中国の学力競争は、ビックリするほど過激

    1. 中国経済・社会

    世界の65カ国で行なわれた「国際学力テスト」で堂々の1位に輝いたのはどの国だと思いますか?中国なのです。

    中国はいまや世界で一番成績のいい国です。どうして中国人は頭がいいのでしょう?

    それはビックリするほど過激な中国の学力競争があるからなのです。

    中国の学力競争は、ビックリするほど過激

    中国の学力競争システム

    中国では競争は幼稚園に入れるときから始まっています。

    一番良い幼稚園に入れるために親たちはこぞって、良い幼稚園の近くに引っ越します。

    日本では幼稚園に入る学年が決まっていますが、中国は少しでも子どもの成績を伸ばすために本来4歳からの幼稚園に2,3歳で入園させたりします。

    小学校も有名大学付属の小学校に入ると良い先生から教えてもらえるので、いくらでもお金を出します。

    有名小学校に入るためにはその小学校の近くに户口(hùkǒu)、つまり戸籍がなくてはいけません。

    その戸籍を得るために社会現象ともなっているある行動を親たちはとります。それを中国語で表現してみましょう。

    wèileháizishàngmíngxiào , mǎixuéqūfáng

    为了孩子上名校,买学区房.

    为了wèile)は「~のため」という意味。孩子háizi)は「子ども」という意味ですね。名校míngxiào)は「著名な学校」という意味です。

    shàng)という動詞ですが、この場合は日本語の「のぼる」という意味合いではありません。単に学校へ「行く」という意味になります。

    を「行く」という意味でほかに用いる例として

    上厕所shàngcèsuǒ トイレへ行く)とか上北京shàngBěijīng 北京へ行く)などがよく使われます。

    ピンクのシャツを着た女性が中国の教室で子供たちに教えている。

    mǎi)は買うという意味ですよね。学区房xuéqūfáng)というのは専門用語で、「(その学校の)学区内の家」という意味になります。

    つまり「子どもを著名な学校に通わせるために、学区内の家を買う」ことが中国全土で競って行なわれているわけです。

    もちろん子どもがその学校を卒業してしまえば、そのお家はいりませんので売り飛ばしてしまいます。

    努力を払うのは親だけではない

    親は子どもを有名校に通わせるために大枚をはたきます。もちろん子どもにはよい成績が求められます。

    もしも成績が悪かったならどうなりますか?骂()されるのです。これは四声の勉強のときに習いましたね。

    そう「ののしられる」という意味で、成績が悪いと親に罵倒され続けます。成績トップでないかぎり中国人の子どもは褒められずに育つのです。

    学校の勉強が一番大変な時期

    学力競争の最大のピークは日本で言う大学入試の時です。つまり大学入試に備えるための高校3年間は、人生で一番勉強しなくてはいけない時期となります。

    日本では一番楽しく遊べるときかもしれませんが、中国では死ぬほど勉強するので、冒頭で述べたような学力の差が生じているのかもしれません。

    中国都市部では、良い大学に入れさせるために、生徒たちを高校の宿舎で寝泊させます。外に出さず学校に缶詰で勉強させるのです。

    勉強漬けの3年間

    朝の7時半から夜の10時まで勉強し続けます。週末にしか親に会えない上に、週末も塾や習い事が待っています。

    本当に悲惨な3年間です。

    では問題です。やっとことで苦しい高校3年間が終わります。最後の関門「大学入試」のことを中国語で何と言いますか?

    dàxuérùxuékǎoshì 

    ①大学入学考试

    gāokǎo

    高考

    gāozhōngbìyèkǎoshì

    高中毕业考试

    答えは2番の高考gāokǎo)です。1,3番の中国語は存在しません。

    考试kǎoshì)は「試験」という意味があり、高中gāozhōng)は高校という意味です。それを短縮して高考となるわけです。

    日本では大学に入学するための試験という意味合いになりますが、中国では大学に入るための高校最後の試験ということで高考となります。

    これを考えれば高校入試のことを中国語で何と言うか分かりますよね。そう、zhōngkǎo)となります。

    大学とその後

    中国で本の山に座って双眼鏡を覗いている男性。

    大学に入ると中国の学生たちは一気に自由を経験します。今までしたくてもできなかった恋愛やゲームなどに没頭します。

    厳しかった高校3年間の反動で、大学の最初の1年は遊びすぎて、大学2年生になるころには特有の精神状態に陥ります。それが…

    gǎnjuémímáng

     迷茫

    gǎnjué)は「~を感じる」という動詞で、何を感じるかというと迷茫mímáng)を感じます。

    迷茫というのは難しい中国語ですが、「漠然とした」「先が見えない」という意味合いになります。

    つまり良い大学に入るためだけに青春時代をひたすら学業に打ち込みますよね。

    その後、やっと得た自由で1年間遊びほうけてみたものの「なんだか空しい、人生先が見えない感覚に襲われる」というわけです。

    でもこの倦怠感をどうにかクリアして、学生たちは大学を卒業していきます。日本の若者とはまったく違う青春時代だとおもいませんか。

    中国で増えている子供の自殺

    日本は世界的に見ると自殺者が多い国です。G7つまり先進7か国の中では日本は常にトップの自殺率ですが、子供の自殺率に絞るとなんと中国が世界で最も多い国なのです。

    なぜ中国で子どもたちの自殺が多いのでしょうか?

    ゆとり教育(宽松教育:kuānsōngjiàoyù)で生徒間での競争をあおってこなかった日本と違って、中国は近年ますます学力競争が激化しています。

    子どもたちからすると先生たちだけでなく親にも親族にも、会えば聞かれるのが成績のことで、頭がめいってしまいます。

    40人クラスだとクラストップ(第一名:dìyīmíng)になれるのは1/40です。それなのに2位以下だと、親たちは不満足な顔をする風潮なのです。

    頑張ったのに褒めてもらえずいつも怒られるので、精神的に弱い子が自殺したくなるのもわかるでしょう。

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    2020年に自殺が増えた理由

    もともと子どもの自殺率が高かった中国ですが、コロナウィルスの影響で急に学習スタイルが変わったことが、さらなる自殺率の増加を引き起こすこととなりました。

    楽しいこと・したいことがやっとできる

    2020年の2月半ば、コロナウィルスで競争の場である学校に行かなくては良くなった子供たちは、苦しかった学力競争から突然解放されました。そしてつかの間の自由を味わいます。

    ネットで授業を受けた後、親がいない子どもたちはやりたかったゲームができるようになったのです。

    もちろん宿題はたくさん出されましたが、解放感のもと遊ぶ時間あり幸せな日々だったわけです。

    5月に始まった学校の影響

    中国でコロナウィルスもいったん落ち着いてきた5月初めごろ、衝撃的なニュースが中国全土を揺るがします。次のようなニュースです。

    fùkèyǐlái , shànghǎishìyǒu 24 míngxuéshengtiàolóuzìshā

    初三高三复课以来,上海市有24名学生跳楼自杀。

    上海市で学生たち計24名が授業再開以降に飛び降り自殺

    自殺の原因

    大量の宿題

    注目すべきは「学校再開(复课:fùkè)の時」に、命を絶った学生が24人もいたという点です。自殺した学生にはいろいろな原因があるようですが、一つ紹介しましょう。

    ある9歳の女の子が自殺した原因は、以下のものだったと報道されました。

    yīnwèiwúfǎànshíwánchénglǎoshībùzhì de zuòyè

    因为无法按时完成老师布置的作业

    期限までに先生が出した宿題が終わってなかったから

    この子は自粛期間に大量に出された宿題をほとんどしてないことを、親から怒られると思いました。

    親が会社から帰ってくる時間であろう午後6時に、自分が住んでいるマンションの15階から飛び降り自殺したそうです。

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    頑張っても褒めてもらえない

    しかしその子の机の上にあった遺書から、自殺の原因が単に宿題が終わってないからだけでなく、その背景となる家庭環境がわかります。このような遺書がありました。

    māmaduìbùqǐ , zhèshìwǒ de juédìng

    妈妈对不起,这是我的决定。

    ママごめんなさい。これが私の決定なの

    wèishénmewǒgànshénmedōubùxíng

    为什么我干什么都不行。

    なんで私がすることすべてがダメなの?

    学校再開に合わせて大量の子供が自殺した原因は、家でゲームばかりしていて過剰なほど出された宿題が終わってなかったことだけでありません。

    そのうえ、頑張っても頑張っても褒めてもらえないあの苦しい学力競争をまたしないといけない、というストレスがあったようです。

    学力向上の反動

    中国では毎年2万人の子供たちが、毎年自分で命を落としています。いつもストレスを感じながら休めるはずの週末も習い事ばかりです。

    日本の子供たちは、まだまだ子供らしく生きられるだけ感謝しないといけないですね。

    子供たちを狙ったネット犯罪が多発しています。純粋な子どもたちは騙されやすく、容易に悪い大人の餌食になります。中国ではそうした犯罪に巻き込まれないために、日本にはないある特殊な方法がとられているのです。

    中国で増えていたネット犯罪

    一時期中国でも、子どもたちを狙ったネット犯罪が多発していました。

    子どもを家において両親とも仕事に出ることが一般的な中国では、子どもたちは自分のパソコンやスマホで自由にインターネットを閲覧できていたからです。

    子どもたちは親がいない状況でゲームをするだけでなく、チャットルームでいろんな人と会話します。

    自分が話している相手が悪い大人だと気付かないこともあり、お金のように使える「ポイント(金币:jīn bì)をあげるよ」という誘いで、悪い道に引き込まれるという事件が多数起きました。

    子どもの時からお金が第一であることが教え込まれているので、当然お小遣いがもらえるという落とし穴には容易にはまってしまいます。

    中国国内で、そうしたネット被害に子どもたちが遭わないようにするために、スマホを持たせないようにする親が増えています。

    それにしても子どもにスマホがないと親も連絡できず不便なんじゃないでしょうか?

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    中国でスマホを持たない子どもが増えた理由

    うちは子どもにスマホを持たせないという決断をした親たちに、多くの親たちがすぐに追随しました。ですが主な動機は子どもをネット被害から守りたいからではありません。その理由は…

    yīnwéi dānxīn háizǐ de chéngjì

    因为担心孩子的成绩

    子どもの成績が心配だから

    ほかの子どももスマホ(智能手机:zhìnéng shǒujī)を持たせないということは、その分勉強に集中することになる。うちの子どもからもスマホを取り上げないと、学力競争に負けてしまう。と多くの親たちは考えました。

    現在では、小中学生で自分用のスマホを持っている子どもはほとんどいません。親たちの動機はどうにしろ、中国の子どもたちはスマホが自由に使えなくなったので、結果、犯罪に巻き込まれるリスク(风险:fēngxiǎn)も大いに下がったのです。

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    スマホの代わりに子どもに持たせたもの

    しかし子どもに連絡手段がないというのは親としても困ります。ネット被害に遭うことはなく、それでいて子どもたちと連絡を取ることができるある製品が流行したのです。その商品名こそが…

    xiǎo tiān cái

    小天才

    小天才は直訳すると「天才の子ども」という意味です。子どもが天才になって好成績を取ることをイメージさせるこの商品名は親たちに受け入れられるものとなりました。

    小天才というのは簡単に言うと、腕時計型携帯電話です。ネットを見ることはできません。使える機能は、通話とSMS、そして…

    dìngwèi gōngnéng

    定位功能

    GPS機能

    最新型の小天才にはこのGPS機能が備わっており、子どもがどこにいるか親たちは会社にいながら確認できます。

    子どもと連絡が取れるうえ、会社から勉強しているか見張ることができるので、爆発的な人気を生んだというわけです。

    子どもたちが受け入れるのに貢献しているのはコナン君

    遊びに使うことができず、親から管理されるためだけに、腕時計型携帯を持たされる子どもはいいことないはずですが、それでも子どもたちは喜んではめています。一役買っているのが…

    míng zhēntàn kēnán

    名侦探柯南

    名探偵コナン

    日本のアニメの中で堂々と中国の映画館で放映されているのは、コナン君とドラえもんくらいです。

    つまり中国国家も認める日本のアニメというわけですが、そのコナン君がなんと小天才みたいなのを付けているではありませんか!

    最近の小天才はまさにコナン君みたいに画面の部分がボタン一つで上に立ち上がって、秘密結社の連絡手段の真似事ができます。これさえあればいろんなことができると思わせる設計になっているのです。

    子どもをネット被害から守るには

    今回は中国人が子どもたちをネット被害から守るためにとっている特殊な方法を考えました。日本にも似たようなものでアップルウォッチがありますが、子供たちに普及しているわけではないでしょう。

    日本においても子どもたちを守るためには、単に親が口で注意するだけでなく、物理的に子どもが悪い道に誘い込まれないような実際的手段をとる必要があるのかもしれません。

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