近年、中国におけるコーヒー文化の発展は目覚ましいものがあります。上海は「世界で最もカフェが多い都市」とも言われ、スターバックスなどの外資系だけでなく、Luckin Coffee(ラッキンコーヒー)などの国産ブランドも急成長しています。

旅行や出張で中国を訪れた際、あるいは中華圏の友人とカフェに行く際、スムーズに自分好みのコーヒーを注文できたら素敵ですよね。「ホットコーヒー」と言うだけではなく、「氷少なめ」や「オーツミルクに変更」といった細かいカスタマイズまで中国語で伝えられるようになると、現地のカフェ体験はもっと豊かになります。

本記事では、基本的な単語から、現地で使える実践的なフレーズ、そしてコーヒー通も納得の専門用語まで、中国語のコーヒーに関する知識を徹底的に深掘りして解説します。

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基本の「コーヒー」:発音と声調の壁を越える

まずは基本中の基本、単語の発音からマスターしましょう。中国語の「コーヒー」は、日本語の「コーヒー」とも英語の「Coffee」とも異なる、独特の響きを持っています。

☕ 咖啡 (kā fēi)

発音のポイント:第一声+第一声。高く平らな音を長く保ちます。

カタカナ発音からの脱却:「咖啡 (kāfēi)」の正しい響き

多くの日本人は「カーフェイ」と発音しがちですが、これでは通じにくいことがあります。重要なのは声調(トーン)です。

「kā」も「fēi」も、どちらも第一声です。第一声は、救急車のサイレンの音や、健康診断で喉を見せる時の「あー」という音のように、高く平らな音を最初から最後までキープします。

「カー(⤵)フェイ(⤵)」と語尾を下げてはいけません。「カー(→)フェイ(→)」と、高い位置で音を真っ直ぐに伸ばすイメージを持ってください。

日本人が最も苦手とする「有気音」完全攻略

中国語の発音において、日本人にとって最大の難関の一つが「有気音(ゆうきおん)」「無気音(むきおん)」の区別です。

「咖啡」の「kā」の「k」は、有気音に分類されます。

  • ❌ 無気音(日本語の「カ」に近い): 息をあまり吐き出さずに発音する。これだと中国語の「gā」に聞こえてしまいます。
  • ⭕ 有気音(正しい「kā」): 息を激しく前に吹き出しながら発音する。口の前にティッシュを置いたら、そのティッシュが大きく揺れるくらいの強さが必要です。

コーヒーを注文する際は、最初の「k」で爆発させるように息を吐くことを意識してください。これだけで、ネイティブっぽさが格段に上がります。

有気音の発音方法の図解と練習イメージ

有気音は「息の強さ」が命です

メニューが読める!コーヒーの種類と中国語名称一覧

中国のカフェに入ってメニューを見ると、漢字ばかりで圧倒されるかもしれません。しかし、多くの名称は英語の音訳(当て字)か、意味を訳した意訳のどちらかです。法則を覚えれば簡単に読めるようになります。

【定番】ブラック・エスプレッソ系メニュー

まずは基本となるメニューです。「美式(メイシー)」は、中国のカフェで最も安価で一般的なメニューとして親しまれています。

日本語 中国語 (簡体字) ピンイン 解説
アメリカン 美式咖啡 měi shì kā fēi 「アメリカ式」の意味。アイスの場合は「冰美式」が大人気。
エスプレッソ 浓缩咖啡 nóng suō kā fēi 「濃縮」されたコーヒーという意味。
ブレンド 混合咖啡 hùn hé kā fēi 喫茶店などで使われる表現。

【ミルク系】ラテ・カプチーノ・フラットホワイト

「拿铁(ナーティエ)」は音訳の代表例です。イタリア語のLatteの音を漢字に当てはめています。

日本語 中国語 (簡体字) ピンイン
カフェラテ 拿铁 ná tiě
カプチーノ 卡布奇诺 kǎ bù qí nuò
モカ 摩卡 mó kǎ
キャラメルマキアート 焦糖玛奇朵 jiāo táng mǎ qí duǒ
フラットホワイト 澳白 / 馥芮白 ào bái / fù ruì bái

※フラットホワイトは、スターバックスでは「馥芮白」という洒落た当て字が使われますが、一般的にはオーストラリア発祥であることから「澳白」とも呼ばれます。

コーヒーの種類一覧と中国語名称の比較イラスト

メニュー選びに迷わないための完全マップ

【トレンド】中国で大人気!オートミルクやダーティーコーヒー

中国の都市部では、健康志向や新しい味への探求心から、次のようなメニューが大流行しています。

  • 燕麦拿铁 (yàn mài ná tiě) – オーツミルクラテ:
    植物性ミルクの人気は凄まじく、ほとんどのカフェで「燕麦奶(オーツミルク)」への変更が可能です。OATLYなどのブランドが有名です。
  • 生椰拿铁 (shēng yē ná tiě) – 生ココナッツラテ:
    Luckin Coffeeが爆発的に流行らせたメニュー。ココナッツミルクの甘さとコーヒーの苦味が絶妙にマッチします。
  • 脏脏咖 (zāng zāng kā) – ダーティーコーヒー:
    冷たいミルクの上に熱いエスプレッソを注ぎ、層を作るスタイル。「脏(汚い)」という名前ですが、見た目の混ざり具合をユニークに表現したトレンド用語です。
  • 冷萃咖啡 (lěng cuì kā fēi) – コールドブリュー:
    水出しコーヒーのこと。「冰萃(bīng cuì)」とも呼ばれます。

自分好みの一杯を!詳細カスタマイズ用語集

「甘すぎた!」「熱すぎた!」という失敗を防ぐために、カスタマイズの用語は必須です。中国のドリンクスタンドやカフェでは、日本以上に細かく指定するのが一般的です。

温度と氷の量

中国では、冷たい飲み物を好まない人も多いため、温度調整のボキャブラリーが豊富です。

  • 热 (rè):ホット
  • 冰 (bīng):アイス
  • 常温 (cháng wēn):常温(氷なし、冷たくない)
  • 少冰 (shǎo bīng):氷少なめ
  • 去冰 (qù bīng):氷なし(冷たいが氷は入っていない)

甘さの調整

デフォルトだと非常に甘い場合があるため、甘さ控えめを注文する日本人が多いです。

  • 全糖 (quán táng):標準
  • 半糖 (bàn táng):50%
  • 微糖 (wēi táng):30%
  • 无糖 (wú táng):無糖

実践!カフェでそのまま使える会話フレーズ・スクリプト

単語を覚えたら、いよいよ注文です。ここでは、リアルなシチュエーション別の会話例を見てみましょう。

シーン1:カウンターでの注文(基本編)

最もシンプルに、「これを一つください」と伝えるパターンです。

あなた:
你好,我要一杯冰美式。
(Nǐ hǎo, wǒ yào yì bēi bīng měi shì.)
こんにちは、アイスアメリカーノを一杯ください。

店員:
中杯还是大杯?
(Zhōng bēi hái shi dà bēi?)
Mサイズですか、Lサイズですか?

あなた:
大杯。
(Dà bēi.)
Lサイズで。

【ポイント】
「我要~(Wǒ yào…)」は「~が欲しいです(~をください)」という万能フレーズです。「一杯(yì bēi)」という量詞も忘れずに。

シーン2:こだわりオーダー(上級編)

少し複雑な注文に挑戦してみましょう。ミルクの変更や持ち帰りの指定です。

あなた:
我要一杯热拿铁,换燕麦奶。
(Wǒ yào yì bēi rè ná tiě, huàn yàn mài nǎi.)
ホットラテを一杯、オーツミルクに変更してください。

店員:
好的。在这儿喝还是带走?
(Hǎo de. Zài zhèr hē hái shi dài zǒu?)
かしこまりました。店内で召し上がりますか、それともお持ち帰りですか?

あなた:
带走,谢谢。
(Dài zǒu, xiè xie.)
持ち帰りで、ありがとう。

シーン3:スマホ決済とアプリ注文(WeChat/Alipay)

現在の中国では、口頭での注文よりも、テーブルのQRコードをスキャンしてスマホ(WeChatミニプログラム)から注文・決済を済ませる「扫码点餐(sǎo mǎ diǎn cān)」が主流です。

店員にこう言われることがよくあります。

「扫一下码点单吧 (Sǎo yí xià mǎ diǎn dān ba)」
(QRコードをスキャンして注文してください)

この場合、スマホを取り出してテーブル上のコードをスキャンし、メニュー画面から選択して決済まで完了させます。店員と一言も話さずにコーヒーを受け取ることも珍しくありません。

スマホを使ってカフェで注文するシーン

アプリ注文は中国カフェ巡りの必須スキルです

コーヒー通のための「豆」と「味」の表現

コーヒー好きなら、豆の産地や風味についても語りたいところ。ここでは少し専門的な単語を紹介します。

世界の産地と中国語表現

  • 曼特宁 (màn tè níng):マンデリン
  • 哥伦比亚 (gē lún bǐ yà):コロンビア
  • 巴西 (bā xī):ブラジル
  • 埃塞俄比亚 (āi sài é bǐ yà):エチオピア
  • 瑰夏 (guī xià):ゲイシャ(高級豆として有名)
  • 蓝山 (lán shān):ブルーマウンテン

中国産の実力:雲南コーヒー(Yunnan Coffee)の魅力

今、世界中から注目を集めているのが「云南咖啡 (Yún nán kā fēi)」です。中国の雲南省は、プーアル茶の産地として有名ですが、実はコーヒー栽培に適した気候でもあります。

スターバックスやネスレも雲南省に農園を持っており、その品質は年々向上しています。酸味とコクのバランスが良く、フルーティーな香りが特徴です。中国を訪れた際は、ぜひお土産に「云南小粒咖啡(雲南アラビカコーヒー)」を探してみてください。

味の感想を伝える

飲んだ感想を中国語で表現してみましょう。

  • 很香 (hěn xiāng):とても香りが良い
  • 太苦了 (tài kǔ le):苦すぎる
  • 有点酸 (yǒu diǎn suān):少し酸味がある
  • 口感很顺滑 (kǒu gǎn hěn shùn huá):口当たりがとても滑らか

中国の主要コーヒーチェーンとカフェ文化

最後に、中国でよく見かけるコーヒーチェーンを知っておきましょう。

1. 星巴克 (Xīng bā kè) – スターバックス

圧倒的なブランド力を誇ります。中国限定のマグカップや、中秋節の月餅セットなどは観光客にも人気です。

2. 瑞幸咖啡 (Ruì xìng kā fēi) – Luckin Coffee

「中国のスタバ」とも呼ばれる、爆発的な店舗数を誇るチェーン。アプリ注文専用の店舗が多く、価格もスタバより安価で、若者に絶大な支持を得ています。

3. 库迪咖啡 (Kù dí kā fēi) – Cotti Coffee

Luckin Coffeeの元創業者が立ち上げた新興ブランド。低価格戦略で急速に拡大しており、日本にも進出しています。

まとめ

中国語で「コーヒー」は単なる飲み物の名前以上の広がりを持っています。発音のコツ、メニューの読み方、そしてカスタマイズの方法を知っているだけで、中国での滞在がより快適で楽しいものになるはずです。

最初は「我要这个(これください)」と指差すだけでも十分ですが、ぜひ今回紹介した「冰美式(アイスアメリカーノ)」や「燕麦拿铁(オーツラテ)」といった単語を使って、バリスタとのコミュニケーションを楽しんでみてください。中国のカフェ文化の熱気を、その一杯から感じ取ることができるでしょう。

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ヤン・ファン (楊芳) この記事を書いた人

講師育成で知られる中国・東北師範大学卒業。講師歴は14年に及び、特に日系企業の駐在員やビジネスパーソン向けの指導経験が豊富です。現役の日中医療通訳士としても活動し同行・商談通訳等にも対応可能です
基礎からの正確な発音指導、ビジネス中国語、赴任前短期集中レッスン、HSK・中国語検定対策、日中医療通訳トレーニング。クイック・レスポンス、シャドウイング等の通訳訓練法をレッスンに導入し、実践的なコミュニケーション能力の効率的な習得をサポートします。企業研修(対面・リモート)、個人・グループレッスン、同行・商談通訳等にも対応可能で教材作成、レッスンカリキュラム、講師育成など幅広い分野で活躍。