bǐrú pāi shìpín hé zuò fānyì. 「下班(xiàbān)」は退勤するという意味の基本単語です。

こうした副業や柔軟な働き方(灵活就业)を成功させるためには、「一技之长(yí jì zhī cháng:何か一つ特に秀でた技能)」が不可欠です。語学力もその強力な武器の一つとなります。

ここまで中国の社会背景を詳しく見てきました。では、実際に中国人ネイティブと仕事や就職について会話する際、どのように表現すれば良いのでしょうか。次は、そのまま使える実践的な会話フレーズ集をごお伝えします。

実践!中国語での職業・就職に関する会話フレーズ集

この章の要点
  • 単語単体ではなく、質問と回答の「セット」でフレーズを覚えることが会話力向上の鍵。
  • 面接、同僚との雑談、親との進路相談など、場面別のロールプレイで実践力を養う。

語学学習において、単語帳を暗記するだけでは実際の会話で言葉が出てきません。実際のシチュエーションを想定した対話形式で学ぶことで、適切なニュアンスと文脈を掴むことができます。ここでは3つのよくある場面を取り上げます。

場面1:友人と就職活動の希望条件について語る

フレーズ(会話)
友人:你找工作时最看重什么?工资还是发展?
学習者:比起高工资,我更看重稳定性。另外,我不想经常加班。
友人:那你可以考虑考公或者去国企呀。
日本語訳
友人:仕事を探すとき、何を一番重視する?給料?それとも成長?
学習者:高い給料よりも、安定性を重視してるよ。それに、しょっちゅう残業するのは嫌だな。
友人:だったら公務員試験を受けるか、国有企業に行くことを考えたらどう?
注意点・発音
「比起A,更B(Bǐqǐ A, gèng B)」は「AよりもBのほうが〜だ」という比較の超重要構文です。「考公(kǎo gōng)」は公務員試験を受けることの略語で、若者の間で頻出します。

場面2:同僚と仕事の苦労について愚痴をこぼす

フレーズ(会話)
同僚:今天又要加班吗?我们公司最近太卷了。
学習者:是啊,大家都不走,我也不好意思下班。
同僚:真受不了。周末我们去喝杯咖啡,稍微躺平一下吧。
日本語訳
同僚:今日もまた残業?うちの会社、最近競争が激しすぎるよ。
学習者:そうだね、みんな帰らないから、私も退勤しづらくて。
同僚:本当にたまらないね。週末はコーヒーでも飲みに行って、少しリラックス(躺平)しようよ。
注意点・発音
「不好意思(bù hǎoyìsi)」は「申し訳ない」だけでなく「きまりが悪い、〜しづらい」という心理的抵抗を表すのに便利です。ここでの「躺平」は深刻な放棄ではなく、「息抜きする、サボる」程度の軽いニュアンスで使われています。

場面3:面接で将来のキャリアプランを語る

フレーズ(会話)
面接官:你将来想做什么工作?你有什么职业规划?
学習者:我想先在大企业积累工作经验,提高自己的专业能力,以后再考虑独立创业。
日本語訳
面接官:将来はどんな仕事をしたいですか?どのようなキャリアプランを持っていますか?
学習者:まずは大企業で実務経験を積み、自分の専門能力を高め、その後で独立して起業することを考えています。
注意点・発音
「先A,再B(xiān A, zài B)」で「まずAをして、それからBをする」という順序立てた説明ができます。面接などフォーマルな場では、「干什么(何をするの)」ではなく「做(zuò)」を使いましょう。

こうした生きたフレーズを習得するためには、正しい順序で学習を進めることが大切です。最後に、今日からすぐに始められる具体的な学習ステップをご提案します。

効果的な学習ステップ:社会背景と語学を同時に身につける

この章の要点
  • 単語帳を読むだけでなく、声に出してピンインを確認することが重要。
  • 「国企 / 民企」のように対義語をセットで覚える。
  • 学んだ表現を使って、自分の考えや境遇を中国語で作文してみる。

社会問題やキャリアといった少し高度な話題を中国語で話せるようになるには、以下のステップで学習を進めるのが効果的です。1週間のサイクルで無理なく取り組んでみてください。

  1. 単語とピンインの確認:「公务员(gōngwùyuán)」「创业者(chuàngyèzhě)」など、本記事で登場したキーワードを、漢字だけでなくピンインと声調(四声)を意識して音読します。日本の漢字と同じでも発音が違うため注意が必要です。
  2. 対概念で覚える:「稳定(安定)」と「不稳定(不安定)」、「主业(本業)」と「副业(副業)」のように、対になる言葉をセットで覚えると、会話での選択肢が広がります。
  3. 自分事として作文する:例文をそのまま覚えるだけでなく、主語を自分に置き換えてみましょう。例えば「私は頻繁に残業したくありません(我不想经常加班)」など、自分の本音を中国語で書き出します。
  4. 実践アウトプット:作成した文章を実際に口に出して発音します。スマートフォンの録音機能を使って自分の発音を聞き返したり、ネイティブ講師に伝わるかチェックしてもらうのが上達の近道です。

中国語は発音(特に声調)が命の言語です。独学で発音の癖がついてしまう前に、プロの講師と会話形式で楽しく学ぶことをおすすめします。社会のリアルな話題について語り合えるようになれば、中国語学習は一気に楽しくなるはずです。

Q&A:中国の職業と仕事観に関するよくある質問

最後に、本記事の内容を踏まえて、学習者が抱きやすい疑問についてQ&A形式で回答します。

中国の若者は全員が公務員を目指しているのですか?

全員ではありません。公務員試験(考公)の志願者が急増しているのは事実ですが、一方でインターネット企業や技術職を選ぶ層、動画制作やデザインなどの新興職業でフリーランスとして生きる若者、起業を選ぶ層も一定数存在します。安定志向と自由志向が混在しているのが現状です。

国有企業と公務員は同じものですか?

同じではありません。公務員(公务员)は政府や行政機関に所属して公務を担いますが、国有企業(国企)は国家が資本を所有・管理している「企業」であり、営利活動を行います。どちらも安定した進路(鉄飯碗)と見なされますが、採用試験の仕組み、身分規定、給与体系は大きく異なります。

「鉄飯碗(铁饭碗)」は昔の言葉ですか?現在でも使われますか?

現在でも日常会話やニュース記事で頻繁に使われる生きた表現です。かつては公的機関の終身雇用を指すことが主でしたが、最近では「AIに奪われない高度な専門スキルを持つこと」を「自分自身の鉄飯碗」と表現するなど、使われ方の幅が広がっています。

「内卷」は仕事の話題以外でも使えますか?

はい、使えます。職場の残業競争だけでなく、子どもを少しでも良い学校に入れるためのお受験競争、習い事の加熱、企業間の過度な値下げ競争など、「努力やコストが過剰に投入されて疲弊している状況」全般に対して「太卷了(激しすぎる)」と表現できます。

「躺平」は単に怠けているという意味ですか?

単なる怠け(懒惰)とはニュアンスが異なります。努力が報われにくい過酷な社会構造に対する「静かなる抵抗」や「競争からの自発的な撤退」という意味合いが強く含まれています。日常会話では「今日は疲れたからちょっと躺平する(休む)」と冗談めかして軽く使うことも多いです。