人と人との出会いは、中国の言葉で言えば「有缘分 (yǒu yuánfèn) – 縁がある」ということ。一度きりの出会いもあれば、そこから深い付き合いに発展することもあります。その第一歩となるのが「挨拶」です。特に初対面の挨拶は、相手に与える印象を大きく左右し、その後の関係構築において非常に重要な役割を果たします。
中国語の挨拶と聞くと、まず「你好 (nǐ hǎo)」を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、実際のコミュニケーションでは、「你好」以外にも状況や相手に応じた様々な挨拶表現が使われています。「初めまして」のスマートな言い方、久しぶりに会った時の喜びの表現、日常的な声かけ、そして中国ならではのユニークな挨拶まで、そのバリエーションは豊かです。
この記事では、中国語の挨拶表現を「初対面」から「日常的な場面」まで、幅広く徹底解説します!教科書的な表現だけでなく、より自然でネイティブに近い言い回し、相手に好印象を与えるフレーズ、そして挨拶にまつわる文化的な背景やマナーまで、具体的な例文を交えながらご紹介。これを読めば、あなたも自信を持って中国語で挨拶できるようになり、コミュニケーションの輪が広がること間違いなしです。
【中国語 挨拶】初めましてから日常会話まで完全網羅!你好/请多关照/吃饭了吗…使い方とマナー解説

目次
第一印象が肝心!「初めまして」の中国語表現
初対面の相手に良い印象を与えるためには、状況に合った適切な「初めまして」の表現を選ぶことが大切です。

丁寧な挨拶で良い第一印象を
基本の「初めまして」:初次见面 (chūcì jiànmiàn)
「初次见面 (chūcì jiànmiàn)」は、日本語の「初めまして」に最も近い、教科書にもよく出てくる基本的な表現です。「初次」が「初めて」、「见面」が「会う」を意味します。フォーマルな場面や、自己紹介の冒頭などで使うことができます。
Chūcì jiànmiàn, wǒ shì Tiánzhōng.
初次见面,我是田中。
初めまして、私は田中です。
ただし、一部では「中国人同士の会話ではあまり使われず、どちらかというと外国人が使う表現」というイメージを持つ人もいるようです。より自然で心のこもった印象を与えるためには、次に紹介する表現も覚えておくと良いでしょう。
スマートな出会いの挨拶:「お会いできて嬉しいです」
英語の “It’s my pleasure to meet you.” に通じる、より丁寧で好印象な表現として、以下のフレーズがよく使われます。相手への敬意と出会えた喜びを伝えることができます。
Rènshi nǐ hěn gāoxìng.
认识你很高兴。
あなたと知り合えてとても嬉しいです。
(「认识 rènshi」は「知り合う」。一般的で使いやすい表現)
Jiàndào nín hěn róngxing.
见到您很荣幸。
お会いできて大変光栄です。
(「见到 jiàndào」は「会う」、「您 nín」は丁寧な「あなた」、「荣幸 róngxìng」は「光栄である」。目上の方やフォーマルな場面に最適)
これらの表現は、相手に敬意を払い、ポジティブな印象を与えるのに非常に効果的です。実際に中国の方からこのように挨拶されたら、とても丁寧で洗練された印象を受けるでしょう。返答としては、「我也很高兴认识你 (Wǒ yě hěn gāoxìng rènshi nǐ) – 私もあなたと知り合えて嬉しいです」のように返すと自然です。
定番フレーズ:「よろしくお願いします」の伝え方
日本の「初めまして、どうぞよろしくお願いします」という挨拶は、中国語では以下のように表現できます。
Chūcì jiànmiàn, qǐng duō guānzhào.
初次见面,请多关照。
初めまして、どうぞよろしくお願いします。
「请多关照 (qǐng duō guānzhào)」は「どうぞよろしくお願いします」という意味で、ビジネスシーンや新しいコミュニティに入る際など、今後の良好な関係を願う場面で頻繁に使われる決まり文句です。日本人にとっては馴染み深い表現ですが、中国人同士でもごく普通に使われます。
より感情を込めて伝えたい場合は、先ほどの「お会いできて嬉しいです」と組み合わせることもできます。
Wǒ hěn gāoxìng rènshi nǐ, yǐhòu qǐng duō guānzhào.
我很高兴认识你,以后请多关照。
あなたと知り合えてとても嬉しいです。今後ともどうぞよろしくお願いします。
(「以后 yǐhòu」は「今後」)
また、「请多关照」の代わりに「请多交流 (qǐng duō jiāoliú) – どうぞたくさん交流しましょう」や「请多指教 (qǐng duō zhǐjiào) – どうぞたくさんご指導ください(より謙遜した表現)」といった言い方もできます。
歓迎の気持ちを伝える:「欢迎 (huānyíng)」
新しいメンバーを迎え入れる場面(学校のクラブ、会社、パーティーなど)では、「歓迎します」という言葉がよく使われます。
Huānyíng nǐ! / Huānyíng huānyíng!
欢迎你! / 欢迎欢迎!
ようこそ! / 大歓迎です!
自己紹介の後や乾杯の際に、周りの人たちから「欢迎欢迎!」と声をかけられることも珍しくありません。温かい歓迎の気持ちを表す、ポジティブな言葉です。
さらに一歩踏み込む:名前や出身地を尋ねる
初対面の挨拶が終わったら、相手のことをもう少し知るために、名前や出身地などを尋ねてみましょう。これが会話を広げ、親交を深めるきっかけになります。
お名前は何ですか?:「贵姓 (guìxìng)」と「怎么称呼 (zěnme chēnghu)」
相手の名前を尋ねる際には、丁寧な表現を心がけましょう。
Nín guìxìng?
您贵姓?
(失礼ですが)あなたの苗字は何とおっしゃいますか?
(「贵姓」は相手の姓を敬って尋ねる言葉。非常に丁寧)
これに対する返答は、「我姓田中 (Wǒ xìng Tiánzhōng) – 私の姓は田中です」や、謙遜して「免贵姓田中 (Miǎn guì xìng Tiánzhōng) – (貴姓とおっしゃるほどではありませんが)姓は田中です」のように答えます。
Zěnme chēnghu nín ne?
怎么称呼您呢?
どのようにお呼びすればよろしいでしょうか?
(フルネーム、役職、ニックネームなど、相手が望む呼び方を確認する丁寧な聞き方)
親しい間柄であれば、「你叫什么名字? (Nǐ jiào shénme míngzi?) – あなたの名前は何ですか?」と聞くこともできますが、初対面や目上の方には上記のような丁寧な表現を使いましょう。
ご出身はどちらですか?:「老家 (lǎojiā)」
出身地が同じだと、一気に親近感が湧くのは万国共通です。中国では特に、地方から都市部へ出てきている人が多く、同郷の繋がり「老乡 (lǎoxiāng)」を非常に大切にする文化があります。そのため、初対面で出身地を尋ねることはよくあります。
Nín lǎojiā zài nǎlǐ?
您老家在哪里?
ご出身(実家、故郷)はどちらですか?
(「老家 lǎojiā」は実家、故郷を指す言葉)
よりシンプルに「你是哪里人? (Nǐ shì nǎlǐ rén?) – あなたはどこの人ですか?(どちらの出身ですか?)」と尋ねることもできます。
再会の喜びを伝える:「久しぶり!」の表現
しばらく会っていなかった知人や友人と再会した際には、喜びや驚きを伝える挨拶が交わされます。

「好久不见!」で再会の喜びを伝えよう
Hǎojiǔ bùjiàn!
好久不见!
お久しぶりです!
(最も一般的で定番の表現)
Méixiǎngdào zài zhèlǐ jiàndào nǐ!
没想到在这里见到你!
ここでまたあなたに会えるなんて思ってもみませんでした!
(偶然の再会への驚きと喜びを表す)
Hěn gāoxìng zàicì jiàndào nǐ.
很高兴再次见到你。
またお会いできてとても嬉しいです。
(「再次 zàicì」は「再び」)
もし、ついさっき会ったばかりの人とまたすぐに顔を合わせた場合は、「又见到你了 (yòu jiàndào nǐ le) – またお会いしましたね」と言います。この表現は、状況や言い方によって「またあなたか(呆れ)」なのか「ご縁がありますね(好意的)」なのか、ニュアンスが変わることがあるので注意が必要です。
久しぶりに会った相手が、自分のことを覚えていなかったら少しショックですよね。そんな悲しい場面は避けたいものです。
Duìbuqǐ, wǒ yǒudiǎnr rèn bu chūlai le.
对不起,我有点儿认不出来了。
ごめんなさい、ちょっとどなたか思い出せません。
(「认不出来 rèn bu chūlai」は見ても誰か分からない、思い出せない)
毎日の挨拶:「你好」だけじゃない!状況別フレーズ
「你好 (nǐ hǎo)」は中国語挨拶の基本中の基本ですが、実際の日常生活では、状況や相手に応じて様々な表現が使われます。
「你好 (nǐ hǎo)」の使いどころとバリエーション
「你好」は、どちらかというと少しフォーマルな、あるいは初対面やあまり親しくない相手に使う挨拶です。英語の “Hello” に近い感覚です。親しい友人同士では、もっとくだけた言い方をするのが一般的です。
- 目上の方や敬意を払うべき相手には: 「您好 (nín hǎo)」 (「您」は丁寧な「あなた」)
- 先生に対して: 「老师好 (lǎoshī hǎo)」 (先生、こんにちは)
- 複数の相手に: 「你们好 (nǐmen hǎo)」 (皆さん、こんにちは) / 「大家好 (dàjiā hǎo)」 (皆さん、こんにちは – より広範囲の集団に)
「大家好」は、スピーチの冒頭やテレビ番組の司会者が視聴者に向けて挨拶する際などにもよく使われます。
カジュアルな場面では、「你好」の代わりに、軽く右手を上げたり、頷いたり、笑顔を見せるだけで済ませることもあります。英語の “Hi” や “Hey” のように、「嗨 (hāi)」や「哈喽 (hālou)」といった外来語の挨拶も若い世代を中心に使われます。
相手の様子を尋ねる挨拶
「お元気ですか?」のように相手の調子を尋ねる挨拶もよく使われます。
Nǐ hǎo ma?
你好吗?
お元気ですか?
(教科書的な表現。実際には次に挙げる表現の方がよく使われる)
Nǐ zuìjìn zěnmeyàng?
你最近怎么样?
最近どうですか?調子はどうですか?
Nǐ shēntǐ zěnmeyàng? / Nǐ shēntǐ hǎo ma?
你身体怎么样? / 你身体好吗?
体の調子はいかがですか?
Zuìjìn máng shénme ne?
最近忙什么呢?
最近何で忙しいの?/最近何してるの?
これらの質問には、「挺好的 (tǐng hǎo de – とても良いです)」「还可以 (hái kěyǐ – まあまあです)」「老样子 (lǎoyàngzi – いつも通りです)」などと答えるのが一般的です。
時間帯に応じた挨拶
1日の時間帯に応じた挨拶も基本です。これらもややフォーマルな響きがあります。
- 朝: 「早上好 (zǎoshang hǎo) – おはようございます」
- 親しい間柄ではもっとくだけて: 「早!(zǎo!)」や「早呀!(zǎoya!) – おはよう!」
- 昼: 「中午好 (zhōngwǔ hǎo) – こんにちは(正午頃)」 / 「下午好 (xiàwǔ hǎo) – こんにちは(午後)」
- 夕方・夜: 「晚上好 (wǎnshang hǎo) – こんばんは」
- 寝る前: 「晚安 (wǎn’ān) – おやすみなさい」
道端でバッタリ会った時のカジュアルな挨拶
友人や知人と街で偶然すれ違った時などには、以下のような気軽な声かけがよく使われます。
Qù nǎr ne? / Shàng nǎr qù?
去哪儿呢? / 上哪儿去?
どこ行くの?
(「上 shàng」は「行く」という意味でも使われる)
Chūqù ya?
出去呀?
お出かけ?
Máng ma?
忙吗?
忙しい?
これらの挨拶は、深い会話を始める意図はなく、単なるすれ違いの挨拶として使われることが多いです。返事も「出去办点事 (Chūqù bàn diǎn shì – ちょっと用足しに)」「不忙 (Bù máng – 忙しくないよ)」などと簡潔に答えるのが一般的です。
中国ならでは!「吃饭了吗 (chīfàn le ma)?」という挨拶
中国独特の挨拶として有名なのが「吃饭了吗? (chīfàn le ma?) – ご飯食べましたか?」です。これは、文字通りの意味で食事の状況を尋ねているわけではなく、相手への気遣いや親しみを込めた挨拶の一種です。

「吃饭了吗?」は中国ならではの温かい挨拶
この挨拶の背景には、かつて中国が食糧難の時代を経験し、「ちゃんとご飯を食べているか」が相手の安否を気遣う重要な指標だったという歴史があります。そのため、この言葉には「お元気ですか?」「変わりないですか?」といったニュアンスが含まれています。日本語の「今日はいいお天気ですね」のような、当たり障りのない時候の挨拶に近い感覚で使われます。
これに対しては、実際に食事を済ませていなくても、「吃了 (chī le) – 食べました」と答えておくのが無難で、そこから世間話に繋げることが多いです。「还没呢 (hái méi ne) – まだです」と正直に答えると、相手に「じゃあ一緒に食べに行こうか」と気を遣わせてしまうかもしれません(もちろん、それを期待している場合もありますが)。
ただし、この「吃饭了吗?」という挨拶は、特に年配の方や地方ではまだ使われますが、都市部の若い世代の間ではあまり使われなくなってきているとも言われています。TPOや相手を見ながら使うのが良いでしょう。
別れ際の挨拶:また会いましょう!
出会いがあれば別れもあります。別れ際の挨拶も覚えておきましょう。
- 再见 (zàijiàn): さようなら、また会いましょう。(最も一般的)
- 明天见 (míngtiān jiàn): また明日。
- 一会儿见 (yíhuìr jiàn): また後でね。
- 拜拜 (báibai): バイバイ。(英語由来、カジュアル)
- 慢走 (màn zǒu): お気をつけてお帰りください。(見送る側が、去っていく相手に対して言う言葉)
- 有空常联系 (yǒu kòng cháng liánxì): 時間がある時にまた連絡しましょう。
感謝と謝罪の基本フレーズも忘れずに
挨拶と合わせて、感謝や謝罪の言葉もスムーズに出てくると、より円滑なコミュニケーションが図れます。
感謝:「ありがとう」
- 谢谢 (xièxie): ありがとう。(最も一般的)
- 谢谢你/您 (xièxie nǐ/nín): あなたに感謝します。
- 多谢 (duōxiè): どうもありがとう。(やや丁寧)
- 感谢 (gǎnxiè): 感謝します。(よりフォーマル)
- 太谢谢你了!(tài xièxie nǐ le!): 本当にどうもありがとう!
- 返答: 不客气 (bú kèqi) / 不用谢 (búyòng xiè) – どういたしまして。
謝罪:「ごめんなさい」
- 对不起 (duìbuqǐ): ごめんなさい。(過ちを認める、より重い謝罪)
- 不好意思 (bù hǎoyìsi): すみません、恐れ入ります。(軽い謝罪、依頼、感謝など幅広く使える)
- 抱歉 (bàoqiàn): 申し訳ありません。(ややフォーマルな謝罪)
- 返答: 没关系 (méi guānxi) – 大丈夫です、気にしないでください。 / 没事儿 (méi shìr) – なんでもないです。
まとめ:挨拶は心の窓、文化理解の第一歩
中国語の挨拶は、「你好」という万能な言葉がある一方で、初対面の丁寧な表現から、久しぶりの再会を喜ぶ言葉、日常の気軽な声かけ、そして「吃饭了吗?」のような文化的な背景を持つユニークなものまで、実に多彩です。
大切なのは、それぞれの挨拶が持つニュアンスや使われる場面を理解し、相手や状況に応じて適切に使い分けることです。TPOに合わせた挨拶ができるようになれば、相手に良い印象を与え、その後のコミュニケーションがよりスムーズに進むでしょう。また、挨拶の言葉を通じて、中国の文化や人々の考え方に触れることもできます。
この記事で紹介した様々な挨拶表現を参考に、ぜひ実際の会話で積極的に使ってみてください。最初は少し勇気がいるかもしれませんが、心のこもった挨拶は、国境を越えて相手の心に届くはずです。挨拶をきっかけに、中国語でのコミュニケーションの世界を広げていきましょう!