【中国語 成語の世界】四字熟語だけじゃない!五字・六字・七字・九字熟語の面白い用例と意味・由来を徹底解説!例文で学ぶ使い方

中国語には5万を超える「成语」(chéngyǔ) があると言われています。その膨大な数の中でも、一般的に知られる四字熟語形式のものは約96%を占めますが、実はそれだけではありません。三字、五字、六字、七字、さらにはそれ以上の長さを持つ「成语」も数多く存在し、中国語の表現を豊かにしています。
例えば、日本のことわざ「虎穴に入らずんば虎子を得ず」にあたる中国語は、「不入虎穴,焉得虎子」(bù rù hǔ xué, yān dé hǔ zǐ) という四字熟語が有名ですが、似たような意味合いで使われる七字熟語「初生之犊不怕虎」(chū shēng zhī dú bù pà hǔ) もあります。これは「生まれたばかりの子牛は虎を恐れない」という意味で、経験の浅い若者が無謀な挑戦をする様子を表します。
この記事では、奥深い「成语」の世界を探求し、特に四字熟語以外のユニークな成語に焦点を当て、その意味、由来、そして現代中国語での具体的な使い方を例文とともに詳しくご紹介します。これらの成語を学ぶことで、あなたの中国語表現はよりネイティブに近づき、中国文化への理解も一層深まることでしょう。
目次
なぜ「成语」を学ぶのか?その魅力とメリット
中国語学習において、「成语」の習得は非常に重要です。単に語彙が増えるだけでなく、以下のような大きなメリットがあります。
- 表現力の向上: 短い言葉で複雑な意味や状況を的確に表現できるようになります。会話や文章が引き締まり、より洗練された印象を与えます。
- コミュニケーションの円滑化: 中国人は日常会話やビジネスシーンで頻繁に「成语」を使用します。これらを理解し使いこなすことで、よりスムーズで深いコミュニケーションが可能になります。
- 文化理解の深化: 多くの「成语」には、歴史的な出来事、伝説、古人の知恵や教訓が凝縮されています。「成语」を学ぶことは、中国の歴史や文化、価値観を理解する上で非常に有効な手段です。
- 読解力の向上: 新聞記事や文学作品など、中国語の文章には「成语」が頻繁に登場します。これらを知っていると、内容の理解度が格段に上がります。
四字熟語に限らず、多様な「成语」に触れることで、中国語の奥深さと面白さをより一層感じることができるでしょう。
三字熟語の世界:短いながらも深い意味
「成语」というと四字熟語を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、三文字で構成されるものも実用的な表現としてよく使われます。数は多くありませんが、覚えておくと非常に便利です。
下马威 (xià mǎ wēi)
文字通りには「馬から下りる時の威厳」という意味ですが、転じて「(新任者などが)最初に相手に威圧感を与えて気勢をそぐこと」「下車評定」といった意味で使われます。日本語の「先制パンチ」に近いニュアンスです。
例:
新来的经理一上任就给我们来了个下马威,宣布了严格的新规定。
(Xīn lái de jīnglǐ yī shàngrèn jiù gěi wǒmen lái le ge xiàmǎwēi, xuānbù le yángé de xīn guīdìng.)
新しく来たマネージャーは着任するやいなや、私たちに先制パンチを食らわせ、厳しい新規則を発表した。
眼中钉 (yǎn zhōng dīng)
「目の中の釘」という意味で、非常に邪魔な存在、目の上のこぶ、目の敵といった意味を表します。強い嫌悪感や敵意が込められた表現です。
例:
他把所有反对他的人都看作眼中钉。
(Tā bǎ suǒyǒu fǎnduì tā de rén dōu kànzuò yǎnzhōngdīng.)
彼は自分に反対する全ての人を目の敵と見なしている。
五字熟語:日常会話や教訓で生きる表現
ではどんな熟語用法があるのでしょうか?まず五字熟語から見てみましょう。四字熟語に比べると数は少ないですが、リズム感があり覚えやすいものも多いです。
欲速则不达 (yù sù zé bù dá)
「急いては事をし損じる」という意味の、非常に有名な「成语」です。論語が出典で、焦って結果を求めすぎると、かえって目標達成が遠のくという意味です。特に、道路交通法を顧みないドライバーを諭すためや、物事の性急な進め方を戒める際によく用いられています。
例文:
百分之九十的司机不知道,中国高速公路为何限速每小时一百二十公里。欲速则不达,这句话用在开车上最适合不过,是因为,当车速达到每小时一百六十公里时,不管你开什么车,有没有系安全带,发生爆胎后,司乘人员的死亡率是百分之百。
(Bǎi fēn zhī jiǔshí de sījī bù zhīdào, Zhōngguó gāosù gōnglù wèihé xiàn sù měi xiǎoshí yībǎièrshí gōnglǐ. Yù sù zé bù dá, zhè jù huà yòng zài kāi chē shàng zuì shìhé buguò, shì yīnwèi, dāng chēsù dádào měi xiǎoshí yībǎiliùshí gōnglǐ shí, bùguǎn nǐ kāi shénme chē, yǒu méi yǒu xì ānquándài, fāshēng bào tāi hòu, sīchéng rényuán de sǐwáng lǜ shì bǎi fēnzhī bǎi.)
なぜ中国の高速道路の制限速度が時速120kmなのかを90%の運転手が知らない。急いては事をし損じる、この句は車の運転において用いるのが最もふさわしい。なぜなら、車の速度が時速160kmに達する時、どういう車を運転しているか、シートベルトを締めているかどうかにかかわらず、タイヤ破裂後、乗車していた人の死亡率は100%だからだ。

一字值千金 (yī zì zhí qiānjīn)
「一字の価値が千金に値する」という意味で、文字や文章、あるいは言葉そのものが非常に価値が高いことを表します。優れた詩文や書、重要な助言などを称賛する際に用いられます。この成語の由来は、秦の宰相であった呂不韋が編纂させた書物『呂氏春秋』にあります。完成後、呂不韋は咸陽の城門にその書物を掲げ、「一字でも増やしたり減らしたりできたら千金を与える」と布告したという故事に基づいています。
例文:
这位书法家的作品,笔力雄健,真是达到了一字值千金的境界。
(Zhè wèi shūfǎjiā de zuòpǐn, bǐlì xióngjiàn, zhēnshi dádào le yī zì zhí qiānjīn de jìngjiè.)
この書道家の作品は、筆致が力強く、まさに一字千金の境地に達している。
在关键时刻,他的一句忠告,如同雪中送炭,真可谓一字值千金。
(Zài guānjiàn shíkè, tā de yījù zhōnggào, rútóng xuězhōngsòngtàn, zhēn kěwèi yī zì zhí qiānjīn.)
肝心な時に彼がくれた一言の忠告は、雪中に炭を送るようなもので、まさに一字千金と言えるものだった。
换汤不换药 (huàn tāng bù huàn yào)
「スープを変えても薬(中身)は変えない」という意味で、表面的な部分や名称だけを変えて、本質や中身は以前と全く同じであることを指します。多くは、ごまかしや実質的な改善がないことを批判的に表現する場合に用いられます。
例文:
他们公司提出的所谓改革方案,在我看来只是换汤不换药,根本没有触及问题的核心。
(Tāmende gōngsī tíchū de suǒwèi gǎigé fāng’àn, zài wǒ kànlái zhǐshì huàn tāng bù huàn yào, gēnběn méiyǒu chùjí wèntí de héxīn.)
彼らの会社が提案したいわゆる改革案は、私に言わせればただの看板の掛け替えで、問題の核心には全く触れていない。
六字熟語:故事成語が織りなす教訓
六字で構成される成語も、興味深い背景を持つものが多くあります。
有眼不识泰山 (yǒu yǎn bù shí Tàishān)
「目がありながら泰山を認識できない」という意味です。目の前にいる偉大な人物や価値のあるものを見抜けない、見識が狭いことを例える言葉です。この句で用いられている「泰山」(Tàishān)は、山東省にある有名な泰山のことではなく、古代のある優れた職人の名前です。
由来:
昔、鲁班 (Lǔ Bān) という非常に腕の立つ大工の棟梁がいました。彼には多くの弟子がいましたが、彼は時折弟子たちを試し、見込みのない者を淘汰していました。その中で、見た目が冴えず、愚鈍そうに見えた「泰山」という弟子も、魯班に見限られて追い出されてしまいました。
数年後、魯班が街を歩いていると、素晴らしい出来栄えの家具を揃え、多くの客で賑わっている店を見つけました。その家具の技術は魯班自身も感嘆するほどでした。魯班が「一体どのような名人がこれらを作っているのだろうか」と尋ねると、そばにいた人がこう答えました。「これは、かつてあなたのお弟子さんだった泰山殿がお作りになったものですよ。」魯班は、自分の人を見る目のなさを恥じ入ったと言われています。
例文:
真对不起,刚才多有冒犯,我真是有眼不识泰山,不知道您就是大名鼎鼎的王教授。
(Zhēn duìbuqǐ, gāngcái duō yǒu màofàn, wǒ zhēnshi yǒu yǎn bù shí Tàishān, bù zhīdào nín jiùshì dàmíngdǐngdǐng de Wáng jiàoshòu.)
本当に申し訳ありません、先ほどは大変失礼いたしました。私が浅学非才で、あなたが有名な王教授でいらっしゃるとは存じ上げませんでした。

五十步笑百步 (wǔshí bù xiào bǎi bù)
「五十歩逃げた者が百歩逃げた者を笑う」という意味です。戦場で五十歩退却した兵士が、百歩退却した兵士を見て臆病だと嘲笑ったという孟子の寓話に由来します。本質的には大差ないのに、自分のことを棚に上げて他人を軽蔑したり、些細な違いを誇張して優越感に浸ったりする行為を批判する際に使われます。
例文:
他们两个的成绩都不好,一个不及格,一个刚及格,彼此嘲笑对方真是五十步笑百步。
(Tāmen liǎng ge de chéngjì dōu bù hǎo, yí ge bù jígé, yí ge gāng jígé, bǐcǐ cháoxiào duìfāng zhēnshi wǔshí bù xiào bǎi bù.)
彼ら二人の成績はどちらも良くない。一人は不合格で、もう一人はギリギリ合格だ。お互いを嘲笑い合うなんて、まさに五十歩百歩だよ。
挂羊头卖狗肉 (guà yángtóu mài gǒuròu)
「羊の頭を看板に掲げて、実際には犬の肉を売る」という意味です。見せかけは立派で良いもののように装いながら、実際には質の悪いものや偽物を売る、つまり看板に偽りありという状況を指します。約束と実際が異なることや、内容が伴わない宣伝などに対して使われます。
例文:
这家餐厅宣传用的是高级食材,但吃起来味道一般,简直是挂羊头卖狗肉。
(Zhè jiā cāntīng xuānchuán yòng de shì gāojí shícái, dàn chī qǐlai wèidào yībān, jiǎnzhí shì guà yángtóu mài gǒuròu.)
このレストランは高級食材を使っていると宣伝しているが、食べてみると味は普通で、まったく看板に偽りありだ。
七字熟語:詩的な響きと豊かな情景描写
七字熟語は、対句のような形式をとるものも多く、詩的で美しい響きを持つものが特徴です。
情人眼里出西施 (Qíngrén yǎn lǐ chū Xīshī)
「恋人の目には相手が西施に見える」という意味です。日本のことわざ「あばたもえくぼ」とほぼ同じ意味で、愛情があれば、相手の欠点も美点に見えるという恋愛における心理を表します。「西施」(Xīshī) は、中国古代四大美女の一人で、春秋時代末期、越国の出身です。その美しさは、川を泳ぐ魚ですら彼女の姿に見とれて泳ぐのを忘れ、川底に沈んでしまった(沈魚落雁の「沈魚」の由来)と伝えられています。
会話例:
A: 晓丽爱发脾气,长得也不算漂亮,小李到底看上她哪儿了?
(Xiǎolì ài fā píqi, zhǎng de yě bú suàn piàoliang, Xiǎolǐ dàodǐ kànshang tā nǎr le?)
晓丽はかんしゃく持ちだし、美人でもないのに、小李は彼女のどこが気に入ったのかしらね?
B: 这有什么奇怪的,古人不是说了吗,情人眼里出西施啊。
(Zhè yǒu shénme qíguài de, gǔrén búshì shuō le ma, qíngrén yǎn lǐ chū Xīshī a.)
何も不思議なことはないよ。昔から言うじゃないか、「あばたもえくぼ」ってね。

一个篱笆三个桩 (yí ge líba sān ge zhuāng)
「一つの竹垣を作るには、三本の杭が必要だ」という意味です。これは、どんな仕事も一人では成し遂げられず、多くの人の協力や助けがあって初めて成功するという、協力の重要性を説くことわざ的な表現です。「一个好汉三个帮」(yí ge hǎohàn sān ge bāng) – 一人の英雄にも三人の助けが必要、と対で使われることもあります。
例文:
这个项目太大了,我一个人肯定完不成,俗话说一个篱笆三个桩,我需要大家的帮助。
(Zhège xiàngmù tài dà le, wǒ yí ge rén kěndìng wánbuchéng, súhuàshuō yí ge líba sān ge zhuāng, wǒ xūyào dàjiā de bāngzhù.)
このプロジェクトは大きすぎて、私一人では絶対に完成できません。ことわざにもあるように「一つの垣根にも三本の杭」、皆さんの助けが必要です。
山雨欲来风满楼 (shān yǔ yù lái fēng mǎn lóu)
「山の雨が降ろうとする前に、風が楼閣に満ちる」という意味です。大きな事件や変事が起こる前の、不穏な兆候や緊張した雰囲気を比喩的に表します。元々は唐代の詩人、許渾の詩の一節で、情景描写の美しさと共に、その暗示する意味の深さから成語として定着しました。
例文:
公司最近人事变动频繁,各种谣言四起,真有点山雨欲来风满楼的感觉。
(Gōngsī zuìjìn rénshì biàndòng pínfán, gèzhǒng yáoyán sìqǐ, zhēn yǒudiǎn shān yǔ yù lái fēng mǎn lóu de gǎnjué.)
会社は最近人事異動が頻繁で、様々な噂が飛び交い、本当に大きな変動が起こる前の不穏な感じがする。
九字熟語:長いが故の深い含蓄
さらに長い九字の成語もあります。これらは状況をより具体的に描写したり、深い教訓を含んだりするものが多いです。
冰冻三尺,非一日之寒 (bīng dòng sān chǐ, fēi yī rì zhī hán)
「三尺(約1メートル)の厚い氷も、一日の寒さでできるものではない」という意味です。中国の北方では冬になると氷点下30度以下になる都市もあり、川や池が厚く凍り、スケートができるほどになります。この情景から生まれたこの成語は、 어떤深刻な問題や事態も、長期間にわたる原因の積み重ねによって生じるものであり、決して突然起こるわけではない、ということを表します。多くは、悪い状況や根深い問題について言及する際に用いられます。
例文:
他们夫妻俩关系破裂,闹到要离婚的地步,真是冰冻三尺非一日之寒,矛盾是长期积累下来的。
(Tāmen fūqī liǎ guānxì pòliè, nào dào yào líhūn de dìbù, zhēnshi bīngdòng sān chǐ fēi yī rì zhī hán, máodùn shì chángqī jīlěi xiàlai de.)
あの夫婦の関係が破綻し、離婚するまでに至ったのは、まさに氷凍三尺非一日之寒で、対立は長期間積み重なってきたものだ。
新聞記事などでは、「最近の経済不況は今に始まった問題ではない」といった文脈や、「官僚の汚職や腐敗が明るみに出るまでには、それなりの時間と原因の蓄積がある」といったことを表現する際に、この句が効果的に用いられることがあります。
麻雀虽小,五脏俱全 (máquè suī xiǎo, wǔzàng jù quán)
「雀は小さいけれども、五臓はすべて揃っている」という意味です。見た目は小さいものや規模が小さい組織であっても、必要な機能や要素は一通り備わっており、侮れないということを表します。人や物事を見かけだけで判断してはいけないという教訓も含まれています。
例文:
这家小公司虽然员工不多,但是研发、生产、销售各个部门都有,真是麻雀虽小,五脏俱全。
(Zhè jiā xiǎo gōngsī suīrán yuángōng bù duō, dànshì yánfā, shēngchǎn, xiāoshòu gège bùmén dōu yǒu, zhēnshi máquè suī xiǎo, wǔzàng jù quán.)
この小さな会社は従業員は多くないが、研究開発、生産、販売の各部門が揃っており、まさに雀は小さくとも五臓は全て備わっている、だ。
現代中国を映す「成语」:空中楼阁の事例
新聞記事の見出しやその文章の中には、「成语」(chéngyǔ)つまり四字熟語もしくは四字以上の熟語がよく用いられています。どのような「成语」が使われているかで、時代や中国人の生活の変化を感じる事ができます。
違法な高層建築と「空中楼阁」
最近、中国では大都市のみならず地方都市でも高層ビルや高層マンションの建設ラッシュが進んでいます。それに伴い、手抜き工事や違法建築といった問題も後を絶ちません。こうした状況を表現するのによく用いられているのが、「空中楼阁」(kōngzhōng lóugé) という「成语」です。本来は「空中に建てられた楼閣」や「蜃気楼」を意味し、転じて「現実離れした計画」や「根拠のない理論」を指しますが、現代では文字通り「危険な高層建築」の比喩としても使われるようになっています。
この語を使った新聞記事の幾つかを見てみましょう。
バルコニーを住居に改造
露天悬空阳台变住房,如此“空中楼阁”属违建
(Lùtiān xuánkōng yángtái biàn zhù fáng, rúcǐ “kōngzhōng lóugé” shǔ wéi jiàn)
空中に張り出したバルコニーを居住スペースに変えてしまう、こうした空中楼閣は違法建築です。
重慶のある高層マンションで、21階と22階の間に設けられていた張り出しバルコニーが、住人によって無許可で個人の居住スペースに改造されてしまいました。鋼材とガラスで造られたこの増築部分は約6平米あり、地上約66メートルの高さに位置しています。市民からは「最も醜い空中違法建築」と揶揄されています。
計画6階建てが19階建てに?
规划6层盖了19层,信阳市民误买“空中楼阁”难入住
(Guīhuà liù céng gài le shíjiǔ céng, Xìnyáng shìmín wù mǎi “kōngzhōng lóugé” nán rù zhù)
計画では6階建てなのに19階建てを建設。騙されて買わされた信陽市民はこの空中楼閣に入居できず。
2012年10月、ある趙さんは35万元(当時のレートで約700万円)で19階建てマンションの9階の一室を購入する契約を交わしました。当時建物はすでに完成しており、不動産業者の説明では、ローンの手続きなど諸手続きを経て、翌年の5月1日には入居できるとのことでした。趙さんは安心して頭金11万元(約220万円)を支払いました。
しかし、待つこと約半年、心待ちにしていた5月1日になっても、業者は手続きが完了していないと言い、入居日は7月、10月、翌年の元旦、5月、7月、10月…と延期され続けました。最終的に不動産業者は、趙さんが残りの24万元(約480万円)を全額支払えば鍵を渡すと言い出しました。
腹を立てた趙さんや他の購入者が調査したところ、この土地は本来6階建ての建築許可しか取得していませんでした。それにもかかわらず19階建てのマンションが建設され、しかも電気も水道も通っておらず、エレベーターも使用できない状態だったのです。趙さんが頭金の返還を要求しても、業者は手元に現金がないと開き直る始末。まさに「空中楼閣」を買わされた悲劇です。
「空中楼阁」の本来の意味と由来
さて、これらの記事で現代的な用法として使われていた「空中楼阁」には、本来の由来となる古代の寓話があります。
由来:
昔、たいそう愚かな金持ちがいました。ある日、友人の家を訪れると、その屋敷は空中に突き出たような美しい三階建てで、素晴らしい眺めでした。彼はそれを非常に羨ましく思い、自分のためにも同じような建物を建ててほしいと、その三階建ての屋敷を建てた大工を雇いました。
大工が基礎を作り、一階、二階と順に建て始めているのを見て、金持ちは言いました。「私の家には一階も二階もいらない。友人宅のような、空中に突き出た三階部分だけを建ててくれ。」大工は呆れて何も言えなかったといいます。
この寓話に基づき、「空中楼阁」の本来の意味は「空中に造られた楼閣」や「蜃気楼」ですが、そこから転じて「実際には存在しない空想上の事物」や「現実味のない計画や理論」を比喩する言葉として広く使われるようになりました。
例文:
你所描绘的东西,在我看来是空中楼阁,根本不存在。
(Nǐ suǒ miáohuì de dōngxi, zài wǒ kàn lái shì kōngzhōng lóugé, gēnběn bù cúnzài.)
君が描写するものは、私から見れば空中楼閣であり、全く存在しないものだね。
他终于明白了,自己过去所追求的东西,实际上是空中楼阁,绝不可能实现的。
(Tā zhōngyú míngbái le, zìjǐ guòqù suǒ zhuīqiú de dōngxi, shíjì shàng shì kōngzhōng lóugé, jué bù kěnéng shíxiàn de.)
彼は自分がこれまでずっと追い求めてきたものが、実際には架空のものであり、決して実現不可能なものであることにようやく気が付いた。
このように、「空中楼阁」は基礎の重要性を無視した愚かさを戒める教訓を含む一方で、現代社会の歪みを象徴する言葉としても使われています。本来のエピソードと現代の使われ方を比較しながら「成语」を学ぶのも、その言葉が持つ多面的な意味を理解する上での一つの面白い方法ですね。
効果的な「成语」学習法
「成语」を効果的に学び、自分のものにするためには、いくつかのコツがあります。
- 丸暗記ではなく背景を理解する: 多くの「成语」には由来となる物語や歴史的背景があります。それらを一緒に学ぶことで、意味が深く記憶に残りやすくなります。
- 例文を通じて使い方を覚える: 実際の会話や文章でどのように使われるのかを、たくさんの例文に触れることで学びましょう。自分で例文を作ってみるのも効果的です。
- 声に出して読んでみる: 「成语」はリズムが良いものが多いので、声に出して読むことで音と共に覚えられます。ピンインを確認しながら正確な発音を心がけましょう。
- 日常的に触れる機会を増やす: 中国のドラマ、映画、音楽、ニュース、SNSなど、様々なメディアで生きた「成语」に触れる機会を増やしましょう。最初は聞き取れなくても、意識していると徐々に分かるようになってきます。
- 分类して覚える: 例えば、「動物に関する成语」「感情を表す成语」「教訓を含む成语」など、テーマ別に分類して覚えるのも一つの方法です。
- HSKなどの試験対策として: HSK(漢語水平考試)の高レベルでは、「成语」の知識が直接問われることもあります。試験対策として集中的に学ぶことも有効です。
焦らず、楽しみながら「成语」の世界に触れていくことが、上達への一番の近道です。
まとめ:「成语」を使いこなし、中国語上級者へ
この記事では、四字熟語だけでなく、三字、五字、六字、七字、九字といった多様な「成语」の世界をご紹介しました。これらの「成语」は、単に言葉のバリエーションを増やすだけでなく、中国の歴史、文化、そして人々の生活や考え方への深い理解へと繋がっています。
中国人は日常会話や文章の中で、ごく自然にこれらの「成语」を織り交ぜて使います。最初は難しく感じるかもしれませんが、一つ一つの「成语」の背景にある物語や意味を知ることで、その面白さや奥深さに気づくはずです。そして、意識して使っていくうちに、あなたの中国語はより豊かで、より生き生きとしたものになるでしょう。
今回ご紹介した「成语」はほんの一部に過ぎません。ぜひ、これをきっかけに、さらに多くの「成语」に触れ、その魅力を発見し、ご自身の中国語表現に取り入れてみてください。そうすることで、あなたの中国語は確実に一段階レベルアップし、コミュニケーションの幅も大きく広がることでしょう。楽しみながら「成语」の学習を続けて、中国語上級者を目指しましょう!