パソコンやスマートフォンが普及し、手書きで文章を書く機会がめっきり減ってしまいました。特に中国では、学校教育へのパソコン導入が進み、若い世代を中心に「漢字が書けない」ことが社会的な課題として指摘されるほどです。新年の挨拶や季節の便りも、印刷されたカードやSNSで済ませることが多くなっています。
しかし、そんなデジタル全盛の時代だからこそ、心を込めて書かれた手書きの手紙は、受け取った相手に特別な温かさや誠意を伝えることができます。特に、礼儀や伝統を重んじる文化を持つ中国では、丁寧な手書きの手紙は、相手への敬意を示す有効な手段となり得ます。中国の友人、恩師、ビジネスパートナーなどに、心のこもった手紙を送ってみませんか?
この記事では、中国語の手紙を書く際に知っておくべき基本的な書式(格式 géshì)から、宛名(称呼 chēnghū)、本文(正文 zhèngwén)、結び(结尾 jiéwěi)、署名(署名 shǔmíng)、日付(日期 rìqī)の各要素の具体的な書き方、そして封筒の書き方まで、豊富な例文とともに徹底的に解説します。このガイドを読めば、あなたも自信を持って中国語の手紙を書けるようになるはずです。
【中国語 手紙 書き方】完全ガイド|基本構成・宛名・結び・例文・封筒まで徹底解説!
目次
中国語の手紙の基本構成:5つの必須要素
中国語の手紙(特にフォーマルな場合)には、決まった「格式 (géshì) – 書式、フォーマット」があります。主に以下の5つの要素から構成され、それぞれ書き始める位置(改行や字下げ)にもルールがあります。
- 称呼 (chēnghū): 呼びかけ、宛名
- 问候语 (wènhòuyǔ) / 正文 (zhèngwén): 冒頭の挨拶 / 本文
- 结尾敬语 (jiéwěi jìngyǔ): 結びの敬語、結語
- 署名 (shǔmíng): 署名、差出人名
- 日期 (rìqī): 日付

手紙の基本構成を理解しよう
では、各要素の具体的な書き方と注意点を詳しく見ていきましょう。
1. 称呼 (chēnghū):相手への呼びかけと敬称
手紙の書き出し、最初の行に書くのが「称呼 (chēnghū)」、つまり相手への呼びかけ、宛名です。日本語の「〇〇様」にあたる部分です。
書き方とルール
- 位置: 手紙の最初の行の左端に書きます(字下げはしません)。
- 内容: 「收信人 (shōuxìnrén – 受信人、名宛人)」の名前を書きます。通常はフルネームまたは姓を書きます。
- 敬称: 名前の後に、相手との関係性や状況に応じた適切な敬称を付けます。敬称を付けない場合もあります(親しい友人など)。
- 句読点: 呼びかけの後には、通常「冒号 (màohào)」、つまりコロン(:)を付けます。これは、後に本文が続くことを示します。(親しい間柄の手紙では感嘆符「!」や読点「,」が使われることもあります)
- 修飾語: 呼びかけの前に、さらに敬意を表す言葉「尊敬的 (zūnjìng de – 尊敬する)」「敬爱的 (jìng’ài de – 敬愛する)」や、親しみを込めた「亲爱的 (qīn’ài de – 親愛なる)」などを付けることもあります。これらを付ける場合、名前の前で改行せず、続けて書きます。
相手別の敬称と呼びかけ例
相手との関係性によって、適切な呼びかけ方が異なります。

相手との関係に合わせて呼びかけを選ぼう
家族・親戚
- 父母へ:
- 父亲: / 爸爸: (お父さんへ)
- 母亲: / 妈妈: (お母さんへ)
- 爸爸妈妈: (お父さんお母さんへ)
- より敬意を込めて: 尊敬的父亲: / 敬爱的妈妈:
- 祖父母へ:
- 爷爷: (父方のおじいさんへ) / 奶奶: (父方のおばあさんへ)
- 外公: (母方のおじいさんへ) / 外婆: (母方のおばあさんへ)
- 爷爷奶奶: / 外公外婆:
- その他親戚 (年上):
- 叔叔: (おじさんへ – 父の弟) / 阿姨: (おばさんへ – 母の姉妹、または年上女性への一般的な呼びかけ)
- 伯父: (おじさんへ – 父の兄) / 姑姑: (おばさんへ – 父の姉妹)
- 舅舅: (おじさんへ – 母の兄弟)
- 兄弟姉妹 (年上):
- 哥哥: / 哥: (お兄さんへ)
- 姐姐: / 姐: (お姉さんへ)
友人・同僚・同級生
- 同輩 (平辈 píngbèi – 年齢や立場が同等):
- (フルネーム): 例: 李峰:
- (名): (親しい場合) 例: 峰:
- 亲爱的(フルネーム/名): 例: 亲爱的李峰:
- (フルネーム) 同学: (同級生の場合) 例: 王丽同学:
- 年上の友人・同僚など:
- (姓)哥 / (姓)姐: (親しみを込めて) 例: 张哥: / 李姐:
- (フルネーム) 哥哥 / 姐姐: 例: 刘伟哥哥: / 纪子姐姐: (より丁寧)
- 友人夫婦へ:
- (夫の姓) 夫妇: 例: 高桥夫妇: (高橋夫妻へ)
- (夫の名前) 和 (妻の名前): 例: 健一和真理子: (健一さんと真理子さんへ)
- 注意: 「同志 (tóngzhì)」は、かつては「同志」の意味で広く使われましたが、現代では主に同性愛者を指す隠語として使われることが多いため、一般的な呼びかけには使用を避けましょう。
恩師・上司・目上の方
- 恩師へ:
- (姓)老师: 例: 张老师: (張先生へ)
- 尊敬的(姓)老师: 例: 尊敬的张玲老师: (尊敬する張玲先生へ)
- 敬爱的(姓)老师: (より敬愛の念を込めて)
- 上司・目上の方(ビジネスなど):
- (姓)+(役職名): 例: 王经理: (王部長/マネージャーへ) / 李总: (李社長/総経理へ – “总”は総経理などの略)
- 尊敬的(姓)+(役職名): 例: 尊敬的王经理:
後輩・年下 (晚辈 wǎnbèi)
- (フルネーム): 例: 小明: (シャオミンへ – “小”は年下や親しい相手に付ける接頭語)
- (名): 例: 琳琳: (リンリンへ)
- 愛称・ニックネームでも可。
2. 问候语 (wènhòuyǔ) と 正文 (zhèngwén):挨拶と本文
「称呼」で呼びかけた後、改行し、本文を書き始めます。
冒頭の挨拶 (问候语 wènhòuyǔ)
本文の書き出しは、まず冒頭の挨拶からです。
- 位置: 「称呼」の次の行、行頭から2文字分空けて書き始めます(これを「挪抬 (nuótái)」または「空格 (kònggé)」と言います)。
- 内容: 最も一般的なのは「你好! (nǐ hǎo!)」または「您好! (nín hǎo!)」(目上の方へ)です。「こんにちは」「お元気ですか」といった意味合いです。
例:
尊敬的张老师:
您好!
より丁寧な場合や、久しぶりに連絡を取る場合などは、時候の挨拶や相手の安否を気遣う言葉を加えることもあります。
Zuìjìn shēntǐ zěnmeyàng? Yíqiè dōu hǎo ma?
最近身体怎么样?一切都好吗?
最近お体の具合はいかがですか?万事順調でしょうか?
Hěn jiǔ méi liánxì le, fēicháng xiǎngniàn nín.
很久没联系了,非常想念您。
長らくご連絡しておりませんでしたが、大変お慕いしております。
本文 (正文 zhèngwén)
冒頭の挨拶に続けて、または改行して(その場合も行頭2文字空ける)、本文を書き進めます。本文は通常、以下の要素で構成されます。
- 相手への気遣いや感謝の言葉: (必要に応じて)前回の手紙や贈り物へのお礼、近況を尋ねる言葉など。
- 自分の近況報告: 自分の状況や出来事を簡単に伝える。
- 手紙の主目的・用件: 今回手紙を書いた理由(連絡、報告、依頼、質問、お祝い、お見舞い、お詫びなど)を具体的に記述する。
- 結びの挨拶: 返信を求める言葉、相手の健康や成功を祈る言葉などで締めくくる。
- 感謝: 非常感谢您的帮助。(Fēicháng gǎnxiè nín de bāngzhù. – ご助力、誠に感謝いたします。)
- お祝い: 祝贺您…… (Zhùhè nín… – ~おめでとうございます。) / 祝你生日快乐!(Zhù nǐ shēngrì kuàilè! – お誕生日おめでとう!)
- お詫び: 对不起,…… (Duìbuqǐ,… – 申し訳ありません、~) / 对此表示深深的歉意。(Duì cǐ biǎoshì shēnshēn de qiànyì. – この件について深くお詫び申し上げます。)
- 依頼: 麻烦您…… (Máfan nín… – お手数ですが~お願いします。) / 希望能得到您的帮助。(Xīwàng néng dédào nín de bāngzhù. – ご協力いただけますと幸いです。)
- 返信を促す: 盼复。(Pàn fù. – ご返信お待ちしております。) / 期待您的回信。(Qīdài nín de huíxìn. – あなたからの返信を楽しみにしています。)
- 位置: 本文の後、改行し、行頭から2文字分空けて書き始めます。
- 内容: 相手との関係性(目上、同輩、目下)や手紙の内容に合わせて、相手の健康、幸福、成功などを祈る定型的な表現を選びます。
- 改行のパターン:
- パターンA: 「祝 (Zhù)」や「敬祝 (Jìng zhù)」などを書いた後、改行し、次の行の右端(または少し字下げして)に具体的な祈りの言葉(健康、快乐など)を書く。
- パターンB: 一行に続けて書く(例: 祝你身体健康!)。
- パターンC: 「此致 (Cǐzhì)」を書いた後、改行し、次の行の頭から「敬礼 (Jìnglǐ)」を書く。
- 祝好! (Zhù hǎo!) – 元気でね! (最も一般的で使いやすい)
- 祝你平安!(Zhù nǐ píng’ān!) – ご無事でありますように。
- 祝你快乐!(Zhù nǐ kuàilè!) – 楽しく過ごせますように。
- 祝你心想事成!(Zhù nǐ xīnxiǎng shìchéng!) – 願い事が叶いますように。
- 祝你工作顺利!(Zhù nǐ gōngzuò shùnlì!) – 仕事が順調でありますように。(ビジネスレターなど)
- 祝你学习进步!(Zhù nǐ xuéxí jìnbù!) – 学業が進歩しますように。(学生へ)
- 位置: 結びの言葉から改行し、右下の位置に書きます。通常、行頭から数文字分(本文より右寄り)のスペースを空けて書き始めます。
- 内容: 自分の姓名(フルネーム)を書きます。
- 関係性を示す言葉: 名前の前に、相手との関係性を示す言葉を付けることが一般的です。これにより、誰からの手紙かが明確になります。
- 例: 「您的学生 (nín de xuésheng – あなたの生徒)」「您的儿子/女儿 (nín de érzi/nǚ’ér – あなたの息子/娘)」「你的朋友 (nǐ de péngyou – あなたの友人)」「部下 (bùxià – 部下)」など。
- 敬意を表す言葉: 名前の後に「敬上 (jìng shàng)」「谨启 (jǐn qǐ)」などを付け加えると、より丁寧になります。(特に目上の方へ)
- 位置: 署名の次の行、右下の位置に書きます。署名と同じくらいの右寄りに書くか、署名より少し右にずらして書きます。
- 形式: 通常、「〇〇年〇月〇日」の形式で書きます。年は西暦(公元 gōngyuán)で書くのが一般的です。
- 切手 (邮票 yóupiào): 右上に貼ります。
- 受取人の郵便番号 (收信人邮政编码 shōuxìnrén yóuzhèng biānmǎ): 左上に書きます(6桁)。
- 受取人の住所 (收信人地址 shōuxìnrén dìzhǐ): 郵便番号の下、封筒中央よりやや上に、大きな文字で書きます。住所は、大きな単位(国、省、市)から小さな単位(区、路、号、建物名、部屋番号)の順に書きます。
- 受取人の氏名・敬称 (收信人姓名、称呼 shōuxìnrén xìngmíng, chēnghū): 住所の下、封筒中央に、住所よりもやや大きな文字で書きます。「〇〇先生 收」「〇〇女士 收」のように、名前の後に敬称と「收 (shōu)」(受け取る、の意味)を付けます。
- 差出人の住所・氏名 (寄信人地址、姓名 jìxìnrén dìzhǐ, xìngmíng): 左下に書きます。「〇〇省〇〇市…… 寄」のように、最後に「寄 (jì)」(送る、の意味)を付けます。
- 差出人の郵便番号 (寄信人邮政编码 jìxìnrén yóuzhèng biānmǎ): 差出人住所氏名の右下あたりに書きます。
- 文字は丁寧に: 相手が読みやすいように、楷書体で丁寧に書きましょう。
- 簡体字を正確に: 中国大陸では簡体字が使われています。日本の漢字(特に旧字体)と異なる場合があるので注意しましょう。
- 筆記用具: 万年筆や黒または青のボールペンなどが一般的です。赤字は避けましょう。
- 便箋: 無地の白い便箋か、派手すぎない模様の便箋を選びましょう。
- 件名 (主题 zhǔtí): Eメールでは内容が一目でわかる件名を付けることが重要です。
- 簡略化: 親しい間柄のEメールでは、結語や日付が省略されることもあります。
【本文で使えるフレーズ例】
3. 结尾敬语 (jiéwěi jìngyǔ):結びの言葉
本文を書き終えたら、改行して結びの言葉「结尾敬语 (jiéwěi jìngyǔ)」または「祝颂语 (zhùsòngyǔ)」を書きます。日本語の「敬具」や「かしこ」、「皆様のご健康をお祈り申し上げます」といった結びの挨拶にあたります。
書き方とルール
よく使われる結語の例
目上の方へ (长辈 zhǎngbèi)
パターンA:
敬祝 身体健康!
(Jìng zhù shēntǐ jiànkāng!)
ご健康を謹んでお祈り申し上げます。
パターンC:
此致 敬礼!
(Cǐzhì jìnglǐ!)
敬具(「此致」はこの場を借りて、「敬礼」は敬意を表します、の意。最もフォーマルな結びの一つ)
同輩・友人へ (平辈 píngbèi)
パターンA:
祝 万事如意!
(Zhù wànshì rúyì!)
万事思い通りになりますように。
パターンB:
祝你一切顺利!
(Zhù nǐ yíqiè shùnlì!)
全てが順調でありますように。
その他にも:
ビジネスレター
パターンA (少し丁寧):
顺祝 商祺!
(Shùn zhù shāngqí!)
ビジネスの順調な発展をお祈り申し上げます。(「顺祝」はついでながらお祈りします、「商祺」はビジネス上の吉祥・安泰)
4. 署名 (shǔmíng):差出人名を記す
結びの言葉の後には、差出人である自分の名前「署名 (shǔmíng)」を書きます。
書き方とルール
署名の例
(親へ)
您的女儿 卢琳琳
あなたの娘、盧琳琳
(恩師へ)
您的学生 卢琳琳 敬上
あなたの生徒、盧琳琳 敬具
(友人へ)
你的朋友 卢琳琳
あなたの友人、盧琳琳
5. 日期 (rìqī):日付の記載
最後に、手紙を書いた日付「日期 (rìqī)」を記載します。
書き方とルール
例:
2025年4月30日
二〇二五年四月三十日
これで手紙の本体部分は完成です。各要素の改行と字下げ(特に冒頭の挨拶、結語、署名、日付の開始位置)に注意しましょう。
封筒 (信封 xìnfēng) の書き方
手紙を郵送する場合、封筒の書き方にもルールがあります。中国の封筒は横書きが一般的です。

封筒の書き方もマスターしよう
(注意:上記は一般的な書き方であり、デザインによっては配置が異なる場合もあります。)
手書きの際のポイントとEメールとの違い
手書きのポイント
Eメール (电子邮件 diànzǐ yóujiàn) との違い
基本的な構成要素(宛名、挨拶、本文、結び、署名、日付)はEメールでも同様ですが、手紙ほど厳格な書式(字下げなど)は求められない傾向があります。ただし、ビジネスメールなどフォーマルな場合は、手紙の書式に準じて丁寧に書くのが望ましいです。
まとめ:心を込めて、正しい書式で
中国語の手紙には、相手への敬意を示すための伝統的な書式があります。称呼(宛名)、问候语/正文(挨拶/本文)、结尾敬语(結語)、署名、日期(日付)という5つの基本構成と、それぞれの書き方(特に改行と字下げ)を理解することが大切です。
相手との関係性に合わせて適切な敬称や結語を選び、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。デジタル化が進む現代において、心を込めて手書きされた手紙は、きっと相手の心に響き、より良い人間関係を築く助けとなるはずです。
この記事を参考に、ぜひ中国語での手紙作成にチャレンジしてみてください。