中国の地方ごとの麺料理-伝統の味を巡る旅

  1. 中国世界遺産・旅行

国土の広い中国では、地方へ行くとご当地ならではのいろいろな麺料理があります。その中には、ほかの都市にチェーン店を展開するほどに人気の麺料理もあります。

今回はその中でも地方色豊かな麺料理をいくつかご紹介しましょう。

中国の地方ごとの麺料理-伝統の味を巡る旅

沙县拌面

Shāxiànbànmiàn

福建省中部から北寄りの辺りが「沙县」(Shāxiàn)ですが、「沙县小吃」(Shāxiàn xiǎochī)と言えば黄河流域で殷時代よりさらに古い夏時代にまで遡れるとされるほど昔からある飲食文化です。

その中でも沙县拌面は看板メニューの一つです。

Shā xiànbànmiàn yòng de miàntiáo shì zuì jiǎngjiu de yuánliào,

沙 县 拌 面 用 的 面条 是 最 讲究 的 原料,

yídìng yào xuǎnzé gāo jīn miànfěn huòzhě yōuzhì zhōng jīn miànfěn,

一定 要 选择 高 筋 面粉 或者 优质 中 筋 面粉,

jiā shìliàng de shuǐ hé shǎoliàng jiǎn yǔ yán fā jiào ér chéng de。

加 适量 的 水 和 少量 碱 与 盐发 酵 而 成 的。

沙县拌面に使われる麺は最もこだわりのある原料で、必ず強力粉か良質の中力粉を選び、そこに適量の水と少量のアルカリ、塩を加え発酵させて作られます。

沙县拌面に欠かせない調味料が落花生ペーストです。フライパンに油と落花生の実を入れて中火にかけ、黄金色になるまでじっくり炒めます。

取り出した落花生は粗熱を取って砂糖と胡麻を加え、攪拌機で粉砕してペースト状にします。ゆでた麺をザルにあげ、器に盛って落花生ペースト、醤油、酢、酒、ネギと混ぜ合わせて完成です。

扬州阳春面

(Yángzhōu yáng chūn miàn)

一椀中国面条、紅色筷子使用。

江蘇省や上海地区で有名な麺料理です。「光面」(guāng miàn)や「清汤面」(qīng tāng miàn)とも呼ばれます。

麺の細さに決まりがないので細い麺もあれば幅の広い麺もありますが、肝心なのは一切の具材をのせず、麺とスープだけで勝負する麺料理だということです。

この地域の人々はたとえ家で朝食をとる時間がなくても、外で一杯の阳春面を食べてから出勤するというのが日常になっています。

出汁を取るために干しエビを入れますが、魚は臭いが出るので入れないそうです。

河南郏县饸饹面

Hénán jiáxiàn héle miàn

饸饹面は唐時代に始まり、明時代から清時代にかけて盛んになったとされている大変歴史のある麺料理です。

麺の材料には1:3の割合で蕎麦粉と小麦粉を使います。先に蕎麦粉を水と合わせ、しばらく混ぜてから小麦粉を加えます。

麺は、てこの原理を用いて、ところてん突きのような動作をする機械を加圧して麺を押し出し、そのまま鍋に落として作られます。

羊肉をウイキョウ、花椒、コショウ、当帰、ナツメ、クコの実、竜眼などと一緒に一日以上かけてじっくり煮込んだスープは滋養に富み、癖になる味です。

甘粛省一帯では結婚式の招待客に饸饹面を振る舞う習慣があり、大変喜ばれます。

襄阳牛杂面

Xiāngyángniúzámiàn

肉と箸が入ったスープ。

湖北省北西部にある「襄阳」(Xiāngyáng)の人々が愛してやまない朝食がこの牛杂面です。「牛杂」(niúzá)とは牛ホルモンのことです。牛肉を麺の上にのせる「牛肉面」(niúròumiàn)もあります。

どちらも味の特徴は口に入れると辛い「」()と、味わうほどにしびれるほど辛くなってくる「」()の両方を兼ね備えていることです。

でも襄阳の人々は牛杂面を食べない日が三日続くと口の中が物寂しくなってきて、食欲も半減してしまうそうです。辛さが癖になるようですね。

Xiāngyáng de niúròu miàn bù tóng yú Lánzhōu de niúròu lā miàn,

襄阳 的 牛肉 面 不 同 于 兰州 的 牛肉 拉 面,

yě bù tóng yú Shànghǎi běndì de niúròu miàn。

也不 同 于 上海 本地 的 牛肉 面。

Tā zuì jiǎngjiu de shì:yí shì wèi xiāng,èr shì wèi hòu,sān shì yǒu huí wèi,

它 最 讲究 的是 :一 是 味 香,二 是 味 厚,三 是 有 回 味,

zuì wéiguānjiàn de shì tāng,tāng yào hǎo hē、niúròu yào hǎo chī。

最 为 关键 的 是 汤,汤 要 好 喝、牛肉 要 好 吃。

Xiāngyáng de niúròu miàn héniúzá miàn dōu shì shàngmiàn mǎn mǎn de yì céng niúròu huò yí céng niúzá,

襄阳 的 牛肉 面和 牛杂 面 都是 上面 满 满的一 层 牛肉 或一 层 牛杂,

ràng wàidì rén dàwéi gǎnkǎizhè ròu zěnme gēn bú yào qián shì de?

让 外地 人大为 感慨 这 肉 怎么 跟不 要 钱 似 的?

襄阳の牛肉面は蘭州の牛肉拉面とは異なり、上海の牛肉拉面と違う。最もこだわっているのは第一に美味で、第二に味に深みがあり、第三にまた食べたくなることである。

最大の鍵はスープだが、スープは美味で飲みやすく、牛肉も美味でなければならない。

襄阳の牛肉面と牛杂面はいずれも麺の上一面に牛肉もしくは牛ホルモンが盛られているので、他の土地から来た人は、この肉はどうしてお金が要らないと言うに等しいほどたっぷりなのかと大いに感動させられる。

地方色あふれる麺料理の店は看板ですぐにわかります。もし見つけたら百聞は一見にしかず、ぜひ一度ご賞味ください。

中国語で麺料理は「面食」と言いますが、長い麺を使った料理だけを指すわけではありません。

原料に小麦や蕎麦、その他の雑穀類を用いて様々な形に成形された生地を使う伝統的麺料理も含まれています。

今回は北西部の伝統的な家庭麺料理をご紹介しましょう。

栲栳栳

(kǎolǎolao)

まるで巨大な蜂の巣のように見えるのが栲栳栳です。

原材料のカラスムギ粉を加水し練ってから3-4cm程のかたまりに切り分けていきます。そのかたまりを手の平で台に押し付け、厚さ約1.5mm、サイズは6cm×10cm位に薄く延ばします。

破らないように生地をそっと台から引きはがし、人差し指に巻き付かせるようにして成形します。それを直径20cm程の蒸籠に隙間なく敷き詰め、約10分蒸し上げると完成です。

黒酢につけてそのまま食べることもありますが、「ジャガイモと薄切り豚バラ肉の炒め物」と一緒に混ぜ合わせたり、炒めた具材を上からかけたりして提供されます。

蒸す

【栲栳栳の歴史】

主に山西省の北部で食べられていますが、その製法、名前の由来は1400年もの昔にまで遡ることができます。

竹の皮や柳の葉を編んで作った蒸籠を「栲栳」(kǎolǎo)と言います。

唐王朝の初代皇帝「李渊」( Yuān)がまだ皇帝になる前、隋王朝の末期に現在の山西省太原の太守に降格させられた時、通りすがった名刹の住職が彼に振る舞ったのが栲栳栳だという民話があります。

Yóumiàn kǎolǎolao zàiShānxī mínjiān chúlejiācháng měishí wài,

莜面 栲栳栳 在 山西 民间 除了 家常 美食 外,

quēshí háiyǒu kàoláo qīnpéng guìbīn zhī yì。

确实 还有 犒劳 亲朋 贵宾 之 意。

Rénmen yǐ chī yóumiàn kǎolǎolao wéi“láokao”、“hémù”děng měihǎo xiàngzhēng。

人们以吃 莜面 栲栳栳 为“牢靠”、“和睦”等 美好 象征。

Měiféng lǎorén shòuchén,xiǎohái mǎnyuè huò féng jié dài kè,duō yǐ cǐ jìn cān。

每逢 老人 寿辰,小孩 满月 或 逢 节 待客,多以此 进 餐。

Shānqū yǒuxiē rénjiā hūnpèi qǔ jià shí,xīnláng xīnniáng yě yào chī,yì wèi fūqī bái tóu dào lǎo。

山区 有些 人家 婚配 嫁 娶 时,新郎 新娘 也要 吃,意谓 夫妻 白 头 到老。

カラスムギ粉で作る栲栳栳は山西地方の庶民にとって美味な家庭料理というだけでなく、親戚や友人にご馳走をして慰労する、また大切なお客様をもてなすという意味を確かに含んでいる。

人々はこの料理を食べることで「信頼できる」「仲睦まじい」などの良い意味の象徴としたのである。

老人の誕生祝い、赤ん坊の満一ヶ月のお祝い、あるいは祝祭日に客を接待するような時にはいつもこの料理でもてなしたのである。

山間部のある人々は婚約や結婚の際に、新郎新婦も栲栳栳を食べたが、それは「夫婦が共白髪まで添い遂げる」という意味だったのである。

猫耳朵

(māo ěrduo)

猫耳朵は山西省、陕西省等の地域で人気のある伝統的麺料理で、その名の通り猫の耳の形をしています。華北地方では主食とされ、中国南方地域ではおやつ感覚で食べられているようです。

原料は小麦粉、蕎麦粉、カラスムギ粉、トウキビ粉などが用いられ、加水して捏ねた生地を親指で台に押し付けクルリと回転させながらねじりを入れて成形します。

すべての生地を成形したら沸騰した鍋に入れ数分火を通せば完成です。「トマトと卵の炒め物」や「インゲン、豚肉、ジャガイモの炒め物」などの具材を上からかけていただきます。

不烂子

(búlànzi)

山西省及び河北省南部の地域で愛されている伝統的家庭料理です。

元の呼び名は「拌子」(bànzi)ですが山西方言で「」をlànの二つの音に分けて発音することから「不烂子」と呼ばれるようになったと言われています。

方言が多いこの地域では、地域ごとに別の呼び名があるほどです。

エンジュの花、ジャガイモ、インゲン、白菜、茄子などあらゆる材料をもとに作ることができるので、地域ごと、家庭ごとにアレンジのバージョンが豊富な料理です。

基本的な作り方は元となる野菜や花に、その2/3の分量の小麦粉や蕎麦粉を振り掛けて蒸し、その後炒めるというものです。

【ジャガイモで作る不烂子】

じゃがいも

①5mm角に切ったジャガイモを5分ほどゆで、ザルにあげて湯切りする。

②ジャガイモをザルからフライパンに移し替え、その上にジャガイモの分量の2/3の小麦粉を入れて平らにならし、蓋をして数分蒸らす。

③蓋を外し、粗みじんのねぎを加え、小麦粉が具材にからまってねっとりした感じになるまで全体をよく混ぜ合わせる。

④花生油、ゴマ油、塩、コショウ、醤油などで全体を炒め合わせ、最後に好みで唐辛子、黒酢、花椒などを振り掛けて完成。

主食は小麦粉

5kgや10kg入りの袋で販売されている米は想像しやすいかもしれませんが、小麦粉の10kg入りをスーパーで販売しているのは日本ではあまり見かけませんね。

中国では大きいものになると22.7kg入りという規格で強力粉が売られており、それを購入した市民が自転車で運ぶ姿が今でも普通に見られます。

家族構成にもよりますが、このサイズの小麦粉を一か月程度で消費してしまうのです。さすがに主食ですね。

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